山村暮鳥
「風は草木にささやいた」



  
 感 謝


 
なんといふはやいことだ
 
たつたいまおきたばかりのところへ
 
ステーションから箱が一つ
 
どつさりととどいた
                               とんねる
その箱は遠くからいくつもいくつも隧道をくぐつてきたのだ
こがね
黄金色した大きな穀物畠を横断し
 
威勢のいい急行列車に載せられてきたのだ
 
そして此の都会のわたしらまできたのだ
 
みると箱の裂目からなにかでてゐる
 
それは葱の新芽だ
         じやがいも
それから馬鈴薯と鞘豆と
 
紫蘇の葉の匂もそこら一ぱいに朝のよろこぴを漂はせてゐる