萩原朔太郎
『月に吠える』より

   
   海水旅館


 
赤松の林をこえて、
 
くらきおほなみはとほく光つてゐた、
 
このさびしき越後の海岸、
 
しばしはなにを祈るこころぞ、
 
ひとり夕餉ををはりて、
                   ひ
海水旅館の居間に灯を點ず。
 

くぢら浪海岸にて