玉井彰の一言 2007年6月 四国の星ホーム一言目次前月翌月

2007/6/30(土) ニートは役に立つ・・・顔出せ、声出せ、元気出せ!

学習もしなければ職探しもしない。困りものの代名詞のようになっているニート。彼らは、真面目さ故に「迷宮」に入っているのではないか。そんな気がします。

【ニート8割「働きたい」 でも6割が「対話は苦手」】(朝日)
仕事も通学も職探しもしていない「ニート」と呼ばれる若者の約8割が「社会や人から感謝される仕事がしたい」と感じていることが、厚生労働省による初の実態調査でわかった。一方で、「人に話すのが不得意」が6割を超えるなど、対人関係への強い苦手意識が就職活動などに二の足を踏む原因になっていることが浮き彫りになった。 

ニートは社会とのつながりが薄く、実態の把握が難しかった。今回の調査は、厚労省のニート支援事業に参加した35歳程度までの約860人を対象にアンケートや面接で実施した。 

一般にニートは就労意欲が低いと思われがちだが、全体の82%が「社会や人から感謝される仕事がしたい」と回答。「どこでも通用する専門技能を身につけたい」が80%、「仕事をしてないとうしろめたい」も82%だった。これまでに「1カ月以上の就労経験」がある人も79%を占め、正社員経験がある人も19%に及んだ。 

一方で、就職活動で問われる能力について不得意かどうかを尋ねると、「計算」(42%)や「人の話を聞く」(34%)などに比べ、「人に話すのが不得意」(64%)が突出して多かった。 

生活行動の苦手意識についての質問でも、「職場で友達をつくる」ことや「上司から信頼される」のが「難しい」「やや難しい」という答えが64%を占める。「学校でのいじめ」(55%)や「不登校」(37%)の経験者も多かった。 

同省の担当者は「声の出し方や話し方から訓練し、少しずつ対人関係に自信をつけてもらえるような支援策が必要だ」と分析している。 

【コメント】
要は、コミュニケーション能力に問題があるということです。これは、本人からすると克服困難な課題のようですけれども、見方によっては簡単です。

「声の出し方や話し方から訓練し、少しずつ対人関係に自信をつけてもらえるような支援策が必要だ」という厚労省の担当者の意見は、その通りだと思います。

ほんのちょっとしたバグ(ソフト上の欠陥ないしは問題点)があるだけだと考えれば、ニートは貴重な「人的資源」です。

地方自治体が、10人単位でボランティア職員として採用すればいいのではないでしょうか。「飯は食わすよ」という程度でいいでしょう。過疎化著しい町村に若者が滞在し、じっくり腰を落ち着けて課題克服に取り組む。簡単な作業はやってもらいます。田舎では、充分な戦力になります。

コミュニケーション能力向上のための講習は必要です。それほど難しく考える必要はありません。まず、村の寄り合いやイベントなど、色々なところに顔を出し、大声が出せるような練習をし、一言何か言う練習をするのです。そのような訓練を通して、少し元気が出てきたな、ということを実感できれば、展望が開けるでしょう。

彼らは、自分の中にいっぱい言い訳をつくり、自らハードルを高く設定して、自分で躓いています。「転地療法」で「舞台」を変え、新たな「役柄」を発見すれば、好ましい「自分」に出会えるのではないでしょうか。


2007/6/29(金) 憲法9条・家庭版・・家庭内平和主義の薦め

私はここ12年間、家庭で怒ったことがありません。外では、局面によっては怒ってみせるパフォーマンスも必要ですが、家庭では黙って尻に敷かれる日々を送っています。

あるとき、家庭で怒っても何の意味もないことに気付きました。元々、それほど怒ったりする性格ではないのですが、敢えて「怒らない」という誓いを立て、実践してきました。

家庭内平和主義ないしは憲法9条・家庭版とでも言いましょうか。これを実践する中で分かったことは、女性には旦那しか怒る相手がいないのだということです。子供のいる家庭では、子供を叱ることが可能ですが、子供のいない我が家では亭主である私しか叱る相手はいません。

それはちょっと不条理ではないかと思いながらも黙って話を聞き、また頷いていると、そのうち妻の怒りも収まってきます。冷静に聞いていると、相手の言い分がもっともなものにも思えてきます。

平和主義がもたらす効用とは、無用な紛争による疲弊を防ぎ、判断の冷静さを失わないでいられるということです。私の場合妻から、「欠点は沢山あるけど、怒らないのだけは立派だ」という妙な評価をもらっています。

平和主義者・宮沢喜一死去。保守本流であり、軽武装・経済重視の彼は、クールに先を見通すことが出来る、バランス感覚ある政治家でした。宮沢氏の後、頭の悪い総理が続々と誕生したので、怜悧な総理大臣・宮沢喜一氏が懐かしくなります。彼にもう少し決断力があれば…。合掌。


2007/6/28(木) 駆け抜けた美しき伴走者・・坂井泉水さん

多くの人が衝撃を受けました。ミステリアスなボーカルの、ミステリアスな死。その歌声と前向きな歌詞に励まされた人たちが、数多く集まりました。

【ZARD・坂井さん「音楽葬」 4万人超すファンが別れ】(産経) 
どんなに離れてても心はそばにいるわ−。ヒット曲の歌詞そのままに、ファンの心は彼女に寄り添っていた。子宮頸(けい)がんを患って入院中に急逝したZARDの坂井泉水さん(享年40)をしのぶ会が27日、東京都港区の青山葬儀所で営まれ、4万人を超えるファンらが詰めかけた。訃報(ふほう)からの1カ月間に、ZARDのCD売り上げは計100万枚を突破した。メモリアル人気は、さまざまな人に“応援歌”を届けてきた坂井さんへの、ファンからの恩返しかもしれない。

当初は午後7時までとされていたしのぶ会は、集まったファンの多さに2時間延長された。祭壇には愛用のヘッドホンやマイクなどが置かれ、録音スタジオの雰囲気。譜面台にはヒット曲「負けないで」の直筆歌詞ノートが広げられ、歌詞を潤んだ目で追うファンの姿が見られた。ライブ映像が流される大画面のモニターの前でうずくまって泣く人も。

深夜から並んだという静岡県磐田市の男性会社員(40)は「親しみやすさが好きだった。もう一度、生でライブを見たかった」。父親もファンという埼玉県春日部市の女子中学生(14)は「授業があったが、お父さんが『特別なことだから行ってきなさい』と送り出してくれた。ショックだけど、坂井さんの分まで頑張って生きます」と話した。

思慕の深さは、CDやDVDのセールスに反映されている。オリコンの週間アルバムランキングでは、ZARDのベストアルバムが訃報の後、4週連続でトップ3入り。DVDも2枚がランキング上位に急浮上した。

「高校時代に励まされ、勇気をもらった。きょうは『さよなら』よりも『ありがとう』と言いたくてやってきた」

仕事を休んで駆けつけたという茨城県取手市の男性(30)がそう話したとおり、坂井さんの歌は、多くの人の背中をそっと押してきた。会場を訪れたのは、90年代にリアルタイムで聴いたZARD世代だけではなかった。いまひとつ元気がない世の中だからこそ、訃報を機にZARDの応援歌が再び人々の心を揺さぶった。

3枚の追悼アルバムが8月から秋にかけて発売されるほか、DVDや写真集の発売も決定。9月には坂井さんゆかりのミュージシャンが集う追悼コンサートが大阪と東京で予定されている。

【コメント】

「負けないで!」

苦しんでいるとき、もう投げだそうと思っているとき、傍らで励ましてくれる。そんなシチュエーションを想像します。

  負けないで もう少し  
  最後まで走り抜けて
  どんなに 離れてても  
  心は そばにいるわ
  追いかけて 遙かな夢を 

美しい伴走者は、その言葉を多くの人に残して、駆け足で去っていきました。

励ましの 言葉残して 駆け抜けし 美しき影 花集う園


2007/6/27(水) 社保庁労組のコメント・・バランス感覚ある対応への第一歩

設問:「公務員とは何か。」

「24時間型市民である。」が、 私の「解答」です。公共的な使命感を胸に抱いて公務員になる。これが公務員の基本です。

公務員の労組は、労組員の生活を守るためのものです。しかし、公務員としての活動は市民の支持を得てのものでなければならず、個々の公務員が労働者としての権利を維持するためには、公務員の活動に対する国民・市民の共感がなければなりません。その自覚に欠けていたのが、旧国労でした。

年金記録漏れが国民の動揺を招いている現在、労組がどういう対応を取るかが注視されています。その中での、社保庁労組のコメント。

【賞与の一部返納方針、社保庁労組が容認】(読売)
社会保険庁の労働組合「全国社会保険職員労働組合」(前・自治労国費評議会)は26日、政府が同庁の全職員の賞与一部返納を求めていることについて、「様々な事情により自主返納に応じることができない職員に一切の不利益を及ぼすことがないことを前提に、職員として重く受け止め、積極的に応じるべきだ」とのコメントを発表した。

【コメント】
労組としては、苦渋の決断でしょう。

「やむを得ない」からもう一歩前進して、「我々は24時間型市民である」というところまで進めば、国民の支持を得た労働組合が出来上がります。

「公務」とは、労働ではなく、使命の遂行である。そうした観点から労働組合を再定義・再構成することが、公務員の地位向上につながる道です。

社保庁労組のコメントは、バランス感覚ある対応への第一歩として評価できます。あと一歩。消極的受認ではなく、積極的な支持拡大戦略に転じて欲しいと思います。


2007/6/26(火) 賞与返上は、政権の醜悪さを浮き彫りにする・・年金記録漏れ問題

いくらでも金が湧いてくる安倍晋三氏と、生活に追われる社保庁職員とが同じ土俵で責任を取る。「賞与返上」と聞いて、その点のアンバランスを感じました。

社保庁職員にも当然ながら責任があります。それを前提としても、責任の取り方のバランスに問題があります。

【社保庁全職員に賞与返納要請、5〜50%・10億円規模】(読売)
政府は25日、年金記録漏れ問題の責任を取るため、社会保険庁の全職員約1万7000人に6月の賞与(ボーナス、期末・勤勉手当)の一部の自主返納を求めることを決めた。

厚生労働省によると全体の返納額は10億円規模になる見込みという。

また、安倍首相と塩崎官房長官、柳沢厚生労働相がボーナスの一部を返納するほか、厚労省の副大臣、政務官、村瀬清司・社会保険庁長官ら幹部もボーナスを返納する。

社会保険庁の村瀬長官は25日夜、記者会見し、自身の夏のボーナス全額(約270万円)を返納し、約1万7000人の同庁全職員にも、20分の1から2分の1の自主返納を呼びかけることを明らかにした。歴代の厚労次官、社保庁長官らにも現役職員の返納額と同程度の金額を国に寄付するように求めるとしている。厚労省では、副大臣2人、政務官2人が議員歳費分を除く全額、次官が全額のほか、幹部職員や社保庁勤務経験者からの返納を決めた。

また、首相の返納について、塩崎官房長官は25日の記者会見で、ボーナス総額約536万円のうち、約234万円を返納すると発表した。首相のボーナスのうち議員歳費分(約302万円)は公職選挙法の寄付行為の禁止に触れるため返納できないことから、法律上の上限に当たる首相としての特別職分約234万円全額を返納することとした。234万円のうち約161万円は行政改革の一環として昨冬のボーナスから自主返納しているもので、今回、新たに追加して返納するのは約73万円になる。

塩崎長官は総額約396万円のうち議員歳費分(同)をのぞく約94万円を返納し、今回の追加分は約54万円、柳沢厚労相は約51万円を追加して約90万円を返納する。

安倍首相は25日夕、首相官邸で記者団に対し、自主返納を決めた理由について「国民の皆さんが社会保険庁の対応に怒りを感じている。私も率先垂範という意味でけじめをつけなければいけないと判断した」と述べた。

【コメント】
こういう責任取り方があることについては否定しません。

しかし、社保庁一般職員の賞与の10%と安倍総理の234万円とのバランスが取れているのかと言えば、いささか疑問です。

安倍内閣の姿勢は、悪いのは社保庁職員であるが、彼らにだけ責任を取らせるのも不自然だから、自分たちも賞与返還に同調するということに過ぎません。

発想が根本的に間違っています。責任はトップにある。これが社会常識です。ある会社に不祥事が起きたとき、労組が悪い、従業員が悪いと叫き立てる社長がいたとして、顰蹙(ひんしゅく)を買うことは必至です。

労組や従業員が悪いとしても、そうさせたのは経営の責任です。経営がしっかりしていれば、労組や従業員の我が儘を許すことはありません。

政府と社保庁職員との関係を考えても、これまでの数十年間、経営側である政府がしっかりしていれば、不祥事を防止できたはずです。この責任から目を背けるべきではありません。

もっと突っ込めば、政府や自治体が官僚組織や労組と結託して利権を貪り尽くしたというのが、これまでの政治ではなかったでしょうか。そこで生まれた腐敗堕落と倫理の退廃が、今日の事態を招いたと考えなければなりません。

そう考えてみると、根本的な責任はここ数十年の政府にあります。この点に目を向ける限り、内閣の責任がどうであるかが最大のポイントになります。歴代政府を代表して責任を取るという面と、安倍内閣独自の責任が問題になる面とがあります。

そして、年金の記録漏れが膨大であることに政府が気付いたのが昨年末であり、認識を持ちながら迅速な対策を取ることを怠ったことを考えると、政府の責任の取り方は、結局、内閣総辞職ということになるのではないでしょうか。それが、歴代政権の責任と安倍内閣の責任との総和になります。

社保庁職員の賞与返還に対応して、内閣は総辞職でもって責任を取る。これなら納得です。

安倍総理の「率先垂範」という言葉があまりにも安っぽく、むしろ、金持ち政治家の安易さと政権の醜悪さとを浮き彫りにしてしまう効果しかないように思えます。


2007/6/25(月) 不支持率が凄い・・安倍内閣での「実績」は評価されにくい情勢

共同通信社の世論調査で、内閣支持率が最低を更新しています。特に問題なのは、不支持率の急増です。「消えた年金」問題についての「対策」を出し、支持率回復を図った3週間で9%も不支持率が増えるというのは、政権末期の様相というべきでしょう。

【内閣支持率33%、最低更新 63%が「年金」重視】(共同通信) 
 共同通信社が23、24両日、7月の参院選での有権者の動向などを探るために実施した全国電話世論調査(第1回トレンド調査)で、安倍内閣の支持率は33・5%と、今月1、2両日の全国緊急電話世論調査よりさらに2・3ポイント下がり、昨年9月の内閣発足以来の最低を更新した。不支持は9・0ポイント急増、57・7%と初めて過半数に達し、安倍晋三首相にとって、極めて厳しい結果となった。

 参院選で重視する問題としては「年金」が63・4%と、「教育」の23・4%など他の回答に比べ、突出して高くなった。年金記録不備問題への政府の対応に、有権者が強い不満を抱いていることが浮き彫りになった。 参院選で投票する政党や候補者では、民主党が選挙区で22・0%、比例代表でも22・1%でトップ。自民党は選挙区で21・4%、比例代表で19・8%にとどまった。比例代表の投票先では、公明党4・9%、共産党3・1%、社民党1・2%、国民新党0・6%、新党日本0・3%。「まだ決めていない」が42・0%だった。

 参院選への関心度を尋ねると、「大いに関心がある」「少しは関心がある」が計72・7%と、有権者の意識の高さをうかがわせた。

【コメント】
この支持率と不支持率を背景にして、延長国会での「実績」を安倍内閣が誇示したとしても、「アリバイ工作」という以上の評価は得られないと思います。

公務員叩きを行うことで世論に訴え、マスコミの力も借りて流れを変えたいところですが、手遅れの段階に入ったのではないでしょうか。

安倍氏がリーダーシップを強調すればするほど、ぎこちなさだけが目立ちます。小泉総理の場合はマスコミへの露出が支持率に結びつきました(それでも3年前は苦戦)が、安倍氏の露出はむしろマイナスに作用する可能性大です。

嫌われてしまった男のプレゼント攻勢で形勢が変わることはないというのが、恋愛における「定理」です。嫌われてしまった政権の「実績」が選挙に与える影響は、小さいと思います。


2007/6/24(日) 大仁田氏の「失望引退」とタレント候補戦術

直情径行、ということなのでしょうか。タレント候補独特の潔さを感じます。政治家としてやっていくしか選択肢のない人間には出来ない行動です。しかし、政治家としての原理原則からは大きく逸脱していると思います。

タレント候補を担ぐ選挙手法についても一考を要します。

【参院選:大仁田氏“失望引退” 政党の集票手法に一石】(毎日)
参院選に比例代表で出馬予定だったプロレスラー出身の大仁田厚参院議員(自民)が23日、1期限りでの引退を表明した。個人名でも投票できる「非拘束名簿」方式が初めて導入された01年の参院選では各党が著名人擁立に躍起となり、大仁田氏のほかタレントの大橋巨泉氏(民主)、大学教授だった田嶋陽子氏(社民)も当選したが、いずれも政党への失望を口にして既に国会を去っている。自民党は大仁田氏に代わり「ヤンキー先生」で知られる義家弘介氏(36)を擁立する方針だが、著名人で集票を図る手法が改めて問われそうだ。

同日記者会見した大仁田氏は「参議院は首相官邸の人気取りの道具ではない」と切り出した。

引退の直接の理由は、安倍政権が主導した今国会の会期延長と、参院選の日程先送りに対する抗議だと説明。「国民が求めているのは付け焼刃で法案を通すことでなく、慎重審議だと思う。選挙目当てにウソをついてまで当選したくない」と強調した。

また、参院の存在意義について「3年くらい前から悩んでいた」といい、「衆院から降りてきたことをそのままやっていく。今回もそうだが『ハイ、そうですか』で通してしまっていいのか」と疑問を投げかけた。

01年選挙では個人名で46万票を獲得したが、「タレント議員」としての迷いもあったようだ。

「何百という選挙区に応援に行った。それがタレント議員の仕事みたいなもの。(テレビに映る)僕の映像は(審議が荒れた時)いつも委員長を守る場面ばかり。レスラーという偏見を打ち破ろうとしたが、自分の勉強不足を痛感することもあった」と語った。

一方、41万票を獲得した大橋氏は、民主党への不満が膨らみ、02年1月に議員辞職した。会見で「党が自民党と同じ体質と知り、力が抜けた。6カ月で辞め、無責任なタレント議員というバッシングも覚悟している。出馬は後悔していないが、民主党から出たことは後悔している」と党批判を展開した。

田嶋氏は51万票を集めたが、北朝鮮問題での党の対応などに不満を募らせ、02年10月に社民党を離党。会見では党について、「外で抱いていたイメージと違う。透明性もなく、説明責任も果たしていない」と批判した。03年4月の神奈川県知事選に出馬(落選)。「知事は小さな大統領。党を離れた時からずっと首長になりたかった。国会はリズムが合わず、窒息しそうだった」と語った。【日下部聡、渡辺暖】

【コメント】
タレント候補で集票を図る。安易な手法であることは明白ですが、1回1回の選挙では効果的であるが故に捨てきれない戦術なのでしょう。

知名度というのは、政治において最も有力な資源です。無名の人物が有権者の多くに名前を知ってもらい、覚えてもらうためには、途方もない努力が必要です。政治活動費に換算すると何千万円、あるいは何億円という価値があります。

そういう価値ないし資源を最初から有している人物を担げば、極めて効率の良い選挙運動が可能です。

そういう手法を厳しく批判する人がいたとしても、より多くの有権者が選挙に関心を持ち好きな有名人に投票する形で政治参加することの方が、政党にとって、大きなメリットとして映るのでしょう。

また、「有名人」はその世界でそれなりの努力をしたからこそ世間が認知しているということを考えれば、その努力を政治の世界で役立てればそれなりの成果が期待できるという論法も成り立ちます。政治が普通の市民の感覚に合致する必要があることを考えても、「素人」を馬鹿にする態度は戒められるべきです。

しかし長期的に見れば、有名人戦法は政治への信頼を傷つけます。政治家としてやって行くには、専門的な努力が必要です。組織人としての忍耐力も要求されます。そうした努力なしに議員になると、安易なパフォーマンスでしか有権者にアピールできない素人政治の弱さが露呈されることにもなります。

大仁田氏の行動は、潔さの反面で、清濁様々な要素を噛みしめながら前進するという政治家としての根本的素養である努力・忍耐に欠けるものだと思います。安倍内閣への批判は的確であるとしても。

政党も、手っ取り早い「ドリンク剤」に頼るのではなく、地道な努力を尊ぶ政党政治の王道を歩むべきだと思います。

《独言》
世論調査で候補者の認知度や支持率の動向を調べ、それを候補者査定の重要な基準としているのが現在の政党です。そのやり方からすれば、有名人は超エリートになります。

都市部の戦術としては、査定基準を単純化しても構わないと思います。しかし、田舎で土着政治と戦うためには別の基準が必要であるというのが、私が2年間民主党の総支部長を経験しての実感です。


2007/6/23(土) 内閣総辞職→新総理による衆参同日選挙・・この作戦でしか自民勝利はない

近年の参院選は、風が吹き始めると止まらず、劣勢に立った側は「怒濤の寄り」をかわすことができません。

投票期日が1週間延びたくらいでどうにかなると考えるのは、甘いと言うべきでしょう。むしろ、党利党略で選挙期日を延期し、各地域の様々なイベントに影響を与えることに対する反発の方が怖い展開です。

平成11年の愛媛県知事選挙で、現職が新人に追い込まれた挙げ句、(選管が)1月3日という投票日を選んで低投票率に持ち込もうと策したことから、有権者が憤激したことを想起します。結果、新人(加戸守行氏)が圧勝。

現在の情勢は、「もはや『安倍』では戦えない」というところまで来ています。囁かれている衆参同日選挙の場合でも、「安倍内閣」ではリスクが大きすぎます。

自民党が勝つためには、年金問題の責任を取って内閣総辞職を行い、新たな「顔」で国民に信を問うしかありません。参院選だけでは、「政権選択」の緊張感がないので流れを止められません。内閣総辞職→新内閣による衆参同日選挙のシナリオです。

「<被保険者台帳>社保庁が83万件廃棄 バックアップせず」(毎日)。「<年金記録漏れ>昨年暮れから今年初めに首相認識 答弁書」(毎日)。

こんなニュースを見ていると、「賞与返上」などで済む状況ではないように思われます。今の自民党には安倍氏を降ろせるような剛腕ないしは策士がいないと思われるので、安心して「提言」しておきます。


2007/6/22(金) 狂気の権力・・安倍晋三型・ピリピリ保守の断末魔

3年前から、安倍政権を予想しつつ「ピリピリ保守」という言葉を使っています。余裕のない保守主義。親父の代にあった平和と寛容の精神を喪失した保守政治を指して使っています。その代表者が安倍晋三氏です。

過去のブログを再掲します。

【安倍晋三型・ピリピリ保守の時代】(2006/6/21)

四国の星HP、玉井彰の一言(2004年4月22日)を再掲します。

【[安倍晋三型・ピリピリ保守](2004/4/22) 
安倍晋三・自民党幹事長の記者会見をテレビで見ていると、常にピリピリした感じが伝わってきます。厳しい論調が多いようですが、伝わってくる周波数に余裕のなさが感じられます。幹事長の重責に実力がついていかないということもあるでしょうが、思想的な包容力がないということもあるように思います。

元来の自民党は、陽性で自堕落でおおらかな政党だったように思います。「清濁併せのむ」といった、いい加減な処世術を本旨とし、現実的で中庸を好むスタンスでした。

今回のイラク人質事件を通して思うのは、現政権幹部の、特に世襲議員の偏狭さです。彼等の親父さんは、辛く悲しい戦争体験もしながら、他方で汚職(まがいのこと)や、「英霊達」には顔向けできない諸々のこともしながら、靖国神社で拝礼をしていました。大いなる矛盾を抱えての政治でした。

戦争のことを思い出すと涙ぐんでしまうような親父達の時代が終わり、倅(せがれ)達は、親父の引いた路線を順調に歩みました。しかも、颯爽(さっそう)と。親父達の薄汚さはなくなりましたが、「情」も失いました。彼等が中心となる政権の怖さは、自らはリスクを負わずに出世しながら、嫌いな国民には「自己責任」を説くアンバランスにも表れています。

寛容の精神なき、ピリピリ保守の時代がやってきました。政権交代なき中選挙区型保守政治家と政権交代の悪夢にうなされる小選挙区型保守政治家の違いなのでしょうか。右肩上がりの時代と右肩下がりの時代の違いなのでしょうか。政権末期を示す一断面のようにも思えます。】 

【コメント】(2006/6/21)
選挙に不安のない政治家には、良い点があります。目先のことにとらわれず、天下国家について常にじっくりと考えることができるということです。その利点を生かし、思想を充実させ、国家百年の大計を誤らぬ政治を目指していただきたいものです。

しかし、小人閑居して不善を為すのが世の習い。親や祖父の七光りで、リスクなく地位を得た政治家がいかに薄っぺらなものであるかを身をもって示しているのが、次期総理最有力候補・安倍晋三氏です。テレビの脚色で、なんとか体裁が整っているようではありますが。

余裕のない、しかも「左翼コンプレックス」のない保守主義、自制する思想・理念を持たない、無反省かつ傲慢な政治が力を得ることで、この国の将来に暗雲が立ちこめてきました。

様々なスキャンダルも噂されています。統一協会合同結婚式への祝電のニュース。祖父、父から譲り受けた政治資産のなかにある「不良債権」ないしは「不良資産」が躓きの下になる可能性があります。

それ以上に、「より軽薄な小泉」がさらに数年、国民から支持され続けることは難しいだろうと思います。この点は、自民党有志の懸念されている通りです。

【本日のコメント】
地方自治体や各種団体が様々な行事を予定している7月29日に参議院議員選挙が行われようとしています。

衆議院優位の発想で参議院に審議を無理強いする政権与党。参院選での劣勢を挽回するために地方自治体に余分な出費を強い、各種の行事を台無しにする政治。

国会における民主主義も風前の灯火となっています。強行採決に次ぐ強行採決。それに対する抵抗は、「登院停止」という手段で弾圧。

全て、寛容の精神なき安倍晋三型・ピリピリ保守政治の帰結です。幼稚な権力者の「御乱心」に対し、自民党内でも不協和音が生じています。参院選は、自民党にとってかなり厳しいものになります。

唯一の打開策が、衆参同日選挙ということになりつつある情勢です。その度胸が安倍氏にあるか。小泉氏のように、一言で決める言葉を持っているのかどうか。

ピリピリ感だけが漂っています。安倍政治、断末魔の様相でもあります。


2007/6/21(木) 「苦労知らずの仲良し官邸団」・・自民・鴻池氏の批判

鴻池祥肇・元防災相がメルマガで官邸批判。波紋を呼びそうです。「言いたいこと言い」のオッサンではありますが、参議院自民党の空気を代弁しているようにも思えます。

参議院では、党派を超えたまとまりがあると言われています。衆議院優位の発想に対する反発に起因するようです。

【「苦労知らずの仲良し官邸団」 鴻池氏が官邸批判】(朝日)
「苦労知らずの『仲良し官邸団』の諸君よ。参院は官邸の下請けと違うんやで」 

鴻池祥肇元防災相が20日付のメールマガジンで、国家公務員法改正案を参院に送った首相やその周辺を批判した。鴻池氏は同法案を審議している参院内閣委員会の筆頭理事。最前線の「反乱」は波紋を呼びそうだ。 

鴻池氏は同法案の意義は評価しながらも「日程的に100%不可能な法案を無理に参院へ送って成立させよ、選挙の日程も変更してでもとは……」と絶句。「会期延長した時は2回とも大敗してるんや。これぐらいの事、知っときや」。 

鴻池氏は05年夏、郵政民営化法案に「死ぬまで筋を通す」と語り、反対票を投じた。だが、総選挙後の秋の国会では「小異を捨てる」と賛成に転じた経歴がある。 

【コメント】
安倍内閣が期待されて出発しながら支持率を下げてきたのは、安倍氏とその周辺の方々が苦労知らずのお坊ちゃんで、人間として薄っぺらであることが国民に見えてしまったことにあります。

一応底を打ったかに見えた支持率が急落したのは、年金という国民の最も関心を持つテーマで政治不信が起きたということです。松岡農水相の自殺に象徴される「政治と金」に関する不明瞭な姿勢が不信感をより強めました。

苦労人であれば、年金問題について国民と共に悩む姿勢を取ることで、国民の共感を得ることが可能だったと思います。しかし、実力不相応に「リーダーシップ」を追い求めるあまり、泥縄法案を強行採決するなど、安っぽい対応に終始してしまいました。

「受けて立つ横綱相撲」だったはずの自民党が、「張り手一本」のうわずった相撲しか取れなくなりました。「あいつが悪い。此奴がもっと悪い」という、幼稚なチルドレン政治に嫌気が差している自民党議員が多数であろうと思われます。

「政変期待組」の動向が気になるところです。


2007/6/20(水) 会期延長で「燎原の火」を消せるか・・拙劣な政府・与党幹部

年金不信という燎原の火が勢いを失う気配がありません。このまま突き進めば参院選惨敗ということになりそうなので、政府は国会の会期を延長して参院選の投票日を1週間ずらし、「人の噂も75日」作戦を決行することにしました。

熱しやすく冷めやすい国民性を利用して政局の動揺を収めることができるかと言えば、それは極めて難しい情勢だと思います。政府・与党の姿勢がブレまくっており、国民が納得し、かつ信用できるようなパフォーマンスが示されていません。

ゆったりした人物が登場して、「これは歴代自民党政権の責任だと思います。国民の皆さんに心からお詫びします。不条理に泣く人が出ないよう、万全の対策を講じます。即効性のある対策と、根本的な治療とを同時進行で行います。どうか、国民の皆さんには政府を信じていただきたい。」と繰り返していけば、国民の心も和らいでくるはずです。

ところが実際には、情報を小出しにして野党に先を越されるだけでなく、あろうことか幼稚な責任転嫁をして「菅直人が悪い。自治労が悪い」という、出来の悪い二代目三代目社長のような対応しかできませんでした。テレビに登場する幹部が、何を言っているのか分からないような早口で、ペラペラと一方的にしゃべりまくると、不信感が収まるどころか、こんな連中で大丈夫かという新たな不信感が芽生えます。

自民党政権の黄昏れというべきなのでしょうか。安倍内閣に危機管理能力なし。即ち、政権担当能力がないということを天下に示し続けた、このところの政局です。党内には限られた人材しかいないのに、それを結集することができないのが安倍政権の致命的弱点です。

この状態で選挙期日を引き延ばし、「公務員用ハローワーク」を創って公務員制度改革だと言い張っても、焼け石に水だろうと思われます。「野党の攻撃時間」が延長されたという意味しかありません。追い込まれて、やぶれかぶれの衆参同日選挙、という展開も見えてきました。


2007/6/19(火) 今回参院選は、「安倍晋三」に対する国民審査になる・・支持率依然低迷

朝日新聞の世論調査がでました。依然支持率低迷。不支持率が50%を超えました。

今国会は異常です。多数の横暴がこれほど顕著であったことは、私の知る限りありません。次々と強行採決で法案が成立。小泉政権下で得た衆議院の絶対多数を活用しての暴挙です。「問答無用」の政治が横行しています。

選挙を経ていない総理大臣が、前総理の「遺産」を食い潰しつつ政権維持に狂奔する姿は、国民から見て「美しい国」であるとは実感しにくいのではないでしょうか。

【内閣支持32% 不支持51% 本社連続調査】(朝日)
参院選に向けて朝日新聞社が16、17の両日実施した第6回連続世論調査(電話)で、安倍内閣の支持率は32%(前回34%)と、3週続けて30%台前半に低迷した。不支持は51%(同48%)で、初めて5割の大台を超えた。年金記録問題への対応や、公務員制度改革に対する批判は強く、「身内」の自民支持層にさえアピールできていない状況が浮かぶ。

安倍首相は年金記録の問題について「最後の一人に至るまでチェックし、年金はすべてお支払いする」と決意を示した。この発言を「信用できる」は25%、「信用できない」が67%で、広がった不信をいっこうに解消できていない。自民支持層でみても「信用できる」48%に対し「信用できない」は39%にのぼった。自分の年金記録を調べてみようと思うかどうかでは「調べてみようと思う」45%で、「すでに調べた」17%を合わせると6割以上になる。なかでも年金受給直前の50代は合わせて8割を超す。 

今国会の大詰めで安倍首相が力を入れる公務員制度改革。国家公務員の再就職のあっせんを、新しく作る人材バンクに一本化しようとする政府案が、天下りの弊害をなくすために「有効だ」は23%にとどまり、「有効ではない」が59%を占めた。自民支持層でも、ともに38%と並び、評価は高くない。 

一方、民主党は役所による再就職のあっせんを全面禁止する案を出している。政府案と民主案のどちらがよいか尋ねたところ、「政府案」12%、「民主案」42%、「どちらもよくない」31%で、民主案に軍配が上がる。自民支持層でさえ政府案は29%で、民主案30%とほぼ同じだった。 

「いま投票するとしたら」として聞いた参院選比例区の投票先は民主26%、自民23%、共産4%、公明3%、社民2%。2週続けて民主が自民を上回った。 

〈調査方法〉 全国の有権者を対象に「朝日RDD」方式で電話調査した。対象者の選び方は無作為3段抽出法。有効回答1041人、回答率59%。連続調査は5月12、13日から毎週末に実施している。 

【コメント】
衆院懲罰委員会(横光克彦委員長=民主)で、年金時効特例法案の衆院厚生労働委員会での採決の際に桜田義孝委員長(自民)を羽交い締めにして委員長席から引き離した民主党の内山晃議員に対し、与党の賛成多数で「登院停止30日」の処分が決まりました。

与野党の意見が折り合わないため、開会を見送ろうとした横光委員長に対しても、与党が不信任動議を提出。これも可決される異例の事態となっています。 

与党は「内山氏の行為は憲政史上ない暴力行為」としていますが、殴ったわけでもなく、発端は与党が強行採決したためであることを考えると、内山氏の行動が懲罰の対象になること自体が異常です。与党の考え方は、議員は無抵抗で強行採決を見守れというのに等しいものです。 

国会とは何のためにあるかということが、今の与党政治家には理解できていないのではないでしょうか。選挙の結果が全てであり、多数党の意見が機械的に法案として成立するのなら、個々の国会議員の見識など発揮しようがありません。採決ロボットのような与党議員に、ナチスの親衛隊の姿がダブります。

2005年の郵政選挙は、「国民に郵政民営化是か非かを問う」としてなされたものです。その他の項目は白紙委任に等しい形で小泉政権が信任されました。そのとき得た議席が、憲政の常道を逸脱した形で荒れ狂っています。

かつての自民党は、気が長すぎるのではないかと思えるほど野党の意見を聞きました。今の自民党にその余裕はありません。日曜日のサンデープロジェクト(テレビ朝日)で、自民党・大村秀章氏が年金問題について民主党・長妻昭氏と討論していました。大村氏が一方的にまくし立てる姿は、カウンセリングが必要なのではないかと思えるほど異様でした。先日の自民党参院幹事長・片山虎之助氏と同様、完全に浮き足立っています。

彼らの上に異様なリーダーがいるということでもあります。何かの折りに安倍総理が自らを「最高権力者である」と言っているのを聞き、耳を疑いました。歴代総理でこんなことを言った人物がいたでしょうか。自信のなさを打ち消すための強硬姿勢ではないかと思う反面、権力を手にするには器が小さ過ぎる人物ではないかという疑念を持ちました。

権力を握ってはいけない人物が、選挙を経ずに「最高権力者」になってしまったのではないか。そのことを考えると、参院選の最大のテーマは「安倍晋三」の国民審査になると思います。彼の「総理適格性」が真の争点です。


2007/6/18(月) 「精密農業」こそ、日本の進むべき道・・自民党型農政は国を滅ぼす

農業政策についても、参院選で議論を深めていただきたいと思っています。

自民党が進めようとしている農政は、大規模農業へのシフトチェンジです。これに対して民主党の農政は、所得補償をベースに小規模農業を維持するものです。

我が国の農山漁村は、小規模・大規模、専業・兼業と、様々な形で営まれており、伝統文化や環境を守り、良好なコミュニティを維持する基盤となっています。したがって、たとえ小規模であっても生産が続けられ、自立した生活が送れるように、総合的な農山漁村振興政策を実施する必要があります。地域社会を守り、危機に瀕した集落を守る農政でなければなりません。この考え方に立脚するのが、民主党の農業政策です。

自民党案でも所得補償が盛り込まれていますが、大規模農業への集約の手段として用いられており、小規模農家切り捨て政策になっています。そのようなやり方では、特色ある農業が育つ余地がなくなり、地域の社会・文化の破壊を招きます。亡国政策といっても言い過ぎではないでしょう。

民主党は、基幹農産物について、これまでの農政の制度・予算を根本から見直し、わが国の生産農家の生産費と市場価格との差額を各農家に支払う「戸別所得補償制度」を創設するとしています。

自民党案を実施すれば、中途半端な「大規模農業」が国際社会での競争に勝てず、地域では集落消滅という事態を招くだけになってしまいます。

民主党案が実施されれば、地域社会を維持するための最低保障が得られ、個別農家が丹精込めて育てた農作物が、結果として他国の粗雑な大規模農家の生産物を凌駕する市場価値を得ることにもつながります。山形の高級サクランボは1粒100円以上しますが、ブランド品のチョコレート1粒の方が値段が高いのですから、高級サクランボは国際的にも充分競争可能です。

中途半端な自民党型大規模農業よりも、我が国農業の伝統を活かした「精密農業」を追求する民主党案の方が、国家百年の安全・安心を獲得することにつながります。

「バラマキ」というお定まりの批判が自民党から出ています。しかし、「費用対効果」の観点からも、民主党案が優れていると思います。自民党案は所詮、彼らの地方切り捨て政策を農業部門でも応用したものにすぎません。


2007/6/17(日) 中央による地方統制としての「首長多選制限」・・何故条例ではないのか

首長について、多選の弊害が指摘されることがあります。長期に渡り権力の座にあることで、庁舎内で活発な議論を産むことが抑制され、首長の耳に痛い意見が届かなくなり、行政の硬直化が進みます。首長による独裁が腐敗の温床ともなります。

それでは、多選を法律で規制していいのでしょうか。首長の人権という視点だけでは捉えきれない問題を含んでいます。

【首長多選制限:地方に異論根強く 法制化の流れは加速】(毎日)
政界では、知事、政令市長の多選制限に向けた法制化の動きが加速している。総務省の「首長の多選問題に関する調査研究会」(座長・高橋和之明治大法科大学院教授)が多選の法的制限に「お墨付き」を与えたためで、自民党は7日、秋の臨時国会に知事と政令指定都市市長の「4選禁止」を明文化した地方自治法改正案を議員立法で提出する方針を決定。

民主党も4選以上は公認・推薦しないと内規で定めてあり、環境は整いつつある。ただ、地方には「選挙民の判断を法律で規制するのはいかがなものか」(仲井真弘多沖縄県知事)などの反対論も根強く、法制化までは曲折もありそうだ。【七井辰男】

首長の多選制限は(1)法の下の平等を定めた憲法14条(2)立候補の自由を保障する同15条(3)職業選択の自由の同22条−−との整合性が問題になり、国会では1954年以降3回提出された法案がいずれも廃案になっている。

同研究会は5月30日、首長が22条の「職業」だとしても「公共の福祉の要請」に基づき、一定の規制が「合理的な範囲」であれば可能などと積年の問題を整理した。

また、制限できる当選回数は事実上、3選以上との考えを示唆し、法律の形式に関しても(1)首長の多選を一律に制限(2)根拠となる法を定め、具体案は条例に委ねる−−の両案を示している。

自民党は知事、政令市長に関しては一律に4選禁止とし、そのほかの市町村長は地方の条例制定に委ねる二層構造で法案作成を進める方針だ。法案作りを急ぐのは、福島県の汚職事件など多選知事による不祥事多発が直接の理由だが、「道州制など地方分権が進展する前に一定の制限を決めたい」(自民党関係者)との思惑がありそうだ。

ただ、地方には法制化への反対論に加え、賛成派からも「知事も含めて多選制限は、地方の条例で制定すべきだ」(松沢成文神奈川県知事)などの異論があり、調整作業は難航も予想される。

【コメント】
国が進めようとしているのは、国家による地方統制です。力のある首長が国家に対抗することを未然に防ぐところに真意があります。

首長多選は、住民が首長を支持し続けているということでもあります。もちろん、首長選挙は現職優位の構造の中で行われますから、本当の支持なのかどうか疑わしい場合も多々あります。

しかし、多選の弊害は住民が自ら判断して是正していくのが民主主義本来の姿です。制度上の不備がある場合には、議会が条例で規制する方法がありますし、議会が怠慢なら住民自らが立ち上がって条例での規制を求めるべき筋合いのものです。

首長の多選制限を国主導で行おうとすることは、水戸黄門の印籠で悪代官を懲らしめる発想であり、国民受けする面もありますが、地方自治を住民主体で切り開こうとする立場からすると、地方を子供扱いするパターナリズム(父権主義)であるということになります。

住民に支持され、住民の声を背景に国に対して物申す気概のある首長の政治生命を国家が断ち切るということになっていいのかどうか。慎重に見極める必要があります。

福島県矢祭町の根本良一・前町長は平成の大合併に反対し、「合併しない宣言」をして全国の注目を集めました。彼は自立財政を目指し、果敢に行政改革を断行。職員の削減、職員の職務兼務を推進しました。 それは単なるコストカット型の財政再建ではなく、職員の意識改革を伴うものであり、結果として町民への住民サービスは格段に向上しました。住民が涙ながらに退任を阻止する姿は、全国の共感を呼びました。その根本町長は6期24年間町長を務めました。

国の方針では、矢祭町のような規模の自治体は規制対象に含まれないことにはなっています。しかし、真に住民の支持を受けた有力首長の存在が国にとって鬱陶しい存在になり、首長が力を付ける前に首を切っておこうとするケースは想定しておかなければなりません。

地方自治は、水戸黄門の印籠に拠ってではなく、住民の力で勝ち取るべきものである。このことを強調しておきます。


2007/6/16(土) 公認漏れ議員の反乱だと単純に考えていいのか・・福本潤一氏の公明党離党

与党議員が離党して野党から出馬する。そうした異例の事態が起こるかもしれません。愛媛県民になじみのある公明党・福本潤一参院議員の離党騒動。

福本氏の口から、公明党・創価学会への批判も出てきました。

【公明に離党届提出した福本氏、野党から比例選に出馬へ】(読売) 
公明党の福本潤一参院議員(58)は15日、国会内で記者会見し、公明党に離党届を提出し、夏の参院選は野党から比例選に出馬する方向で検討していることを明らかにした。

公明党は離党届を受理せず、同日、中央規律委員会を開催し、福本氏の処分の検討に入った。来週にも除名処分とする見通しだ。

福本氏は記者会見で、「公明党から3期目に向けた公認がなかった。国政でやり残したことへの未練は残っている」と離党の理由を説明。公明党執行部には今年4月から離党の意向を伝えていたが、慰留されたため、6月11日に離党届を内容証明郵便で送ったという。福本氏は公明党の体質について、「全体主義的な体制」「アンチヒューマニズムの政党」と批判。参院選の出馬については、民主党からの出馬を示唆したが明言は避けた。

ただ、民主党の鳩山幹事長は15日の記者会見で、福本氏から出馬について相談を受けたが、「そう簡単にはいかない」と回答したことを明らかにした。

公明党の北側幹事長は記者会見で、福本氏に対し「極めて言語道断。党員や支持者への裏切り行為で断じて許すことはできない」と激しく非難した。公明党によると、同党を離党、または除名された国会議員は計4人。除名されたのは、1988年、月刊誌上で池田大作・創価学会名誉会長を批判し、政治献金疑惑を理由に処分された大橋敏雄・元衆院議員の例がある。

福本氏は広島市出身。東大農学部卒で、愛媛大助教授などを経て、1995年の参院比例選で新進党から出馬し、初当選した。2001年に公明党公認で2回目の当選を果たした。

【コメント】
公明党議員というと、個性がなく、金太郎飴のように同質であるという印象があります。共産党と共通しています。要するに、全体主義政党なのです。

新進党時代に小沢一郎氏に共感を持った公明党出身議員が小沢氏と行動を共にしてきています。福本氏の場合も、そうした方々と共通した信条があるのだろうと推測します。

「全体主義的な体制」「アンチヒューマニズムの政党」という福本氏の公明党批判。公明党には、福本氏の言動を許容する度量はないだろうと思います。

公明党とは何なのか。創価学会とはなんなのか。このことについて考えることも、参院選のテーマの1つになってきました。


2007/6/15(金) 政治家の利権、官僚の天下り、労組の自堕落の「総合芸術」・・社会保険庁の醜態

年金問題が参院選の争点になるというのが衆目の一致するところになりました。

「消えた年金」「宙に浮いた年金」に関して、国民が不安、不満、憤りの感情を抱いており、この感情の行方如何によっては、自民党大惨敗の可能性もあります。

ただ、正直な感想を述べるならば、我が国の民主主義は所詮、生活保守主義に根ざした反応しか期待できないレベルの民主主義でしかないということです。参院選で「ガス抜き」ができれば、衆院選では与党有利の展開もあり得ます。

今しっかりと見ておかなければならないのは、社会保険庁にまつわる様々な不祥事の背景にある問題です。巨額の年金掛け金がプールされている特別会計に様々な利権が絡み、官僚天下りのための植民地が形成されてきた腐敗の構造があります。

この腐敗の構造の中で仕事をしてきたのが社会保険庁の職員です。彼らもそのおこぼれにあずかってきたことは否定できません。その部分だけを虫眼鏡で見て、自民党が小姑的な自治労批判を展開するところに、同党の卑しさが滲み出ています。

政治家の利権、官僚の天下り、労組の自堕落の「総合芸術」としての社会保険庁の醜態という本質を見据える必要があります。巨額の資金の流れがチェックできない現行制度の非民主性を俎上に載せた議論を期待します。


2007/6/14(木) 悪いミスや良いミスがあるのか?・・社保庁入力ミス拡大

次々出てくるものです。国民年金納付記録3090件のサンプル調査で4件と報告されていたミスが、さらに23件あるということが衆議院厚生労働委員会で明らかになりました。

年金受給額に影響しないミスだから報告しなかったというのですが、事実を事実として報告するという基本が全く分かっていないのが、厚生労働省(いや、霞ヶ関)なのでしょう。

【社保庁の年金抽出調査、入力ミスは他に23件…1%に拡大】(読売)
社会保険庁が国民年金の納付記録3090件を対象に、原本の手書き記録とコンピューター上の記録を照合したサンプル調査で、公表された4件のほかにも、23件の不一致があったことが13日午前、明らかになった。

社保庁は、23件は年金の受給額に影響はないミスとしているが、3090件中27件という1%近い確率で納付記録に何らかのミスが見つかった形だ。

新たな調査結果は同日午前の衆院厚生労働委員会の理事会に社保庁が提出した。

社保庁によると、23件の不一致が見つかったのは北海道、静岡県、沖縄県など18の社会保険事務所。内容は、〈1〉「法定」や「申請」などの保険料免除制度の種類の記載が違った〈2〉「前納」や「追納」など保険料の納付方法が異なった〈3〉氏名のふりがなが間違っていた――などだった。

こうした問題となるケースのほか、手書き記録をコンピューターに入力した後に、結婚して姓が変わったケースなど、記録の更新に伴い、不一致が生じたケースは166件あった。

柳沢厚生労働相は12日にサンプル調査の結果として、年金の受給額に影響する4件だけを手書き記録とコンピューター上の記録との不一致として公表した。

社保庁側は、23件を公表しなかった理由を「年金額に影響しないため公表は不要と判断した」などと説明している。公表を遅らせた社保庁の姿勢が問題視される可能性もある。

【コメント】
事実の報告に価値判断を加える。これは、広義では「嘘」の範疇に入ります。

太平洋戦争当時、大本営は事実ではなく価値判断を加えた事実を報じました。その価値判断とは、帝国臣民を鼓舞するということでした。

米国空母が何隻も撃沈されたという大本営発表が国民を感激させたことがありました。連合艦隊までそう思っていたところ、目前に当該空母が現れたので慌てふためいた、という話まで伝わっています。

「死んだはずだよお富さん…」という唄がかつて流行りましたが、沈んだはずの空母が出てきたのでは洒落になりません。

真面目に年金問題を議論し、国民の不安を除去したいという真摯な姿勢があれば、こんな出鱈目な報告はしないはずです。

国民を不安にさせまいとする「善意」からの「大本営発表」なのでしょうか。何もかも嘘だらけ。浮気がばれそうになっているどこかの亭主と同じ心境なのでしょうが…


2007/6/13(水) 社会保険庁職員が「残業手当返上運動」を展開すれば、安倍政権は崩壊する

将棋に「待ち駒」というのがあります。相手の王将の逃げ道を予測して、先にその道をふさぐように自分の駒を打っておくことを言います。

「消えた年金」、「宙に浮いた年金」の問題で支持率低下に悩む自民党は、社会保険庁職員の怠慢を喧伝して自治労を叩き、自治労が支援する民主党を攻撃することで窮地を脱しようとするでしょう。公務員叩きは、国民の拍手喝采が得られる「特効薬」だと自民党は信じています。

この「次の一手」が読めるならば、「脱出路」を塞ぐことを考えるのが兵法の常道です。自治労が優秀な組織なら、自民党の「脱出路」を塞ぐために、自ら犠牲を払うことを考えるときです。

その「一手」は、ボランティア。国民の年金に対する不安という「国難」に際し、身を挺して立ち向かう労組および公務員像を国民の前に提示するのです。

具体的には、「残業手当返上運動」です。この手で国民を味方に付ければ、長期的に見て労働者の地位向上をもたらすことが出来ます。国労が何故崩壊したのか。それは国民を敵に廻したからです。

その歴史に鑑みるならば、国民を味方に付ける戦略を労組が持たなければならないという結論が容易に出てきます。「一歩後退、二歩前進」。この発想があるかないかで、日本の労働運動の将来が決まります。短期的な後退戦術を取るだけの度量があるかないか。

「労組は国民の味方である」。この旗印を掲げれば、その瞬間に安倍政権は崩壊します。この好機を逃せば、その先には「大阪夏の陣」が待っています。公務員叩きによる労組崩壊です。


2007/6/12(火) 林業で国を興せ・・民主党の林業政策に期待する

商業は50歳、農業は60歳、林業は70歳が主力であるという話を聞いたことがあります。それから10年くらい経っているので、恐ろしい話になってきています。

林業においては、消滅の危機です。3年前、豪雨が各地を襲ったとき、針葉樹林が地面に根を張り付かせていないために、地滑りが多発しました。無惨な山肌を見て、国土の荒廃を目の当たりにしました。

【<民主>10年後100万人雇用創出…林業政策プラン発表】(6月9日 毎日)
民主党は9日、参院選のマニフェストに掲げる林業政策「森と里の再生プラン」をまとめた。菅直人代表代行が岡山県真庭市で記者会見し発表した。森林が多い改選数1の選挙区(1人区)にアピールするのが狙いで、「10年後に中山間地に100万人雇用を創出、地域格差是正の起爆剤にする」とうたった。
 「
国産材に割安感が生じており、50年に一度の林業再生のチャンス」と現状を分析。(1)小規模所有者の森林を団地化して作業を集約、高性能機械を導入(2)個人所有の作業道も補助対象にし、材木搬出路を10年間で60万キロ整備――などで木材生産体制を確立し、産業として成り立たせることを目指す。05年現在で20%の木材自給率は、10年後には50%に向上させるとしている。
 
官製談合事件が摘発された緑資源機構については「廃止して、予算を有効な林業開発に組み替える」と打ち出した。 

【コメント】
私が反対してきた市町村合併は、国土荒廃促進策でした。都市部が活性化すれば国富が増えるという発想で、効果効率至上主義の政策が採られました。

切り捨てられた地域からは、人が流出します。集落消滅が各地で起こります。結果として、国土の荒廃が進みます。

この流れを止めようとすれば、林業に目を向けざるを得ません。林業活性化により、人が地域に張り付くことが可能になります。

林業で100万人の雇用創出。是非やっていただきたい。これは、国土防衛策です。

山荒れる 帰りなんいざ 故郷へ 樹林再生 国土再生


2007/6/11(月) 脳トレを 五七五が 上回り・・・俳句の効用

脳のトレーニング(脳トレ)に関心が集まり、脳トレに関する本が売れ続けています。簡単な計算をすると脳が活性化するということで、日常生活の中で注意を払っていれば、脳を鍛えることは十分可能だということが認識されてきました。

俳句が脳の活性化に役立つというニュースに興味を持ちました。言われてみれば、なるほどと思える話です。

【俳句、「脳トレ」より活性化度大 川島教授と実証 松山】(朝日)
俳句を詠むと、脳の「司令塔」と呼ばれる前頭前野が刺激され、強く活性化することが松山市の研究グループの実験でわかった。認知症の予防や改善に効果があるといわれる四則計算などの「脳トレーニング」より、脳の血流量が増したという。研究者は「正岡子規らを生んだ『俳句王国・松山』から、全国に俳句文化を広げるきっかけになれば」と期待している。

グループは、松山市の学校法人職員の沖田克夫さん(61)が地元の俳人らに呼びかけて発足した「俳句と脳の研究会」。簡単な計算や音読で脳のおでこ部分にある前頭前野を活性化させる「学習療法」を考案し、脳トレーニングブームを巻き起こした川島隆太・東北大教授の指導のもと、1月と3月に同大学で実験し、分析を進めてきた。 

実験では、プロの俳人や句作の初心者ら15〜55歳の男女12人に対し、俳句をつくる▽簡単な加減乗除の四則計算をする▽俳句を黙読する▽俳句の上五を見せた後、正しい中下の句を選ぶマッチングゲーム▽提示された句が「そこそこ」の水準か「まだまだ」の句なのか判断する判別ゲーム▽散文を読む▽無意味な文字列を読む、の7項目の課題に取り組んでもらった。 

そのうえで、知的活動や感情などをつかさどる前頭前野に流れ込む血流量などを調べ、前頭前野の右脳と左脳部分の活性化の度合いについて最大でプラス5、最低でマイナス5と数値化して評価した。 

その結果、俳句を詠んだ時の平均値は右脳で3.4、左脳で3.5となり、簡単な計算をした時の右脳2.4、左脳3.3を上回った。一方で、マッチングゲームは右1.9、左2.3、判別ゲームは右2.1、左2.3、俳句の黙読は右1.0、左1.2で、自分で俳句をひねる時の効果がずば抜けていた。 

散文を読んだ場合は右0.9、左1.2、無意味な文字列の黙読は右1.3。左0.8だった。 

また、俳句作りは前頭前野のほぼ全体を活性化させたという。前頭前野は、難解な数式を解いたり、深く考え込んだりしても、一部でしか活性化しないことが川島教授の研究でわかっている。 

研究会は、句作が四則計算より脳を活性化させる理由は不明としながらも、句をひねる時の多角的な思考が脳の働きを強めるのではないかと推測している。 

川島教授は「句作が、計算よりも強く前頭前野を活性化させるのは、数字より複雑な言語を扱って頭を使うからではないか」としている。 

沖田さんは「子規が晩年、病気になっても、頭がはっきりしていたのもうなずける。認知症の予防や改善に、句作を試してみてはどうか」と話している。 

【コメント】
我が愛媛・松山は正岡子規を筆頭に、俳句王国として知られており、最近では「俳句甲子園」が開催され、全国の高校生が競い合っています。

俳句は「季語」で躓く人が多く、もっと自由に詠めればいいのにと思っていました。しかし、この脳トレのニュースを見ると、季語の制約についてもプラス思考で考えた方がいいのかもしれません。

そもそも、五七五というのが制約の最たるものです。その制約された世界に無限の表現可能性があるというところが驚きです。

このブログでも、たまに五七五や五七五七七を試しています。駄作だと思われるのが恥ずかしいのですが、これからは「脳トレだ」という気持ちで時折チャレンジしたいと思います。

「季語」について言えば、温暖化で「季語」喪失という事態にならないよう警戒を要します。

季語なくて 美しき国  成り立たず


2007/6/10(日) 「組織で生きる」から「地域で生きる」への転換点

企業や組織で生きているサラリーマンにとって、定年という壁は大きな人生の転換点となります。「定年後」を誤らないようにするためには、定年以前からの準備と意識改革とが必要であることが徐々に知られてきました。

これまでの日本の秩序は、男性が組織に過剰適応することで維持されてきました。家庭や地域に配慮した生き方は、少なくとも、「エリート人生」からの脱落を意味していました。

この、組織への過剰適応型人生観は、否応なしに転換を迫られています。人生100年時代が到来します。「いや、なんとか80年が精一杯だ」と思っている方は、長い長い「人生の字余り」に苦しむ可能性があります。

人生100年を前提とすれば(80年の場合でも)、定年後の人生は組織人としての人生と同等ないしはそれ以上の価値を持ってきます。定年延長があっても、実質は変わりません。ここに目を向けた人生観への転換が必要になります。

組織過剰適応型人生というのは、野球に例えれば、攻撃オンリーの選手のようなものです。それが偏った生き方であることに気付き、投・攻・守にバランスの取れた人生を送るための鳥瞰図を手にしながら、現在只今を生きる心構えが必要です。

「組織で生きる」から「地域で生きる」。その転換点は、早ければ早いほど幸せだと思います。地域人として地域の課題に取り組むには、組織人として獲得したノウハウが有用になります。組織に過剰適応したまま周囲がひれ伏すような肩書きを手にしてしまうと、肩書きが仕事をしていることに気付くのが遅れ、結果として肩書き以外に誇れるものがない貧困な人生になってしまいます。

地域から組織を眺め、地域から自分自身の人生を再定義することは、組織人としての自己を鍛えることにもつながります。肩書きという鎧で自己防衛をするよりも、生身の身体で地域に接し、その中で生き抜く知恵を学んで、応用自在の人生を獲得する方が有意義だと思います。

40歳になった方(男性)には、是非考えていただきたいテーマです。

《独言》
今年で25回(25年)になる伊予市商店街の「ふれあい土曜夜市」。毎年6月の第1、第2、第3土曜日の夜、開催されます。

昨日は第2週。普段より多くの人出がありました。子供たちが楽しみにしてくれている夏のイベントです。小2の甥っ子はお父さんと来て、鶏の唐揚げをかじっていました。小5の姪っ子はお友達と連れ立って楽しんでいました。将来、おじちゃんたちがやっていた夜市のことを思い出してくれれば幸せです。

イベント終了後の片付けが、ある意味での「本番」。2時間余りで片付け終了。ビアガーデンで残ったビールを飲みながらの反省会。終わったら12時半を過ぎていました。


2007/6/9(土) グッバイ、コムスン・・公共的サービス民営化の結末

「ハロー コムスン…」。最初にあの爽やかなCMを見たとき、優しく誠実なヘルパーさんがお年寄りに親身のサービスを提供してくれるというイメージを抱いた人が多かったと思います。

然るにその実態は。杜撰な人員態勢と不正請求。そして、処分逃れの事業所閉鎖…

この悪徳業者が「業界最大手」ということは、取りも直さず、「悪貨が良貨を駆逐」しつつあったということではないでしょうか。

利用者に重い責任を負担しなければならない公共的サービスを、不用意に民営化するとどうなるか。その答えの1つが、「コムスン」です。

何なら何まで公共的サービスを「公」が担うことになれば、それは社会主義です。そのモデルは、競争という刺激のない自堕落な退廃をもたらしました。

かと言って不用意な民営化は、不法行為によって「コスト削減」をする悪徳企業の専横を許す結果になります。そのところのバランスの取り方が極めて難しく、制度設計を慎重に行う必要があります。「性善説」の限界を感じます。

コムスンの問題は、介護サービスに関わる事業が健全に成り立つような介護制度であったかどうかという問題にも連なってきます。良好なサービスを提供しようとしても、企業としては成り立たないという不満の声が現場から沸き上がってきています。良心的なヘルパーさんが、低賃金故に人生設計が成り立たず、職場を離れる例が後を絶ちません。

厳しい財政事情を前提としつつ、医療・介護における制度設計の見直しと、サービスの民営化における負の側面の再検討が求めれれています。

良心的なサービスが提供され続けられる制度への転換を希望します。そして、悪徳業者よさようなら。グッバイ・コムスン。


2007/6/8(金) 読売よ、お前もか・・内閣支持率32.9%

与党系の読売新聞、日経新聞では、内閣支持率が高めに出てくる傾向にあります。安倍内閣発足時の支持率は、読売で70%、朝日では63%でした。

その読売の調査で、安倍内閣の支持率が32.9%。内閣発足当初から37%減。危ないところに来ています。

【内閣支持率は急落、32・9%…読売世論調査】(読売)
読売新聞社は5日から7日にかけて、参院選に関する第1回継続世論調査(電話方式)を実施した。

安倍内閣の支持率は32・9%、不支持率は53・7%で、不支持率が支持率を21ポイント上回った。

大量の年金記録漏れ問題や自殺した松岡利勝・前農相らの政治とカネの問題が大きく影響していると見られる。ただ、政府が年金の支給漏れの額を補償する対策などを打ち出したことについては、「評価する」は計51%で、「評価しない」計42%を上回った。

本社が面接方式で実施している全国世論調査では、昨年9月の内閣発足以来下落し続けていた支持率が、5月調査(19、20日実施)で49・6%(不支持率は36・8%)と上昇していた。調査方法が違うため、単純には比較できないが、安倍内閣の支持率が再び下落傾向へ転じたと考えられる。

今回調査では、60歳代以下の全年代と、男女双方で不支持が支持を上回った。男女別の支持率は男性31%、女性35%。支持政党別では自民支持層で70%、公明支持層では5割弱、無党派層では16%にとどまった。

年金記録漏れ問題での政府の対策については、内閣を支持しない人では「評価しない」が計61%で、「評価する」は計35%だった。松岡前農相の政治とカネをめぐる問題に安倍首相が適切に対応していたと思うかどうかでは、「そうは思わない」が80%に達した。こうした点が高い不支持率につながったようだ。

7月の参院選の投票先については、選挙区では自民、民主両党が25%で並び、比例選では民主党が24%で自民党は22%だった。参院選の結果、与党の議席が「過半数を下回る方がよい」は49%で、「過半数を維持する方がよい」32%を上回った。参院選で重視したい政策や争点(複数回答)では、「年金」が71%と他を大きく引き離しており、関心の強さを示した。

政党支持率は自民党33・1%、民主党22・5%。無党派層は30・6%だった。

参院選に関する継続調査は、参院選投票直前まで引き続き実施する。

【調査方法】6月5日から7日まで実施。全国の有権者を対象にコンピューターで無作為に作成した番号に電話をかけるRDD方式。有権者在住世帯判明数1593件、有効回答数1035人、回答率65%。

【コメント】
「政府が年金の支給漏れの額を補償する対策などを打ち出したことについては、『評価する』は計51%で、『評価しない』計42%を上回った」のに、内閣支持率は激減しています。

個々の施策への評価と内閣支持率とが連動しなくなっているとすれば、内閣そのものへの信頼が損なわれていると見なければなりません。不支持率の高さに、その一端が見えています。

参院選での投票(予定)行動と政党支持率との関係を見ると、自民党支持者が離反しつつあることが分かります。

他方、民主党自体に追い風が吹いているのでもなさそうです。参院選まで1ヶ月半。まだ一山も二山もあり得る長さです。

民主党としては、「格差問題」との「合わせ技」で「一本」取りたいところです。


2007/6/7(木) 本当に大丈夫なのか?・・5000万件+1400万件→不信の連鎖

柳沢厚生労働相は6日の衆院厚労委員会で民主党・長妻昭議員の質問に答え、旧式の手書き原簿に基づく厚生年金の保険料納付記録が1430万件あり、そのほとんどは社会保険庁のコンピューターに入力されておらず、基礎年金番号と統合されていないことを明らかにしました。

社保庁のコンピューター内にある5000万件以外にも1400万件単位で宙に浮く記録があることが明らかになりました。長妻議員は、「5000万件の照合を優先する政府方針は意味がない」と批判。

さらにこんな記事が朝日新聞に載っています。

【年金台帳3千件のサンプル調査 結果公表、与党が難色】(朝日)
年金記録管理の実態を解明するため、民主党の要求を受け、社会保険庁が約3000件のサンプル調査を行っている。この調査結果の公表をめぐり、「まだ途中の段階」と渋る与党と「すみやかに」と催促する野党との間で綱引きになっている。調査の結果次第では、年金不信がさらに広がる可能性もあるためで、「宙に浮いたサンプル調査」が攻防のホットコーナーになっている。 

「情報隠しはダメだ」(野党理事) 

「人聞きの悪いことを言うな。出すと言ってる」(与党理事) 

6日朝、衆院厚生労働委員会の理事会。結果を明らかにするよう求める野党に対し、与党は「精査が終わり次第出す」とかわし続け、結論は出なかった。 

サンプル調査は4月下旬、民主党の長妻昭氏が決算行政監視委員会で柳沢厚生労働相に要求した。国民年金記録の紙台帳のうち、加入履歴が複雑な人の記録を集めた「特殊台帳」の中から3000件を抽出し、社保庁のコンピューターにある記録と照合する――というものだ。 

特殊台帳は比較的間違いが生じやすく「それで全体を推し量ると、ミスリードのおそれがある」(5月16日の厚労委員会での柳沢氏の答弁)。このため、政府や与党は結果を公表することに慎重だった。 

6日の厚労委員会で柳沢氏は「途中で良ければ、出せるのではないか」と態度を軟化させたが、あくまで同委員会の理事会が決めるのが前提。このため、与党の判断が注目される。 

だが、調査状況の説明を受けた与党国対幹部の一人は「これを公表したら、参院で審議している社保庁改革法案が成立しなくなる」と漏らした。間違いが多ければ、審議が立ち行かなくなることを恐れているのだ。一方で「データを隠して社保庁を守っている、と国民に受け取られる方が怖い」(公明党幹部)との声もある。 

3年前の参院選を前にした国会でも、年金改革法が成立した後に、法案審議で用いられていた出生率予測を下回る数字が明らかになったことがある。厚生労働省の対応は「後出しジャンケン」(民主党の岡田克也元代表)との批判を浴びた。 

6日の同委員会で民主党の山井和則氏は3年前を念頭に「一歩間違うと同じ大問題に発展する」と強調した。

【コメント】
明らかにされてこなかった事実が少しずつ漏れ出てくると、不信の連鎖が生じ、政府が何を言っても信用してもらえない状態に陥ります。

年金記録にまつわる安倍政権の対応は後手後手に廻っており、国民の年金不信が政府不信へと広がる可能性を帯びてきています。

こういうときは、「悪い情報こそ良い情報だ」と考えを切り替え、積極的に膿を出しきることで「底を打つ」状態にし、新たな展開へ希望をつなぐのが賢明です。

二世三世主体の現政権は、こういう局面になると弱い。菅直人・民主党代表代行に責任を押しつけようとして、与党内からも批判されて撤回。次々に繰り出される新たな疑問に対しては、グズグズして余計に傷口を広げる。幼稚な対応に終始しています。

ノーアウト満塁で「1点献上」を覚悟できないバッテリーのようなひ弱さを感じます。


2007/6/6(水) 「消えた年金」問題は、最近取り上げられた話ではない・・政府の無責任さが顕著

大慌てで謝罪し、「対策」を発表する政府。最近発覚した問題なら、そうした対応を理解することも可能です。

しかし、「消えた年金」問題は少なくとも昨年から、国会審議の中で繰り返し問題にされていたのです。それに対して誠意ある対応をしてこなかった政府が、5月末の内閣支持率急落を受けて、慌てまくっているというのが実態です。

民主党・長妻昭議員のホームページを引用します。

[活動トピック2006年7月19日](長妻昭議員のHPより)

【社会保険庁】納付した年金保険料が消えた 社保庁5事例のミスを認める
 
本日、納付したはずの年金保険料が消えた問題で、社保庁が公にミスを認めた4事例が、ながつま昭の資料要求で明らかになった。ながつま昭が今年6月16日の国会質問(衆議院厚生労働委員会)で指摘した1事例を加えると、社保庁は、公に残る文書としてはたった5事例しかミスを認めていないことになる。いずれも国民年金保険料の納付にかかわる事例で社保庁が納付記録を相談者の主張通り訂正した。

この資料は、保険料を納付したにもかかわらず未納とされ窓口では相手にされず、不服審査申し立て制度を使って社保庁にミスを認めさせ、年金保険料納付記録が回復されたもの。不服審査は大変な労力が必要であるが、ほとんどの場合、社保庁はミスを認めない。

<なぜ収めた保険料の記録が消えるのか>

なぜ、収めた年金保険料が消えるのか。数々の原因が考えられる。
 
1.昭和59年に社会保険庁の年金システムの完全オンライン化がなされ、保険料の納付記録のある手書き台帳はすべてコンピューターに入力された。入力作業は昭和40年代から始まったが、その際の入力ミスや入力漏れがあるのではないかと推定される。手書き台帳の多くは廃棄されたが、一部はマイクロフィルムとして保存されている。
 納入記録に納得できない場合、自分のマイクロフィルム化した台帳があるのかどうか確認し、それを見せてもらうことも必要だ。
 
2.オンライン化がなされたものの名寄せが不十分だった可能性。名寄せとは、同一人物の納付記録が、何らかの理由(生年月日の打ち間違い、氏名を読み間違えてカナで入力など)でバラバラになったものを統合する作業。
 
3.平成9年にすべての被保険者に一つの基礎年金番号が割り当てられた。それまでは国民年金、厚生年金、共済年金など年金の制度ごとにそれぞれ番号が付けられていた。一人の被保険者でも複数の年金制度を渡り歩くと複数の番号を持つことになる。この番号を一つの基礎年金番号に統合しなければならなかったが、その統合漏れが多くある。
 
4.特に目立つのは引越しを契機に未納にされてしまうケース。引越し先で入力ミスがあった可能性がある。その他、結婚して姓が変わって処理を誤るケースなど多くの原因が考えられる。

 
他にもさまざまな原因があると推定され、予想を超える多くの問題事例がある。厚生年金の保険料も納めたはずのものが、納めていないことにされてしまう事例がある。
 
日本には25年ルールがあり、保険料を延べ25年納めないと保険料が返ってこない上に年金給付が受けられない。24年で泣いた人がもし、消えた納付期間があるとすればさらに大問題だ。
 
すでに年金給付を受けている方でも、消えた納付期間があるとすればさらに多くの年金を受給できたはずである。ご自身で年金の納付記録を取り寄せて、チェックすることが重要だ。銀行に例えれば、預けた預金記録が消えてしまうことと同じだ。このとんでもない実態の全容解明と記録回復に全力を尽くして参ります。

 
<社保庁の記録には無いものの保険料納付を認めた事例>

(事例1=本年6月16日の国会質問で明らかになったもの)
 
平成17年8月10日に不服再審査請求がなされたケース。静岡県から横浜市に引っ越した直後から国民年金が昭和50年1月〜55年3月分までの5年間未納とされた。本人は、口座振替で支払っており、未納のはずはないと主張。
 
本人は昭和50年1月〜52年3月までの領収証を保管しており、社保庁が、この期間は払ったとして訂正に応じた。また横浜市が保管していた当時の納付台帳により昭和54年4月〜55年3月までの納付が確認された。しかし、この台帳の発見で引越し先の横浜市が国民年金番号をコンピューターに打ち間違えていたことが発覚した。本来の国民年金番号は3953−10××××なのに、3153−10××××と9と1を間違えてしまった。このため、記録には本人のものとならず、5年間未納とされた。
 
これらが明らかになり、口座振替でもあることから主張通り5年間の納付が認められた。
 
しかし、このケースをさらに調査すると、当時、横浜市から社保事務所経由で社保庁本庁の業務センターに送られた納付記録が、別人の番号であるということで、横浜市に差し戻されていた事実が判明した。横浜市が間違えて入力した番号と同じ番号を持つ別人が存在した。当時、横浜市は保険料を受け取ってもそれが、ムダになることを知っていながら、受け取りを続けていたことになる。さらに原因を解明する必要がある。

(以下省略)

【コメント】
最近になって大きく取り上げられ、多くの方が関心を持つようになりましたが、民主党議員が昨年来粘り強く取り上げてきた問題です。

政府の無責任な答弁が一変したのは、参院選を間近に控えた先月末、内閣支持率急落の報を受けてのことです。

安倍総理は先日行われた民主党・小沢代表との党首討論で、「消えた年金」問題について、「政争の具にすべきではない」と述べています。

しかしこれまでの経緯からすれば、参院選を控えて尻に火が付いたから真面目になっただけであって、選挙がなければ「のらりくらり」の答弁で逃げまくっていたのではないでしょうか。

どの口が、「政争の具にすべきではない」などと、自らが誠実な実務担当者であるかのような発言をさせるのか。不誠実の極みであるということを、多くの国民は知るべきです。


2007/6/5(火) 国民の不安感なのか、不信感なのか・・内閣支持率急落の理由

安倍内閣は内閣支持率急落の原因を、年金問題についての国民の不安感であると分析しています。参院選の争点として年金問題を正面から取り上げる作戦に変更しました。

国民の不安感除去に努めれば支持率が回復するのかどうか。これからの戦い方にもよるでしょうが、疑問を感じます。

政府・与党への不信感が醸成されつつあるとすれば、それほど簡単ではありません。

【首相、年金を争点化 「正面から取り上げないと勝てぬ」】(朝日)
年金記録問題などで内閣支持率が下落している安倍政権は4日、この問題を参院選の争点にすえる野党に対抗しようと動き始めた。首相は公約の最重要政策に年金問題の解決策を明記するよう自民党政調幹部に指示。柳沢厚生労働相も同日、照合作業の具体的なスケジュールを示すなど巻き返しに出た。一方、自民党がこの問題で作成したチラシには党内からも批判が寄せられるなど歯車がかみあわない対応も出ている。 

4日朝、首相は自民党の中川昭一政調会長、河村建夫政調会長代理、舛添要一参院政審会長と官邸で会談し、参院選の公約について「年金問題と医師不足対策の二つを緊急に最重要政策として採り入れてほしい」と指示した。当初は憲法改正や教育再生など首相の持論を「目玉」とする方針だった。しかし、年金記録問題の解決について「年金を正面から取り上げない限り選挙は勝てないとの認識で一致した」(舛添氏)という。公約は計155項目にまとめ5日に正式発表する。 

4日夜、首相は官邸で記者団に、内閣支持率が大幅に下落したことについて「やはり年金問題に対する国民の不安が表れたんだろう」と分析。今国会で成立をめざす社会保険庁改革関連法案と年金時効特例法案について「まだまだ浸透していない。丁寧に誠実に説明して不安を解消していく」と語った。 

この問題で柳沢厚労相は4日、厚労省内で記者会見し、「宙に浮いた年金記録」5000万件は、作業実施のためのプログラム開発期間を短縮することで、一部のスケジュールを前倒しすると公表した。また、同日から電話相談の24時間対応を始めるなど年金相談の体制を強化すると強調した。 

また、柳沢氏は年金記録問題の原因や歴代社会保険庁長官らの責任を追及する検証委員会を総務省に設置する考えも示した。これについては政権内から「参院選までに明らかにすべきだ」との声が出始めている。 

一方、自民党は先週末、年金記録問題についてチラシを作成し、都道府県連などに発送。チラシでは「基礎年金番号設計・導入時の厚相は菅直人・民主党代表代行」と批判している。 

しかし、菅氏が厚相だったのは橋本内閣時代で、菅氏の後任の厚相は小泉前首相。責任転嫁ともとれる宣伝戦術に自民党内からも「かえって世論の反感を買う」との声が噴出。森元首相は4日の大阪市の講演で「自民党もみっともない」と批判。首相が演説などで菅氏批判を繰り広げたことについても「総理も一緒になってそんなことを言い出している」と不快感を示した。 

このため、自民党執行部内にはチラシを作り直すべきだとの意見も出始めている。 

社保庁改革法案は4日、参院本会議で趣旨説明と質疑が行われた。5日に参院厚生労働委員会で年金時効特例法案もあわせ審議が本格化するが、4日の参院本会議では与党議員の欠席が目立った。議院運営委員会理事会で野党側が「与党の出席者が少ない」と抗議し、与党側が陳謝する一幕もあった。 


【コメント】
菅直人氏に責任転嫁する幼稚な手法、松岡農水相自殺に絡む「政治と金」についての不明朗な態度などを見て、国民の不安が政府への不信感へと転じつつあります。

責任回避の姿勢が目に焼き付いた後の方針転換であり、インパクトが極めて弱くなっています。後手後手に廻ってしまった感があります。

こうなると、年金保険料の納付記録約5000万件が宙に浮いている問題について柳沢厚生労働相が来年5月までの1年間に全件の照合を終える方針を明らかにしても、「本当にそうなるのか」、「従来の主張と何故違ってきたのか」、「どうやってやるのか」という疑問の方が先に立ってきます。

浮き足だった自民党議員が参議院本会議を欠席する状態になっています。地元に帰ったところで、袋叩きでしょうが。

元々軽い政権だったのが、国民の目にその軽さが明確に意識され始めたのではないでしょうか。「安倍政権」の軌道修正では間に合わなくなってきています。実質的に「安倍政権」を否定する軌道修正でなければ、この大波を潜り抜けることは困難です。

若干の過半数割れ=自民47、48議席で止まればいいというのであれば、まだ時間があるので、舵取り如何でなんとかなるようにも思えます。


2007/6/4(月) 朝日新聞では内閣支持率30%・・・政権党の品格も問われている

昨日に続く新聞社の世論調査。イエローカード状態です。年金記録の不備にからんでの委員会審議が1日という泥縄対応が、却って世論の不信感を増幅したようです。幹事長および国対関係者の能力不足を感じます。

松岡農水相自殺に関する安倍総理の責任についても、国民の見方は相当厳しいものになっています。

【内閣支持率最低 30% 政権運営手詰まり感】(朝日)
安倍首相の政権運営が危険水域に近づいた。参院選に向けた朝日新聞の第4回連続世論調査(2、3日。電話)では、内閣支持率は30%で前回(5月26、27日)の36%からさらに下落し、政権発足後最低を更新。不支持率は前回の42%から49%に上昇した。

ずさんな年金記録問題への政権の対応や、自殺した松岡利勝前農林水産相をめぐる「政治とカネ」の問題への批判が集まった。政府・与党は年金問題に迅速な対策を取ることで政権を立て直す構えだが、参院選公示を約1カ月後に控え、首相の政権運営には手詰まり感も出始めている。

男性の支持が27%(前回36%)と落ち込み、逆に不支持は56%(同47%)と増えた。これまで比較的支持が高かった女性でも支持32%で、不支持43%を大きく下回った。公明支持層の支持は29%(同35%)、不支持は30%(同45%)で、「その他・答えない」が41%だった。 

支持率低下の背景には「年金」や「政治とカネ」の問題への取り組みに対する厳しい見方がある。 

5千万件の年金記録がだれのものか分からないなど年金をめぐる問題について、衆院での審議が「十分ではなかった」は78%を占め、「十分だった」はわずか7%。 

1年以内に記録を点検するなどと言っている政府の対応は、「適切だ」が49%で「適切ではない」の38%を上回るものの、政府の対応では年金が正しく支給されない恐れがある、との野党の主張を「その通りだ」と思う人は62%にのぼる。自分の年金記録が「きちんと管理されている」と思う人が50%に対し、「不十分かもしれない」は43%あった。 

自殺した松岡前農水相の政治資金をめぐる疑惑について、安倍首相の対応が「適切ではなかった」は69%に達する。「適切だった」は14%で、松岡氏をかばい続けた首相に批判的な見方が強い。松岡氏の自殺で内閣の印象が「悪くなった」は61%で、「そんなことはない」の32%を大きく上回った。 

政党支持率は自民28%(前回29%)、民主17%(同18%)などで、無党派層は50%(同47%)だった。 

【コメント】
このところ、「基礎年金番号導入の政策判断をした当時の厚生相の菅直人氏の責任が一番大きい」という、与党幹部の悲鳴のような宣伝がしきりに行われています。

残念ながら、政権党の品格を貶める効果しかないと思われます。実施段階の厚生大臣は小泉純一郎氏であり、そもそも自民党・橋本政権時の問題です。しかも、技術的な問題が当時から強く指摘されていたにもかかわらず断行したということでもありません。

過ちを直ちに認め、国民の被害が拡大しない方策を考えることが先決です。その姿勢に問題ありという批判が支持率に表れているのだという認識が必要です。

世論調査の動向からすると、有権者の目は政権党の真摯な態度があるかないかというところに注がれていると見るべきです。今の対応では、品格なき政権党への批判が強まってくるだけです。老後の支えに不安が生じています。普通の国なら暴動が起きても不思議ではありません。

昨日、テレビ朝日・サンデープロジェクトで、片山虎之助・自民党参院幹事長が民主党・菅直人代表代行と激論を戦わせていました。片山氏には余裕がありませんでした。絶叫調の批判を繰り返すだけ。

大政党・自民党の余裕は、完全に失われています。現在の自民党政権の慌て様を見て、お墓の中の歴代自民党総裁・幹事長は溜息をついていることでしょう。「千の風」になりたいと思っているかどうかは知りませんが。


2007/6/3(日) 内閣支持率35%・・下がったままだが、「手」はある

6月1日、2日の共同通信社世論調査での内閣支持率35%。1週間前の毎日、日経の調査で支持率急落が明らかになりましたが、支持率回復の兆しはありません。このまま参院選に突入すれば、自民党惨敗必至の情勢です。

3年前の状況が同じでした。小泉首相の「人生色々」発言が問題になるなど、年金問題が参院選の争点になり、民主党に追い風が吹きました。

3年前との違いは、参院選が10日遅いということです。これが「徳俵」となり、自民党が踏ん張れるかどうか。

【内閣支持率、35%に急落 安倍政権発足以来、最低に】(共同通信) 
共同通信社が1、2両日実施した緊急電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は35・8%と5月中旬の前回調査より11・8ポイント落ち込み、昨年9月の内閣発足以来、最低となった。光熱水費問題などを指摘されていた松岡利勝前農相の自殺や、社会保険庁改革関連法案などの強行採決が影響したとみられる。

松岡氏を一貫して擁護した安倍晋三首相が任命責任を「果たしていない」とする人は69・5%に上り、「果たしている」の19・9%を大きく引き離した。また、参院選を今、実施した場合に投票しようと思う政党を聞いたところ、民主党を挙げた人が28・8%と、自民党の26・5%を上回った。

【コメント】
自民党に知恵者がいれば、そして安倍首相にその人の意見を聞く度量があれば、辛うじて参院選を乗り切れると思います。手は幾つかあります。

その1つは、大幅な内閣改造。政権の性格を一気に変えてしまうほどの大改造を行うと同時に、年金問題に真剣に対応する姿勢を明確にするのです。

加藤紘一氏や谷垣禎一氏を重要閣僚として起用してハト派政権に衣替えし、「憲法改正」の主張も引っ込めます。安倍色を薄め、挙党一致の集団指導体制に移行するのです。この場合安倍氏は、「君臨すれども統治せず」という状態になります。

過去の自民党は、政権維持のためには何でもやりました。ここ数年、自民党組織の硬直化が進行してきているので、そういう方向に行く可能性は低いだろうと思われます。また、安倍氏にも「聞く耳」はないでしょう。

《独言》
3年前は街宣カーの中で、あるいは辻立ちをしながら、世の中の空気の変化が急激に起こることを実感しました。

今、民主党の候補者は、かなりの手応えを現場で感じていることでしょう。こういうときには、勢いに任せてガンガンやるべきです。野党には、「押し相撲」しかありません。

政権党には、この程度の逆風なら跳ね返す底力があります。なんと言っても権力を握っているのですから、常に幾つもの「手」を持っています。

ただし、現政権の能力では、ハンドルを切り損なう可能性大です。


2007/6/2(土) ミス・ユニバース選考基準に違和感・・日本女性・世界一は嬉しいが

本年度ミス・ユニバース世界大会で日本女性が優勝しました。めでたい話です。確かに美人ですが、これまでの日本代表でもっと美しい人がいたはずだが、という気持ちにもなりました。

「美のグローバルスタンダード」に合致しなければ世界一にはなれないということなのでしょうか。あるスポーツ紙が他国代表の写真と日本代表の写真を取り違えて掲載していました。テレビでチラッと見る限り、どっちがどっちなのか分かりませんでした。

欧米風の体型とパフォーマンス、そして欧米から見てオリエンタルな顔をしていることが、アジア代表が何回かに1回優勝する条件なのでしょう。優秀なコーチを招いて、ミス・ユニバース用の特訓をした成果であるという報道もありました。

日本独自の美の基準をもっと大切にしていくべきではないでしょうか。欧米型の基準に擦り寄る努力だけが強調されているような気がします。

「日米同盟」無条件支持という政界の軽薄な風潮とダブって見えるので、なんだか複雑な気持ちです。

ミス・ユニバースについて言えば、「美をテーマとした競技種目」だと割り切れば、別にどうということもない話ではありますが。


2007/6/1(金) 政党助成金の引き上げ・・経済界からの提案

経済同友会が政党助成金引き上げを提案。全国会議員に「政治資金背番号制」を採用することと一体をなすものです。これが、経済界からの政治と金の問題に関する1つの「解答」です。

【経済同友会、政党助成金引き上げを提案】(日経)
経済同友会は31日、政治改革に関する提言を発表した。政治とカネの透明性を高める観点から「必要な政治活動のコストは国費でまかなうべきだ」と指摘。公費による政党助成金について、現行の国民1人当たり年間250円から同300円以上に引き上げるよう提案した。必要な財源は約64億円。

丹羽宇一郎政治委員長(伊藤忠商事会長)は記者会見で「全国会議員に『政治資金背番号』を付して個人・企業からの政治献金や政党助成金を名寄せすべきだ」と述べ、情報公開の徹底が前提との認識を強調した。

【コメント】
経済同友会の提案を上回る政党助成金の引き上げが必要だと思います。その代わり、企業団体の献金は全廃。

情報公開についての提言は参考になります。これまでのように様々な「政治団体」で資金を管理するのでは、政治資金の流れが極めて不透明なものになります。情報が徹底的に公開されることと引き替えに、無理な資金集めをして政治に対する国民の信頼を損なうことのない仕組みをつくるべきです。

情報公開については、政治活動を妨げることになるとの反論が必ずあります。秘密裏に会合を持たなければならないケースが政治の舞台裏には付き物です。「そうした場合には…」と言うのですが、普通一般には、そうしたケースは「自腹」です。霞ヶ関や県庁などの裏金問題も、トコトン突き詰めると、「自腹」が嫌な人たちの悪あがきです。

企業団体の政治献金は贈収賄。官公庁の裏金は横領・背任。ここまで明確に割り切らなければなりません。そのためには、政治のインディペンデント(independent)、即ち、政治が国民以外の誰かに依存しない状況を作るべきです。


玉井彰の一言 2007年6月 四国の星ホーム一言目次翌月翌月