山村暮鳥
「雲」


 
 野糞先生


 
かうもりが一本
 
地べたにつき刺されて
 
たつてゐる
 
だあれもゐない
 
どこかで
ひばり
雲雀が鳴いててゐる
 

 
ほんとにだれもゐないのか
 
首を廻してみると
 
ゐた、ゐた
 
いいところをみつけたもんだな
 
すぐ土手下の
 
あの新緑の
 
こんもりした灌木のかげだよ
 

 
ぐるりと尻をまくつて
 
しやがんで
 
こつちをみてゐる