Patchwork and peaceful hearts(パッチワークとピースフル・ハート)

 PoPULAR PATCHWORK(ポヒュラーパッチワーク、イギリスで出版されているパッチワークの本)に掲載された スーザン・プリスコーさんの記事

                                翻訳:  齊藤 達也

  スーザン・プリスコーは、以前のご近所さん達がイギリスにイギリスへ来てくれた後、大好きな日本の東北地方の小さな町を再び訪れ、キルトグループ、ピースフる・ハートの人々に会いました。

 私がパッチワークとキルトに興味を持ち出したのは、1991年、山形県遊佐町で英語指導助手をしていた時のことです。遊佐町に着いて間もない頃、地元の書店で雑誌『パッチワークキルト通信』と吉田英子さんの『刺し子百科』を買いました。書いてある日本語は読めませんでしたが、そこに載っているキルトの数々が本当に好きになりました。遊佐町でどんなキルトの活動が行われているのかまったく知りませんでしたし、私の隣に住んでいる人が10年もキルトを作り続けていたことや、彼女がキルトのグループを作ろうとしていたことも知りませんでした。
 ほぼ10年後、私は以前のお隣さん、土門玲子さんに再会しました。英国で全国的に行われるジャパン2001フェスティパルのイベントのひとつに参加するため、遊佐町の姉妹都市ストラトフォード・アポン・エイボンに彼女が来ていたのです。キルトグループ、ピースフる・ハートの何人かのメンバーも彼女と一緒で、私たちはストラトフォードであわただしい一日を過ごしました.遊佐町から来た踊り手、歌い手、太鼓秦者達が劇場の外で踊りや歌を披露し、北日本の伝統を生き生きと見せてくれました。遊佐町で暮らした思い出がよみがえってきました。日本からのキルト愛好家たちはストラトフォードのハサウエー・キルターズの方々に会えてとても喜んでいました。この人たちは英国式のアフターヌーン・ティー(午後のお茶会)とキルトの発表会を催してくれました。
 玲子さんは親切にも遊佐町のピースフる・ハートの方々に会いに来るよう誘ってくれました。それで2002年1月に日本に戻ったとき、私たちは素晴らしいキルトを見るために東北地方北部の田圃地方に旅しました。私は友人のマリー・タマコシと一緒でした。彼女はヨーロッパ人と日本人の間に生れました。マリーは以前冬の時期に山形県を訪れたことがあったので、だいたいどんなことが起こるかは知っていました。東京から新幹線超特急で、雪深い山々のわずかに人家がある谷間と深い森を北へ向かって行くと、山形市に着いた時には予定より遅れていました。雪の重みで一本の木が線路の上に覆い被さっていました。ほとんどいつも1分と違わず予定通りに電車が運行される日本では、電車が遅れるということはめったにないことで、車掌はこの事態をどう説明してよいのかわからない様子でした。
 私たちは予定の接続列車に遅れたので、各駅停車に乗りましたが、そのときまったく見
知らぬ人が私たちに近づいて来ました。キルト愛好家同士は長い間知らんふりはできない
ものです。終局彼女はピースフる・ハート・キルト・グループのメンバーだということがわかりました。私が持っていたパッチワークのバッグを見て、私たちが誰であるか推測したのです。彼女はその後何件か携帯電話をかけ、私たちは玲子さんが待つ遊佐駅に到着しました。彼女は私の友人の久美子さんにも電話をしてくれました。私たちは久美子きんのお宅にお世話になったのですが、私たちのために大歓迎会を開いてくれました。

     キルトで始まる1週間
 月曜目はキルトの日に予定されており、午前中に幸先のいいスタートを切りました。玲子
さんと高橋俊子さんが堀恵子さんのお宅に私たちを連れて行ってくれたのです。恵子さんと、姉妹の紀恵子さんは私たちにキルトを見せてくれました。奥にしまってあったものを念入りに見せてもらいましたが、所蔵品の布地には感服させられました。お二人はアンチィークの布地で、たくさんのキルトを作っていました。その布地は家の倉庫にある美しい古い着物を再利用したものでした。お二人はまた地元に古くから伝わる刺し子の専門家でもありました。私たちは様々な布地の由来について話合いました。恵子さんは気前のいいことに、古い布地の何枚かを私にくださいました。その中には恵子さんのお父様が子供の頃に着ていた着物もありました。贈り物としてもらうにはこれはあまりに特別すぎていただけないと思いましたが、恵子さんは着物をあげてもこれと揃いの羽織があるからいいと言ってくれました。いただいた着物を見るたびに、私たちは友人としてこの布地でつながっているのを感じるのです。

     刺し子 今・昔
 お昼を済ませた後は引き続き、鳥海山を囲む手前の山の中にある堀千恵子さんのお宅にお邪魔しました。千恵子さんの自慢は遊佐刺し子のキルトです。何十もの作品が昔ながらの田舎家の居間を飾っていました。アンティークの前掛けから伝統的な作品、新しい作品と全部見せていただきました。
 遊佐刺し子は緻密で小きなパターンに特徴があります。これは、元々はお百姓さんが身に着けるものに保温性を加え、また長持ちするように使われたものなのです。有名な麻の
葉パターンなどの大きなパターンも使われています。千恵さんは、お百姓さんの半纏の複製や、女性用の上着やベストを作っており、それらは私たちみんなが着てみたいと思うようなものでした。彼女はある温泉地を訪れた後に作った新しいデザインを見せてくれ、刺し子のデザインがまだまだ発展していっていることを示してくれました。そのデザインはお風呂の上の天井を飾っていた十字模様を刺し子にしたものでした。
 遊佐町で話されている方言、遊佐弁は標準的な日本語とはかなり違います。私は日本語をあまり使っていないので遊佐弁も決して上手ではありませんでしたが、マリーの日本語は素晴らしいものです。みなさんは努めて標準語で話そうとしてくれましたが、布やキルトの話が興に乗ってくるとどんどん方言になっていきました。私たちはなんとかついていくことができました。それは、キルト用語は万国共通なものだからです。たとえばアップリケなどの用語は日本語でもまったく同じなのです。

     違いに出会うキルト
 その後は遊佐公民館でピースフル・ハートの他のメンバーの方々にお会いしました。ピ―スプル・ハ−トには40人のキルト愛好家がいます。大きな畳の部屋に集まり、素晴らしい作品を見せてもらいました。いくつかのキルトや壁掛けはグレスフォード・クラフト・グループのメンバーから前年の夏に贈られた生地で作られたものでした。グレスフォード・クラフト・グループは私の地元のグループです。古い、日本の伝統的な布を使い立体的な桜の花々をあしらったキルトは驚くほどユニークなものでした。また、よくキルトの題材にされる丸太小屋などでも、古い藍と白の型染めの木綿地に作られるとまったく様変わりして見えるのでした。
これらのキルトがすべて手縫いで作られているということには驚かされっばなしでした。ピースフル・ハートのキルト愛好家たちがミシンを持っていないとかミシンを使えないからとかいうことではありません。手縫いの風合いが好きだからです。裁断は通常アメリカ式では型紙を使います。伝統的な布には手縫いの方が合うと感じています。着物は今でもやはり手で縫われています。パッチワークもまた私たちが普通使うものより小さいモチーフで作られています。たとえば、あるサンプル・キルトは何十枚もの6インチ(約15センチ)角のブロックでできており、緑色の枠と四隅に配した大きめのブロックを用いることで作品に統一感をもたらしていました。

     習うより慣れろ
 ピースフる・ハートのキルト愛好家たちを、先生である玲子さんは、作品のできが良くなるようにきびしく教えることで後押ししています。縫い忘れたところがあれば、経い直させられます。玲子さんの指導で、自ら初心者だという人たちも興味深い作品を制作していました。発表会のハイライトのひとつは、玲子さんのストラトフォード・キルトでした。玲子さんのご主人の退職後、古いネクタイを使いジャコピアンのテーマで複雑なアップリケを作りまLた。ストラトフォード・アポン・エイボンへの旅行で着想を得たものでした。各ブロックの背景は、ちょっと見には小さなプリント柄の集まりのように見えますが、隠し針を使い緻密に刺された遊佐刺し子です。 
 玲子さんは遊佐刺し子をパッチワークと融合させたキルト作品をもっと沢山制作したいと言っています。遊佐刺し子をキルトに興味を 持つ人たちにより広く紹介することで、より多くのキルト愛好家が刺し子のことを知り、 その伝統を取り入れたいと思うようになることを願っているのです。この楽しい成り行き を私たちは見守っていくべきだと思います!玲子さんはグループの人たちの作品を近い うちにイギリスで展示することを計画しています。
 日本に向かう飛行機に乗る際に、荷物の重量超過を避けるため、私たちが日本の友人た
ちにあげようと思っていた布地のいくつかを置いてこなければなりませんでした。そのた めリバティプリントのローンは私たちがロンドンに戻ってから郵送しなければなりませ んでした。今回の旅行の間、私たちはとても沢山の布地を贈り物としていただいたため、 同じ問題が発生し、その布地を郵便局から自宅に送らなければならなくなりました。その 布地を使って新しいキルトを作るのが今から楽しみです。更に、私たちのキルトの国際的 交流が深まることも期待しています。今回の日本への訪問は、私たちが地球のどこにいて もキルトで通じ合えるということを改めて証明してくれました。


 土門玲子さんの作品 Japan Festival 2001 in Stratford 含むピースフル・ハートのメンバーの4作品がグレート・ノーザン・キルト展で見ることができます。
またスーザンによってピースフル・ハートのメンバーの作品(刺し子とパッチワークを組 合せたもの)が、10月10日から13日の間、ロンドンのアレクサンドラ・パレスで展示 されます。