玉井彰の一言 2007年7月 四国の星ホーム一言目次前月翌月

2007/7/31(火) 「私と小沢さんと、どっちが首相に相応しいか。国民の考えを伺うことになる。」

「続投」を宣言した安倍総理。選挙戦で繰り返した「私と小沢さんと、どっちが首相に相応しいか」を国民に問うというフレーズは、どうなったのでしょうか。

政治においては当然、発した言葉に責任が伴います。ましてや、総理大臣が国政選挙で公言し、繰り返した言葉には格段の重みがあります。ところが、その言葉がこれほど簡単に忘却されるというのはどういうことなのでしょうか。

安倍「続投」内閣とは、言葉に対する責任から解放された内閣であると自ら認めたも同然です。

このことが党内的に議論されませんでした。日本経団連・御手洗会長は軽薄にも、安倍氏続投を支持しています。彼も、言葉に対する責任から自由な発想を持っています。

この国の中枢部には、言葉に対する責任というものがなくなっているということを如実に物語っています。


2007/7/30(月) 民主党勝利、しかし、まだ衆議院がある・・そして、愛媛・友近氏へ

「まだ、最高裁がある。」

一審二審で負けた裁判当事者が発する、まだ負けたわけではないという叫びです。

今の自民党は、「まだ、衆議院がある」という心境でしょう。衆議院の優越がある以上、参議院で負けても政権は維持できます。

民主党としても、「なんでも反対」という作戦は取れません。責任政党としての自覚が問われます。

フランスにおけるコアビタシオン(保革共存)、即ち、大統領と首相とが反対の政党である場合における政治的実践に学ぶ必要があります。

より成熟した政治センスが必要です。「解散総選挙に追い込め!」などと勢い込んでも、国民が「2連勝」を認める保証は何処にもありません。

今回の選挙は、安倍政権が勝手に転んだという要素が大きく、政権運営の手法が変われば、政局は落ち着いてくるものと思われます。

民主党が自民党よりも頼り甲斐がある、大人の政党であることを国民に周知するために、参議院の活用方法を真剣に考える段階に入りました。

《独言》
愛媛では、自民党王国の壁を破り、新鋭・友近聡朗氏が勝利しました。まずは、おめでとうございます。

問題はこれから。無所属では仕事になりません。他党との約束はあるでしょうが、1日も早く民主党入りをすべきです。有権者を裏切ったことにはならないと思います。

有権者の意思は、自民党政治の克服であって、単なる「反対」ではありません。民主党議員として6年間力を蓄えれば、6年後も当選です。


2007/7/29(日) 野党が務まる自民党であるか・・近代政党なのか、翼賛会なのか

本日参院選。自民党崩壊の始まりの日になるかもしれません。

民主主義が我が国でも自前のものとなるためには、60余年政権の座にあるこの政党が、野党に転落するという「工程」が是非とも必要です。

「野党・自民党」が数年間存続しうるでしょうか。自民党が近代的な政党なのか、「与党」に群がる大政翼賛会的な烏合の衆なのか。野党になってみれば分かります。

野党・自民党への第一歩の日。この選挙では政権交代は起こりません。しかし、衆議院解散に向けた政界の動きが加速し、新たな政治への胎動が始まります。

もちろん、民主党の勝利が前提です。


2007/7/28(土) 赤城のヤマも今宵限りか・・「単純ミス」の証明が必要

参院選たけなわでの赤城大臣の不明朗経理発覚。次から次へと出て来ます。領収書が二重に使われていた問題で赤城氏は、「単純ミス」だとしていますが、政治資金規正法違反である可能性が高く、「故意」がないことの証明が必要な段階に入っています。

【活動費二重計上、「事務処理のミス」と赤城農相が釈明】(読売) 
赤城農相が政治活動費を二つの関連政治団体の収支報告書に二重計上していた問題で、赤城氏は27日夜、東京・赤坂の議員宿舎で報道各社の取材に応じ、「単なる事務処理上のミスだった」と釈明、「率直におわび申し上げたい。こういうことが二度とないよう指導を徹底したい」と述べた。

自らの責任を問われると、「農政の課題にしっかりと取り組んでいきたい」と閣僚にとどまる考えを示し、参院選に与える影響については「コメントは差し控えたい」と言及を避けた。

一方、訪問先の北京からの帰国が1日遅れて27日になったことについて、「気温や湿度が高く、頭痛、腹痛、めまいの症状が出た。体調がまだ思わしくないので、静養したい」と語った。

【コメント】
「合法」ないしは「適切に処理」という理由で公開を拒否してきた事務所費等の使途が、今こそ明確にされなければなりません。単に政治責任=説明責任の問題ではなく、犯罪でないことの証明(or説明)のために。

ここまでくると、赤城氏の会計事務はほとんど出鱈目であるということになります。こうした出鱈目が許容される現在のシステムでいいのかどうか、真剣に議論されなければなりません。

政府はこの問題に対して、「特にコメントはない」としていますが、是非とも判断を示すべきです。ここらあたりの政治センスに、安倍政権の根本的な問題があります。

明日は参議院議員選挙。「赤城のヤマ」も今宵限りということでしょうか。安倍政権への審判が下ります。


2007/7/27(金) 「人生100年」に計画変更を!・・寿命はさらに延びる

このブログでは、繰り返し主張したいテーマを幾つか持っています。その1つが、「人生100年」を前提とした人生設計の提唱です。

100歳まで生きる確率が高まっている以上、人生100年を前提とした設計を行うことが賢明です。これまでの高齢者が「人生の字余り」に苦しんできたことを思えば、「100年思考」の方が、人生全体が充実したものになるだろうと思います。

【平均寿命:過去最長に…男79.00歳、女性85.81歳】(毎日)
厚生労働省は26日、06年の統計に基づく日本人の平均寿命を公表した。男性は79.00歳、女性は85.81歳で、ともに2年ぶりに前年を上回って過去最長を更新した。国・地域別では女性が22年連続で1位、男性も前年の4位から2位に上昇。また今回初めて、今の0歳児が90歳まで生き延びる確率を試算し、男性が21%、女性は44%だった。

寿命の前年からの延びは男性が0.44年、女性が0.29年で、男女差は6.81年に縮まった。05年は男女とも6年ぶりに寿命が短くなったが、再び延びたことについて厚労省は「05年に流行したインフルエンザが沈静化し、がんなどの治療成績が向上したため」とみている。

0歳時が将来死亡する際の死因別確率は、がんが男性29.97%、女性20.56%でともにトップ。心疾患と脳血管疾患を合わせた「3大死因」の合計は男女とも5割を超える。自殺の確率は男性2.57%、女性1.09%、交通事故は男性0.82%、女性0.38%。3大死因が克服された場合、平均寿命は男性で8.31年、女性で7.20年さらに延びると推計している。

【コメント】
0歳児が90歳まで生きる確率が、男子で21%、女子で44%。「3大死因」を克服すれば、平均寿命がさらに7〜8年伸びるのですから、「人生80年」では「字余り」が多すぎます。

私は現在54歳ですが、普通にやっていれば、あと40年は大丈夫な気がしています。100歳までは、あと少しの努力があれば到達するのではないでしょうか。

問題はその質です。クオリティーを高く維持したままの人生を維持できるかどうか。人生のクオリティーを維持するためには、プラス思考が必要です。「もう54歳」ではなく、「まだ54歳」の思考です。

50代、60代は少年少女。この発想で人生100年を楽しみたいと考えています。そのためには、自分の人生を見つめ直し、再定義する必要があります。

これまでの「出世云々」が100年の人生から見れば取るに足らない事象であることを自覚し、これからの人生の楽しみ方を自分自身に問いかけてみることが必要です。他人本位から自分本位に切り替え、自分の心の声に忠実に生きていくべきでしょう。

政権の1つや2つひっくり返すくらいの「熱き心」も必要ではないでしょうか。

(参照)7月10日のブログ
【50代、60代は少年少女・・100歳の視点】


2007/7/26(木) 民主55議席、自民40議席が目安になってきたが…

読売新聞の終盤情勢調査によると、民主党は60議席台をうかがう勢いであるのに対し、自民党は40議席を下回る可能性がでてきました。この方向に加速度が付いてきている情勢です。

とはいうものの、民主党55議席、自民党40議席というあたりが一応の目安になってくるでしょう。

【「自民の強さを侮るな」 民主が檄文で引き締め】(産経) 
民主党は25日までに、「自民党の強さを侮れば、必ず負ける」と訴えた小沢一郎代表の檄文(げきぶん)と、選挙活動の徹底を指示した鉢呂吉雄選対委員長名の文書を全国の党選挙対策関係者に送付、「民主党優勢」との情報に浮かれぬようくぎを刺した。

「必死で『地上戦』を戦い抜け」と題された小沢氏の檄文は、民主党の優勢を予測する報道は民主党を油断させるための最も効果的な攻撃だとし、「38年間、多くの選挙を戦い、何度も修羅場をくぐり抜けてきた私の直感がそう警告している」と強調した。

さらに改選1人区や複数候補擁立区のほとんどが大接戦なのに、選挙活動を放棄している選挙区があると指摘。自民党公認候補が、劣勢の見方を覆して勝利した群馬県知事選を挙げ「自民党の底力だ。1人区はどこも、このような力関係にある」と警告した。


【コメント】
自民党型の地上戦方式(陸軍型)の選挙を知っていれば、民主党型(空軍型)の選挙手法では最終的な「詰め」ができず、優勢な選挙区の幾つかを取りこぼす可能性があることが分かります。

「自民党の強さを侮れば、必ず負ける」という小沢一郎氏の言葉は、元自民党幹事長ならではの、重みがあります。

このところ政府与党から、選挙結果如何にかかわらず安倍総理の退陣がない、とのメッセージが繰り返し発せられています。過半数確保を断念した上で、参院選後の政局を眺め始めています。

その上で、最後の5〜10の選挙区で勝ちきる作戦が展開されています。この5〜10議席の重みを知る者が、政治のプロだと思います。


2007/7/25(水) 教師用「訴訟保険」と理不尽な親

理不尽な要求を繰り返す親の存在が、教育現場に暗い陰を投げかけています。

肥大化した権利意識を持った親が、我が子しか視野に入らないまま、教師に我が儘な要求をし、教師がそれに振り回されて本来の任務が全うできなかったり、精神的に参ってしまい、退職や自殺にまで追い込まれてしまう。

こうした現実の前に、教師は怯えています。訴えられるリスクへの対応も視野に入れざるを得ない状況のようです。

【教師用「訴訟保険」需要急増、都の公立校では加入者3割強】(読売)
保護者などから起こされる訴訟に備え、保険に加入する教師が増えている。

大手損害保険会社の大半が教師専用の保険を扱っているほか、公務員全般を対象にした保険を利用する教師も多い。東京都の公立学校では今年、保険に加入する教職員が3分の1を超えた。こうした状況は、学校に対する親の理不尽なクレームが深刻化する中、教師たちが「いつ訴えられるかわからない」という不安を抱いていることを示している。

複数の大手損保によると、教師向けの損害保険が出来たのは2001年前後。損害賠償請求訴訟を起こされた際の弁護士費用や、敗訴した場合の賠償金を補償する。毎月の保険料は200〜1000円、補償額は300万〜5000万円前後で、現在、大手損保6社のうち5社が、こうした保険を販売している。ある大手損保の担当者は、「口コミで保険の存在が広まっている」と語る。 


【コメント】
教育現場における危機管理が必要です。そのために管理職がおり、教育委員会も存在するはずですが、彼らの能力を超えた現実が存在することを前提とした対策も必要になってきます。

教師が本来の業務に集中するためには、理不尽な要求に対しては教師が直接関与せず、訴訟云々とは別に弁護士を立てる必要があります。

これから紛争の多い社会になる可能性があります。教育現場にその兆しが現れたということかもしれません。

親の正当な要求を排除することなく、教育現場が正常に機能するための施策が求められています。施策が不十分であり、システムの不備を補うために「訴訟保険」のニーズがあるということです。

(参照:2月3日のブログ)
要求する親・・・NHK・クローズアップ現代を見て


2007/7/24(火) 陸軍・自民vs空軍・民主・・「制空権」は掌握したが

今回の参院選は、戦争に例えれば、陸軍対空軍の戦い。組織力があり地上戦の趣がある自民党に対し、翼を広げ風を受けて舞い上がる空軍・民主党。

年金受給世代を敵に回してしまった自民党は、怒りの「冷却」に力を注ぎつつ、反転攻勢を目指しています。これまでの戦いでは、自民党の努力は功を奏していません。

他方、民主党はこれまで経験しなかったくらいの追い風に支えられています。議席予想で民主・50台後半、自民・40台前半というところです。

自民党は厳しい事前予想をバネに、最後の追い込みをかけ、1票1票の積み重ねで食いついてきます。これに対して民主党は、「制空権」を掌握してはいるものの、個別具体的な票の積み重ねができません。

3年前の選挙でも、自民党は大負けの予想でした。それをラスト1週間の追い込みで、50議席にまで持ち込みました。

今回は、そこまでの地上部隊が自民党サイドにはないと思いますが、最後の最後は生々しい戦いになると思います。


2007/7/23(月) 日経でも内閣支持率27%・・「党首力」評価でも小沢氏に軍配(朝日)

内閣支持率が高めに出る日経で27%。森内閣と同様、国民の支持を失っているというのが安倍内閣の現状です。

赤城農相等の閣僚から次々と疑惑が出てくるので、自民党の各候補は後ろからの「弾」に怯える日々だろうと思います。

【内閣支持率27%に低下・日経世論調査】(日経) 
安倍内閣の支持率は27%と6月の前回調査より9ポイントの大幅な低下となった。昨年9月の政権発足以来の最低を更新し、不支持(50%)との差はさらに広がった。政党支持率も民主は前回から4ポイント上昇して30%となり、同6ポイント低下した自民の29%を初めて逆転した。

内閣支持率が3割を切るのは、森政権当時の2001年2月以来。安倍内閣の発足直後は支持率が7割を超えたが、徐々に低下傾向が顕著となり今回も歯止めがかからなかった。

【「党首力」小沢氏に評価 本社連続世論調査】(朝日)
朝日新聞社が21、22の両日実施した参院選の第11回連続世論調査(最終回)では、安倍首相と民主党の小沢代表の「党首力」を比較した。

「政治家としてのリーダーシップがあるのはどちらか」と聞くと、小沢氏が50%で安倍氏の31%を上回った。30代〜60代で小沢氏が安倍氏をしのぐ。「政策のアピール力」でも小沢氏が40%と安倍氏の37%を超えた。女性より男性で小沢氏が目立ち、30代〜50代で小沢氏、20代と60代以上で安倍氏が優位だった。また、「改革が期待できる」は小沢氏が45%で安倍氏の31%を上回った。20代〜60代で小沢氏が多数を占めた。 

第3回連続調査(5月26、27日)で同じ質問をしたときは、「リーダーシップ」は小沢氏、「政策アピール力」は安倍氏がそれぞれリード、「改革期待」は互角だった。今回、安倍氏は小沢氏に「リーダーシップ」で差を広げられ、「政策アピール力」で逆転され、「改革期待」でも差をつけられた。 

安倍氏は今回の参院選について「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民の考えを聞きたい」と述べたが、参院選の投票が迫るなか、安倍氏の「党首力」に対して厳しい見方が示された形だ。 

【コメント】
2年前の衆議院総選挙で、民主党・岡田代表は完全に「空気」を読み違え、惨憺たる敗北を喫しました。そのときの民主党のコマーシャルは、「ニッポンをあきらめない」。これを見た民主党の各候補は、敗北を悟りました。

「郵政民営化是か非か」という小泉総理の単刀直入の問いかけに対し、民主党がニッポンをあきらめるかどうかなど、国民の関心事ではなかったのです。

安倍総理も完全に空気を読み違えました。「閣僚はクリーンか」と聞かれると「合法だ」と答える。総理総裁としての考えを聞かれると、「民主党の政策はおかしい」と答える。消えた年金問題について、「国民の不安を煽るな」と言っていたのが、内閣支持率が激減すると一夜漬けの法案を強行採決…

安倍総理の指導力に疑問を持つ国民が多くなった状況下で、「私と小沢さん、どちらが首相にふさわしいか、国民の考えを聞きたい」などと絶叫しても、「あんたじゃ駄目だろう」というリアクションしか期待できません。

組織を引き締めて、負けを最小限にする。これしかない局面に至りました。なお、自民党・公明党連合軍にはラスト1週間で各選挙区2万票を上積みする地力があるので、民主党候補者は要注意。


2007/7/22(日) 二世三世は、何故多数決主義を貫徹できるのか・・親父たちは身の程を知っていた

安倍内閣になって、法律によって与えられた権限を最大限行使して、多数決主義を貫徹する姿勢が顕著になってきました。次々と強行採決で国会において法律が生み出されました。

従来なら、慎重の上にも慎重に審議されてきた重要法案が、いとも簡単に成立する場面を見て、国会というところが国民の権利を護るための防波堤たり得ない現実を見せつけられました。

自民党における二世三世議員中心の構造にその原因を見つけることが可能です。彼らには、生まれながらにして権力者であるという一面があります。親父たちが泥まみれになり、這いずり回って手に入れた権力を、生まれながらに承継してきています。

「美しい国」などという抽象的な言辞を恥ずかしげもなく言える精神構造の根拠は、彼らの基盤が実質的には非民主的であるところに見いだされます。

親父たちには、手に入れた権力の基盤がよく分かっていました。身の程をよく知っていたのです。そうであるが故に、法律上の権限を最大限行使することには抑制的でした。彼らの戦争体験がそうさせたという面も見逃せません。

戦争体験もなく、苦労もなく権力を手に入れた者に自己抑制を期待する方が間違っているのかもしれません。彼らを覚醒させるもっと有効な手段は、落選させるか、政権から転落させるか、どちらかです。


2007/7/21(土) 「合法」であることの疑惑・・閣僚・国会議員の「事務所費」

今度は、塩崎官房長官の事務所費が取りざたされています。「回答」は例によって、「(法律に則って)適切に処理されている」。この「回答」自体が疑惑であり、内閣支持率を低迷させる原因になっています。

【塩崎官房長官の経費疑惑、共産党が指摘 本人は否定】(朝日)
塩崎官房長官の政党支部と後援会が松山市の同じ場所に事務所を置き、05年の計約2100万円の事務所費のうち約1330万円の使途がわからないと、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が22日付の日曜版で報じることが分かった。同党の志位委員長が20日、記者会見で明らかにした。 

同紙などによると、塩崎氏が支部長の「自由民主党愛媛県第1選挙区支部」が約580万円、「塩崎恭久後援会」が約1530万円の事務所費を05年に計上。家賃や政党支部の電話代、リース料などの合計約770万円を除いた残りの約1330万円について、同紙は「どこに消えたのか」と疑問視している。 

これに対し、塩崎氏は同日、事務所費は三つの事務所を合わせたものだと説明し、「適切に処理されている」と強調した。 

【コメント】
「クリーンであるか」と聞かれ、「合法である」「適切に処理している」と答える。安倍内閣発足以来、この繰り返しです。

要するに、「政治とカネ」の関係を不明瞭に出来る「法律」をつくっておいて、「合法」で逃げられるようにしているということです。

「疑惑」否定は実に簡単です。使途を全て明らかにすればいいだけです。これができないことが、我が国の政治の実態を裏から照らし出しています。

政治家の集票力とは何か。それは、多くの場合、「カネ」です。「カネ」を媒介とした様々な不明朗な関係を白日のものにできなければ、我が国の民主主義の前進は困難です。


2007/7/20(金) 政府による選挙違反・・与党の宣伝に政府公報まで動員

ここまで追い詰められたかというお話。政府公報を実質的な与党PRにしていいはずはありません。選挙間近になれば、政府公報で選挙の争点となりうる事柄について述べることを自粛すべきです。

常識的な判断が期待できなくなっているのが現政権です。

【「年金対策の政府公報配布は公選法違反」民主が告発へ】(朝日)
民主党は19日、同日付の全国紙朝刊に折り込んで配布された「年金記録問題への対策」と題した政府広報について「消えた年金問題と定率減税廃止について与党の主張をそのまま記載している。究極の選挙違反で、政府の名を借りた選挙運動への税金の流用だ」と批判。安倍内閣を公職選挙法違反で告発する準備に入ったと発表した。 

政府広報は4ページ。3ページを使って年金記録問題について加入履歴の送付や、基礎年金番号に未統合の記録の名寄せを急ぐこと、社会保障カード導入などを記載。4ページ目では6月からの住民税増税について「定率減税の廃止による影響は約1割程度で残りの約9割は税源移譲による」と説明。鳩山由紀夫幹事長は19日、那覇市での会見で「政府広報の名を借りた自民党の選挙宣伝だ」と批判した。 

塩崎官房長官は首相官邸で記者団に「年金記録問題は国民が一番心配している。一刻も早く不安を解消するため周知徹底するのは、政府の当然の責任だ。告発するなら、それこそ選挙目当てのパフォーマンスと考えざるを得ない」。選挙期間中の配布については「7月5日に決定して広報の準備をしてきた。どうやっても選挙中になってしまう」と説明した。 

【コメント】
与党が与党としてやればいい宣伝を「政府」がやるというのは、税金を与党の宣伝に使うための方便です。

この手法がまかり通るなら、どの選挙でも、「国民が一番心配している」事柄について、政府が政策宣伝をすることで、与党のために税金を投じて宣伝を行うことが可能です。

ことの是非善悪が分からなくなってきている現政権。益々危険な性格を帯びてきています。

公職選挙法のどの条項に反するのか、記事では不明です。「公務員の地位利用行為」ということになるのでしょうか。


2007/7/19(木) 獄中12年、非転向の男。宮本顕治、死す。

「ミヤケン」と呼ばれた彼は、戦後の日本共産党をつくりあげた第一人者でした。彼の下で共産党が躍進した頃、私は大学に入りました。

彼の提唱した「民主連合政府」が出来るのは、時間の問題だと思っていた時期もありました。

男子たる者、かくありなん。特高警察の拷問に耐えて、獄中12年。非転向を貫いた人物。その存在感で自民党の政治家を圧倒していました。大胆かつ柔軟な政治家。

好きな政治家を挙げろと言われたら、少なくとも何人かの1人として、彼の名前を出したいと思います。

【宮本元議長死去:戦後の共産主義運動発展にリーダーシップ】(毎日)
共産党の宮本顕治元議長は日本という先進資本主義国の中で、国会で共産党に議席を持たせるなど、戦後の共産主義運動を発展させた稀有のカリスマ・リーダーだったと言える。

「ミヤケン」の愛称もあったが、強力なリーダーシップで党の実権を掌握。82年には「秘蔵っ子」と言われた不破哲三氏を委員長に昇格させ自分は議長に就任。

さらに90年には現在委員長の志位和夫氏を35歳で書記長に抜擢するなど現在の共産党体制の基礎を築いた。

最近では志位委員長の下での柔軟路線が定着し党運営や路線への直接的な影響力は薄れていた。

宮本氏は08年、山口県光井村(現在の光市)の肥料米穀商の長男として誕生。旧制松山高校から東京帝大経済学部に進んだ。

在学中には芥川龍之介について論じた「敗北の文学」で懸賞論文の1位に当選した。ちなみに2位は小林秀雄だった。

31年に共産党に入党し日本プロレタリア作家同盟に入った。その後、作家の中條(宮本)百合子氏と結婚。共産党に対する弾圧が強まり、地下活動に入った。33年に治安維持法違反容疑などで逮捕され45年10月まで獄中生活を送った。

終戦後、徳田球一氏、志賀義雄氏らと党の再建にあたった。しかし党内は所感派と国際派とに分裂し、宮本氏は国際派のリーダーとして路線闘争を率いた。

51年には宮本百合子氏が51歳で死去し、その後、獄中での百合子氏との往復書簡集「十二年の手紙」を発表するなど文芸評論家としても活躍した。

宮本氏は58年に書記長就任し実権を掌握。70年に委員長、82年に議長に就任しさらに地歩を固めていった。

対外的には自主独立路線を提唱し、旧ソ連や中国との関係を絶った。スターリンを批判し、ソ連・東欧の共産主義政権崩壊の際は「ソ連型社会主義の敗北で日本共産党は違う」と強調、党員の動揺を抑えた。

国内的には議会重視の平和革命路線を、民主主義に対立する「プロレタリアート独裁」の用語を党綱領から削除、「マルクス・レーニン主義」も「科学的社会主義」に置き換えた。

自らも77年に参院選挙に全国区から出馬し初当選した。党勢拡大と議会での議席増を目指す「平和革命路線」をとり、79年衆院選では過去最高の41議席を獲得した。

70年代前半には社会党との共闘で東京、大阪、京都などで革新自治体を誕生させた。さらに74年には公明党の支持母体である創価学会との創共協定を結んだ。

宮本氏は同党の機関誌「赤旗」の部数拡大路線で同紙は宣伝媒体であると同時に大きな収入源となった。政党助成金を受け取らないでも済む同党の財政基盤を固めたとも言え、宮本氏の経営感覚の鋭さを指摘する声もある。

【コメント】
「確かな野党」と自らを定義して、政権を目指さなくなった共産党。この姿を彼はどう見るのでしょうか。

彼が健在なら、自公政権成立と同時に、公明党と左右対称を為す作戦を展開して、自民党政権転覆作戦を遂行したのではないかという気がします。

いや、企業の寿命が30年といわれるのと同様、彼が育てた共産党組織の寿命が尽きてきたのかもしれません。彼の後継者・不破哲三氏が、組織のイノベーション(革新)を怠ったいうことでもあるでしょう。

ミヤケン死す。我が青春時代も遠い彼方に去ったような気がします。


2007/7/18(水) 「与党過半数割れ」・・・アナウンス効果をどう見るか

与党必敗が伝えられ得る情勢。しかし、選挙は蓋を開けるまで分かりません。現時点での選挙予測報道が実際の結果に与える影響、即ち、アナウンス効果がどう出るかが関心事になります。

【与党過半数割れも、民主第1党の勢い…参院選・読売調査】(読売) 
読売新聞社は、29日投開票の第21回参院選を前に、全国世論調査を実施し、総支局の取材結果も加えて選挙情勢を探った。

自民党は、1人区など選挙区選で苦戦し、比例選でも勢いに欠ける。公明党も伸び悩んでおり、与党は参院で過半数ラインの122議席を維持できない可能性が強い。年金記録漏れ問題などで有権者の反発が高まっているためと見られる。民主党は選挙区選、比例選ともに躍進し、非改選の議席を合わせ参院での第1党をうかがう勢いだ。ただ、選挙区選で約5割、比例選で約3割の有権者が、投票する候補者や政党を決めておらず、投票日までに情勢が変化する可能性もある。

参院選は、改選定数121(選挙区選73、比例選48)に対し、選挙区選に218人、比例選に159人が立候補している。与党の非改選議席は、与党系無所属を含めて58あることから、過半数を維持するには64議席以上が必要となる。

自民党は選挙区選では、焦点となっている29の1人区のうち、群馬と山口で優位に戦いを進めている。だが、東北や四国、九州の全域など、これまで固い支持基盤を誇っていた地域で、民主党に競り負けるか、激しく追い上げられている。14勝13敗だった3年前の参院選よりも苦しい展開だ。

2人区、3人区では、それぞれ1議席を確保する情勢だ。5人区の東京では2議席目を無所属候補や共産党候補と競り合っている。

比例選でも自民党は伸び悩んでいる。逆風に加え、選挙区選で公明党から選挙協力を得るため、「比例選は公明党へ」などと支持者に呼びかける自民党候補が増えたことが一因と見られる。自民党は過去最低だった98年の14議席を下回ることもあり得る。

このまま自民党が逆風をはね返せなければ、選挙区選と比例選の合計で40台前半となる可能性が高い。

これに対し、民主党は1人区の岩手、三重で優勢なほか、山形、山梨、滋賀、奈良、徳島で先行している。このほか10近くの選挙区で当選をうかがう。複数区の千葉や愛知でも2議席獲得の可能性がある。

比例選では、04年参院選で獲得した過去最多の19議席に上積みし、20議席の大台に乗せる勢いだ。

民主党は現時点の勢いを維持出来れば、50台後半に届くことが予想される。

公明党は大阪で優位に選挙戦を進めているほか、他の選挙区でも当選圏内をうかがっている。比例選では01年、04年の参院選で獲得した8議席を確保できるかどうか微妙な情勢だ。年金問題などで守勢に立たされているのが響いている。

共産、社民両党は、それぞれ改選議席確保に向け、厳しい戦いを強いられている。初めて比例選に候補を擁立した国民新党、新党日本は1議席を獲得できる可能性がある。


調査は7月14〜16日の3日間、全国の有権者を対象に電話で実施。有権者がいる世帯6万6873件のうち、4万1735人から回答を得た(回答率62・4%)。

【コメント】
安倍総理が頻繁にテレビ出演をしているにもかかわらず支持率が低迷しているところを見ると、与党に同情票が流れるということを期待できない状態であると思われます。

安倍総理が何かを行い、何かを発言しても、額面通りには受け取れないような心理状態が有権者に醸成されてきています。

与党候補の中で、安倍総理批判を展開することで生き残りを策する動きすら出てきました。

負けが負けを呼ぶ情勢。自己実現的なアナウンス効果になる可能性が大きいと思います。

ただし、3年前の愛媛選挙区では、最後の1週間に2〜3万票、与党サイドに動いたようです。今回、与党サイドの危機バネがどれだけ働くかが見物です。それとも、鞭打てど走らずなのか。

8割方与党敗北と見ますが、勝負は下駄を履くまで分からず、選挙は蓋を開けるまで分かりません。


2007/7/17(火) 人への投資を「バラマキ」という自民党

民主党のマニフェストに対し、自民党が「バラマキ」だという批判を展開しています。

そもそも「バラマキ」とは何か。かつての革新自治体で、人気取りのために過剰な福祉施策を行ったために、自治体財政が悪化したことへの反省から、財政力を超えた過剰な福祉的支出が、短期の人気取りのために行われる場合を指すものだと定義しておきたいと思います。

民主党のマニフェストには、(1)年金基礎部分への消費税全額投入(6.3兆円)、(2)子供手当の創設(4.8兆円)、(3)公立高校の無償化と奨学金制度の拡充(0..3兆円)、(4)農家への個別所得補償(1兆円)、(5)高速道路の無料化(1.5兆円)、(6)最低賃金引き上げのための中小企業対策等(1.4兆円)というリストが掲げられています。

これらはバラマキであるか。短期の人気取りであり財源が不明確であれば、過剰な福祉的施策であり、バラマキであるとの批判もあり得ます。

しかし、これらの支出項目に対応するものとして、(1)補助金一括交付による6.4兆円、(2)談合・天下り根絶による1.3兆円、(3)特殊法人・独立行政法人・特別会計等の原則廃止による3.8兆円、(4)国家公務員総人件費の節減で1.1兆円、(5)所得税等税制の見直しで2.7兆円という財源が明示されています。短期の施策ではなく、財源も明示されています。しかも、これらが実現すれば、我が国と地方は、分権国家として新たな時代を迎えることが可能です。

より本質的には、民主党がマニフェストに掲げた上記支出は、実質的には投資的な支出です。年金制度の充実は、若者が将来に不安を感じることなく働けるためのインフラです。子供手当は少子化対策であるとともに、将来社会を担う子供たちへの投資です。高校無償化も同様。最低賃金引き上げのための中小企業対策も、中小企業の基盤充実のための投資的支出です。

農業の個別的所得補償についても、日本型の精密農業を維持発展させるため、地方における集落維持のために要する投資的な支出です。

これらの支出に対してバラマキであるという批判しかできない、自民党の政策立案応力の貧困こそが問題であると思います。

(参照)6月18日ブログ
【「精密農業」こそ、日本の進むべき道・・自民党型農政は国を滅ぼす】


2007/7/16(月) 出れば出るほど支持を失う安倍総理

テレビに頻繁に登場して支持率回復を狙う安倍総理ですが、世論調査の結果は冷酷です。支持率回復の兆しはありません。

このまま投票日を迎えれば、惨敗必至の情勢です。

【比例投票先 民主30%、自民23% 本社連続世論調査】(朝日)
朝日新聞社が14、15の両日実施した参院選の第10回連続世論調査(電話)で、「いま投票するとしたら」として聞いた比例区の投票先は、民主が30%(前回26%)と伸び、自民は23%(同22%)だった。選挙区でも民主32%(同28%)、自民26%(同25%)と、民主が増加傾向だ。安倍内閣の支持率は30%(同31%)、不支持は55%(同51%)で、不支持は就任以来、最高を記録した。

参院選が公示され、投票先を明らかにする人が増えている。そのなかで民主の伸びが目立つ。 

5月12、13日の第1回調査の投票先は、比例区が自民28%、民主21%、選挙区が自民31%、民主22%と、自民がともに優位だった。比例区では第5回に民主が初めて自民を上回り、一度は互角となったものの、第8回以降再びリード。今回、大きな差をつけた。選挙区も第5〜8回は競り合っていたが、第9回で民主がやや上回り、今回さらに水をあけた。自民、民主以外の今回の比例区投票先は公明5%、共産4%、社民3%など。 

選挙の結果、与党と野党のどちらの議席が多数を占めてほしいかでは、「野党」が54%(前回48%)とこれまでで最多となった。「与党」は29%(同29%)だった。 

年金記録の問題で国民の怒りが「まだ続いている」と思う人は88%と依然として高い。自分の年金に対する不安が「解消していない」人も50%と半数にのぼる。「解消した」は11%、「もともと不安はない」は33%だった。 

赤城農水相の事務所費をめぐる政治資金問題で安倍首相の対応が「適切ではなかった」とみる人は71%に達した。「適切だった」は15%にとどまる。投票先を決めるとき「政治とカネ」の問題を「重視する」は68%にのぼる。 

●首相の印象「悪化」45パーセント 

今回の世論調査では、「最近の発言や行動をみて安倍首相の印象がよくなったか」どうかを聞いた。「よくなった」が6%にとどまるのに対し、「悪くなった」が45%にのぼった。「変わらない」も45%。参院選では安倍首相を「選挙の顔」と押し立てる自民だが、有権者の首相を見る目は厳しいようだ。民主の小沢代表は「よくなった」が10%、「悪くなった」が14%で、「変わらない」が71%と最も多かった。 

安倍首相の印象が「悪くなった」は男性で47%、女性で43%。民主支持層では「よくなった」が3%、「悪くなった」が59%。無党派層でも「よくなった」は2%、「悪くなった」が49%だった。自民支持層で「悪くなった」が26%と、「よくなった」の15%を上回るのも目を引く。 

参院選公示前からメディアに積極的に登場するなど国民へのアピールを狙った安倍首相だが、いまのところ効果はあまり出ていない形だ。 

小沢代表の印象は「変わらない」が男女、年代を問わず圧倒的。無党派層でも「変わらない」が79%と多く、「よくなった」7%、「悪くなった」11%だった。 

〈調査方法〉全国の有権者を対象に「朝日RDD」方式で電話調査した。対象者の選び方は無作為3段抽出法。有効回答は1118人、回答率は65%。連続調査は5月12、13日から毎週末に実施している。 


【コメント】
普通、露出度が高まれば、同情票的なものが増えそうなものですが、それもないようです。

「孤軍奮闘」が、どうしても独り善がりに見えてしまう。「聞く耳」を持たず、他を批判する。最も支持されないパターンに陥っています。

官邸は何をやっているのでしょうか。総理の個人プレーに頼っていてはどうにもならないことは明白です。

かつての自民党保守本流は、幅広く意見を聞き、懐の深い横綱相撲を心掛けていました。これに対し、二世三世中心の現政権は、平幕の突っ張り相撲しか取れなくなってきています。

政権交代を予見してか、民主党に対する野党スタンスで論戦に挑んでいる姿を見ると、痛々しいものを感じてしまいます。


2007/7/15(日) 街頭に 人集まらず 夏嵐・・・参院選に大型台風乱入

7月上陸の台風では観測史上最強の台風4号は、九州に上陸後高知沖を東進。

近年、温暖化の影響か、上陸まで勢力が弱まることなく猛進する台風が増えてきました。このことを含んだ防災対策が必要になってきています。

参院選は、各地で街頭演説等の活動が活発ですが、党首や大物議員が駆け付けても、台風のため街頭に有権者が集まらず、苦労しているようです。

街頭に 人集まらず 夏嵐 天下分け目の 列島を行く 

《独言》
我が愛媛中予地区には大雨洪水暴風波浪警報が出ました。結果は普通の雨でした。四国山地のお陰です。

私が取締役として担当している伊予市の中心市街地活性化のための施設・手作り交流市場「町家」のテントをどうするかで、1日やきもきしました。

災害の少ない地方です。しかし、巨大台風への対策を考えないといけない段階に入っています。


2007/7/14(土) 町村部が液状化した・・田舎も民主党だ!

自民党政権の崩壊は、都市部ではなく農村部から。安倍内閣の失政は、自民党の岩盤である農村部での揺らぎをもたらしています。

小泉政権の5年半で、地方はメチャメチャになりました。それでも、ペテン師に引っかかったように、自民党への支持が継続していました。その地方で静かな反乱が起きています。

【町村部での投票先、民主が自民上回る…読売継続調査】(読売)
参院選に関する読売新聞社の継続世論調査(電話方式)で、自民党の固い支持基盤である町村部でも選挙区選の投票先に同党をあげる人が減り、急伸した民主党に逆転されたことが分かった。

勝敗のカギを握る29の「1人区」は町村部を多く抱えており、自民党には厳しい情勢だ。

これまでの計4回の調査で選挙区選での投票先の推移を見ると、第3回(3〜5日実施)までは自民、民主両党が拮抗(きっこう)していたが、第4回(10〜12日実施)では民主党(27%)が自民党(22%)を5ポイント上回った。

これを都市規模別(5分類)で見ると、中核都市、中都市、小都市では両党に大きな差はないが、大都市部は民主党31%、自民党16%、町村部では民主党30%、自民党21%といずれも民主党が大きくリードした。

大都市部では第1回の調査時から民主党が優勢だったが、町村部では自民党が37%→30%→31%→21%と当初から16ポイント減。一方、民主党は22%→21%→15%→30%と推移、ここにきて自民党を離れた有権者を取り込んでいると見られる。

公明、共産、社民の各党は大きな変化はなかった。

前回参院選時の継続世論調査では、町村部での選挙区選の投票先は、常に自民党が民主党を上回っていた。民主党は今回、小沢代表が「地方重視」を掲げて町村部での遊説を重ね、農家への戸別所得補償などを訴えており、それが効果を表してきたとも言えそうだ。

ただ、今回の第4回調査でも、政党支持率は町村部で自民党が33%と、民主党の24%を上回っている。


【コメント】
自民党にとって、極めて深刻な事態です。

ここ2、3年で、民主党は農村へのシフトを強化してきました。それに対し自民党は、グローバル化した大企業の要望に添い、地方切り捨て、大都市重視の政党になってきました。「改革」とは、そういうことだったのです。

この政策の転換が、地方住民にとって身にしみる形で実感されてきたのではないでしょうか。そうだとすると、単に年金問題への不信感というような一時的なものではなく、政治基盤に構造的な変化が生じつつあるということになります。地方の液状化です。

ただし、安倍内閣は支持されなくても、自民党が変化すれば戻ってくる基礎があります。自民党支持率は依然、民主党を上回っているのですから。

ここらあたりが、安倍政権崩壊後をどう考えるのかのポイントになります。


2007/7/13(金) 「問い」に対して答えない安倍内閣に嫌悪感が広がる

このところテレビに出まくっている安倍総理を見ていると、この人物は「問いに対して答える」という基本が出来ていないんだなあ、という感想を持ちます。

課長補佐クラスが行うような細々した説明をしていますが、それが国民の「問い」に対する「答え」とは思えません。民主党のマニフェストに対する批判に力がこもります。しかし、国民が総理・総裁に聞きたいのは、民主党の政策の弱点について、なのでしょうか。

赤城農相の政治団体の事務所費にまつわる疑惑について、国民は赤城氏が「クリーンかどうか」を問題にしています。ところが、それに対する「答え」は、「合法である」というものです。

そうしたやり取りをすればするほど、支持率は低下します。高まるのは、安倍内閣に対する嫌悪感だけです。「不支持率」の高さに対する分析ができていないようです。

蟻地獄に落ちた蟻。テレビ出演に追われる安倍総理の姿は、蟻地獄で藻掻き苦しむ蟻に見えてしまいます。


2007/7/12(木) 寺田典城秋田県知事の提案・・分権国家への布石

政権交代が起き、分権国家への道筋ができたとしても、これまで生じた大都市と地方との格差を放置したままでは、地方の発展は極めて困難です。

格差是正のためには、1国2制度ないしは数制度を認め、各地域の機会均等を達成しなければなりません。

【秋田県知事、全国知事会で地方優遇策を提案へ】(朝日)
秋田県の寺田典城知事は12日から熊本市で開かれる全国知事会で、都市と地方間の格差是正策「1国2制度」を提案する。企業立地の面で不利な過疎や豪雪などの地域に対し、全国一律のルールを見直して法人税率の引き下げや高速道路の無料化などの優遇措置を認める内容で、企業誘致や産業集積が期待できるとしている。 

総務省によると、05年度の都道府県決算では地方税収が前年比で1兆2656億円増えたが、半分は東京、愛知、千葉の1都2県に集中している。寺田知事は「国からの財源移譲をしただけでは地域は活性化しない」として、税制度などを、過疎や豪雪など地域の実情に合わせて変えるべきだと主張する。 

例えば、全国一律30%の法人税については、15〜30%の4段階の異なる税率の適用を可能にし、地域の財政力が低い道府県の税率は低くして企業の進出を促す。 

金融制度面では、県民所得が250万円未満の地域は現行よりも低い保証料率の適用を要望、高速道路のうち東北などの赤字路線の値下げや無料化を提案する。 

秋田は人口減少率や出生率、自殺率、がん死亡率などの指標がいずれも全国最悪。こうした特例措置を地域振興につなげたい考えだ。 

寺田知事は北海道や東北など一部の知事には事務方を通じて説明し、賛同を働きかけている。 

ただ、国税は全国一律の税率が大原則で、専門家の間では実現に向けたハードルは極めて高いとの見方が強い。 

【コメント】
今年は、明治140年。

欧米列強の植民地主義に対抗し、国の独立を守るために明治維新が起きました。明治政府は、列強に追い付き追い越すために、「富国強兵」の旗印の下、中央集権による資本主義への道を走りました。

我が国は、先進国への仲間入りをした時点で、分権国家へとシフトチェンジしておくべきでしたが、その時期を大きく誤って今日に至っています。

秋田県知事の提案は参考になります。地方が抱える問題をつまびらかにし、分権国家に至るために克服すべき課題を明らかにしておくべきときです。

「独立資金」なき「分権」は、格差拡大を助長することにしかなりません。


2007/7/11(水) 公務員を個人として解放せよ・・特に、キャリア官僚

公務員制度をどうするか。これから政治が取り組むべき大きな問題です。自民党型の「解答」は、公務員制度の歪みを是正することなく、単なる公務員叩きで国民の不満を解消するものに過ぎません。

具体的には、国家公務員は国内大企業に準拠した待遇、地方公務員は地域の中小企業に準拠した待遇にすることで、「官民格差を是正」することになります。

このやり方を単純に実行すると、公務員のモラル低下を招き、優秀な人材を得にくくなります。そこで、従来から行われてきた「天下り」による「超過利得」を保障することで、公務員の志気を高めようとすることになります。

しかしそれでは、我が国の公務員の大きな病である、組織依存症はなくなりません。公務員が自立した市民となることが、真の公務員制度改革の目標でなければなりません。

私の結論は、公務員を「24時間型市民」として位置付け、所得において若干優遇するというものです。公務員志望者は、「若干」以上のものを求めず、市民の代表者として個人の志を実現していくところに生き甲斐、やり甲斐を求めていくことになります。

「組織の型」にはめ込まれた見返りとしての「天下り」を根絶することが、個人としての公務員を解放することにつながります。

民主党が参院選のマニフェストで、党の主要施策に必要な財源として行政の無駄を省くことで得られる15.3兆円を掲げているところは重要です。内訳としての、補助金一括交付による6.4兆円、談合・天下り根絶による1.3兆円、特殊法人・独立行政法人・特別会計等の原則廃止による3.8兆円に注目します。

これらが実現すれば、中央による地方統治、即ち、中央集権体制を打破できます。見方を変えれば、公務員、特にキャリア官僚の個人としての解放です。彼らの組織依存症を断ち切り、本来持っている個人としての志と能力を大切にすることが、新生日本を切り開く原動力になると考えます。


2007/7/10(火) 50代、60代は少年少女・・100歳の視点

10年前の写真を見ると、この頃は若かったんだなと思います。多分、10年経ったら今の自分の写真を見て、同様の感慨を持つでしょう。昔の政治家が「50、60、洟垂れ小僧」と言っていたのを思い出します。

人生100年時代。テレビで100歳の老人が紹介されることがあります。20年前は、やっと100歳に辿り着いたという感じの、よれよれの老人が多かったのですが、この頃は、余裕すら感じる人が多くなりました。将来、かなり多くの方が100歳のラインを突破してくるでしょう。

100歳の視点で自分や社会を眺めれば、現在只今あくせく考えていることのほとんどが、重要なことではないことが分かります。

老後だなんだと言っている50歳代、60歳代の方々。皆さんは100歳から見れば少年少女である。これからだ。そういう感覚を持っていて損はしないと思います。自分自身に「賞味期限」を設定して自己限定をする必要など全くありません。

100歳の自分は、今夏の参院選をどう振り返って眺めるだろう。歴史の流れの中で現在を位置付けながら、物事の本質を突き詰めていきたいと思っています。


2007/7/9(月) 小沢一郎氏、背水の陣・・・「負ければ政界引退」

今回の参院選は、日本の政治がこれからどうなっていくのかを占う上で、大きな意義を持っています。

自民党勝利によって、格差が益々拡大し、地方が切り捨てられるのか。それとも、野党勝利で政権交代への第一歩となるのか。

先進国では異常な、実質的に半世紀に渡る自民党政権の腐臭漂う政治をさらに継続させるのか。国民の真剣な意思表示が必要になっています。

小沢一郎氏は、参院選に敗北すれば政界を引退すると述べました。

【参院選負ければ政界引退 小沢民主党代表が表明】(共同通信) 
民主党の小沢一郎代表は8日午前のフジテレビ番組で、参院選で目指す与野党逆転が実現できなかった場合の責任について「万が一(負けたら)の場合、政界にいる必要はないと思っている。自分自身の心の内ではそういう決意だ」と述べ、政界を引退する考えを表明した。

小沢氏は5日の報道各社のインタビューで、野党が過半数を獲得できなければ代表を辞任する意向を示していた。さらに踏み込み政界引退を表明することで民主党陣営の引き締めを図るとともに、安倍晋三首相(自民党総裁)との決意の違いを際立たせ世論の支持獲得を狙ったとみられる。

安倍首相は同番組でも「数ではなく、あくまで目指す政策が実行できるかどうかだ。そのために最後まで全力を尽くす」と述べるにとどめ、自らの責任ラインは明示しなかった。

小沢氏はこの後、記者団に対し「わたしの(衆院議員としての)任期はあと2年だ。(敗れても直ちに)議員辞職するわけではない。継続を考えずに最後の奉公を頑張る」と述べ、次期衆院選に出馬しないことによる引退になると説明した。

【コメント】
ここ20年間、小沢一郎という名前は、政界で大きな重みを持って存在してきました。「小沢か、反小沢か」で政界が割れたこともありました。

自民党の中枢に君臨していた大物政治家・小沢一郎氏が自民党を割って出たときから、政治に希望の光が差してきたように思います。

苦節十数年。「三国志」に出てくる劉備玄徳のように、政界を流浪してきた印象もあります。ここにおいて、好機到来。

国政からこのビッグネームを消すわけにはいかないのではないか。民主党候補者の奮闘を期待します。


2007/7/8(日) 「架空計上ではない」(赤城農相)と言えるのか・・また出てきた「政治と金」

ザル法(政治資金規正法改正)で「政治と金」の問題を切り抜けようとした安倍政権ですが、またまた不明朗な政治資金の流れが指摘されています。

それも、ナントカ還元水問題の渦中に自殺した松岡農相の後任、赤城徳彦氏にまつわる問題です。

【赤城農相:事務所費問題 不透明な「四つの財布」】(毎日) 
関連する政治団体の事務所経費の不透明さが発覚した赤城徳彦農相。「徳友会」「徳政会」「赤城徳彦後援会」「自民党茨城県第一選挙区支部」の四つの政治団体があり財布を四つ持つ形だが、そのうち三つの団体で不自然な政治資金の支出が指摘された。赤城氏は7日、釈明会見をしたが疑問は払しょくされていない。

 ■900万円も必要か

茨城県の実家を事務所としている関連政治団体「赤城徳彦後援会」は10年間に約9045万円に上る経常経費を計上していたことが発覚したが、平均すれば年間の支出額は約900万円となる。

会見で、「支出額が多すぎるのでは」と記者から指摘されると、赤城氏は「電話代とか切手代、事務機器のリース料とかいろいろなものを積み上げた」と説明した。

さらに「家賃なしで数百万円になるのか」と重ねて問われると、赤城氏は「活動が活発な年には事務通信関係にかなり費用がかかる。多いか少ないか分からない」と語るにとどまった。

 ■光熱水費の区別は

「後援会」は本人の実家。このため当然、両親が使う分とは区別が必要だ。この点について赤城氏は「後援会活動と生活は違うので、おのずと別物と思いますが……」歯切れが悪く、納得できる回答はなかった。

 ■活動実態はあるのか

「後援会」などの活動について、常駐のスタッフがいるのかも問題となった。この点では「今はいない。忙しい時にはアルバイトやスタッフに来てもらうことはある。両親がいるので、(用があれば)いろいろ連絡してもらっている」と強調。支持者らは「(実家は)事務所として使ったことがない」と証言。元秘書も「日常的な活動はしていない」といい、赤城氏の説明の苦しさを示す。

 ■代表者はだれ

赤城氏は「後援会」の代表者について会見で「先代から後援会活動の中核。代表就任にあたってもご了解いただいている」と説明した。しかし、当の代表者とされる男性は「代表を頼まれたことはない」と否定している。赤城氏は、この男性の証言について「何かの勘違いか誤解」と反論した。

 ◇「政治とカネ」の闇は深まるばかり

国会議員の「事務所費」を巡る疑惑が次々と明らかになる。安倍晋三首相は国会の会期を延長して政治資金規正法を改正したが、「ザル法」との指摘も強い。「政治とカネ」の闇は深まるばかりだ。

赤城農相はこの日午前中から地元の茨城県に戻り、支持者らと会った。事務所費などの不透明な支出を指摘する報道が相次いで、夕方になって農水省で緊急会見、釈明した。

これまで党首クラスを含めて、与野党を問わず、多くの国会議員たちが事務所費の実態を疑問視されてきた。

疑惑を報道などで指摘されると、多くの議員が「法律に従って処理している」などと正当性を主張してきた。しつこく追及されて、記者会見に応じたケースでも、詳細を積極的に明らかにすることはほとんどない。

「秘書が処理している」と秘書を盾にして追及をかわし続けることも多い。また、伊吹文明文部科学相や小沢一郎民主党代表らは、政治資金規正法の問題点や解釈の不統一さを指摘している。

【コメント】
政治と金の問題。これも参院選で有権者が考慮すべき重要論点です。

この問題に関する安倍総理の認識は極めて甘いと言わざるを得ません。誰が見てもザル法にしか見えない政治資金規正法改正案で、問題が解決するはずがありません。

政治力は、政治家の資金量に比例します。資質がなくても資金があれば、そこそこの政治家に見えるものです。資質なく資金のある政治家が跋扈することで、国の将来を誤ることもあります。

民主政治の根幹に関わる政治と金に関する「解答」が求められています。安倍晋三氏には回答不能の難問です。


2007/7/7(土) 歴史を忘れさせる検定制度・・「集団自決」

沖縄県が1976年に発表した資料では、太平洋戦争末期の沖縄戦での日本側の死者・行方不明者は18万8千人。沖縄県出身者12万2千人の内、9万4千人が民間人とされています。当時の沖縄県の人口が45万人ですから、かなりの割合で死者(特に民間人)が出ていることになります。

民間人の死者については、集団自決による死者が数多くいると言われています。日本軍の命令によるものだとする説が有力であり、高等学校の日本史教科書には記されていました。それが2006年の検定により削除されています。

【「集団自決」で再び意見書 沖縄県議会が聞き取り調査】(共同通信) 
文部科学省の教科書検定で沖縄戦の「集団自決」への日本軍関与を示す記述が削除された問題で、沖縄県議会の文教厚生委員会は6日、集団自決が起きた渡嘉敷島と座間味島で体験者らから聞き取り調査を行った。県議会は11日の最終本会議で、あらためて検定意見撤回と記述復活を求める意見書案を可決する。

県議会は6月22日、同様の意見書を全会一致で可決。今月4日、県や市町村とともに文科省へ申し入れを行ったが拒否された。1回の定例議会中に同じ問題で再び意見書を可決するのは極めて異例だが、仲里利信議長は「県民は強く憤っている。検定意見が撤回されるまで何度でも行う」と話している。

【コメント】
戦前戦中の歴史を忘れさせようとする動きが目立っています。集団自決への日本軍関与の記述削除もその一環です。

もちろん、歴史は客観的に事実を究明することによって明らかにされなければなりません。また、事実についての認識やその評価について、意見が分かれることもあるでしょう。

集団自決への軍の関与を否定する意見もあります。しかし、沖縄戦における民間人の死者の多さを見る限り、強制力が働いていないとする見解は極めて不自然です。

百歩譲っても、軍の関与による民間人の集団自決があったということが沖縄では広く語り継がれているということは、教科書で紹介されるべきではないでしょうか。


2007/7/6(金) 面接で給与や福利厚生を聞いてはいけないか?・・就職支援セミナーのテキスト

労働者の権利というところから出発すると、労働条件を明確にした上で、労働契約が締結されなければなりません。求職者には労働条件を聞く権利があります。

このことと、実際に就職戦線で勝ち残ることとは別の問題です。採用は経営者の裁量であり、同一線上に並んだ「候補者」の中からどの人物を選ぶかとなると、会社から何を引き出せるのかを重視する人と、会社に何を提供できるかを明示する人とでは、後者に軍配が上がることが多いであろうということは容易に推測可能です。

【就職支援:委託業者がテキストに「給与や休暇聞くな」】(毎日) 
各地の労働局が民間に委託して実施している就職支援セミナーの半数以上で、面接の際に給与や休暇に関する質問をしないよう指導するテキストを使っていたことが、厚生労働省の調査で分かった。基本的な労働条件を確認せずに就職することは、トラブルや労働者の権利抑制につながることから、同省は不適切な記述の削除やチェックの徹底を各労働局に通知した。

調査によると、47都道府県の労働局のうち、東京の予備校経営会社など5事業者に委託した24労働局のセミナーで「面接で給与や福利厚生を聞いてはいけない」などと書かれたテキストを使用していた。

島根県労働局のケースでは、必勝面接とビジネスマナーの項目に「自分から給料、休日、勤務時間、役職の話は持ち出さない」とあり、面接質問集では「間違っても『給料』『残業・休日』について聞いてはならない」などの記述があった。

セミナーの民間委託は05年度から始まり、06年度は約38万人が受講、07年度も約11億円の予算が付いている。5月に成立した改正パート労働法では、労働時間や賃金など労働条件を文書で通知することを義務化するなど労働条件を理解することが重要視されている。

 厚労省職業安定局は「労働条件を確認しなくても良いという誤解を招く表現があった。給与などは必ず確認すべきで、誤解を招かないよう徹底する」としている。【東海林智】

【コメント】
156キロの剛速球を投げる松坂大輔のような人は、徹底的に条件を争うことが可能です。そこまでいかなくても、一定の専門性を持った職種においては、労働条件次第で就労するかどうかを労働者サイドで決定することが可能であり、労働条件を聞くことが本人の不利になることは少ないであろうと思われます。

また、いわゆる「売り手市場」の局面なら、労働条件を精査した上で結論を出すということが普遍化するでしょう。

そのような条件がない場合はどうか。なんとか就職して欲しいという親心があれば、「条件なんか先に聞くんじゃないぞ。自分は何が出来て、どういう貢献を会社に出来るかを前面に出して面接に望め。」という指導をするはずです。

憲法の理念から出発して正々堂々たる権利主張ができる人物を養成することが理想の姿です。しかし、処世術なしの正論が個別具体的な幸せには結びつかなかったというのが、これまで多くの人々が味わってきた現実です。

「労働条件を確認するな」などという指導は、労働者の権利実現という観点からは不当です。しかし、現実の力関係から見て労働者が不利である現実は否定できません。

「法」が強者を規制して、弱者を守る場面だと思います。

《独言》
私の場合実際には、「給料の倍働く覚悟で臨め」というアドバイスをします。そういう心意気がなければ、労働というものが「苦役」以外の何物でもないということになってしまい、人生が楽しくならないからです。

労働を喜びと感じる発想の中にしか個人の幸せはないと思います。しかし、企業の論理に染められ、マインドコントロールされたような発想では、究極の幸せからは遠ざかることになります。

自分というものをしっかり持ち、実力を蓄え、企業の論理に迎合するだけの「働き蜂」にならないために、学生諸君にはしっかり勉強していただきたいと思います。

「権利」とは自分の利益実現の手段ではなく、大勢の方々のための幸せのために個人に与えられたものであるという認識を持てば、「権利は行使しなければならない」という結論が出てきます。不利は覚悟だ、という気概も必要です。


2007/7/5(木) 無反省な国、アメリカ・・米特使発言は許せない

久間氏の「しょうがない」発言に呼応したのか、米特使の不見識極まる発言が飛び出しました。

こういう発言に対して、日本国民は怒らなければなりません。「日米同盟糞食らえ」というくらいの意気込みがなければ、単なる目下の同盟者として、国富の垂れ流しを続けるだけの関係になります。

【米特使、「原爆使用が何百万人もの日本人の命救った」】(朝日)
米政府のロバート・ジョセフ核不拡散問題特使(前国務次官)は3日の記者会見で、広島・長崎への原爆投下について「原爆の使用が終戦をもたらし、連合国側の数十万単位の人命だけでなく、文字通り、何百万人もの日本人の命を救ったという点では、ほとんどの歴史家の見解は一致する」と語った。 

米国とロシアの核軍縮枠組みづくりに関する会見での発言で、久間前防衛相の発言問題と直接絡んだものではない。ジョセフ氏は、「原爆を使用した米国が核不拡散について訴える道義的な根拠があるのか」との質問に対し、「米国は核不拡散で指導的立場に立ってきた」などとかわした。 

米国の歴史学者の間では、原爆使用と終戦の因果関係は必ずしも明確ではない、という学説が有力だ。だが、特使発言のような見方は、保守派を中心に米国内でなお根強い。米政府はこれまで原爆使用について謝罪したことはなく、ジョセフ氏もこれまでの流れに沿って原爆投下の正当化論を繰り返したものとみられる。 

【コメント】
原爆という究極の非人道兵器を用いたアメリカが、未だにこれを正当化しようとする。辞任した久間・前防衛相の発言よりもっとひどい発言です。

日本国民は怒るべきです。ここで怒れないでおいて、「愛国心」などと言ってみても、全く無意味です。アメリカが震え上がるほどの反米運動が展開されてこそ、自主自立の国です。

怒るべきときは怒るべきです。馬鹿にされ、蔑(さげす)まれても付いていきますという関係は、異常過ぎます。

大人しい国・日本。それはそれでいいとしても、全存在を懸けて怒る気概がなければ、どこまでも譲歩しなければならなくなります。

「大東亜戦争」は正しい戦いだったと思う人なら当然怒るべきだし、私のように馬鹿げた戦争だったと思う人間でも、この発言は許せません。


2007/7/4(水) 原爆は しかたないさと つぶやいて・・・久間防衛相辞任

久間防衛大臣辞任。当然です。安倍総理の迷走ぶりは、政権が末期であることを象徴的に示しています。

完全に世論を読み間違えました。原爆投下は、歴史の彼方の出来事ではないのです。血が通った人間ならば、そして日本国民なら、原爆投下を正当化するような発言を行うことがどういうことなのかは自ずと分かっていなければなりません。

小泉前首相から「鈍感力」を持てとアドバイスされた安倍総理。

庶民の暮らしに鈍感。庶民の感情に鈍感。そして、自らの政治責任、大臣の任命責任にも鈍感。鈍感であるが故に、何をしでかすか分からない政権です。

原爆は しかたないさと つぶやいて 荒れる世論に しかたなく辞め


2007/7/3(火) 「民主主義は多数決」ということしか知らない安倍政権

安倍政権下、国会史上例を見ない強引な手法で、法案が次々と成立しました。多数を握っている政党が意のままに振る舞えば、どんな法律でも国会で成立させることが出来ます。

しかし、歴代の自民党政権は、強引な手法はなるべくとらないような配慮をしていました。強引な国会運営は有権者の反発を招くという配慮もあったでしょう。それ以上に、民主主義とは多数決だけではないということを理解できる幹部がいたということも大きかったと思います。

日本国憲法が予定する民主主義とは、個々の国民の基本権が侵害されないことを前提としており、多数決でも奪えない権利があることを予定しています。少数者の主張への配慮が多数の側になければなりません。

国会の議席は、あらゆる論点が提示された上で国民が決断して与えたものではありません。特に2005年の総選挙は「郵政民営化是か非か」という小泉総理の絶叫に国民が呼応したという要素が強く、郵政民営化以外の論点に対しても多数の支持があった訳ではありません。

この点に対する謙虚さがない安倍政権を国民がどのように評価するのか。参議院議員選挙の見所のひとつです。

「民主主義とは多数決である」ということしか理解できない単細胞政権に対して、国民の鉄槌が下ることを期待します。真の民主主義を取り戻す戦いでもあります。


2007/7/2(月) 朝日での支持率は28%、毎日での不支持率は52%・・薬石効なし

朝日新聞の世論調査で、安倍内閣の支持率が28%(前回31%)に落ち込みました(不支持率は48%)。森内閣以来の30%割れです。特徴的なのは男性の評価が厳しいということです。支持率が前回の36%から24%に激減。不支持率も50%から52%へと拡大。内閣のドタバタぶりに呆れているのでしょうか。

毎日新聞の調査では違う面が出ています。支持率は前回と同じ32%。しかし、不支持率が8%増の52%で、森内閣以来の不支持率50%越え。女性の評価が厳しくなっているという点でも、朝日と異なります。女性の支持率は32%(3%減)、不支持率は49%で12%増。

朝日によれば、支持率低下と男性の厳しい評価。毎日によれば不支持率の拡大と女性の安倍離れ。相当厳しい状態であることが窺えます。内閣支持率の激減が判明してから1ヶ月。慌てて政府がやったことは、全く評価されていないということです。

どのくらいの出血があるのか不安に思っているのに、絆創膏を貼るのに汲々とした。そんな印象しか持てなかった1ヶ月でした。全てが選挙目当てに見えてしまうところが、内閣の「不徳」の致すところです。

薬石効なし。安倍内閣、風前の灯火。ここにおいて、安倍氏に「大技」を掛ける度胸ありやなしや。


2007/7/1(日) 久間防衛大臣の「しようがない」発言・・立場はわきまえたか

評論家の発言としてなら、そういう考え方もあり得ると思います。しかし、防衛大臣としてどうなのかと考えると、これは大臣不適格と言われてもしかたがありません。

「イラク戦争は間違っていた」発言から一転して、アメリカの論理をなぞる発言をするとなると、政治家としての一貫性も問われます。

【久間防衛相、講演で「原爆投下、しょうがない」】(朝日)
久間防衛相(衆院長崎2区)は30日、千葉県柏市の麗沢大学で講演し、1945年8月に米軍が日本に原爆を投下したことについて「原爆を落とされて長崎は本当に無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で今、しょうがないなと思っている」と述べた。原爆投下を正当化する発言とも受け取られかねず、野党が久間氏の罷免を求める動きを見せるなど波紋が広がっている。

久間氏は「我が国の防衛について」と題した講演で、東西冷戦下で米国と安全保障条約締結を選択した日本の防衛政策の正当性を説明する際、原爆投下に言及した。 

久間氏は「米国を恨むつもりはないが、勝ち戦と分かっていながら、原爆まで使う必要があったのかという思いが今でもしている」としつつ、「国際情勢とか戦後の占領状態からいくと、そういうこと(原爆投下)も選択肢としてはありうる」と語った。 

久間氏は講演後、朝日新聞の取材に対し、「核兵器の使用は許せないし、米国の原爆投下は今でも残念だということが発言の大前提だ。ただ日本が早く戦争を終わらせていれば、こうした悲劇が起こらなかったことも事実で、為政者がいかに賢明な判断をすることが大切かということを強調したかった」と発言の意図を説明した。 

安倍首相は同日夜、遊説先の香川県丸亀市での会見で久間氏の発言に関して「自分としては忸怩(じくじ)たるものがあるとの被爆地としての考え方も披瀝(ひれき)されたと聞いている。核を廃絶することが日本の使命だ」と述べた。 
     ◇ 
【久間氏の発言要旨】 
日本が戦後、ドイツのように東西が壁で仕切られずに済んだのは、ソ連の侵略がなかったからだ。米国は戦争に勝つと分かっていた。ところが日本がなかなかしぶとい。しぶといとソ連も出てくる可能性がある。ソ連とベルリンを分けたみたいになりかねない、ということから、日本が負けると分かっているのに、あえて原爆を広島と長崎に落とした。8月9日に長崎に落とした。長崎に落とせば日本も降参するだろう、そうしたらソ連の参戦を止められるということだった。 

幸いに(戦争が)8月15日に終わったから、北海道は占領されずに済んだが、間違えば北海道までソ連に取られてしまう。その当時の日本は取られても何もする方法もないわけですから、私はその点は、原爆が落とされて長崎は本当に無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったんだ、という頭の整理で今、しょうがないな、という風に思っている。 

米国を恨むつもりはないが、勝ち戦ということが分かっていながら、原爆まで使う必要があったのか、という思いは今でもしている。国際情勢とか戦後の占領状態などからいくと、そういうことも選択肢としてはありうるのかな。そういうことも我々は十分、頭に入れながら考えなくてはいけないと思った。 

【コメント】
ソ連参戦と原爆投下との関連については、当時の状況を慎重に調べた上で、歴史の問題として考察する必要があります。

また、外交・防衛戦略を練る上では、原爆=絶対悪という限定をすると、思考の枠組みを狭めることになります。

しかし、日本の防衛大臣として何を発言すべきかということになると、「原爆は許さない」というところから出発してもらわなければ、唯一の被爆国として世界に問題提起してきたことと矛盾します。

しかも、守るべき国民の命を相対化して考えているということにもなり、防衛大臣として極めて不適切です。アメリカの思考・論理をなぞるだけでは、日本の政治家としての見識も問われることになります。

久間氏が自らの発言を貫きたいのなら、防衛大臣を辞し、一国民として言論を行うべきです。日本男児としての身の処し方を期待します。


玉井彰の一言 2007年7月 四国の星ホーム一言目次前月翌月