八木重吉
「秋の瞳」

 
   不思議をおもふ


 
 たちまち この雑草の庭に ニンフが舞ひ
 
 ヱンゼルの羽音が きわめてしづかにながれたとて
 
 七宝荘厳の天の蓮華が 咲きいでたとて
 
 わたしのこころは おどろかない、
 
 倦み つかれ さまよへる こころ
 
 あへぎ もとめ もだへるこころ
 
 ふしぎであらうとも うつくしく咲きいづるなら
 
 ひたすらに わたしも 舞ひたい



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