竹久夢二「夢のふるさと」


   
  


 
 なげた石
 
 鳥居のうへにのつかれば
 
 どんな願もかなへんと
 
 氏神様はのたまひぬ。
 

 
 鳥居のしたにあつまりし
 
 太郎に次郎に草之助
 
 何がほしいときいたらば
 
 太郎がいふには犬張子
 
 次郎がいふにはぶんまはし
 
 生きた馬をば草之助。
 
 願をこめてなげた石
 
 首尾よく鳥居へのつかつた。
 

 
 石は鳥居へのつたれど
 
 いまだに何もくださらぬ。