34 球面波を考える

 ここまで、波で考えてきましたが、それも平面波です。しかし本当は空間で考えなければならないのではないか。ところがこれが結構難しい。軸が一つ増えただけでまるで別世界です。それでも、基本は正三角形(正三角錐)で考えていくことにしました。これによってできる多面体は三つです。@正4面体、正8面体、正20面体です。これにy平面の2面体(円盤の表と裏)とx平面の六角形を付け加えることにしました。
 ここで考えているのは、一つの頂点から見た正三角形の個数です。左から@y平面は表と裏の2個、A120度(実際は110度)、正4面体では3個、B90度の正8面体では4個、C60度(実際は63.3・・・)の正20面体では5個、Dx平面では正三角形が6個です。この一つ一つの角度と個数は角度と半径の組でできた固有値で連続ではありません。@〜A〜B〜C〜Dはすべて角度と個数が固有値であってしかもギャップです。このギャップは飛ぶ以外にありませんから飛ぶとします。すなわち「飛び飛び」です。これが「角の量子的性質」の素顔であると言えます。

図θ.a
 このように、最初の 1r は、2r以下とはまるで異なる世界を形成していますので、これを「1r world」と名付けることにしました。それは、1r が特別の世界であって、2r以下とは同じ数学で考えることができないからです。平面円でも球体でも同じですが、波ができるための余白がありません。量の世界では余白が取れないということが、独特の世界をつくることになるのです。
 ではこのギャップはどのようにして飛び越えることができるのでしょうか。この三角を一つの波と考えれば、最初に一つの球があって、それが割れて波となり、波はさらに割れて増えていきます。正三角形は一辺を整数倍で割ることができますから、平面で2乗で増えていきます。2面体は一回割れると8個になりますからそのまま8面体に飛び移ることができるとします。8面体はしばらくの間8面体のまま、各面は平面状態で2の2乗で増えていき、20面体との間で公倍数になったところで20面体へと飛びます。このように波は倍数で増えていきます。
図θ.b
 上の写真は、形紙と鋏と糊の工作で、正三角形の正多面体をつくったものです。中の三つが四面体、八面体、20面体で左に正三角形の裏表、右に正六角形の平面をつけたものです。中の三つを見ても、四面体から八面体に飛び、五面六面七面、それに九面から19面までの正多面体は作ることができないことは容易にわかります。この三つの多面体は半径1rで揃えることができます。このことが「1r world」と名付けた所以です。このワールドの特徴は、余白のない詰めつめの世界だということです。高速道路でも渋滞になると時間と距離で速度を測ることができないのと同じです。このことが単純な四則演算を不可能にして飛び飛びの世界を作っている理由です。普通の計算ができるようになるのは六角平面になってからです。
図θ.c
 本当は完全な平面とならなければ六角になることができません。上の図は1rの中で4面体から20面体まで飛ぶことができるのですが、平面6角形になるにはrが∞にならなければなりません。しかしハチの巣など少々丸みが帯びていても六角を作っていくところを見ると、自然は中心付近では量子的ですが、ある程度広がると「仮想平面」(線型的)とみて波は四方へ六角に広がっていくと考えてよいようです。こうして六角域に来てマクロ領域となり、3次元空間でありながら平面幾何で考えていくことができるようになります。ここから、球面幾何のような非線形世界は、プランク・ワールド(1r world)の世界の幾何であって、マクロの世界に本当にあるのだろうかと言う疑問も出てきます。ですから中心付近は数学的と言うよりも職人的です。自然の職人的要素です。

 

【前頁】【初頁】【次頁】