竹久夢二「夢のふるさと」


 
  


  よ
 夜はよもすがら母うへは
                 くつした
 わたしのために靴下を
 
 ちく/\編むでゐらつしやる。
  あさ
 朝におろした靴下も
 
 晩には大きな穴があく
 
 ゆふべとなれはあか/\と
 
 ラムプのもとに母うへは
 
 やぶれた穴をつぎながら
 
 歌をうたつてゐらつしやる。
 

 
 母のなさけにしみ/゛\と
 
 やれた子供の心をも
 
 かなしい子供の涙をも
 
 ほどようふいてたもるもの。