山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 記憶の樹木


 
樹木がすんなりと二本三本
 
どこでみたのか
 
その記憶が私を揺すつてゐる……
 
入日に浸つて黄色くなつた
 
最後の葉つぱ
 
その葉の落ちてくるのをそれとなく待つてゐた
 
それが自分達の上でひるがへり
 
冬の日は寂しく暗くなりかけた
 
風の日はいまも其の木木
                     しはが
骨のやうになつた梢の嗄れ声