大手拓次
『藍色の蟇』

湿気の子馬

  
 日輪草


 
 そらへのぼつてゆけ、
               さう
 心のひまはり草よ、
 
 きんきんと鈴をふりならす階段をのぼつて、
 
 おほぞらの、あをいあをいなかへはひつてゆけ、
         いのち
 わたしの命は、そこに芽をふくだらう。
                                       わな
 いまのわたしは、くるしいさびしい悪魔の羂につつまれてゐる。
 
 ひまはり草よ、
 
 正直なひまはり草よ、
 
 鈴のねをたよりにのぼつてゆけ、のぼつてゆけ、
          うを
 空をまふ魚のうろこの鏡は、
 
 やがておまへの姿をうつすだらう。