萩原朔太郎
『月に吠える』より

   
   孤獨


 
田舎の白つぽい道ばたで、つかれた馬のこころが、
 
ひからびた日向の草をみつめてゐる、
 
ななめに、しのしのとほそくもえる、
 
ふるへるさびしい草をみつめる。

 
田舎のさびしい日向に立つて、
 
おまへはなにを視てゐるのか、
 
ふるへる、わたしの孤獨のたましひよ。

 
このほこりつぽい風景の顔に、
 
うすく涙がながれてゐる。