山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 自分達の仕事


 
自分達の仕事
 
それは一つの巣をつくるやうなものだ
 
此の空中にたかく
 
どんな強風にも落ちないやうな巣をつくれ
 
そして大地にふかぶかと根ざした木木
 
その木の梢のてつぺんで
 
卵を孵へさうとしてゐる鳥は
 
いまああしてせはしく働いてゐる
 
毎日毎日
 
朝から夕まで
                          かみげ
あちらの都会の街上で女の髪毛を拾つたり
 
こちらの村の百姓の藁を一本盗んだり
 
ああ自分達もあの鳥とおなじだ
 
けれど鳥にはあのやうな翼がある
 
自分達には何があるか
 
ああ