木 蓮
はくもくれん
白木蓮は花が咲いてしまってから葉が出る。その若葉のではじめ
には実にあざやかに明るい浅緑色をしている。それが合掌したよう
な形で中点に向かって延びて行く。ちょうど緑の焔をあげて燃ゆる
こ ろうそく とも
小蝋燭を点しつらねたようにも見える。
しもくれん
紫木蓮は若葉のにぎやかなイルミネーションの中
わ
からはでな花を咲かせる。濃い暗いやや冷たい紫のつぼみが破れ開
かげろう
いて、中からほんのり暖かい薄紫の陽炎が燃え出る。そうして花の
散り終わるまでにはもう大きな葉がいっぱい密集してしまう。
そめい よしの
桜でも染井吉野のように花が咲いてしまってから葉の出るような
ぼたんさくら
種類が開花のさきがけをして、牡丹桜のような葉といっしょに花を
持つようなのが、少しおくれて咲くところを見ると、これは何か共
通な植物生理的な理由があるらしい。
人間でもなんだか、これに似た二種類があるような気がするが、
何が「花」で何が「葉」だかが自分にはまだはっきりわからない。