せいかんれんらくせん ある若い男の話である、青函連絡船のデッキの上で、飛びかわす うみねこ 海猫の群れを見ていたら、その内の一羽が空中を飛行しながら片方 の足でちょいちょいと頭の耳のへんを掻いていたというのである。 どうも信じられない話だがといってみたが、とにかく掻いていたの だからしかたがないという。 この話をその後いろいろの人に話してみたが、大概の人はこれを 開いて快い微笑をもらすょうである。 なぜだかわからない。 (昭和十年十月十四日)