玉井彰の一言 2007年5月 四国の星ホーム一言目次前月翌月

2007/5/31(木) 泥縄の 年金火消し ほおかむり・・年金時効撤廃特例法案強行採決

疑惑の法案。消えた年金問題を真摯に解決する意図であれば、野党が反対するはずがありません。誰が考えても拙速であり、また、無謀な委員会での採決です。

年金問題を参院選の争点にしたくないという政府・与党の意図が見え見えです。そのために、審議を尽くすことなく強行採決して「問題解決」としたいのでしょうが、あまりの安直さに、あきれかえります。

国民は極めて強い関心を持って見守っています。国民の目を甘く見すぎているのではないでしょうか。

【与党が即日強行、衆院委で可決=年金特例法案、野党は反発】(時事通信)
自民、公明両党は30日夜の衆院厚生労働委員会で、同日審議入りした年金時効撤廃特例法案の採決を強行し、可決した。社会保険庁改革関連法案と併せて31日の衆院通過を目指す。野党側は柳沢伯夫厚生労働相の不信任決議案提出などで抵抗する方針。7月の参院選をにらみ、年金問題をめぐる与野党の攻防は大きなヤマ場を迎えた。
 
衆院厚労委は30日午後、特例法案の質疑を行った。与党は「国民の不安解消のため直ちに成立させる必要がある」と判断し、野党の質問が終わるのを待って質疑打ち切り動議を提出。反対する野党議員が桜田義孝委員長の席に詰め寄り、委員会室が騒然とする中、特例法案は可決された。
 
この後、河野洋平衆院議長が与野党各党の国対委員長を呼び「与党に瑕疵(かし)はないが採決が混乱したのは適切ではない」として、31日に厚労委員会を開いて、採決の有効性を確認する手続きを踏むよう要請。与党側は受け入れた。

一方、衆院議院運営委員会は理事会で、逢沢一郎委員長が職権で同日午後の本会議開会を決めた。しかし、強行採決に反発する野党側は議長提案を拒否。31日の衆院本会議で、柳沢厚労相不信任案や桜田衆院厚労委員長の解任決議案などを提出して徹底抗戦する構えだ。 

【民主党・松本政調会長の記者会見】(民主党HPより)
松本剛明政策調査会長は30日夜、党本部で記者会見し、衆議院厚生労働委員会における自公の年金時効特例法案の強行採決について厳しく批判しています。その要旨。

(1)民主党はかねてから「消えた年金記録」問題に取り組んでおり、今月7日に被害者救済法案を提出した。民主党案を厚生労働委員会にたなざらしにしたまま、特例法案のみを本日強硬に採決させた与党側の対応は、政権維持のための党利党略以外の何者でもない。

(2)救済にあたり個別の事情の判断が必要になるため、救済の枠組みづくりには時間を掛けるべきである。首相が言及した「第三者機関」すら与党案には記述されていない。消えた年金の救済を進めようとすれば、例えば個人の情報をどう取り扱うか、守秘義務をどう取り扱うかなど、法律に定めた委員会において義務と権利を、調査権限も含めてはっきりさせないと、何もできないことになる。

(3)委員会の審議では、議員立法にもかかわらず政府に答弁させた例があった。1年以上この問題に取り組んで、色々なケースを想定して作った民主党の救済法案を全く無視し、1日で作った形だけの政府案を通すことは、被害者の方々にとって非常に気の毒な結果になる。

【コメント】
泥縄審議で強行採決した「法案」は、個別具体的な被害者救済には結びつかない可能性があります。被害者救済のポーズだけを取った「救済偽装」法案です。

挙証責任の問題について政府は、巧みに擦り抜けようとしています。しかし、「第三者機関」云々と言っても、国民に実質的な挙証責任を負わせることになれば、被害者は門前払い同然の扱いを受けることになります。

様々なケースを想定し、公正さを損なうことなく実質的に正義が守られる解決を目指すならば、1日審議などという不謹慎なことを行えるはずがありません。

自公政権が如何に年金問題を軽く考えているかを国民の目の前で証明した、衆院厚生労働委員会の紛糾劇でした。

泥縄の 年金火消し ほおかむり 選挙終われば 知らぬ存ぜぬ


2007/5/30(水) 郵政公社・西川総裁の「アルバイト」・・モラル崩壊の極み

郵政民営化が山場に差し掛かり、郵政公社総裁は激務中の激務という状態になっているのかと思いきや、西川善文総裁は傍らで、年間3千万円もの「アルバイト」をやっているとのこと。

週刊朝日のスクープをテレビ朝日・スーパーモーニングが取り上げていました。兼業が法的に可能なのかと言えば、可能なのだそうです。しかし、業務に支障ありという現場の声も出ています。

生田前総裁との心構えの違いも浮き彫りになっていました。西川善文・郵政公社総裁のモラル崩壊が端的に示されたニュースです。トップがこれでは…

【郵政公社・西川総裁、6社の社外取締役などの報酬返上】(25日、読売) 
日本郵政公社の西川善文総裁は、25日の衆院決算行政監視委員会で、松下電器産業やTBSなど6社の社外取締役や社外監査役の報酬を、総裁に就任した4月にさかのぼって返上することを表明した。

民主党の枝野幸男議員が、「職務に専念する社会的責任がある」として社外取締役などの退任を求めたのに対し、西川総裁は、総裁業務に支障のない範囲で、兼業を続ける考えを示した。

日本郵政公社法では、任命権者の承認がある場合を除き、役員の兼業を禁止している。西川総裁は、任命権者の菅総務相の承認を得ている。

【郵政公社の西川総裁、在任中は社外役員の報酬返上】(25日、日経) 
日本郵政公社の西川善文総裁は25日の衆院決算行政監視委員会で、松下電器産業など6民間企業から受け取っている社外役員報酬を10月までの総裁在任期間中に限って返上することを明らかにした。一方で、兼業自体は「公社業務に支障のない範囲内で継続する」と語った。

西川氏は06年1月に郵政民営化準備会社、日本郵政の社長に就任したが、4月からは郵政公社総裁を兼務している。さらに社外役員としての活動があるため、郵政公社内部からは「報告案件を上げる際に、総裁に時間をとってもらえない」などの不満が漏れている。

【コメント】
生田前総裁も総務大臣の許可を得て、一社の取締役を兼職をしていました。テレビインタビューに答えた生田氏によれば、従来責任を担ってきた会社に対する説明責任を果たすためであって、実質的な兼業はなかったとのことでした。

これに対し西川氏の場合は、明らかに報酬を得るための兼業です。しかも、大企業6社もの取締役兼業。見なし公務員である郵政公社総裁。郵政公社の置かれている立場を考えても、民間企業との関係は慎重でなければなりません。民主党・枝野議員に指摘され、一定期間報酬返上の意思を表明した西川氏ですが、真面目に郵政公社のトップとしての職責を果たそうとしていたのか、疑問です。公的立場の人間としてのモラルが崩壊しています。

ひょっとして、「郵政民営化」自体が国民を欺くペテンであり、真面目に取り組むべき事業ではないと西川氏は思っているのでしょうか。だったら、総裁に就任しなければいいだけの話です。今からでも、潔く辞任すべきです。

そもそも、菅総務大臣が兼職を認めていることに不自然さを感じます。菅総務大臣も「郵政民営化」のペテンを認識し、「まともにやってられないだろうから、兼業でもやりなさい」という立場なのでしょうか。


2007/5/29(火) 「死者に鞭打たず」は美徳ではない・・・松岡農水相自殺

まずは合掌。

いじめにより自殺をした少年が特大で扱われることがあります。それが次のいじめ自殺を誘発することになります。我が国の文化・風土は「死者に鞭打たず」で、死者に落ち度があっても、それ以上追求することを潔しとしないところがあります。ともすれば、美化されることすらあります。

松岡農林水産大臣の自殺についての報道は、その呪縛から若干解放されつつあるようにも見受けられますが、報道機関や各政党関係者の様子を見ると、踏み込んだ発言をして叩かれることを恐れ、慎重な態度を取っているようです。

そろそろ、死んでも評価は変わらないという方向に、社会の意識が変わっていかなければなりません。自殺者を減らすということを考えても、死ぬことへのハードルを高くする必要があります。

「死んでもこんな評価か」ということを現に生きて苦しんでいる人が見れば、この世で頑張らないといけないという方向に後押しされます。真の安息は、苦しみもがきながら生き抜いた末にやってくるものだと考えたいものです。

松岡氏が抱えていた政治と金の問題への追求の手が緩まないことを期待します。

《独言》
自殺するというのは、その状況下では既に病気なのでしょう。

「病気」の原因は、単線型の人生観にあるように思えてなりません。この人生航路が駄目なら別の人生航路がある。そういう複線型の人生観が必要になってきます。

人生100年。単線型で乗り切れる長さではありません。現役で絶頂を極めても、引退後が悲惨という事例も数多くあるようです。

剛速球が駄目になったら変化球。変化球にもスライダー、カーブ、フォークと様々なパターンがあります。変幻自在な人生を送れるような心構えが大切です。

それにしても、ZARDの坂井泉水さんが亡くなったことの方が衝撃です。素晴らしい曲を残してくれたことに感謝します。


2007/5/28(月) 内閣支持率急落の原因は・・毎日・日経の世論調査

安倍内閣の支持率は下落傾向から若干の持ち直しに転じたということでしたが、毎日新聞と日経新聞の世論調査で驚きの結果が報じられています。

毎日では4月の調査と比較して11ポイント減の32%。日経調査でも12ポイント減の41%。この原因は何なのでしょうか。

【毎日世論調査:内閣支持率32%に急落 不支持率は44%】(毎日)
参院選で自民、民主どちらに勝ってほしいか 毎日新聞は26、27両日、電話による全国世論調査を実施した。安倍晋三内閣の支持率は32%で、4月の前回調査比11ポイント下落、昨年9月の政権発足以来最低となった。不支持率は44%で最高となり、2、3月の調査と同様に支持を上回った。

夏の参院選で自民、民主のどちらに勝ってほしいかを尋ねた質問では民主が初めてリード。選挙が今あった場合の投票先を問うた質問も比例代表、選挙区ともに民主が自民を抑えた。年金保険料納付記録5095万件が不明になっている問題に有権者が厳しい目を向けていることをうかがわせた。

支持率を支持政党別に見ると、自民支持層が11ポイント減の66%。前回初上昇した「支持政党はない」と答えた無党派層が10ポイント減の20%で、この二つの層が大幅下落の要因になった。公明支持層は8ポイント増の60%だった。

男女別では男性の下落が顕著。支持が13ポイント減の29%にまで落ち込んだのに対し、不支持は13ポイント増の53%に上った。年代別では70代以上を除く全年代で不支持が支持を上回り、前回大きく上昇した20〜40代の支持は11〜17ポイント減で、全体の支持率が35%だった3月調査の水準並みになった。

◇参院選で勝ってほしい政党=「民主」が逆転

夏の参院選で勝ってほしい政党を聞く質問は昨年12月から4回目。民主が前回比6ポイント増の42%、自民が5ポイント減の33%、その他の政党が同2ポイント増の20%だった。過去3回はいずれも自民が民主より2ポイント多かったが、今回初めて逆転した。

参院選が今行われるとして、比例代表でどの政党、あるいはどの政党の候補者に投票するかを尋ねたところ、民主35%、自民28%、公明6%、共産4%、社民3%、国民新1%など。選挙区では(1)民主30%(2)自民26%(3)無所属15%−−の順で、いずれも民主が自民を抑える結果となった。

参院選で最も重視する政策については七つの選択肢を用意して質問。年金問題が28%で最多で、教育問題19%、憲法問題14%、格差問題13%、「政治とカネ」の問題12%と続いた。参院選に関心があるかどうかは「関心がある」との回答が68%で、「関心がない」の31%を大きく上回った。

【内閣支持率41%に急落、仕事ぶり「評価せず」49%・日経調査】(日経)
日本経済新聞社が25―27日に実施した世論調査で、安倍内閣の支持率は4月の前回調査から12ポイント急落し、政権発足後最低の41%となった。不支持率は44%と7ポイント上昇し、2カ月ぶりに「不支持」が「支持」を上回った。安倍内閣の仕事ぶりも「評価しない」が49%となり、「評価する」の33%を引き離している。 

内閣支持率は昨年9月の政権発足から低下傾向が続いていたが前回調査で10ポイント上昇し、下落に歯止めがかかったとの見方があった。今回の急低下の背景には、公的年金保険料の納付記録漏れが参院選の争点に浮上してきたことや「政治とカネ」の問題を巡る対応への不満などが影響しているとみられる。 

男性の内閣支持率は39%と前回から12ポイント下落、女性も43%に10ポイント下落した。年代別では40―60歳代の支持率がいずれも10ポイント以上下落して不支持を下回り、特に40歳代は17ポイントの大幅な下落だった。

【コメント】
先週末の世論調査ですから、「消えた年金」問題が直撃したということなのでしょう。国民の年金への関心は高く、社会保険庁が保管する5000万もの保険料納付記録が払い主不明であるという実態が明らかになり、政府の対応も後手に回ったことが影響したものと見られます。

与党は、社会保険庁を非公務員の特殊法人「日本年金機構」に改組する法案を今国会で成立させるため、野党の反対を押し切り、委員会で強行採決しました。よく分からない目眩ましのような「改革」であり、強行採決までする必要があるのかという疑問も出てきていると思われます。

年金問題への政府の対応如何によっては、政権の危機にまで発展する可能性があります。政治と金にまつわる「ナントカ還元水」の問題にケジメが付けられないと、これもボディーブローで利いてくるでしょう。

憲法改正より年金だ。この主張の方が説得力を増す展開になれば、民主党の勝ちパターンです。


2007/5/27(日) 本日天気晴朗なれども波高し・・海軍記念日

5月27日は、大日本帝国時代には海軍記念日とされていました。

102年前、日露戦争のクライマックス。東郷平八郎司令長官率いる連合艦隊が日本海海戦において、ロシアバルチック艦隊を撃破した日です。

明治期における日本の歴史は、ここに頂点を極めました。残念ながら、大勝利の体験が慢心と油断を産み、太平洋戦争での惨憺たる敗北につながってしまいました。日露戦争自体は「引き分け」であったということも忘却されました。


「失敗は成功の母」であると言われます。その逆に、成功体験は失敗の遠因になります。楽天・野村監督の名言に、「勝ちに不思議な勝ちあり。 負けに不思議な負けなし」というのがあります。

勝った場合には、偶然の要素を考えなければなりません。負けた場合には、負ける必然性があります。バルチック艦隊が対馬沖を通るのかどうか。ウラジオストックへの航路は1つではありませんでした。

「敵艦見ゆとの警報に接し、連合艦隊は直ちに出動、之を撃滅せんとす」の電文に、「本日天気晴朗なれども浪高し」の一文を加えて打電した連合艦隊参謀・秋山真之。

司馬遼太郎は、松山出身の秋山好古(陸軍)、秋山真之(海軍)兄弟と、正岡子規の3人を主人公とした明治の青春群像「坂の上の雲」を著しました。大ベストセラーとして今日も読み継がれています。

先頃松山市に「坂の上の雲ミュージアム」が建立され、観光の目玉になることが期待されています。「坂の上の雲」が大きすぎる「小説」であるが故の矛盾を抱えた施設ですが、勝利の歴史ではなく敗北の歴史への序章としての意義を胸に秘めながら、施設の雰囲気を味わうという方法もあるだろうと思います。

なお、本日も天気晴朗。


2007/5/26(土) 松江市天神町商店街のお年寄りに優しい商店街づくり・・・視察報告

昨日伊予市商業協同組合で、島根県松江市へ視察に行きました。

中村寿男・天神町商店街理事長のお話を聞いた後、商店街を視察。平成11年8月より毎月25日に天神市を開催しているので、その日を狙っての視察でしたが、あいにくの雨。

松江市の後押しがあって始まったイベントです。高齢化率ナンバーワンの島根県において、高齢社会の先駆けとなる取り組みを行いたいとの願いが松江市にありました。市内でも高齢化率の高い天神町(高齢化率30%)で、お年寄りに優しいまちづくりのモデルをつくろうというものです。

毎年7月25日、商店街の中にある白潟天満宮の例大祭はたくさんの人で賑わいます。商店街の若手が立ち上がり、この祭りを毎月25日の「市」にしたのが天神市です。

お年寄りに優しいまちづくりには、3つのポイントがあると中村理事長は語ります。

第一に交流の場があること。
 
お年寄りが集まり、話に花が咲くような場所(溜まり場)を、商店街の空き店舗を利用して設置することとなりました。これは市の福祉課の施策として行われました。それが、「まめな館」、「いっぷく亭」という名の2つの施設です。運営は、ボランティア。我が商店街も、「いっぷく亭」の名を拝借。

第二に信仰の対象があること。
 
商店街メンバーは東京巣鴨の商店街「とげ抜き地蔵」を視察しました。高齢者は外出する時、「お墓参り」や神社・仏閣への「お参り」を兼ねること、そして出る口実にも「お参り」が重要な理由になることを、そこで知りました。

しかし、天神町商店街にはその信仰の対象がありませんでした。「天神町街づくり委員会」の討議の中で、白潟天満宮に何かその対象が出来ないかとのアイデアが出され、学問の神様→頭がいい→「ボケ封じ」ということで、白潟天満宮の協力を得て、「ボケ封じ」の神様「おかげ天神」を建立することにしました。おかげ天神建立はNHKの全国ニュースでも流れ、大きな反響を得ました。

第三に、高齢者が楽しくショッピングが出来ること。
 
上記の2点が実現する見通しがついた段階で、本来の目的である商店街の活性化の検討に入りました。そして、高齢者が、楽しくそして安全にショッピングをできるように、歩行者天国の天神様の縁日(「天神市」25日)をスタートさせることになりました。

このイベントは大化けし、様々な団体が自ら参加を申し出る、参加型のイベントに進化しています。あたかも、商店街がコンピューターのOSの役割を果たし、各ソフトがOSの上で稼働する状態です。大学が商店街に拠点を設けるほか、障害者の団体が商店街を活動の場とし、授産施設「マルベリー松江」が誕生し、自然食レストラン「まめや」を経営しています(そこで昼食、中村理事長の講演)。

国や県、あるいは他の自治体や商業団体の注目を浴び、新たな展開も見せています。アーケードの改装に付随して、電線地中化の問題が出てきました。これには巨額の費用が掛かるし、変圧器の設置を何処にするかで紛糾するというのがよくあるパターンです。

その問題を一気に解決する妙案が出されました。アーケードの屋根に電柱を這わせ、変圧器をアーケードの上に設置するのです。費用は格段に安くなります(アーケード費用に含められる程度)。

全国注視の商店街になっていたこともあり、モデルケースとして、省庁(経済産業省と国土交通省)の枠組みを越えた支援も得ました。財務省の地方担当者も絶賛したということなので、新たなスタンダードとして全国展開する可能性があります。

高齢者の商店街居住の問題にも取り組んでいます。高齢者や障害者のためのアパートが建設され、満室状態になっています。市立病院の郊外移転という難問も、新たな病院の誘致により一定の解決を見ました。

「お年寄りに優しいまちづくり」が、「ひとに優しいまちづくり」として、福祉行政との連携を産み、障害者の団体や大学・短大そして小中学校との連携にも発展した広がりを見せています。

松江市の中では立地に恵まれていない天神町商店街ですが、今や全国発信の拠点として注目され、観光面でも成果を上げています。商店街衰退という全国共通の問題を解決するには至っていませんが、この取り組みは超高齢社会におけるコンパクトシティーのモデル事業という意味合いも含めて、新たな発展の可能性を秘めています。

人口74万人の島根県。合併で19万4千人の県都となった松江市。松平治郷(はるさと)[不昧公(ふまいこう)の名で親しまれている松平第七代藩主]が著名な茶人であったことから、松江独特の文化の伝統もある観光都市です。慌ただしい日帰り視察でしたが、同行の方々にも十二分に意義を感じていただけた視察だったようです。


2007/5/25(金) 60歳まで生きたら100歳まで生きる・・人生後半戦の処し方について

最近は、「人生80年」と言われます。かつては「人生50年」と言われていたことからすれば、随分寿命が延びたものです。

昭和22年の平均寿命は、男性が50歳、女性が54歳。今は、男性が79歳、女性が86歳になっています。

平均余命という概念があります。ある年齢の人があと何年生きるかという指標です。60歳の男性はあと22年、女性はあと28年生きます(ゼロ歳児の平均余命が平均寿命ということになります)。

一定程度生きてきた者にとっては、平均余命の概念の方が有用です。60歳の男性の場合は、残り22年の計算で人生設計をすることになります。しかし、それでいいのかどうか。

それはあくまで「平均」です。積極的な人生を送ろうとするならば、「平均」で甘んじていいはずはありません。昭和22年生まれ、今年60歳の人は、当時の平均寿命からすれば、もうお墓の中にいなければならないはずです。

実際には、医学等の進歩で、予想以上に長い人生が待っています。現在の高齢者の大半が、想定外の長さの人生だという感想を持っているものと思われます。

60歳まで生きたら100歳まで生きる。このくらいの発想でいいのではないでしょうか。そう思っていたら、渡部昇一氏の新著が目に留まりました。

「95歳へ!」−幸福な晩年を築く33の技術− 飛鳥新社(1260円)。

渡部氏が接した素晴らしい高齢者から学んだもの、渡部氏が実践している方法などが紹介されています。渡部氏の思想傾向には付いて行けませんが、方法論については学ぶべき点が多々あります。

高齢者の方々は、自らが高齢であることについては初体験です。皆、戸惑いつつ高齢者としての人生を歩んでいます。しっかりと先を見つめ、先人たちの体験に学びつつ、それを凌駕する発想で高齢社会を生きていくことが賢明な生き方です。「人生字余り」では寂しい。最期まで目的をしっかり持って生きる手法を開発したいものです。

人生後半戦の勝者になる。そういう気持ちが大切です。「勝つ」とは何かということを再検討することを含めて、発想を切り替えるべきだと思います。

《独言》
渡部氏が31年前に出版されベストセラーになった「知的生活の方法」は刺激的でした。もっとも、怠け者の私は、その本に書いてあった「書斎のクーラー」が欲しくなっただけでした。


2007/5/24(木) 美しき五月のパリ・・・青春の血が騒ぐ歌

清々しい季節です。かつて耳にした曲が、ふと口をついて出てきます。その中でも、この曲には血が騒ぎます。加藤登紀子さんの曲の中で、私が最も好きな曲。1968年フランス、パリ5月革命のとき、学生たちが唄った曲です。

フランス新大統領・サルコジ氏は選挙期間中、パリ5月革命を「フランスの道徳を崩壊させた」と発言、物議を醸しました。「68年5月以来、道徳という言葉が聞かれなくなった。加害者が被害者よりのさばり、価値の序列がなくなった。学校も堕落した。」とサルコジ氏。

5月革命では、大学自治拡大を求める学生や団結権を求める労働者が警官隊との衝突を繰り広げ、ドゴール体制の崩壊が始まりました。この運動を契機に、ヨーロッパで女性の社会進出や性の解放が進み、日本の学生運動にも影響を与えました。

管理されることへの反発が、団塊の世代の方々にはあったのだと思います。しかし、私が大学に入った頃から、学生が管理されることに反発しなくなり、むしろそれを受容する精神構造に変化していったように思います。

フランスでは今でも暴動が起きます。しかし日本では、野党が国民に代わって不条理な法案に抵抗しても、「政府の足を引っ張っている」とか、「なんで協力してやっていけないのか」とか、「審議拒否するとは、職場放棄だ」とか言って、眉をひそめる方々が多くなっています。

すぐ暴動が起きるのはどうかと思いますが、管理社会過剰適応型の精神構造では、全体主義に易々と道を開くことになりはしないか、心配です。レジスタンスの国、フランスに学ぶべきところも多いのではないでしょうか。

おとなしい、管理受容型の国民性に合致した政治が自民党政治なのか。それとも、不満のマグマが堆積して、もうすぐ爆発するのか。この夏、ひとつの結論が出ます。無風に見えるのですが、日本に「7月革命」が起きる予感、なきにしもあらずです。

この曲はどこで覚えたのだろう。忘れてしまいました。歌声喫茶だったかな。

美しき五月のパリ 
http://utagoekissa.music.coocan.jp/utagoe_utf.php?title=utsukushikigogatsunopari

【作詞】不明
【作曲】不明
【訳詞】加藤登紀子 

1.赤い血を流し 泥にまみれながら
  この五月のパリに 人は生きてゆく
  ※オ ル ジョリ モァ ドゥ メ ア パリ(Oh, le joli mois de mai à Paris)
   オ ル ジョリ モァ ドゥ メ ア パリ(Oh, le joli mois de mai à Paris)

2.風よ吹いておくれ もっと激しく吹け
  青空の彼方へ 我等を連れゆけ
  ※繰り返し

3.年老いた過去は いま醜く脅え
  自由の叫びの中で 何かが始まる
  ※繰り返し

4.ほこりをかぶった 古い銃を取り
  パリの街は今 再び生まれる
  ※繰り返し

5.歌え 自由の歌を 届け 空の彼方へ
  この五月のパリに 人は生きてゆく
  ※2回繰り返し


2007/5/23(水) くすぶり続ける「衆参同日選挙」・・ないとは思うが

自民党が大負けにはならない予想になってきているので、衆参同日選挙という冒険はしないと思われます。しかし、政界の一部ではなお、同日選を警戒する動きがあるようです。

確かに、本気で「憲法改正」を争点に掲げるなら、国民投票法の施行時期が3年後であるという問題はあっても、同日選挙に打って出て雌雄を決するのが真っ正直な対応です。

2年前小泉首相は、郵政民営化に反対する場合には衆議院解散もあり得るということを実質的には予告していました。しかし、それはないだろうという政界の常識が邪魔をして、民主党は後手を踏みました。

後から考えると、「面を打つぞ」と予告され、結果、鮮やかに面を打たれた形でした。

【民主党:衆院選候補擁立を急ぐ 同日選を警戒?】(毎日)
民主党が次期衆院選小選挙区の候補者擁立を急ピッチで進めている。22日の常任幹事会で新たに2人の公認を内定したほか、残る空白区の108小選挙区についても鉢呂吉雄選対委員長は来月2日の全国幹事長・選挙責任者会議までに候補者を決めるよう各都道府県連に求める考えを示した。与党内にくすぶる衆参同一選の可能性を警戒すると同時に、衆院候補を早期に擁立すれば参院選の応援に駆り出せるという「一石二鳥」も狙っているようだ。

民主党は今月に入り、衆院小選挙区の第6、7次公認内定を相次ぎ発表。小選挙区の現職議員(比例復活を含む)を合わせた候補予定者は192人になった。鉢呂氏はこの日の会議で「衆参同日選もあり得る。(与党を)同日選に追い込んでいく気構えでがんばる」と、選考作業を加速させる考えを強調した。

これに関連して安倍晋三首相は22日、記者団に「民主党側でいろんな分析をするのは、民主党側のことなんだろうと思うが、私は全く衆院選は考えていない」と改めて同日選の可能性を否定した。だが民主党の前原誠司前代表は8日、「同日選挙の可能性もある。一日も早く衆院の公認候補を内定すべきだ」と指摘していた。選対幹部も「危機感をあおれば、調整の難しい選挙区も本気になる」と語った。

【コメント】
どちらかと言えば、参院選の補強なのでしょう。公認内定者の総支部長がいると、責任を持って選挙応援ができます。党本部からの資金援助もあるので、活動が活発になります。しかも、衆院選の予行演習としての意味も出てきます。

3年前、愛媛には3人の総支部長がいたので、選挙の応援に張り付くことが出来ました。愛媛では、3区の白石洋一氏が公認内定されたばかり。友近候補の応援をすべく頑張っているようです。他の選挙区も、早期に候補者を決めてもらいたいものです。

参院愛媛選挙区はこれから、民主・社民推薦の無所属・友近としろう候補と自民・関谷候補との激戦になると予想されます。私の生活領域では、関谷陣営の危機感が伝わってきています。各種団体の総会の季節。関谷氏は駆け回っています。

友近候補も20市町を街宣中のようです。あと2ヶ月。情勢は全く分かりません。全国の選挙区情勢も、かなり流動的です。

なお、民主党の衆議院公認内定者・白石洋一氏(愛媛3区)のブログはこちら。
http://blog.livedoor.jp/shiraishiyoichi/

参院候補・友近氏としろう氏のHP
http://tomochika.jp/pc/index.html


2007/5/22(火) 公立学校の統合は、地域破壊を加速させる

人口減少、少子高齢化。地方においては深刻な問題です。需要がないから供給を削減するということでいいのでしょうか。

財務省の諮問機関・財政制度等審議会は、公立小中学校の統廃合を加速させよとの報告書を提出するものと見られます。

効果効率重視に傾斜しすぎていると思います。地域の学校という観点は捨象されています。これまでも安易に進められてきた公立学校の統廃合。この際、立ち止まって考えるべきではないでしょうか。

【公立小中学校の統合、経費削減効果を強調へ 財政審】(朝日)
公立小・中学校の統合を加速させよ――。財務相の諮問機関・財政制度等審議会(財政審)は6月初めにまとめる報告書(建議)で小中学校の統廃合による経費削減効果を強調する見通しだ。財務省は、527校を221校に統廃合した結果、年約170億円の削減効果があったとの資料をまとめ、「保護者にも好評」とするが、通学が不便になったとの反発もある。 

財務省が財政審に提出した資料は、公立小は387校から161校に、公立中は140校から60校へ、それぞれ統廃合して05年4月に再出発した計221校を独自調査したもの。統合前後で公費支出を比べると、小学校で年129億円、中学校で45億円減ったという。 

資料は、小学校は1学年で2クラスに満たない学校が全国で半数を占めるなど、小中学校ともに文部科学省が「標準」とする規模に満たない学校が約半数に上るとする。また、06年の小学校の児童数は、最近のピークだった1981年より4割減なのに対し、学校数は81年に比べ9%減でしかないとして、統廃合が遅れていることを強調している。 

財政審の西室泰三会長は21日の会合後に、小中統廃合を通じ、「教育にかかる費用を節約できるのは、はっきりしている。しっかり打ち出したほうがいい」と述べた。 

財務省は、保護者アンケートは、規模拡大で「友達がたくさんできる」などと好評だったとしているが、「通学が遠くなる」などとして反対論も根強い。 

【コメント】
日本国憲法第26条第1項は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と規定しています。子供の側から見れば、学習権ということになります。 

子供の足で通学可能な範囲に学校があるということが、憲法26条第1項の実質的内容であると解釈すべきだと思います。地域で育ち、地域で遊び、地域で学ぶというのが、子供本来の姿ではないでしょうか。地域コミュニティーを維持する観点からも、「地域の学校」の存在は重要です。

地域で子供を育てるのではなく、国家や自治体の財政上の都合で、子供を地域から取り上げるということが安易に認められていいのかどうか、疑問です。少子高齢化により存続が危ぶまれる状況にある過疎地域の破壊を加速させることにもなります。

もちろん、子供にとって、共に学ぶ仲間の存在は重要です。学校の統合により、友達が増えるという利点はあるでしょう。しかし、それ以上に失うものが多すぎるように思われます。友達の確保は、学校間の相互交流によっても可能です。

通信技術(IT)の進歩により、インターネットや衛星放送の活用で、小規模学校でも学習環境の整備は容易になりました。他の地域の子供たちとの交流も困難ではありません。

国全体が効果効率に偏り、地域に根っこを持つ子供をつくるという発想が皆無になってきていることを懸念します。

また、教育基本法改正や教育関連3法案などの諮問や審議の経緯を眺めると、教育を論じ制度変更を企図する方々が余りにも薄っぺらであり、国家百年の計を誤るのではないかという危惧を持ちます。

そうした方々を生み出した、これまでの教育に問題があったという見方も可能ですが…


2007/5/21(月) 頑張れ、群馬の民主党・・・群馬は民主党の先進地である

総額2500万円の政治献金を政治資金収支報告書に記載しなかった疑惑をもたれ、参院副議長を引責辞任した角田義一参議院議員。その選挙区が群馬県です。

不審に思われるかもしれませんが、この群馬が民主党の先進地域だと考えています。

昨年、県連内の不正経理問題から、県連事務局長が自殺するということまであり、県連内の対立として注目されました。その後の角田スキャンダル。旧社会党系にまつわる疑惑の一環です。

2005年11月、民主党群馬県第4区総支部長・中島政希氏のホームページの内容に怒った連合群馬が、民主党県連に公式見解を求める質問状を出し、民主との関係を一切凍結すると通知したという新聞記事を見て関心を持ち、ホームページ「四国の星」に【「誹謗・中傷」?】というタイトルで「一言」を載せました。

【「誹謗・中傷」?】(四国の星、2005/11/26) 

<民主党群馬県第4区総支部長・中島政希氏のホームページ、今週の主張(10月25日)より>
[総選挙の結果について]
今回の総選挙は歴史的といってもよい自民党の圧勝に終わった。当事者の一人だったこともあり、私はこれほど極端な結果に終わるとは、予想しなかった。

ことの善し悪しは別として、国民の多くは郵政民営化をシンボルとする「小泉改革」を支持した。10%近い投票率の上昇は近年にない現象であり、これまで投票所に足を運ぶこともなかった人々の政治的動員に成功した小泉氏の政治戦略は、まことに見事であったというほかはないだろう。しかしこの歴史的な自民党勝利はポピュリズム政治の弊害と紙一重のものであり、自民党が本来の保守政党として守るべきものを失った結果であるように思える。 

民主党の惨敗はその改革姿勢に疑念をもたれたことにある。「民主党は労組に遠慮して郵政民営化に反対しているのだ、労組依存の民主党には改革はできない」という自民党からの批判は、実に効果的に作用した。私は単純な郵政民営化には反対の立場をとってきたし、それは労組に影響されてのことではない。しかし私が一人でいくらそう主張しても世間の大勢はそんな言い訳は聞いてくれなかった。 

だから民主党大敗の後、公然と「労組依存からの脱却」を主張した前原新代表が登場したのは自然の流れといっても良いだろう。しかしこれは党内の軋轢、とくに労組基盤に強く依存する地方の民主党に深刻な内部対立を招来せずには措かない。むしろ前原執行部はこうした軋轢を高めることで、民主党の「自立」と「改革」を達成しようとしているかに見える。公務員給与削減を目指す給与法改正案を党内の反対派を押し切って今国会に提出したのはその現われだろう。民主党が連合と一体であることを望む人たちと、それを望まない人たちとの対立が、すでに中央でも地方でも生じている。群馬民主党もそうした趨勢の渦中にある。 

さて、私自身や群馬県の選挙について語らなくてはならない。私の選挙について言えば、得票は過去最高に伸ばしたものの惨敗に終わった。敗因はマクロ的な要素も大きいが、ミクロ的な要因から言えば準備不足が大方といってよい。 

私や他の保守系候補擁立にいたる群馬民主党内のドタバタ劇はいずれ詳しく公表するが、今回の群馬の五選挙区に立ったメンバーについては、すでに昨年九月の段階で名前が出揃っていた。ところが新左翼系人物の突然の乱入やそれに便乗した守旧派の妨害などがあり、4区の公認決定は解散の前日になってしまった。 

事務所を開き、印刷物を発注し、各地に選対を作り、事務局スタッフをそろえたところで、もう公示になっていた。表敬訪問も名簿集めの余裕もなく、要するに有権者への個別の働きかけが(それは選挙の基本なのだが)、ほとんどできなかった。惨敗だったが、組織的にも知名度的にも全国有数の強敵を相手の逆風下の短期決戦という条件を考慮し、運動量と結果を計れば上出来の得票だったといえなくもない。 

今回の選挙戦の意義は、群馬4区の民主党が、政党としての自立性を確立し、それを有権者の前に鮮明に示せた、ということだろう。平成八年の民主党結党以来、過去三回の総選挙があったが、いずれも社民党と連合推薦での選挙であり、民主党としての姿や集票能力の独自性が不鮮明なままにきた。「労組の傀儡」「社会党の看板の架け替え」という批判が付きまとってきた。だが今回は、連合や社民党の推薦を得ることなく、しかも過去最高の得票数を達成したことで、こうしたマイナスイメージは完全に払拭された。 

群馬4区の選挙戦では、従来からボランティア・後援会中心の保守系選対と、旧社会党以来の労組選対が並立し、しばしばその軋轢が表面化した。県連内では、それは4区総支部や私個人のキャラクターによるもののように受け取られていたが、今回他の選挙区でも保守系候補が立ったことで、こうした軋轢が4区固有のものではないことが改めて明らかになった。それは、群馬の民主党に特徴的であった労組請負型選挙を今後どう克服していくかという課題と直結している。 

労組請負型選挙とは、総合選対という名のもとに、労組主軸の選対を形成し、そこに活動資金を供給して、選挙活動の全部または一部を請け負わせる形態の選挙方式を言う。五十五年体制下では有効であった労組請負型選挙も、小選挙区制下ではその有効性は失われている。またそれがどんなに有効だとしても、公選法上大きな疑義があり、長くは続けられない。実際今回も全国で労組役員が逮捕されているし、群馬でも昨年の参議院選挙時に某地区で内偵捜査の対象とされたと仄聞する。 

群馬4区では今回連合が「選挙態勢を取る時間的余裕がない」とのことで推薦を見送ったことから、幸いにも労せずして、労組請負型選挙から完全に脱却する好機を得た。そして、ボランティアを主軸とする選挙戦で、一定の成果を挙げることに成功した。4区民主党の歴史からすると画期的なことであり、今後も旧態が復辟するようなことはないであろう。また、いずれ他の小選挙区総支部でもこうした結末に至ることとは不可避の趨勢であろう。 

私は、今回の選挙を通じて、自らの当選を期すことはもとよりだが、私が創立した群馬の民主党を、しっかりした保守改革路線に立つ若い人材に引き継いでいくことを、大きな目標としていた。私が後継者として嘱望した二人の後輩同志、2区の石関貴史氏が比例区で当選を果たし、5区の田島國彦氏が予想をはるかに超える善戦だったことは、今次衆議院選における大きな成果だったと喜んでいる。 

深夜の開票速報を見つつ、群馬と日本の政治改革を主張し行動してきたこの二十年の政治生活を振り返っていた。敗戦後の心境からすると、改革を主唱するにはいささか薹が立ってきたのかな、との思いも去来していた。 

そのとき携帯電話が鳴り、石関貴史氏から比例当選の報告と合わせて「政策担当秘書に就任してほしい」との思いもかけぬ申し出を受けた。それは私を政策秘書に迎えることの政治的意味合いをよく承知したうえでのことのようだった。私は熟慮の上、鳩山由紀夫氏の了承を得て、これをお受けすることとした。「士は己を知る者のために死す」は、私の行動理念でもあるからだ。 

今後しばらくは石関氏と田島氏の政治活動を助けつつ、民主党群馬4区総支部の更なる基盤強化のために微力を尽くしたいと考えているところである。(平成17年10月23日) 

【連合が民主支援凍結 「中島氏がHPで中傷」】(中日新聞・群馬版)
九月に行われた衆院選で、群馬4区から出馬した民主党の中島政希氏(落選)が自身のホームページ(HP)に掲載した文章が誹謗(ひぼう)・中傷に当たるとして、連合群馬が民主党県連に公式見解を求める質問状を出し、民主との関係を一切凍結すると通知していたことが分かった。 

中島氏は衆院選の総括を先月下旬にHPに掲載。連合群馬が4区で推薦を見送ったことについて、「労組請負型選挙から完全に脱却する好機を得た」「(民主は)労組の傀儡(かいらい)」などとしている。 

中島氏は「当然のことを書いたまで。連合側の曲解、過剰反応ではないか」などと話している。連合群馬の清村宗一事務局長は「公党の支部長が代表者として掲載する文章なのか疑問。党県連の見解をただしたい」などと反発を強めている。 

同県連は富岡由紀夫会長が中島氏から事情を聴き、十九日の常任幹事会でも経過報告した。県連は今後、五役会議を開いて協議し、年内にも県連の議論をまとめたい意向。黒沢孝行県連幹事長は「労組と政党という互いの立場で、今後もいい関係を保ちたいと思っている」と話している。 

(コメント)
中島氏の文章のどこが「誹謗・中傷」なのか分かりません。 ホームページを見ると、中島氏はなかなかの見識を持った人物であると思います。 

文中に登場する石関貴史衆議院議員。9月17日にあった党の集会で名刺交換をさせていただきました。私の発言後、向こうからやってこられました。御活躍を期待しています。 

以上、一言(2005/11/26)。

【コメント】
2005年の総選挙直後、党の会合で石関貴史衆議院議員、中島政希総支部長の両氏と名刺交換をしました。会合での私の発言に何らかの共感をしていただいたようなので、愛媛と共通の課題を抱えているのだなと思いました。

私の「一言」に対し、中島氏からメールをいただきましたが、既に民主党を離れていたので、大変恐縮しました。

群馬と言えば、福田、中曽根、小渕という総理大臣を輩出した保守の牙城です。その一方で、田辺誠といった旧社会党の長老もいます。そして旧社会党の流れをくむのが角田参議院議員です。

民主党群馬県連の状況を、【旧社会党的体質の幹部】対【新興勢力の保守系民主党総支部長たち】の対立抗争と捉える見方もあります。しかし実際には、旧社会党体質の方々の政治資金に関する不明朗さに根元があるようです。旧来型の手法には、選挙運動での金の流れ等に不透明な部分がありすぎるのだと思います。

私はこの状況を、否定的に見る必要はないと考えます。民主党が真の国民政党に脱皮するために、過渡期における試練を背負っているのが、群馬の民主党です。

私がネット上でよく拝見する御名前は、石関貴史衆議院議員(2区総支部長)、柿沼正明・3区総支部長、中島政希・4区総支部長、そして先頃の県議選で残念ながら落選された田島國彦・元5区総支部長といった面々です。彼らの今後の活躍如何では、群馬に新しい時代が来る可能性があります。民主党にとっても先進事例となります。

石関氏が他の同志の方々を政策秘書にするなどして、県連の柱として頑張っています。1つでも志ある国会議員の議席ができれば、県全体に柱が出来ます。そういう意味での好事例です。

以下、彼ら勇士のホームページ、ブログを紹介します。なお、朝日新聞に連載され話題になった「候補者X」(X=柿沼氏、政治家志望者必読)の記事を、柿沼氏のHPで見ることができます。

石関氏のHP
http://www.ishizeki.jp/
中島氏のHP
http://homepage2.nifty.com/seiyu/
柿沼氏のHP
http://www.kakinuma.org/
柿沼氏のブログ(カッキーのブログ)
http://blog.goo.ne.jp/masaakikakinuma/
田島氏のブログ
http://kunchan2006.cocolog-nifty.com/

《独言》
上記の方々には失礼な、あるいは不正確な記述になっているかもしれませんが、「勝手連」ということで御了承ください。

旧社会党系が実力を保持する中で、総支部長の方々がよく頑張っています。党員・サポーターもかなり獲得しているようです。保守系という言い方をするよりも、政治家としての自立性が高い方々と言うべきだと思っています。

愛媛とは違い、高次元での悩みを抱えているのが群馬県です。遅れている県は、群馬の動向を参考にしながら方針を立てればいいのではないでしょうか。元総支部長の1人として、敬意をもって遠くから声援します。

もう少し分析が進めば、再度取り上げます。今度の参院選では、自民党の「ピーチクパーチク」議員を打ち負かしてもらいたいものです。

2003年、群馬県太田市を行政視察で訪ねました。清水聖義市長の取り組みを学ぶためでした。市長の著書読了を委員会視察の「予習」ということにしました。市長には丁寧に御指導いただき、感謝しています。その視察では、埼玉県志木市にも立ち寄り、穂坂邦夫市長(当時)のお話を伺いました。私が企画した視察の中で、最も印象に残るものでした。

ところで、地ビールレストラン「ヨラッセ」は、どうなっているだろう。


2007/5/20(日) 参議院選挙の重要性・・・民意表現の場としての機能

参議院無用論というものがあります。参議院は衆議院のカーボンコピーにすぎないから、税金の無駄遣いである。衆議院の優越が認められており、参議院の仕事は衆議院の後追いに過ぎない等々。

一応合理性のある主張であり、参議院のあり方を、選挙制度の変更を含めて再検討する必要があります。

しかし、参議院の廃止となると、憲法改正が必要になります。憲法改正の口実として参院無用論が主張されるとなると、これは問題です。

本日の読売は、参議院60年の節目に社説を出しています。

【参議院60年 今の姿のままではいられない】(読売社説) 
参議院のあり方を考える、よい機会である。

現在の憲法の下で最初の国会が召集され、参院が活動を始めたのは、1947年5月20日だった。参院が還暦を迎え、しかも、与野党が政治決戦と位置づける第21回参院選が間近に迫っている。

参院に求められているのは本来、衆院に対する抑制、補完の機能だろう。だが、実際の参院の姿は、どうか。

参院が「衆院のカーボンコピー」と称されて久しい。衆院での政治対立がそのまま持ち込まれることが少なくない。

最近では、小泉前政権の下で、郵政民営化関連法案が参院で否決・廃案となり、“郵政解散”の引き金となった。総選挙で与党が大勝し、法案を出し直してようやく成立した。

参院でも、衆院同様の審議を繰り返すため、法案成立に時間がかかる。参院で否決され、法案が成立しないとなれば、政策の遂行が破綻(はたん)する。

与野党が参院選での過半数確保を叫ぶのも、与党過半数割れとなれば、安倍政権が行き詰まると見られるからだ。

現に1998年の参院選で、自民党は惨敗し、当時の橋本首相が辞任した。小渕後継政権は、野党の金融再生関連法案の丸呑(の)みに追い込まれた。参院の過半数割れが連立を余儀なくさせ、今日まで政治構造に大きな影響を及ぼしている。

参院が震源地ともなって、こうした事態を招くことは、本来、参院に期待されていることではあるまい。

参院の役割や権限は、変化の時代の政治システムをどう構築するか、という観点から考えるべきだ。

その基礎となる改革案が既にある。有識者懇談会が2000年に、当時の斎藤十朗議長に提出した意見書だ。

参院を「再考の府」と位置づけ、政権や権力と距離を置き、大所高所から中長期的な審議を重視するよう求めている。首相指名の廃止や、閣僚・副大臣就任の自粛など、具体的な提言もしている。

だが、意見書は無視されたままだ。自民党の新憲法草案に意見書の内容を盛り込む動きもあったが、参院側の強硬な反対で見送られた。参院の力の低下や既得権の放棄につながるからだろう。

選挙区と比例代表選との二本立てという、衆院と類似した選挙制度も、衆院のカーボンコピー化を促進し、参院の独自性を薄める要因だ。

業界・団体、労働組合などの組織への票や資金の依存は、今なお根強くある。参院自民党枠の閣僚と順送り人事なども55年体制時代の古い体質の残滓(ざんし)だ。

参院が今のままでいいはずがない。

【コメント】
読売社説と参議院無用論との双方に欠けているもの。それは民意の発現機会についての考察です。

もし衆議院のみの体制となったら、一昨年の衆院選のように与党圧勝という結果が出た場合、4年間どんなことでも可能になり、憲法改正でも、野党から一本釣りをすれば可能になってしまいます。国民の意思からは程遠い政治になります。

今回の参院選が注目されるのは、与党独裁へのチェック機能があるからです。参院選があるが故に、与党の独走が最小限度に押さえられている面があります。

もし参議院をなくすのであれば、衆議院の任期は2年にする必要があります。そうでなければ、国民の政権チェック機能が弱まってしまいます。

現行の参院選には、衆議院選挙だけでは充足できない国民の意思発現機会の確保による、中間選挙的な意味合いがあることを忘れてはなりません。

7月の選挙で、与党独走が止められることを期待します。そして、早期の衆議院選挙で政権交代を実現する切っ掛けにしたいものです。荒廃しつつある地方を救うためにも。


2007/5/19(土) 明治以降の国策による不当な利得と「ふるさと納税」

「ふるさと納税」が波紋を広げています。参院選対策という動機不純な面はありますが、首都や大都市に異常なほど有利な現行税制を見直す契機となればいいと思います。

反対する都県は、不当に恵まれた地域です。

【ふるさと納税、知事会割れる 4都府県が反発】(朝日)
全国知事会(会長=麻生渡・福岡県知事)は18日総会を開き、「ふるさと納税」を含めた都市部と地方での税収偏在の是正に対する見解をまとめた。当初案は都市部から地方へ財源を移す方向性を示していたが、東京、神奈川、愛知、大阪の4都府県が反発、独自の修正案を提示するなどしたため、あいまいな表現に変えて決着させた。問題に対する自治体間の対立が浮き彫りになった形だ。 

政府が6月にまとめる「骨太の方針2007」に、地方の意見を反映させるため討議した。知事会として示す「骨太の方針に盛り込むべき事項」の中の税収偏在の是正策に対して大都市を抱える知事らが反発。ふるさと納税についても「(本来の地方税のあり方とは)違った方向の議論が出ていて心配」(神田真秋・愛知県知事)という声の一方、現状に不満を抱く知事たちが「素晴らしい制度。ぜひ実現して欲しい」(加戸守行・愛媛県知事)などと発言、意見が割れた。 

結局、ふるさと納税については「国税・地方税と合わせた抜本的見直し」を提言した部分を削除し、「税源偏在是正のための課題の検討」と表現。地方税収そのものについても「偏在是正が必要である」とあった文言を削った。 

【コメント】
明治以降の国策で、東京中心の中央集権システムでキャッチアップを図った結果、先進工業国となった日本。太平洋ベルト地帯からはずれた地域は、日陰の存在になってしまいました。

富国強兵の旗印の下、地方から大都市への人の移動がありました。戦後の高度成長期においても、地方は人材を供出し続けました。子供が大学で学ぶために、地方の親は仕送りに励みました。このことへの配慮が、近年、都市部住民になくなってしまいました。

東京や有力大都市の豊かさは、地域の努力によるものではなく、国策による不当な利得であるという謙虚さがなければなりません。法人税においても、本社所在地での課税が妥当なものかどうか検討が必要です。

各地域での都市間バランスも考慮する必要があります。県庁所在地などの有力都市の周辺で巨大なショッピングセンターを誘致して地域の活性化を図ろうとする例があります。しかしそれでは、他の地域に壊滅的な打撃を与えるとともに、有力都市の魅力を減殺する結果、自らの地域の地盤沈下をもたらすことにもなってしまいます。

有力都市の周辺部は、身の丈にあった地域づくりを行い、有力都市の魅力の増進に貢献するというスタンスが必要です。そうした配慮の下に、財源の適正な配分がなされるべきだと思います。


2007/5/18(金) 北極星と政治・・・政を為すに徳をもってすれば

昨日星の話をしたので、星つながりで。

北斗七星は目立つ星座です。全天で60個あると言われる2等星の内の6個が、北斗七星の中にあります。ひしゃくの形をしているので、そのことを予め教えておくと、誰でも発見できます。

子供の頃の知識ですが、ひしゃくの柄の方から2番目の星が実は連星で、これが2つに見えると視力が1.2なのだそうです。残念ながら、子供の頃には見えたこの連星を、現在の視力では確認できません。

北斗七星のひしゃくの方から数えて1番目の星と2番目の星の間を1番目の星の方に5倍延長すると、北極星にたどり着きます。学校で教わるので、子供でも知っています。

古来、この北極星を見て、人々は方位を確認しました。不動の星の存在感は抜群でした。政治に携わる者も、この星を見て思索しました。

論語にある一節は、有名です。

子曰、爲政以徳、譬如北辰居其所、而衆星共之、 

子(し)曰(いわ)く、政(まつりごと)を為すに徳を以てすれば、譬(たと)えば北辰(ほくしん)の其の所に居て、衆星(しゅうせい)のこれに共(むか)うがごとし。 

政治家(当時は君子)が、精神の修養によってその身に得たすぐれた品性、即ち「徳」をもって政治に励めば、国民(民衆)は全天の星が不動の北極星(北辰)を中心に回転するように、政治家に心服して従うであろうという意味です。

孔子が唱えたこの「徳治主義」の政治が実践された例はほとんどありませんが、しかし政治の理想としては永遠に掲げられるべきものです。

さて日本の政治。子供たちには「徳」を教えたがる与党政治家が、政治資金の使い道の説明に「ナントカ還元水」に使ったという答弁で白を切って居座っている某農水相に対して異議を唱えません。

徳治主義とは対極にある、品格なき政治を実践しながら「美しい国」を説く総理大臣の自己矛盾を指摘できるのは、国民の一票です。

ちなみに、北斗七星がひしゃくの形をしていることを教わらなければ、大半の人は北斗七星を知らず、結果として北極星を発見できません。北極星を発見することが命に関わっていた古(いにしえ)の人たちとは違い、夜空を眺めない現代の人たちには、北辰の位地を教えなければなりません。

主権者に相応しい政治教育についても真剣に考えるべきときです。そうでないと、安倍政権によるインチキ改憲に付和雷同するだけになります。


2007/5/17(木) 宵の明星と木星、そしてダークマターと1人区

毎日あくせく働いていると、悠久の夜空に目を向けることが少なくなります。宵の明星(金星)が西の空にひときわ明るく輝いているのを見逃す人が多いようです。

「あの星を知っているか」と尋ねても、答えられる人が少ないのにはガッカリします。「あれが、星飛雄馬が見た巨人の星だ」などと勝手な説明をすることもあります。 

東の空に木星が見えてきました。西にビーナス、東にジュピターという空の構図です。木星は通常火星より明るく、現時点で、太陽と月以外の星の中では、金星に次ぐ明るさがあります。

ところで、ダークマター(暗黒物質)に関する記事が出ていました。

【「暗黒物質の輪」とらえた NASAなど発表】(朝日)
宇宙全体の重さの4分の1を占めるとされ、正体が不明の「暗黒物質(ダークマター)」。それが「輪」のように広がっている様子を、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた。米航空宇宙局(NASA)などが15日、発表した。暗黒物質の存在領域を輪のような明確な形でとらえたのは初めて。正体解明の重要な手がかりになりそうだ。

輪は地球から50億光年離れた銀河団で見つかり、直径は260万光年ある。10億〜20億年前に二つの銀河団が衝突、その衝撃で周囲の暗黒物質が波紋のように広がったらしい。暗黒物質は見えないが、その重力で、近くを通る光が曲げられる「重力レンズ」効果を観測し、輪の存在を確認した。 

宇宙の重さのうち、星など普通の物質が占める割合は4%にすぎず、残りは暗黒物質と暗黒エネルギーとされる。観測チームは「輪の観測で、暗黒物質と通常物質の振る舞いの違いなどが調べられる」という。 

【コメント】
チマチマした政治の話が主流の当ブログですが、ゆったりした天上の話もたまにはしてみたいと思います。

子供の頃天体に関する本が好きで、大人になったら天文学者になろうと思っていました。宇宙の成り立ちや太陽系の惑星のことを本で読むのが好きでした。

ダークマターという概念に興味を持ちます。正体不明。重力があって強い影響を持つが、見えない。幾つかの説があるようです。

政治の分析をしていても、正体不明の力学があるような気がします。政治におけるダークマターの解析も必要です。参院選1人区におけるダークマターが何なのか。

「踏まれても自民党、蹴られても自民党」という精神風土への理解がなければ、民主党政権はありません。

《独言》
また政治の話になりました。風が起こらなければ(風を起こさなければ)、民主党にとって1人区攻略は難しいようです。

経済面から見た客観情勢ではひっくり返って当然なのに、「慣性の法則」が働くのは何故なのか。もう少し研究してみたいと思います。

この分野には巨大望遠鏡は必要ありません。しかし、深い洞察力が不可欠です。


2007/5/16(水) 民営刑務所×セカンドライフ=社会復帰

民営刑務所誕生。駐車違反の取り締まりと同様、刑務所運営は民間でも可能な業務です。弾力的な運営が可能な権限移譲がどれだけできるかがポイントです。

入所・出所時の審査、出所時期の判定については、公権力が関与すべきですが、社会復帰に向けての訓練やカウセリングは、民間のノウハウが生きてくる分野です。

【初の「民営刑務所」、山口・美祢市で開所式】(14日読売)
開所式が行われた「民営刑務所」美祢社会復帰促進センター(13日) 民間の資金やノウハウを活用する「PFI方式」の刑務所として、山口県美祢(みね)市に全国で初めて設置された「美祢社会復帰促進センター」の開所式が13日、行われた。

出席した長勢法相は「民間の創意工夫をいかし、質の高い再犯防止に資する処遇がなされる」と強調し、民間企業が運営を担う初めての試みに期待を込めた。近日中に収容が始まる。

警備会社のセコム(本社・東京)などで構成する企業グループが施設建設や20年間の運営を請け負っている。建物は、個室で窓に鉄格子がない収容棟をはじめ、パソコン操作の技能取得などに取り組む教育・職業訓練棟など計22棟ある。

職員は刑務官が123人で、警備員や給食パートなど民間人が約180人。収容者は初めて刑務所に入る男女各500人。

PFI刑務所は、喜連川(栃木県さくら市)、播磨(兵庫県加古川市)が今年10月、島根あさひ(島根県浜田市)が08年10月に収容を開始する予定。

【コメント】
刑務所運営が可能ならば、運営会社が仮想社会を構築して、社会復帰の訓練をすることも可能ではないでしょうか。

「セカンドライフ」に注目が集まっています。定年後生活という意味ではなく、インターネット上の仮想空間で生活するゲームです。

刑務所で刑期を終えて現実の社会に復帰するのは至難の業です。社会に適応できなかったが故に罪を犯した人が、刑務所で反省したから即社会適応が可能になるということにはなりにくいでしょう。

様々な中間処遇が考えられていますが、仮想の社会で生活してみて肩慣らしをするという工夫があっていいと思います。

《独言》
やっとインターネット復旧。2日間不便しました。昨日行ったインターネットカフェは、ソフトクリーム食べ放題。快適でした。


2007/5/15(火) 議員ひとけた議会

地方議会の議員定数は、減らされる傾向があります。それでいいのでしょうか。現実の議員は不要な人が多いような気がしますが。

【統一選後、「定数ひとけた議会」90超えそう 本社調べ】(4月17日 朝日) 
17日告示された約450の町村議選で、定数が10未満の「一けた議会」が急増していることが朝日新聞社の調べで分かった。削減予定も含めると、統一選後は全国で90を超えそうだ。合併に参加せず単独の道を選んだ市町村が、財政難から減らした例が多いが、住民の議会不信からくる「不要論」のプレッシャーもある。

地方議会の議員定数は、地方自治法で人口規模に応じて上限が決められているが下限はない。多くの市町村では、条例で法定定数よりも少ない定数にしている。昨年7月時点の「一けた議会」は38(全国町村議会議長会調べ)。ところが北海道夕張市が財政破綻(はたん)を機に定数を9に減らし、市として初の一けた議会になったのをはじめ、統一選を見すえた定数削減が町村で相次いだ。

一けた議会の急増が目立つのが北海道。昨年7月時点で2村だったのが、統一選後は、削減予定も含め28市町村となる。道町村議会議長会の勢籏(せはた)了三事務局長は「道内自治体は地方交付税の依存率が全国的に見て高い。ここ数年の交付税削減で、経費節減策として極端な削減が相次いでいるのだろう」とみる。

議会に不信感を募らせた住民たちが、陳情や直接請求で削減を突きつけたケースも少なくない。

22日に町議選が投開票される北海道清里町議会は、14だった定数を11に減らす条例を定めながら、統一選直前の3月議会で更に9に減らすことを決めた。2月、町民から陳情が出たためだ。

町議会は、議長ポストに端を発した議員同士の対立が続き、委員会の審議が止まることもあった。「町が財政難で大変なのに、つまらない内輪もめを続けていた。いい加減にしろと思った」。陳情の代表だった三上政夫さん(70)は話す。陳情の呼びかけに、10日で有権者の1割を超す360人が賛同してくれた。

一けたではないが、鳥取県日野町(12→10)や埼玉県幸手市(25→15)も住民からの直接請求が削減の原動力になった。

削減を契機に新たな議会像を模索する動きもある。昨年10月、定数が14から8になった北海道利尻町では、議長の呼びかけで自主勉強会を始めた。議会前、全議員が議案の束を抱え、部屋にこもる。以前は定例議会で質問するのは2、3人だったが、3月は議長を除く7人全員が質問した。

昨年11月の選挙で定数が9から6になった長野県清内路(せいないじ)村では、二つあった常任委員会を統合。議員は議会広報を一軒一軒回って配り、集落ごとの出張説明会「どこでも村役場」に出る。原登美彦議長は言う。「人数が減って不安もあるが、一人一人の活動が見えやすくなった」


【コメント】
議員のボランティア化を真剣に考えるときです。せいぜい、時給で謝金を考える程度で議員をやってもらいます。その方が、地域を真剣に考える議員が出てきます。

人数は多い方がいいでしょう。主体的に自治を担う能動的な市民としての議員。


2007/5/15(火) 本日インターネット不通

今日はパソコンの不具合で、アップロード中止。ネットカフェにて。


2007/5/14(月) 護憲型改正か、破棄型改正か・・「できちゃった改正手続き」での改正に反対する

自主憲法制定論は、日本国憲法制定当時の圧倒的世論の支持を見誤るものであると同時に、幣原喜重郎首相が戦争放棄をマッカーサーGHQ最高司令官に提案したことなどを無視して、当時の日本国政府の主体性を不当に軽視するものです。

しかも、自主憲法制定論者が真に「自主」を掲げるならば、現在の対米屈従路線を批判し、それを転換するシナリオを提示する責任があります。そのことを忘れた自主憲法論は、新たに対米従属憲法を制定する企みであると言っても過言ではありません。

私は改憲論者ですが、改憲への筋道は、徹底的な「護憲」の「基礎工事」抜きにはあり得ないと考えています。現憲法を遵守し、その理念を発展させることを目指しての改憲こそが日本国憲法の予定する憲法改正です。

従来の自主憲法制定論に立脚する対米屈従路線型の改正論は、日本国憲法を侮辱し、これを破棄しようとするものに他なりません。「破棄型」の憲法改正論は、憲法99条が国務大臣や国会議員などの公務員に憲法尊重擁護義務を課していることとも矛盾します。

護憲型の改正論か破棄型の改正論か。そうした区別の指標を持った上で、これからの憲法論議を見守りたいと思います。

憲法改正手続きを定める国民投票法案が本日、参院本会議で採決され、与党の自民、公明両党の賛成多数で可決、成立する見込みです。中立であるべき改正手続きにおいて、野党との合意ないしは徹底討議を経ずして、与党が強行に押し切った形になりました。与党において、民主党案に歩み寄るか、民主党案を丸飲みするかの対応は充分可能でした。

この「できちゃった改正手続き」で行われようとする、いかがわしい憲法改正論議には反対します。

《独言》
昨日に続いての議論。「自主憲法制定論」の欺瞞を指摘し続けるつもりです。改正手続きへの取り組みも軽すぎる。安倍政権の軽薄さを象徴する手続き法制定になりました。


2007/5/13(日) 中川幹事長の挑発に乗るな・・民主党は迷わず「護憲」と答えろ!

チマチマした変化球の多い自民党中川秀直幹事長。民主党に対し、インコースにカーブを投げ込んできました。民主党の各議員がこれに仰け反るようでは、戦わずして負け。

改憲論者も堂々と「護憲」で選挙に臨めばいいのです。「安倍改憲」には反対ということで十二分に辻褄が合います。

靖国神社の春季例大祭に合わせて「内閣総理大臣」名で「真榊(まさかき)」と呼ばれる供え物を奉納していたことについて安倍総理は、「今まで通り、参拝するかどうか、供え物を出したかどうかは言わない」との考えを繰り返しています。

民主党には問いに対して生真面目に回答したがる議員が多いようですが、こんな「あいまい」戦術を採る代表のいる政権党に対して、まともに答えていたら笑われます。

【中川幹事長の広島市での発言】(5月12日NHKニュース)
自民党の中川幹事長は、広島市で開かれた党の会合であいさつし、夏の参議院選挙に関連して、民主党は憲法改正への賛否を明確にすべきだという考えを示しました。

この中で、中川幹事長は、「民主党は、夏の参議院選挙で社民党や共産党の協力を得るために、本来、党幹部のほとんどが改憲論を唱えていたにもかかわらず、これを隠して、護憲の皮をかぶろうとしている」と述べました。

そのうえで、中川氏は、「国民投票法案が成立すれば、3年後には新憲法制定の国会発議が可能になり、今度の参議院選挙の候補者は6年の任期の間に、新憲法制定の発議にかかわることになる。

このため、参議院選挙では、すべての政党や候補者が、発議に賛成か反対か、護憲なのか改憲なのか、立場を鮮明にすべきであり、民主党に対しても、断固として態度の明確化を求めていく」と述べました。

【コメント】
中川発言の非論理性は、発議は国会(各議院)の3分の2以上の賛成がなければできないということを無視して、それに対する賛否を問うところにあります。発議に向けての合意形成がなされていれば、発議に賛成なのは当然です。

憲法改正の発議で重要なのは、合意形成に向けての真摯な努力です。単に政権党プラス民主党で決めていいものではありません。慎重の上にも慎重な審議を重ね、大多数の国会議員が賛成することが必要です。

そうした憲法改正に向けてのルールないしはマナーに反して強行されようとしているのが、明日にも成立が予定されている憲法改正国民投票法(案)です。

中立的に行われれるべき改正のルールづくりでさえ多数決で強行するとなると、少なくとも安倍政権での改憲が極めていかがわしいものになることは確実です。

真に国民のための改憲ならば、国民が十分納得できる手続きを定め、これ以上の議論はないというくらい議会及び国民の間で議論が尽くされたことを確認した上での発議でなければなりません。

しかも日本国憲法の改正の名に恥じないものとするためには、発議者たちが護憲という「基礎工事」をしっかりした上での発展的な改正でなければなりません。日本国憲法を侮辱する輩による「破棄型の改正」であってはならないと思います。


2007/5/12(土) 安倍晋三氏と暴力団・・・朝日新聞社への提訴

「私や私の秘書が、この犯人や暴力団の組織と関係があれば、私はただちに総理大臣も衆院議員もやめる考えだ。黙っているわけにはいかない」と激高した安倍総理。4月24日のことです。

朝日新聞社発行の雑誌・週刊朝日がスクープした、長崎市長銃殺事件の容疑者が所属する暴力団と首相秘書との「関係」に関する記事について、事実無根で名誉棄損にあたるとして、首相の秘書が同社を相手取り、損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。

安倍晋三氏の祖父・岸信介氏と暴力団との繋がりは、ほぼ公知の事実です。また、これまでも様々なメディアで、安倍晋三氏と暴力団、あるいは統一協会との関係が指摘されています。

とても「美しい」政治家とは言えない安倍氏が、何故、秘書を使って朝日新聞を提訴するのでしょうか。

【<名誉棄損>安倍首相秘書が損賠提訴 週刊朝日の記事で】(5月9日 毎日新聞)
安倍晋三首相の事務所に所属する秘書3人(うち1人は元秘書)は9日、朝日新聞社発行の雑誌「週刊朝日」(5月4日、11日号)に掲載された、長崎市長銃殺事件の容疑者が所属する暴力団と首相秘書との「関係」に関する記事について、事実無根で名誉棄損にあたるとして、同社を相手取り、計約4300万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。
 
安倍首相事務所によると、同誌記事と先月24日付朝日新聞朝刊に掲載された新聞広告について「安倍首相の元秘書が長崎市長射殺事件の容疑者が所属する暴力団から脅されていたとの記事を掲載したが、そのような事実は全くなく、秘書らの名誉は棄損され多大な迷惑を受けることになった」としている。さらに、同月28日の朝日新聞朝刊と週刊朝日(5月18日号)に掲載された「おわび」記事に関しても「全くの事実無根で、再度名誉を棄損された」としている。
 
安倍首相は先月24日夜、記者団に「私や私の秘書が、この犯人や暴力団の組織と関係があれば、私はただちに総理大臣も衆院議員もやめる考えだ。黙っているわけにはいかない」と法的措置を取る考えを示唆していた。【近藤大介】
 
▽朝日新聞社広報部の話 訴状が届き次第、内容をよく検討して対応を考えたい。 

【コメント】
週刊朝日の記事は読んでいません。しかし、週刊ポストの記事(5月18日号)は読みました。

週刊ポストでは、3月9日の福岡地裁判決が取り上げられています。2000年6月と8月に、安倍氏の自宅車庫や後援会事務所などに火炎瓶が投げ込まれた事件の判決です。

襲撃を指示した指定暴力団工藤会系高野組組長・高野基被告と、犯行を依頼した元土木工事会社社長・小山佐市被告らに実刑判決が下されています。

新聞報道では、小山被告が99年の下関市長選挙で安倍氏が支持した候補への協力の見返りに、安倍氏の秘書に金を要求して断られたことへの報復ということになっています。

しかし、検察の論告では次のようになっています。小山被告は安倍氏の被告に絵画買い取り名目で500万円の支払いを要求し、同秘書に300万円を工面させました。さらに安倍氏にも面会して絵画の買い取りを要求しましたが、安倍氏に拒絶されました。このことから犯行に及んだのです。小山被告は単なる土木工事会社社長ではなく、高野被告ら暴力団関係者とも親交を結んでいました。

おどろおどろしい背景が見え隠れする事件。安倍氏側が300万円支払っているところが注目点です。その後のもめ事なのです。このような検察論告を裁判所がほぼ全面的に認めての判決。そうしたことを指摘しつつ、安倍氏をはじめ、政治家と暴力団との関係を論じているのが週刊ポストの記事です。

(この火炎瓶事件は、加藤紘一氏宅への放火のように、民主主義への挑戦だという見方をされているのでしょうか。私にはそういう視点での報道を見た記憶がないのですが、寡聞にして知らなかったいうこともあり得ますので、この点への論究は留保しておきます。)

週刊ポストについては、提訴はしないようです。何故、朝日か。朝日新聞への嫌悪感もあるでしょうが、言論弾圧への布石だと思います。テレビもNHKの不祥事や「発掘あるある」問題などで、弱みを総務省に握られました。新聞界も、突っ込まれると困ることだらけの業界です。

政治とマスコミとのもたれ合い。その前提で政治が行われている中で、メディアが牙を剥くとどうなるか。それを示すためのものだと思われます。朝日新聞は真っ青になっているかもしれません。そして、各大手メディアも、安倍政権に逆らうとどうなるかを学習しつつあります。

参院選を控え、大手メディアの報道姿勢が注目されます。政治の実相を知ろうとすれば、日刊ゲンダイや非新聞社系週刊誌に頼るしかなくなる恐れもあります。


2007/5/11(金) 「はしか」と軍国主義、改憲

減少し続けていた麻疹(はしか)が大都市を中心に増加しているとのこと。最悪の場合、脳炎や死亡に至ることもあるといいます。予防接種が必要です。

はしかのウイルスは空気感染するなど感染力が強く、感染すると10日ほどの潜伏期間後、高熱、発疹などの症状が出ます。多くは自然治癒しますが、0・1%が脳炎を患い、その内15%が亡くなります。知能低下などの後遺症もあり得ます。

かつてはしかは、子供の頃に感染して免疫ができると、大人になると大丈夫だと言われていました。しかし近年大流行がなくなり、子供の頃罹った人でも免疫力が低下して再度感染することがあるそうです。

昔は、はしかのウィルスは遍在しており、絶えず罹患する可能性があり、結果として免疫力は維持されていました。ところが無菌化した近年、ウィルスと御無沙汰することになり、却ってウィルスに冒されやすくなったというパラドックス。

戦前の子供の多くは、軍国少年でした。その結果としての惨憺たる敗戦の記憶が、戦後民主主義の原点ともなっています。ところが戦後62年、軍国主義が封印された結果、「ウィルス」に冒されやすくなった無菌状態の国民が増える環境が整いつつあります。

「改憲」=軍国主義復活というイメージがなくなり、「未来志向」への置き換えが成功したと言ってもいいでしょう。

安倍総理が掲げる「改憲」は、そうした土壌を背景としたものですが、ときどきそうした人物が登場した方が、日本の民主主義の成熟にとってはプラスだと思います。彼の主張の軽薄さが「免疫力」の強化に繋がれば幸いです。

そのまま安倍氏の主張が是認されるようであれば、戦後民主主義が国民精神の骨格たり得なかったということになります。免疫保全作業として、歴史に学ぶことの必要性を感じます。日本の政治の分岐点。


2007/5/10(木) 参院選、週刊文春の予想に自民党がクレーム・・敗北予想にピリピリ

そろそろ、週刊誌の参院選の結果予想が現実味をもって語られる段階に入りました。私が目にしたのは、サンデー毎日と週刊文春ですが、それぞれ予想が違います。予想の難しい選挙です。

自民党敗北の予想を出した文春に自民党が抗議文。

【参院選予測、自民党が「週刊文春」の記事に抗議文】(読売) 
自民党は9日、同日発売の週刊文春(5月17日号)に掲載された夏の参院選結果に関する予測記事について、「事実に反することが掲載された」として、抗議文を同誌編集長に送付した。

抗議文は、自民党公認候補のうち70歳以上の4人を「自民の世論調査によると、4人全員がいまだに危険水域から浮上せず、参院選最大の不安要因となってしまった」と記述した部分について、「党で把握している世論調査結果にそのような事実はなく、全くの虚偽にほかならない」と指摘し、「今後はしっかりとした裏付けをとった上で、正確な記事を掲載するよう強く忠告する」としている。

【コメント】
自民党が気にしているのは、自民党のロートルが不利だとする予想が全国的に連鎖反応を起こすのではないかということです。

1人区の半数が微妙な情勢の範囲内なので、ちょっとしたことで形勢逆転が起こりうる状況です。調査手法と光の充て方で、結果予想に差が出ます。

サンデー毎日は、自民55、民主44、公明12、共産3、社民2、国民新党2の予想で、与党系が68。これに対し、文春は自民46、民主48、公明13、共産4、社民2、国民新党3で、与党系が60。与党系が過半数(122議席)を取ろうとすると、非改選が58議席なので、64議席が必要です。サンデー毎日では与党勝利、文春では与党敗北。

自民党がピリピリしているのはよく分かります。世論調査ではそれなりの結果が出ているのかもしれませんが、手応えはそれほどないのだろうと思います。

民主党にとっても、手応えが感じづらい選挙です。今回は無風のまま、力勝負になることが予想されます。これからの2ヶ月、争点の掘り起こし方如何で結果に差違が出そうです。

四国は四県とも微妙。我が愛媛に関しては、関谷氏がロートルではありますが、自民党愛媛県連は全国屈指の組織であり、四国の他県自民党県連とは別格の強さがあります。ただし、市町村合併による組織の脆弱化と、景気回復が実感できないことから来る支持基盤の落ち込みがどの程度のものかが不明です。

友近としろう氏がどのような風の起こし方をするかが見所。知名度があるので、自力で旋風を巻き起こすことは可能です。


2007/5/9(水) 悪代官政治極まる・・自民党、業界団体を査定

限られた予算を逆手に取り、業界団体を締め付ける。選挙でどれだけ頑張ったかを自民党が査定して、その後の要望をどれだけ政策に反映するかを決める。悪代官型の政治手法が取られます。

業界団体の現状に合致した手法なのかどうか。この点の判断が微妙です。

【自民、業界団体の選挙貢献度を査定へ 要望の扱いに差】(朝日)
自民党は、参院選に向けた業界団体の引き締め策として、同党への支援を数値化し、貢献度に応じて団体側の要望を政策に反映させる仕組みを導入することを決めた。執行部はすでに、党所属衆院議員らの貢献度を査定して人事に反映させる新たな党運営方針を決めているが、参院選対策での「成果主義」をより鮮明にすることで、票の上積みを図る。 

執行部が検討している指標は(1)候補者への推薦の有無(2)団体役員による関連団体回りの実施(3)名簿や人員の提供(4)集会の実施数(5)党員獲得数――など。計約20項目を数値化し、貢献度をはかる。 

対象となるのは運輸や食品といった約500の業界団体。医師会や漁連など比例区に組織内候補を出している団体についても「選挙区の候補者に対し、きちんと支援態勢をとっているか」などを材料に評価する。 

まず、4月の参院福島、沖縄両選挙区の補欠選挙での協力ぶりを認めた団体に対し、5月末に予定されている団体の総決起集会で表彰する。参院選で貢献度の高かった団体に対しては、予算措置や税制改正といった政策要望について「ランク分けして対応する」(党執行部の一人)という。 

民主党に対する切り崩しの側面もある。「民主党にも推薦を出せば、その団体の要望を聞くことは難しくなる」(同)として、自民党に対してだけ支持を明確にするよう求めることで、組織・団体戦で民主党との差を広げようと狙っている。 

こうした仕組みを導入する背景について、別の党幹部は「予算のパイが小さくなる中で、選挙で自民党を真剣に支援してくれた団体と、そうでないところを同じに扱うのはおかしい。団体側からもそういう声が出ている」と説明している。 

【コメント】
こうした「査定」はこれまで、各市町村に対しても行われていました。しかし市町村合併で「守備範囲」が広がる反面で、「兵隊」(首長・議員)が減り、締め付け効果が弱まることが確実なので、業界団体への査定がより強化されることになります。

規制緩和・自由競争を掲げる自民党政権が業界団体を締め付けるという、論理矛盾のような選挙のあり方がいつまで続くのか、興味深いものがあります。

愛媛県建設業協会がまとめたところでは、2006年度加盟会員の従業員数が前年比22%減となっている模様です(愛媛新聞)。なお余剰人員があり、建設業従業員数の減少傾向は続くものと見られます。

自民党型選挙の支柱とも見られていた建設業において然り。骨粗鬆症状態の自民党支持母体がどれだけ参院選で活躍するか疑問です。しかし、奴隷状態に陥った方がより素直に命令に従うというのも人間心理。

奴隷的従順か、面従腹背か。今夏の参院選は、こうした面からも注目されます。選ばれる側が選ぶ側をコントロールする政治が継続するかどうか、という意味合いもあります。


2007/5/8(火) 「ふるさと納税」制度は、うまく機能するか

安倍首相が、個人住民税の一部を出身地などに納税することを選択できる「ふるさと納税」制度創設に意欲を見せたとのニュースがありました。

参院選への対策という面が濃厚ですが、それ自体は評価に値する制度です。ただし、それがうまく機能するかどうかまで、検討しておく必要があります。

【「ふるさと納税」制度に首相意欲】(読売)
安倍首相は7日昼、首相官邸で自民党の中川幹事長と会談し、地方税である個人住民税の一部を出身地などに納税することを選択できる「ふるさと納税」制度について、「総務省でしっかりやってもらおう」と述べ、制度創設に前向きな姿勢を示した。

個人住民税は現在、基本的に居住地の自治体に納めることになっている。

これに関連し、総務省の松田隆利次官は同日の記者会見で、「年末の税制改正の議論に間に合うよう、一定の方向性を見いだしていきたい」と述べ、2008年度税制改正での創設に向け検討を進める考えを明らかにした。同省は来月上旬にも有識者による研究会を設置する。 

【コメント】
居住地というのは、仕事の都合上やむなく選択している例が多く見られます。心は故郷という人も多いでしょう。財源不足の地方からすれば、心ある郷土出身者に故郷への納税を期待したいところです。

記事では納税の対象が県なのか市町村なのか不明ですが、市町村にする方がより直接的な故郷への貢献になります。

どの程度の納税が期待できるのかというと、いささか不安です。というのも、近年の国政選挙では、大都市部において大都市重視の政策が支持されている面が強く、結果として地方切り捨て政治を支持する方向に大都市住民の政治意識が変化しているように見受けられるからです。「ああ 上野駅」を唄った世代の子供達が主流になりつつあるということでもあります。

地方は、情報発信力を強化し、故郷への共感を呼び起こすような施策を講じていく必要があります。また、自らの税金がどう使われたのかについての「明細書」が明らかでなければ、都市部住民の納得を得ることは難しいでしょう。そういう意味で、地方の情報開示と説明責任の強化に結びつけば、地方自治の発展に寄与すると思われます。

ところで心配なのは、納税分で自治体が潤うと、交付税が減らされるのではないかということです。頑張った自治体は交付税を減らされただけ、という仕組みは御免蒙りたい。

中央集権の仕組みのままで制度を導入しても、地方への御機嫌取りという以上の効果を期待することは無理かもしれません。財務省にいいようにあしらわれる可能性があります。

《独言》
田中康夫・前長野県知事が、長野市から泰阜(やすおか)村に住民票を移したことがありました(泰阜村は県の南部にあり、北部にある長野市の県庁に通勤することは困難)。泰阜村の姿勢に共感して、納税したいという動機からでした。長野市との紛争になりましたが、田中氏の発想は一歩先を行くものであったと思います。


2007/5/7(月) オウム・上佑、新団体・・若者は12年前を知らない

詐欺商法やいかがわしい新興宗教。若者が餌食になることがよくあります。18歳の若者にとって、12年前は小学1年生前後。

大人から見ると、ほんの少し前に流行ったものが再度流行しているという感覚ですが、若者にとっては、「未知との遭遇」です。

【オウム上祐前代表派が新団体設立=「ひかりの輪」、麻原脱却を強調】(時事通信)
オウム真理教(アーレフに改称)から脱会した上祐史浩前教団代表(44)はセミナー最終日の6日、東京都世田谷区南烏山の教団本部で、上祐派の信者に対し新たな団体の名称や基本理念、会則などを説明し、了承を得た。同派幹部は「事実上の新団体の発足」としている。7日に公安調査庁に報告し、9日に上祐新代表が記者会見する。
 
新団体名は「ひかりの輪」に正式決定。上祐新代表は自身のホームページで「オウム真理教が、教団と社会を分断し社会と対立したのに対し、新団体では、教団と社会を含めて、皆が助け合って生きることが大切だという考え方を『輪』という言葉で表現した」としている。
 
出家、在家信者合わせて200人程度でスタートする予定。当面は、南烏山の教団施設に本部を置く。出家制度は維持するが、「ホーリーネーム」(出家名)や階級制度は廃止する。  

【コメント】
1995年は、阪神大震災があり、オウムのサリン事件があり、大変な年でした。「世紀末」というムードもありました。あれから12年。オウム真理教・麻原彰晃に対しては、昨年死刑判決が確定しました。しかし、まだまだオウムは油断ならない存在です。

阪神大震災関連のニュースが大きく取り扱われていたところへ、地下鉄サリン事件でオウム一色。オウムに関する特番の視聴率は異常なほどでした。我々が体験したことのない不思議な世界の話題であり、しかも、世間的には優秀であるとされる大学の学生や卒業生が主役でした。オウムの「閣僚」の方が、村山内閣の閣僚より優秀なのではないかという「批評」までありました。「サティアン」、「ポア」などのオウム語が流行。

社会的に耳目を引く話題でも、数年経てば、若者にとっては「歴史」です。大学は通常、4年で入れ替わり。こうしたことを考えると、高校卒業までに、近年社会的に問題となった事柄についての情報提供が行われる必要があります。2〜3時間で、概略の説明は可能です。

人生の初期段階で躓かないような情報提供、ないしは教育がなされる必要があります。これは、大人社会の責務でもあります。

「ああ言えば、じょうゆう」という流行語までできた、能弁な上佑氏。口当たりの良い新会派をつくるでしょうが、その本質を見極めるだけの洞察力も必要になってきます。知ってはいたが騙された、という事例も枚挙にいとまはありません。

同時に、信者達の社会復帰も重要なテーマです。


2007/5/6(日) 毎日更新を続けてみて・・「テーマ」が大変

このブログを立ち上げて1年余。毎日更新が続いています。我ながら感心しています。子供の頃、作文は全く駄目。しかも三日坊主。400字詰め原稿用紙1枚埋めるというのは、拷問に近い作業でした。少ない字数で原稿用紙を埋めようと、行の一番上に「。」が来るような文章を書くという姑息な手段を弄し、「1行」稼いだものでした。

明日自分は何を書くだろうか、自分でも分かっていません。その日の朝思いついたテーマで、何か書いています。時折、この日はブログを書く暇がないという日があります。そんなときは、「予定稿」などという生意気なこともやっています。

私がITによる情報発信を始めたのは、2001年。市町村合併に反対するためのホームページをつくったのが最初です。自分でホームページをつくることができなかったので、専門の業者さんに頼み、更新部分だけを自分でやっていました。その後、ホームページのタイトルを「四国の星」として発信していましたが、予算の関係上、昨年より無料のYahoo!ブログに乗り換えました。乗り換えが急だったので、ホームページを止めたと思っている人もいるようです。

「ほぼ毎日更新」の歴史を遡ってみると、2001年9月頃が最初です。その頃は、更新が面倒くさくて、自分のホームページの「伝言板」に投稿するという変則スタイルでした。それから5年半以上。

動機はと言えば、時々の更新だと更新日に気が重くなるので、それだったら毎日更新してやれと考えたから、ということです。当時は市町村合併反対という基本テーマがあり、それなりに力んでいましたが、Yahoo!ブログに移行してからは、民主党の総支部長も辞めた気楽さから、自由な気分で書けるようになりました。大変な面があるとすれば、「テーマ」を見付けることでしょうか。毎日やっていると、テーマさえあれば何とかなるような気がします。

どこまで続くものか分かりませんが、やれるところまでやってみます。ただし、「公約」としては、「ほぼ毎日更新」です。身辺雑記は書かない。テーマを決めて書く。これを原則としています。

ホームページを運営したお陰で、ネット上の友人ができました。まだお会いしたことのないS氏が、これまでのホームページと現在進行形のブログをまとめてくださっています。その、【「四国の星」保存版】も参照していただきたいと思います。できればその中で、市町村合併反対論を読んでください。

世間は、連休終わり。


2007/5/6(日) 隣町の超大型ショッピングセンター・・南予崩壊の引き金を引く恐れあり

来春隣の松前町に、中四国最大級のショッピングセンターが開業します。敷地面積20万平方メートル、延べ床面積は店舗部分と駐車場部分を合わせて15万平方メートル。190店舗が入る予定。初年度で300億円の売り上げ目標を設定しています。

駐車場は5千台分。シネマコンプレックス(複合映画館)やアミューズメント施設など、集客力の高い施設も併設する予定です。

周辺自治体から反対の声が出てこないのが不思議です。かなりの影響が出るでしょう。隣接する松山市、そして我が伊予市など、愛媛県中予地区への影響は言うに及ばず、大洲市や宇和島市など、愛媛県南予地区への影響も深刻です。

南予は人口30万人。人口減少が続いています。年間1%の人口減少が続き、人口減少率は加速するでしょう。南予経済を概観するに当たり、消費支出が1人当たり年間100万円と仮定して(もう少し少ないと思われます)、年間3000億円の消費支出があります。

松前町のショッピングセンターの年商が300億円として、南予からの集客で30億円の消費が新たに吸引されるとすれば(従来の域外流出に加えての流出)、低迷に拍車が掛かりつつある南予経済にとって、深刻な打撃となります。

1年に1%の人口減少ということは、それだけで30億円の消費支出の減少であり、それに加えて30億円の消費が新たに流出することになります。南予経済はデフレになります。南予経済崩壊の引き金を引くことにもなりかねません。

数年以内に高速道路が宇和島市まで延伸することが予定されています。高速道路が、宇和島市での消費を引き寄せるための吸入口となり、同時に宇和島市で生活できなくなった人たちの脱出路となることが大いに懸念されます。

隣町に進出するのは地元資本です。イオン進出を防ぐための出店であると言われています。今後、大型店同士の競合・競争が激化します。その狭間で、地域商業が息の根を止められるのではないか。中心市街地活性化を進めつつある各自治体の政策が破壊されるのではないか。そうした懸念が強まります。

翻って考えると、近隣地域での大型ショッピングセンター進出など、周辺に巨大な影響をもたらす事象について、土地所有権に付随する相隣関係の規制に準じた規制を訴える権利が各自治体になければ、自治体がそれまで積み上げてきた政策が水泡に帰すことを黙認することになってしまいます。県に広域調整を行う権限がありますが、各市町村にも自治体防衛のための阻止的権限が与えられるべきだと思います。


2007/5/5(土) 子供にとって夢のある郷土になれるのか

愛媛県のある地域での話。親が子供の教育に熱心です。その理由がどうも、子供に将来、都会に出て行って就職し、堅実な人生を送って欲しいというところにあるようです。その地域で子供が生活していくことは困難であろうとの予測が背景にあります。

教育熱というより「脱出熱」。将来の見込みが立たない地域から脱出するための教育投資です。その地域は、かつては繁栄していましたが、人口減少率が高く、将来は人口激減が予想されています。

そうした地域は、全国で数多くあるだろうと思われます。かつて、高度成長期の日本では、地方からの脱出圧力は相当のものだったはずです。集団就職がありました。出稼ぎがありました。当時、地方は貧しかったのです。子供の数も多く、大都市に出て行かないと、人生を切り開くことが困難でした。

昭和39年に大ヒットした井沢八郎の唄、「ああ 上野駅」を思い出しました。

作詩  関口義明  作曲 荒井英一
  
1 どこかに故郷の香りをのせて 
  入る列車のなつかしさ
  上野は俺らの心の駅だ 
  くじけちゃならない人生が
  あの日ここから始まった

(セリフ)
 『父ちゃん僕がいなくなったんで 
 母ちゃんの畑仕事も大変だろうなあ、
 今度の休みには必ずかえるから、 
 そのときは父ちゃんの肩も
 母ちゃんの肩も、もういやだって 
 いうまでたたいてやるぞ、
 それまで元気で待っていてくれよな』

2 就職列車にゆられて着いた 
  遠いあの夜を思い出す
  上野は俺らの心の駅だ 
  配達帰りの自転車を
  とめて聞いてる国なまり

3 ホームの時計を見つめていたら 
  母の笑顔になってきた
  上野は俺らの心の駅だ 
  お店の仕事は辛いけど
  胸にゃでっかい夢がある 

その後の日本は、「国土の均衡ある発展」を政策の柱とし、地方に工業の拠点を分散させるなどして、地方定住ができる環境づくりを進めました。しかし、近年の自民党の政策変更が小泉政権下での地方切り捨てへと進み、「選択と集中」へ舵が切られました。

過疎地から廃墟へ。その激流の予感を肌で感じるからこその教育熱であるとしたら、悲惨です。子供たちにとって夢のある郷土を築けるかどうかが大人達に問われています。郷土から、地方から政治を再構成しなければ、地方は陥没します。

愛媛の各地域を見ていると、経済は落ち込んでいても、まだまだストックがあるように見受けられます。そこからくる余裕が、政治選択にどのような影響をもたらすのか不明です。

今夏の参院選挙で、特に1人区の有権者が、「ナントカ還元水」に理解を示すのか、それとも、「格差是正」、「生活維新」に希望を託すのか。自らの首を絞めない選択、子供の脱出路確保しかなくなることを拒否する選択をお願いします。


2007/5/4(金) 「空気」に支配された改憲であってはならない・・諦め型改憲を懸念する

昭和16年12月8日の真珠湾攻撃に始まる太平洋戦争は、「やむをえない」という、政府・軍部の諦めの心理が支配した決断によるものでした。

「やむをえない」で始まり、「やむをえない」で終わった戦争。勝利への展望なき戦争に駆り立てたものは、時代の「空気」でした。

「空気」に支配されがちな我が国の国民性。改憲賛成51%、反対19%。毎日新聞の世論調査ではこうなっています。改憲に向けた空気が醸成されてきた結果であるとも言えます。

【憲法取り巻く政治状況に「深い憂慮」 全国憲法研代表】(朝日) 
憲法学者の集まり「全国憲法研究会」代表の森英樹龍谷大学教授が3日、最近の憲法を取り巻く政治状況に「深い憂慮」を示す声明を出した。東京・青山学院大であった同会主催の講演会で発表した。 

「施行60周年を迎えた憲法に対して、これを『改正』してその基本原理に『引退』を迫る政治状況が、急速かつ本格的に展開している」と危機感を表明している。 

【コメント】
国の根幹をなす憲法規範の制定にあたっては、目指すべき国家像や国民生活のあり方などについて、深い洞察が背景になければなりません。

毎日新聞によると、改正賛成の理由は、60年の歳月を経たことを挙げる人が8割近くと圧倒的に多いようです。しかし改正賛成の人の8割以上は、戦後の日本にとって憲法が「かなり役立った」「ある程度役立った」と評価しており、具体的に不都合があるというよりは「時代に合わせて新しくしたらよい」という意識のようです。

何のことはない、「スクラップ・アンド・ビルド」。この発想で高度成長期に、どれだけ価値ある歴史資産を失ったことでしょう。「トレンド」に流されての改憲だとすれば、失うものの価値を慮ることのない、皮相なモデルチェンジににしかなりません。しかも、改悪部分をしっかり抱き込んでの。

現憲法の拠って立つ思想や価値観。それを十二分に咀嚼した上での自主的な憲法規範の制定でなければ、先人達が太平洋や中国、インド、インドシナなどの外地、そして沖縄、広島、長崎など国内各地で流した血に対して、あまりにも申し訳のない形になりはしないでしょうか。

「時代の流れだから」という、諦め型の改憲を懸念します。


2007/5/3(木) 日本国憲法が封じ込めたのは、旧体制(アンシャンレジーム)である

大日本帝国憲法(明治憲法)。「第一章 天皇」の条項を列記します。

第一条 
 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス 
第二条 
 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス 
第三条 
 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス 
第四条 
 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ 
第五条 
 天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ 
第六条 
 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス 
第七条 
 天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス 
第八条 
1 
 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス 
2 
 此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ 
第九条 
 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持し及臣民ノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス 
第十条 
天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各〃其ノ条項ニ依ル 
第十一条 
 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス 
第十二条 
 天皇ハ陸海空軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム 
第十三条 
 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス 
第十四条 
1 
 天皇ハ戒厳ヲ宣告ス 
2 
 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以之ヲ定ム 
第十五条 
 天皇ハ爵位勲章及其ノ他ノ栄典ヲ授与ス 
第十六条 
 天皇ハ大赦特赦減刑及復権ヲ命ス 
第一七条 
1 
 摂政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル 
2 
 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ 


第四条には、天皇が元首であり、統治権の総覧者であることが明記されています。天皇を中心とした古色蒼然たる国家。

第三条(天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス)が問題でした。この曖昧な条項が、大正時代の軍縮の流れを阻止するために、海軍に悪用されました(統帥権干犯問題)。

第一次世界大戦後、軍縮により建鑑競争を終わらせようと、大正10年(1921年)のワシントン会議において、主力艦の比率が英米日で5:5:3と決められました。それを受けて、昭和5年(1930年)のロンドン海軍軍縮会議で、英米日の補助艦比率が10:10:6.975と決められました。

今日との比較において、我が国は卓越した外交能力を発揮したものだと思います。これだけの比率を米英から勝ち取ったということは、称賛に値するものです。当時破綻寸前だった国家財政を救う意味合いもありました。

ところが海軍は、これでは国を守れないと憤激し、内閣に対して挑戦状を叩き付けました。これだけの比率の艦艇を確保して国が守れないという無能海軍が、あろうことか、内閣に挑戦したのです。その旗印が、大日本帝国憲法第十一条であり、第三条でした。

こうした無能海軍、そして無能陸軍が、政治部門を踏み荒らして独走し、惨憺たる敗北を喫して、国民に塗炭の苦しみをもたらしました。諸外国を侵略蹂躙した上での出来事でした。

合理的な国家意思形成ができず、国力以上の軍備を確保してもなお、「国が守れない」として、政治部門を攻撃する異常な軍部が、憲法の条項を盾にとって暴れ回ったのです。これを許容する致命的弱点が、明治憲法にあったということです。

このことが忘却の彼方に追い遣られた上での改憲論は、いたずらに旧体制への封印を解き、ゾンビ(蘇った死者)の跋扈跳梁を招くことに繋がります。戦前における軍部の横暴は、現在の我々から見ると喜劇のようでもあります。そんなことは二度とあり得ないと笑う方もいるでしょう。

しかしそれならば、「ナントカ還元水」が居座り、居直る現在の政治が、合理的な国家意思形成可能な程度に成熟していると言えるのかどうかが点検されなければなりません。現在の喜劇を笑う余裕があれば、過去の苦々しい「喜劇」がもたらした災禍に想いを致すべきでしょう。

日本国憲法は不条理だった旧体制への封印であるという、歴史認識を持つべきだと思います。

祝、日本国憲法60歳。


2007/5/2(水) 占領下の日本と現在の日本、どちらが自主独立か?・・・憲法60歳

明日は、日本国憲法施行後60年の憲法記念日です。国民投票法成立間近の状況下、日本国憲法について考えるよい機会になります。

「自主憲法制定論者」は、現憲法は占領下での押しつけ憲法であると繰り返し主張しています。我が国民が主体的に選択した憲法ではないということです。

この主張は、歴史を真っ正面から見据えたものではなく、現憲法が当時の国民から圧倒的に支持されたことを無視するものです。9条の「戦争放棄」は、幣原喜重郎首相がマッカーサーGHQ最高司令官に提案したものであることも明らかになっています。

国民の主体性という点においても、占領下の日本と現在の日本とで、後者が上回るものであるかどうか、甚だ疑問です。

終戦直後の国民が、GHQに好印象をもっていたということは伝えられていますが、上意下達の憲法に唯々諾々と従ったというような気配は全くありません。

むしろ、久間防衛大臣がアメリカの対イラク開戦を批判するような発言をすると、周辺にピリピリしたムードが漂い、日米関係を懸念する声が挙がる昨今の方が、対米従属の度合いが極まっている感があります。

こうした中での改憲が、果たして自主的なものと言えるのかどうか。これからの「改憲」の方が、アメリカによる押しつけ憲法としての色彩が強まる恐れがあります。

我が国民が60年間愛した現憲法こそが、「自主憲法」の名に相応しいものではないでしょうか。


2007/5/1(火) 民主党は、脱労組を!・・・真の国民政党になるために

小沢一郎氏が代表である間に民主党が政権を取る。この場合は、万々歳です。もしそうならず、自民党政権があと5〜10年継続した場合、幾つかのケースが想定されます。その1つは、自民・公明・一部労組による政権です。

このことについては、1月3日のブログに書きました。

【自民・公明・「一部労組」の時代】2007年1月3日のブログ

公明党は、地方で与党になることで、政権側の旨味を知りました。そして、自公連立。今や自民党は、公明党・創価学会抜きで選挙を戦うことが出来なくなっています。自民単独で戦えるのは、愛媛のような自民党王国に限られます。その愛媛でも、今夏の参院選は公明党頼みです。

公明党・創価学会と同じく、地方で与党の味を覚えた団体があります。それが各地の連合です。民主党にとって連合は、衆院小選挙区で4分の1の重みがあります。候補者の当落を決する重みです。そこから、「連合政治部」というイメージが国民の中にできています。このイメージが、民主党にとって大きな負の財産になっています。実際愛媛では、連合愛媛の幹部が民主党県連を牛耳る状態になっています。

現時点での民主党に確固たる基盤は少なく、選挙は連合頼みの状態です。政治をミクロで見ると、支持団体の総和が政党の実力ということになります。そう考えれば、連合に依拠する状態を変えることは不可能にも思えます。しかしマクロで見ると、ほとんどの国民は自民党や民主党が依拠している団体から自由な立場、ないしは疎外された立場にいます。

これが無党派と呼ばれる方々と重なってくるのですが、彼らを無党派という「住所不定」の状態に留めるのではなく、堅い民主党支持者にしていく作業が必要です。圧倒的多数の国民をターゲットにすべきです。その際、「生活者」という括りが有効になるでしょう。

その前提条件が、「脱労組」です。「反労組」ではありません。連合を含め、どの団体にも支持を求めるのは当然です。しかし、支持団体、友好団体ではあっても、ワンオブゼムが連合であると位置付けなければ、国民政党として有権者からの信頼を得ることは困難です。

そうなると民主党は、丸裸になるリスクがあります。しかし、そのリスクなしに、自民党に代わる国民政党として政権を担うことはできません。小沢路線で政権を取れなかったら、腹を括るべきだと思います。

5月1日、メーデー。2割弱の勤労者のものであってはなりません。

《独言》
「脱労組」を掲げても、連合の全体が自民党支持に廻るのは困難であり、大半の労組は民主党支持がベストの選択であると考えるでしょう。民主党の個々の議員や候補者が恐れることなく、大多数の国民に真っ正面から向き合えば、自ずと活路が開けてきます。

政策面から見ても、簡潔かつ明確な路線を国民に提示できることになります。政策による吸引力を重視すべき時代になりつつあります。


玉井彰の一言 2007年5月 四国の星ホーム一言目次前月翌月