玉井彰の一言 2007年2月 四国の星ホーム一言目次前月翌月

2007/2/28(水) 「君が代」は、安全な歌である

入学式で君が代のピアノ伴奏を拒否して東京都から懲戒処分を受けた小学校教諭が「思想、良心の自由を保障した憲法に反する」と処分取り消しを求めていた訴訟において、最高裁は教諭の主張を退け、上告を棄却しました。

朝日、毎日の社説は、この判決に批判的であり、読売の社説は肯定的です。

「君が代は過去のアジア侵略と結びついており、公然と歌ったり、伴奏することはできない」という小学校教諭の考え方については、十分尊重していかなければならないし、朝日、毎日の社説は妥当であると考えます。

ただし、この問題を別の角度から見る余裕も必要です。

フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」

起て祖国の子等よ栄えある日は来ぬ
ぼうぎゃくのとりでに
見よ旗は血にそみぬ
見よ旗は血にそみぬ
聞け我等が野山を
ふみにじるとどろきを
わがはらからは
けがれし手にくびられる
とれ武器を組め隊伍を
進め進め我が祖国の自由を守れ

アメリカ合衆国国歌「星条旗」

おお、見ゆるや 夜明けの淡き光を受け
先の夕暮れ 陽が落ちる時 我等が歓呼しもの
其は太き縞と輝く星なり 危き戦の間
塁壁の上に見たり 勇壮に翻りし 彼の旗/
狼煙の赤き炎立ち 砲音宙に轟く中
耐え抜き 旗は猶其処に在り
おお、星散りばめたる旗は 今猶棚引くや
自由なる大地 勇者の故郷に

仏・米の国歌の一節です。歌詞は戦いにより祖国を守るというイメージであり、曲は歌う者の心を鼓舞します。

これに対して、君が代。詞・曲、共に荘厳。決して心浮き立つ歌ではありません。式典でよく歌いますが、大変難しい歌です。この歌を唄って子供たちが好戦的になるなどとは、とても思えません。むしろ、「ラ・マルセイエーズ」や「星条旗」の方が、酔いしれて、危険な方向に行きやすいのではないでしょうか。

もちろん、「君が代」の歴史性には目を向けるべきです。しかし、子供たちを平和な人間にしようとするのならば、妙に心を鼓舞し、興奮させる曲よりも、「君が代」の方が安全なのではないでしょうか。

まあ、どうみても、仏・米の国歌のような、革命的な曲ではありませんが。


2007/2/27(火) 中村紀洋、年俸2億円→400万円、所得税8千万円支払い・・税制に問題はないか

中村紀洋内野手が、年俸400万円で再出発。中日と育成選手契約を結びました。年俸は昨季2億円から400万円に激減。
 
3月に収めるべき所得税は、昨季年俸の2億円をベースに40%程度(約8千万円)と予想されます。加えて、市県民税(地方税)。1軍に昇格しても、1軍最低保障の1500万円。蓄えがないとすれば、やっていけません。
 
所得が激変する場合、1年を単位とする課税方式を採用することが妥当かどうか、検討すべきです。21世紀の日本を引っ張る人材を輩出しようとするならば、チャレンジを奨励する税制を考える必要があります。チャレンジに失敗すると、それまで多額の税金を支払って国家・社会に貢献していたのに、一転して、税金で破産というのは不条理です。

所得の変動が大きい人は、10年を単位として、総所得に対して幾らの課税がなされるべきかを再審査請求できる制度にすべきです。中村選手の場合、最高年俸が5億円でした。仮に10年間の平均所得が2億円だったとして、それに対してどれだけの税金を支払うべきかを再審査し、支払い超過があれば、還付を受けるようにすべきです(逆のケースは不問。個人の請求権として構成する)。


2007/2/26(月) 勝負師・浅野史郎・・・「浅野コール」で打って出るか

これまでのブログ中、浅野史郎、・前宮城県知事に関する記載を変更しなければならなくなりました。以下の部分。

【東京都知事に田中康夫氏を!】(平成18年12月9日ブログ、後段)

(略)

知事経験者(現職を含む)で見識と知名度を有する人物を挙げると、(1)田中康夫・前長野県知事、(2)浅野史郎・前宮城県知事、(3)北川正恭・前三重県知事、(4)片山善博・現鳥取県知事、(5)橋本大二郎・現高知県知事などの名前がすぐに浮かびます。

この中で、石原慎太郎と対決する「東京決戦」を制しうるのは、田中康夫氏か橋本大二郎氏しかいないように思います。他の人物は、地方自治に関心を持つ人しか知らない名前です。橋本氏は現職ですから無理。

これからの地方自治。できる首長は2期ないしは3期で勇退し、他の自治体の首長になるという選択肢を用意すべきです。

【訂正】
浅野氏は、政治家としての資質、見識、知事としての実績、いずれをとっても石原都知事に勝る人物です。おしいかな、知名度が不足していると思っていました。石原氏に対抗するためには、「有名人」では足りず、「超」有名人でなければなりません。浅野氏については、テレビ露出度が増し、その不足部分が解消されつつあります。

【浅野氏が市民集会出席、都知事選には言及せず】(読売新聞)
来月22日に告示される東京都知事選に、前宮城県知事の浅野史郎氏(59)の擁立を目指す市民グループの集会が25日、東京都内で開かれた。

浅野氏本人も出席し、「びっくりした。感激して今日は言葉がでない」と述べたが、都知事選については言及しなかった。

浅野氏は民主党からも出馬の打診を受けたが、今月16日、「(宮城県知事の)3期12年で知事は卒業した。出馬の必然性を感じない」などと出馬を否定した。

市民グループによる集会は、浅野氏に熱意を伝えて翻意を促そうと、五十嵐敬喜・法政大教授らの呼びかけで開かれたもので、今回で2回目。浅野氏が以前、「チョコレート1個なら心を動かされないが、トラックいっぱいなら」と発言したことから、参加者が持ち寄った約200個のチョコレートが渡された。 

【コメント】
浅野氏が初めて宮城県知事選挙に打って出たのは、現職知事が収賄容疑で逮捕され辞任した後の出直し知事選挙でした。その後の選挙でも、政党を頼らない選挙を行い、有権者から直接選ばれた知事として、県政改革を実行してきました。

その履歴からすると、政党に押されて出るということはあり得ず、無党派の力が盛り上がった段階で決断するという流れが想定されます。乱世に強いタイプです。

なかなか見事な仕掛け人がいたもので、「出たい人より出したい人」という教科書的なストーリーが展開されつつあります。

もう一声、二声、「浅野コール」が沸き起これば、風雲急を告げる可能性が出てきます。浅野氏は、勝負師です。勝つと見れば、決断するのではないでしょうか。そして、出れば当選する可能性大です。

石原氏の出馬取りやめ(=黒川紀章氏も出馬取りやめ)ということを含めて、大きな展開があり得ます。

今春の統一地方選挙から、首長選挙でのマニフェスト配布が可能になるという法改正が実現したことと併せて、改革派知事の再登板が実現することになれば、画期的な選挙になります。

もう少しで機が熟するという段階。東京の有権者は、浅野氏を逃がしてはいけません。

(参照)
平成19年2月18日:【打倒石原慎太郎のために残された道・・力道山方式】
平成18年12月9日:【東京都知事に田中康夫氏を!】
平成18年5月24日:【民主党は東京決戦を!】


2007/2/25(日) 石原都知事の四男・・・「ただ働き」なら問題ないのか

石原都政攻撃については、共産党は殊勲賞ものです。よくやっています。「しんぶん赤旗」2月23日の記事を紹介。

【石原知事に脚本料名目 100万円支払う計画も 四男出張に公費237万円
共産党 都政の私物化追及】(しんぶん赤旗)

石原慎太郎都知事による都政私物化問題で、知事本人にイベントの脚本料百万円の支払いが予定されていたことや、都事業に関与した知事四男の延啓氏に海外出張費など合計二百三十七万円を費やすなど、「モラルも失った浪費」の実態が二十二日、明らかになりました。日本共産党の曽根はじめ都議が、同日の都議会予算特別委員会で追及しました。

知事に報酬が支払われようとしていたイベントは、知事自らが推進して脚本を書いた都事業の「能オペラ」です。都の若手芸術家育成事業「トーキョーワンダーサイト(TWS)」の一環として計画されました。TWSは、知事が延啓氏を深く関与させ、同氏の友人である今村有策都参与が館長を務めています。

党都議団が情報公開請求で入手した都の開示資料によると、都は「能オペラ」の脚本料として百万円の予算を計上。その後、「能オペラ」が著作権のトラブルで中止になり、失敗に終わったため、知事への支払いはなくなりました。

曽根氏は、石原知事が、都のイベントで自らが脚本を書き、報酬まで得ようとしたことについて、「基本的モラルをなくしている」と批判しました。

これに対し石原知事は「アイデアがあるので私でどうだと言った」と認め、「私の原稿料として百万円は安い」などと答弁しました。

曽根氏は、石原知事が「ただ働き」とする延啓氏が当初は都から報酬を受けていたことを指摘しました。出張費なども合計二百三十七万円支出しています(表)。同じく知事が「ほとんど無料でやってくれている」としている、佐野誠氏が経営する会社に四百万円以上、久住章氏に三十万円以上の報酬を支払っています。

曽根氏は、TWSが発行する雑誌の編集長に、延啓氏が就任する計画まであったことを示し、「知事四男と、その仲間の異常な重用が改められない限り、延啓氏を世に売り出そう、公費を使わせようという策動が続く。延啓氏をワンダーサイトにかかわらせることを一切やめるべきだ」と求めました。

(この記事の末尾に、四男への出張旅費合計237万円についての表が掲載されています。一度支払われた後に返還された報酬27万5400円は除外。)

【コメント】
公費を使ったかどうかは大きな問題です。この点での追及は徹底的に行って欲しいと思います。

もう一点。「ただ働き」ならいいのかを問題にすべきです。ビジネスをやった方なら分かると思いますが、もし仮に、東京都の一大プロジェクトに参画させてもらえ、それが将来の仕事につながると考えれば、ただ(経費自己負担)でも喜んで参画したいという人は、山ほどいるのではないでしょうか。

名刺やプロフィールにそのことを書き込めれば、将来大いに有利です。幾らかお金を寄付しても採算が取れる場合があります。

別の例を挙げます。例えば、「三井住友銀行参与」として企画に参加させてもらえるとします(無報酬、経費自己負担)。お金を払ってでも、多くの方が手を挙げるでしょう。

公費云々、報酬云々ではなく、東京都の事業に息子を参画させて世に売り出そうとしたこと自体が不正ではないでしょうか。不公正ではないでしょうか。世に馬鹿息子を持て余している親は数多くいます。その親から見ると、「都知事の息子はいいなあ」というお話です。

肩書きを付与したり、一定の経歴を付与したりすることが利益提供ではないのかどうか。このことを徹底的に追及していただきたいと思います。


2007/2/24(土) 都知事選・・・まだ序盤戦かもしれない

総大将の菅直人氏を出してはいけない。負ければダメージだけが残る。石原氏は菅氏よりも格下の政治家であることを、民主党は認識すべきである。以上、昨日述べました。

黒川氏の出馬宣言は撹乱要因ですが、それでもこの勝負、まだまだ分かりません。都民の関心が高いからです。四男の過保護問題、飲み食いに税金を使いまくる感覚・・・   2期8年にして、都民の期待を裏切り続けています。

告示直前にある程度の人物が立ち上がれば、ヒーロー(ヒロイン)になりうる展開です。告示段階がやっと中盤戦ではないでしょうか。そのまんま東氏は、告示直前まで泡沫扱いでした。

まだまだ、何が起こるか分かりません。民主党は、一発逆転のシナリオを放棄すべきではありません。

(参照)
平成19年2月18日:【打倒石原慎太郎のために残された道・・力道山方式】
平成18年12月9日:【東京都知事に田中康夫氏を!】
平成18年5月24日:【民主党は東京決戦を!】


2007/2/23(金) 民主党は戦わなくていい・・・都知事選挙への対応を考える

本日の朝日新聞社説は、民主党は菅直人氏を候補に立てて戦うべしとの論陣を張っています。これに惑わされてはいけません。

【統一地方選 民主党は本気を見せろ】(朝日社説) 
東京都知事選など全国13の知事選が一斉に行われる統一地方選挙が、1カ月後に始まる。夏の参院選までの政治決戦の幕開けだ。 

昨秋に誕生した安倍政権にとって、最初の本格的な試練でもある。「選挙の顔」への期待もあって自民党総裁の座を射止めた安倍首相である。ここで踏みとどまれなければ、政権運営が苦しくなるのは避けられない。 

政権をうかがう民主党には、待ちに待った反転攻勢の第1歩であるはずだ。なのに、動きに迫力が見えないのはどうしたことか。 

8都県の知事選で候補が決められない。なかでも国民が注視する都知事選の混迷ぶりは深刻だ。ここでの戦いぶりが参院選に向けて弾みをつけられるかどうか、政治決戦の帰趨(きすう)を決しかねない。 

3期目を狙う石原慎太郎知事は、豪華な海外出張や四男の都事業への起用などで公私混同批判を浴びている。自民党はそれでも推薦を決め、石原氏に辞退されても押しかけ支援するという。 

ことここに至っては、「政策においても、人物においても、打倒石原知事を最も期待できる人」を党内から立てるべきだ。民主党都議団がきのう、そんな決議をしたのは当然だろう。 

決議文はこう訴えている。「今ここで民主党が本気で立ち上がらなければ、国民は民主党を決して信用せず、政権奪取など夢のまた夢となりかねません」 

私たちもそう思う。決議文は名前をあげていないが、民主党で「最も期待できる人」といえば、東京を選挙区とする菅直人代表代行というのが党内外の一致した見方だ。 

厚相時代に薬害エイズ問題でみせた実績や国会での論争力などから、知名度は抜群だ。政策にも明るい。 

そうした党内の期待に対し、当の本人は「私が国会からいなくなって一番喜ぶのはだれか。安倍首相だ」などと国政にとどまる意向を強調した。 

国政への意欲は分かる。だが、菅氏にはこう尋ねたい。逆に、民主党が「最も期待できる人」の擁立に失敗して一番喜ぶのはだれか――。それも、安倍首相であることは疑いようもない。 

安倍内閣が支持率の下落に苦しんでいるのに、民主党もぱっとしない。政権を託すもう一つの選択肢として、有権者の目に映っていないのだ。 

菅氏を立てて、首都決戦で勝負を挑む。政権奪取を目指す民主党の「本気」を有権者にアピールするには、またとない好機ではないのか。菅氏が手腕を都政で発揮すれば、民主党の政権担当能力や政策力を示すことにもなる。 

都知事選には、建築家の黒川紀章氏が「反石原」の立場で名乗りをあげた。石原氏と黒川氏は右派系の団体である日本会議の代表委員を務め、思想的には似ている。選挙戦の構図はまだ流動的だ。 

小沢代表や鳩山由紀夫幹事長は菅氏説得に動くべきではないか。 

【コメント】
民主党が東京決戦に勝利して参院選に向かうのが、ベストシナリオであることは間違いありません。しかし現時点では、総大将を据えて戦う条件は整っていません。

理由は、

(1)石原氏は、自民党の推薦を受けていないので、二大政党対立の構図にならない。

(2)黒川氏の登場で、反石原票が割れる。共産党が候補を降ろすことも考えにくい。

(3)勝利によって得られる勢いより、負けた場合のダメージの方が大きい。(衆議院のエースがいなくなる)

(4)参院選までは長丁場であり、4月の恥が7月に持ち越されないのが、近年の参院選の傾向である。

「菅直人を出せ!」という「陽動作戦」に惑わされることなく、じっくりと腰をため、参院選勝利に向けた取り組みに全力を傾けるべきだと思います。都知事選挙は、相対的に見れば、局地戦です。局地戦に目を奪われて、大局を見失うべきではありません。

石原慎太郎氏は、自民党ではうだつの上がらなかった政治家であり、所詮は「石原裕次郎の兄」にすぎません。それが証拠に、石原ファミリーの選挙では、「石原軍団」の応援が定番になっています。菅氏と比較すると、格下の政治家です。ここを見誤ってはいけません。

最後の最後まで、無党派を取り込める著名人の担ぎ出しを図るべきです。民主党都議団の「決議文」は、早々とギブアップを宣言したようなものであり、「情けない」の一語に尽きます。

(参照)
平成19年2月18日:【打倒石原慎太郎のために残された道・・力道山方式】
平成18年12月9日:【東京都知事に田中康夫氏を!】
平成18年5月24日:【民主党は東京決戦を!】


2007/2/22(木) 日銀金利引き上げ・・・「ジジ・ババ景気」を期待

日銀が利上げを決定。昨年7月にゼロ金利政策を解除し、短期金利の誘導目標を0.25%として、金融政策が働く契機をつくりました。先月は政府の圧力に屈したのか、金利引き上げを見送りましたが、今回は0.5%に引き上げました。

私のような零細企業者は、金利の引き上げで、返済に苦慮することになります。しかし、低金利下で「お金のコスト」は安かったが、地域にお金が循環せず、売り上げ不振に悩んできた経緯からすると、金利の引き上げで地域にお金が循環するのなら、金利上昇の負担を我慢できます。(地域の実情からして、それに賭けるしかなさそうです。)

我が国には個人の金融資産が1,400兆円あると言われています。これが年5%で運用されるとしたら、70兆円。税引き後でも56兆円(GDP500兆円)。これが市中に廻れば、景気の後押しをすることになります。

老後の心配をする中高年は、貯蓄をしています。一部の高齢世帯では取り崩しの過程に入っているようですが、中流以上の家庭では、依然としてそれなりの金融資産を有しています。金利が上昇し、1,000万円の預金に手取り3%の金利収入が発生すると仮定すれば、年間30万円になります(1ヶ月25,000円)。財布のひもが若干ほころび、子や孫と遊んだり、夫婦で旅行したりする形で、国内や地域にお金が循環することになるでしょう。

爺ちゃん婆ちゃんが孫に小遣いをやったり、息子・娘の世帯に若干の支援をしたりする流れ。ジジ・ババ→孫――息子・娘→地域への循環による好景気のシナリオ、勝手に名付けて、「ジジ・ババ景気」。これを期待します。

個人の財産を産業界(銀行)が一方的に奪ってきたこれまでが、異常だったのではないでしょうか。周回遅れながら、世界の流れにも合致した判断です。


2007/2/21(水) 合併とは、倒産である・・・平成の市町村合併を考える

地方分権の受け皿としての合併ということを旗印に進められてきた、平成の市町村合併。真の目的は、市町村リストラでした。6年前、このブログの原型である、「平成の市町村合併に反対する国民会議」HPを立ち上げた動機は、市町村リストラへの反対運動を盛り上げることにありました。

市町村合併には、甘い蜜が塗り込められており、その蜜欲しさに、大切な故郷を手放してしまう自治体がゾロゾロと出てきました。「大きくなることで、何かが良くなる」という思いで、バスに乗り遅れまいと合併の流れに身を任せた多くの自治体は、今、後悔しています。

あからさまな言い方をすれば、合併とは倒産なのです。相手方がいますから、より正確に言えば、強者の拡大であり、弱者の倒産です。繰り言になりますが、倒産するくらいなら、破綻を恐れず、自主独立を貫いて頑張って欲しかった。

小さな自治体にとって、役場は「太陽」です。合併して大きな自治体になり、役場が「支所」になると、それは「月」になります。小さいながらも太陽の光が降り注いでいた地域は、月明かりで細々と暮らさなければならなくなりました。

政府が進めようとしている道州制も、この話から類推していけば、おおよその予測が成り立ちます。市町村リストラから県のリストラへ。地方リストラが進みます。

私が大いに不満を持ちながらも民主党の候補者になり、現在も民主党を支持しているのは、この流れを食い止めたかったからです。地方主権型社会をつくることが、地方生き残りの唯一の道です。今夏の参院選は、地方反乱の好機だと思います。


2007/2/20(火) てんやわんや、安倍内閣

「支持率が低下し続けている安倍内閣…」が報道番組の枕詞として定着しています。朝日、読売の世論調査でも、支持率低下は継続中です。読売では支持率が高めに出ますが、朝日その他の報道機関では、支持率は40%を切り、不支持率が支持率を上回る傾向を見せています。

【支持率下落 もはや赤信号に近い】が朝日、【[内閣支持率]「政策の推進こそ続落の歯止め」】が読売。どちらも本日掲載された社説のタイトルです。

「首相が入室したときに、起立できない政治家、私語を慎まない政治家は、美しい国づくり内閣にふさわしくない。」という中川秀直幹事長の発言には、唖然とします。安倍総理も、そこまでは言われたくないでしょう。PTAの会合で教頭から、学級崩壊を指摘された担任教諭の立場にも似た悲哀があります。 

なんでこうなったのか。

(1)小泉政権の継承者として、小泉時代の負の遺産を継承してしまったこと。

(2)安倍氏が総理の器ではないこと(人事の失敗を含む)。

(3)「『改革』とは、小泉時代の方便だったはずだが…」という思いが、閣僚はじめ多くの自民党議員にあるにもかかわらず、路線修正を行うだけの腕力を持った政治家がいないこと。

以上の3点が大きいと思います。

安倍内閣が室町幕府状態であるにもかかわらず、民主党サイドに立つと、意外にも政治情勢としては、簡単ではありません。

民主党の支持率が上がらない状態が続いています。しかも、このままでは都知事選で大恥をかきます。一目瞭然の明快なマニフェストを持って候補者が走らないと、参院選で勝ちきれないでしょう。

内閣のてんやわんやぶりが注目され、逆に、野党が蚊帳の外にいる感じもします。


2007/2/19(月) 藤原紀香の挙式が提起するもの

十二単(ひとえ)の花嫁。いいのもだなと思いました。神戸の生田神社で、女優藤原紀香さんとお笑いタレント陣内智則さんが挙式。藤原紀香さんが、平家の血を引いているとは知りませんでした。

キリスト教国でもないのにチャペルウェディング流行(ばやり)の昨今、地元の神社で厳かに結婚式を行う方向に流れをつくってくれるとしたら、大いに意義ある結婚式だと思います。

もうそろそろ、我が国独自の文化に誇りを持ち、世界中の人に自信を持ってアピールするようにならなければいけません。

もっとも、女性の気持ちに逆らっては結婚になりません。女性の皆さんに我が国の伝統、文化を見直していただきたいものです。


2007/2/18(日) 打倒石原慎太郎のために残された道・・力道山方式

民主党の都知事候補が決まりません。超著名人・石原氏に対抗できると自他共に認める人物が現時点でいません。こうなる可能性は、1年前から分かっていたはずですが…

【都知事選、参院議員擁立認めぬ=「浅野氏は出馬意思ない」−小沢民主代表】(時事通信)
民主党の小沢一郎代表は17日、津市内で記者会見し、東京都知事選の候補者選びについて「(民主党は)参院選で過半数(獲得)を目指している。したがって、参院の議席を減らすような結果になることは避けてほしい」と述べ、選挙区選出の同党参院議員の擁立は認めない考えを示した。候補者として名前が取りざたされている蓮舫氏らを念頭に置いているとみられる。
 
小沢氏はまた、党都連が出馬を打診した浅野史郎前宮城県知事について「多分、出馬の意思はないだろう」と指摘。待望論が根強い菅直人代表代行に関しても「今までわたしに代わって国会論戦や選挙応援など(の役割)を果たしてくれた。今後もそういうことでやっていきたい」として、擁立しない方針を重ねて示した。  

【コメント】
民主党の国会議員だったら、やらない方がいいと思います。敗戦のダメージだけが残ります(若手が「脱藩」して挑みかかるというパターンなら、大波乱もあり得ますが)。

直前になればなるほど、「説明不要」の著名人を担ぐしかなくなります。この「後出しジャンケン」方式を石原氏は恐れるでしょうが、そんな都合の良い人物はそうそういるものではありません。

「何でもいいから独自候補を」という、「党の責任論」で候補者を決めるべきではありません。ここはじっくり、「シナリオ」をつくるべきです。

まず、「東京における生活改革プラン」を明示して、対立軸をつくります。次に、石原批判を徹底的に行い、(1)公費で飲み食い、ファミリー第一の「自己チュー人間・石原」のネガティブイメージを明確にする、(2)赤字経営の新銀行東京はどうなっているかを徹底糾明して行政手腕に疑問符を付ける、(3)「案外小心者」という「等身大の実像」を都民に周知させる。・・・といったキャンペーンを張ります。

都民が憤激し、「何故民主党は立たないのか」という気分が蔓延した段階で、候補者を擁立。「力道山の空手チョップ炸裂」のストーリーです。力道山の空手チョップは、敵の反則に対し、国民の怒りが頂点に達した段階で炸裂しました(それまでは、もたもたしている力道山への罵声も飛びました)。

勝つなら、この方式しかありません。首都東京の場合、中途半端なところで手を打つくらいなら、「不戦敗」の方がましです。最後の最後まで、勝てるストーリーにこだわってもらいたいと思います。現段階では、著名人も二の足を踏みます。支持率50%を割り込ませることが先決。

(参照)
平成18年12月9日:【東京都知事に田中康夫氏を!】
平成18年5月24日:【民主党は東京決戦を!】


2007/2/17(土) 自営業者、零細企業者、農民とは何か・・「緩衝地帯」としての意義

昨日の続き。

地方経済は、「東京」との「格差」の上に成り立っている。最低賃金を引き上げ、賃金を全国で平準化すれば、結果として、地域崩壊につながる可能性がある。これが、昨日の要旨です。

気持ちとしては、「同一賃金同一労働」を普遍化し、地方にいても東京と同じ賃金を獲得できる保障を与えて、地方が豊かになる「絵」を描きたいところです。しかし。

資源のない我が国は、加工貿易により国富を得、その富を地方に還元していました(国土の均衡ある発展)。その図式が、「グローバル化」の流れの中で、維持できなくなってきました(「グローバル化」の実質は、アメリカの対日要求受け入れ)。

製造業の拠点が海外に移転する流れは、「国内植民地」として製造業誘致に励んできた地方には、打撃となりました。しかも、「市町村合併」、「三位一体改革」といった、中央政府の欺罔行為に乗せられ、地方交付税の大幅減少という事態を生じたことで、地方で循環する金が激減してきました。

「だからこそ賃金アップを」と言いたいところですが、産業なければ雇用なし、です。地方で一定の人口を維持しようとすれば、それに見合う産業と雇用とがなければなりません。その産業(製造業)が、「国内植民地」から海外へ、というシフトを取ってきたことで(一部で国内回帰の動きあり)、地方としては、産業の流出(=人口の流出)を警戒しなければならなくなりました。

地方が中央集権の政治体制に甘んじて生きていくことを前提とすれば、東京との「格差」を利用するしか方法がありません。しかも、雇用の数は限られています。「残余の方々」については、場合によっては、最低賃金以下の労賃で生きていただくしかありません(労働者でなければ、最低賃金や労働時間の規制はなし)。

その「緩衝地帯」に位置するのが、自営業者や零細企業経営者、そして農民です。この方々に踏みとどまっていただかないと、地域コミュニティーは維持できません。そして彼らは、過去においては「超過利得」を得ていた方々でもあります。

近年、「規制緩和」の旗印の下で、その方々の地盤沈下を招く政策が取られてきました。「地方切り捨て」の実質は、ここにあります。「過去の貯蓄」がある間、「緩衝地帯の方々」は政治的に暴発することはありませんが、そろそろ限界かもしれません。今年の参院選が自民党にとっての危機であると叫ばれている背景には、自民党議員(特に参議院議員)がその「臭い」を嗅ぎ取っているという事情もあります。

彼ら、「緩衝地帯の方々」に現状で踏みとどまっていただく施策を取れなければ、地域は崩壊します。

身も蓋もない話ですが、この現状認識の下で地方を語らなければならなくなりました。

(続編は後日)


2007/2/16(金) 最低賃金引き上げは、地域崩壊の引き金を引く

「格差拡大」が政治の焦点になっています。安倍総理は格差を認めることに消極的ですが、この問題から目をそらせる政治姿勢は、批判されて然るべきです。

格差拡大が重要な政治課題であるとすると、最低賃金の引き上げを行うことが正しい政策だという結論につながっていきます。それが妥当かどうかは、検討の余地があります。最低賃金引き上げをストレートに行うと、地域崩壊の引き金を引く可能性があります。

我が国における政治経済構造の下では、地方=田舎は、低賃金を前提として経済が成り立っており、その上に地域社会が存続しています。

極端な中央集権国家である我が国は、政治・経済・文化のあらゆる面で、東京一極集中になっています。一部輸出産業の拠点地域においては経済が活況を呈していますが、大半の地域では、東京に本社を置く企業が地域から富を収奪し、東京で税金を納める仕組みになっています(固定資産税等の地方税は除く)。そしてその金が、東京を中心に循環することになります。

地方が豊かになる方法としては、外部の企業を誘致して、固定資産税等地方税の増加と雇用の創出を図る方法があります。もうひとつの方法として、地場産業の育成があります。そしてどちらも、地方の低賃金構造が経営の前提になっています。

東京都の最低賃金は全国最高の719円。青森県、沖縄県などが全国最低の610円(愛媛県は616円)。この「格差」の上に地域経済が成り立っているという現状を認識しないまま、「格差解消」のために最低賃金引き上げという結論を出してしまうと、「角を矯めて牛を殺す」(部分改良が全体を殺す)結果になります。

仮に最低賃金が全国で平準化されるとすれば、地方における企業誘致は著しく難しくなります。地場産業の成立基盤も怪しくなります。地域最大の脅威は、低賃金労働を求める地場産業の海外移転なのです。

地方における企業存立の基盤が崩れてくると、雇用を求めて大都市部への人口移動が生じ、地域が崩壊することにもなりかねません。

この文脈の中で、自営業者(既存商店街の商業者を含む)や零細企業育成の問題、そして農業の問題が語られなければなりません。

(続く)


2007/2/15(木) 「頑張る地方応援プログラム」の欺瞞

安倍政権が、頑張る地方を応援するとしている「頑張る地方応援プログラム」は、中央集権を強化するものでしかありません。

【地方応援プログラム、「時代錯誤」と首長酷評 懇談会で】(朝日) 
「国が自治体の点数をつける時代錯誤の対症療法だ」。安倍内閣の看板施策の一つ、「頑張る地方応援プログラム」の説明のため、総務省が14日に長野市内で開いた懇談会で、地元首長たちから酷評が相次いだ。 

プログラムは、少子化対策や観光振興などで自治体の「頑張りの成果」を同省が定める指標で評価し、交付税算定に反映させる。来年度の事業規模は2700億円。 

批判の急先鋒(きゅうせんぽう)は、長野県市長会長の矢崎和広・茅野市長で「格差是正のパフォーマンスではつまらない。(小泉内閣時代の)三位一体改革の『国の関与を減らす』という基本理念と矛盾している」。説明役の土屋正忠政務官(前武蔵野市長)にも「市長の時だったら、こんなプログラムをつくれとは絶対言わなかったはずだ」などと矛先が向けられた。 

【コメント】
これまでの制度では、地方がいくら頑張っても、地方交付税が減らされるだけだという不満がありました。そこで、頑張ってる度合いについて国が点数を付け、頑張りに応じて支援していこうという話になってきました。

これもおかしい。国が「先生」になって、地方=生徒に点数を付けるのですから、地方は国の顔色を窺わなければなりません。

地方に外交・防衛以外の権限を移譲すればいいのです。その決断ができないが故の弥縫策(びほうさく)にすぎません。

地方主権型の社会では、頑張る地方は繁栄するし、頑張らない地方は没落します。権限・財源・人材を得た上で、「没落する自由」との背中合わせの緊張感の中で、地方が創意工夫していけばいいのです。国が、教育ママのように出しゃばる必要は、全くありません。


2007/2/14(水) 「頑張れ」と言えるのか・・地方小都市の商業者と地域コミュニティー

「商店街の活性化」というテーマに対しては、行政を頼らないで、商業者自らが頑張らないといけないという議論が必ず出てきます。正論です。ただし、商業者が置かれている状況を正確に把握していないと、現実から完全に遊離した議論になります。

商業者の所得が一般サラリーマンの所得と同額か、あるいはそれを上回っている場合には、商業者の頑張りが期待できます。労働時間ということで言えば、商業者や自営業者はサラリーマンよりも遙かに長時間労働です。時給はサラリーマンを下回ります。それでも、総所得がサラリーマン並みかそれ以上であれば、商業者がある程度広い視野を持って地域のことを考えることが可能であり、商店街の活性化やまちづくりに力を注ぐことができます。

しかし、1991年の大店法改正後、大型店の無秩序な進出が許容され、地域商業者の力は、坂道を転がるように衰えてきました。地方小都市での地域商業者の売上は、20年前の半分以下です。時給で言えば、最低賃金を下回る状況もあります。

これまで商業者が果たしてきた、地域祭事、消防、交通安全、PTAでの役割をこれからも果たしていけるのかどうか、ギリギリの状況に直面しているというのが、地域の実態です。

「商業者の頑張り」を期待する議論は、ある時期には正論でしたが、現時点では不可能を強いる議論になってきています。小泉政権の5年半で、地域の状況は決定的に悪くなりました。「地方切り捨て政治」という批判が、実感をもって受け止められるようになってきました。

地域商業が壊滅した場合に、誰が地域コミュニティーの実質的な担い手になるのか。そこまで考えておかなければならない状況です。事態はかなり深刻です。


2007/2/13(火) 公務員への嫉妬感情利用とその対抗策

参院選で追い込まれている自民党は、一方で、憲法改正で民主党を分断する作戦を検討するとともに、他方、公務員たたきを行うことで国民の拍手喝采を狙うでしょう。

公務員の果たすべき役割、そして地域経済における公務員所得の重みを考えると、現行給与水準が高いとは言えないと思います。しかし、実際の公務員の姿を目撃している市民は、「彼らは仕事が楽で、給料は高い。」という素朴な感情を持ちます。給与が伸びない民間企業労働者や、売上減少に悩む零細企業・自営業者の状況を考えると無理もありません。これにいくら反論しても、受け入れらることはありません。

この感情に自公政権はつけ込んできます。そのことを想定したシフトを組まなければ、野党惨敗という可能性もあります。自民党幹事長・中川秀直氏のホームページは、自民党議員の中では優秀です。その内容の細かしさには閉口します。いちいち反論、いちいち突っ込み。この方の性格と発想からして、しつこく、しつこく、徹底的に敵の弱点を付く作戦を練ってくるでしょう。

官公労の方々は、「一歩後退」の布陣を敷くか、「敗北撤退」の道を選ぶかの究極の選択をしなければならない状態であることを認識しておくべきです。労働条件改善などという的はずれな主張を展開しても、「援軍来たらず」で終わります。

「行け行けドンドン」型の組織で「一歩後退」を説くことには、強い意志と勇気が必要です。しかし、リーダーには、そうした決断が必要なときもあります。時代の状況は、国鉄労組に国民が怨嗟の声を挙げていたときに酷似しています。そうした認識を前提として、国民・市民を味方に付ける戦略を描く必要があります。

私の提案は、官公労の組合が先手を打って「地域貢献路線」を取ることです。例えば、給与の2割を地域通貨で受け取ることと併せて、地域通貨のない地域では地域通貨が流通する仕組みをつくるための支援を行うことです。

地域は疲弊しています。公務員を志望した者なら、何とかしなければならないと思う状況です。立ち上げれ公務員、地域のために。


2007/2/12(月) (生活保護世帯の収入)>(ワーキングプアの収入)は、不当か

生活保護世帯の収入より、働く貧困層(ワーキングプア)の収入の方が少ないとして、生活保護の見直しを図る動きがあります。こつこつ働いて少額の年金に甘んじている高齢世帯の収入を、年金の掛け金を納めないまま生活保護で暮らす高齢世帯の収入が上回っているとの指摘もなされています。

確かに、「働くより生活保護の方が楽でいいや」となってしまったら、国民の勤労意欲が著しく低下し、道義的な退廃を招く恐れもあります。しかし、「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されるべきであるとする現行憲法の理念と規範に鑑みれば、生活保護の支給額に問題があるのではなく、働いているのに貧困であることが問題であると考えるのが真っ当だと思います。

今後、国民の間に嫉妬の論理が蔓延する恐れがあります。例えば、公務員への嫉妬感情には激烈なものがあります。2005年の総選挙で自民党が大勝した背景には、郵便局の職員が公務員でなくなることへの拍手喝采の思いが庶民感情としてあったと思われます。その流れが加速するとどうなるか。深刻な事態があり得ます。

公務員を叩く、生活保護世帯を叩くという形で、一般庶民の嫉妬感情に火を付けて政権の維持を図ろうとする、下劣な企みに国民が騙されないための論理を、野党が提供していかなければなりません。

(生活保護世帯の収入)>(ワーキングプアの収入)の議論について言えば、生活保護は「焦げ付き覚悟の公的貸付」にすべきだと思います。保護を受ける世帯には、「何時の日か、必ず返還いたします。」という念書を書いてもらうべきです。生活「保護」から、生活「支援」へと転換し、社会奉仕を地域通貨で評価し、地域通貨で「支援金」の返還に充てるという発想があってもいいのではないでしょうか。

支援は受けるが、社会に貢献する態度は忘れないということで、人間としての誇りを維持し、社会の健全な構成員として評価される基盤を形成しておくべきです。失敗した人がやり直すことができる制度として、再構成するする必要もあるでしょう。

「貸付」に対する「返還率」を、例えば10%にすることを目標とし(催促はなし)、国民道義の指標とするということがあってもいいと思います。「ひとり親生活保護世帯」への母子加算の廃止が議論されていますが、子供が立派な教育を受けて貧困の循環から脱却する。そして、将来国家を支えていける人物に成長してもらうという明るい前向きな制度であるべきです。

意図的に国民同士をいがみ合わせる、低俗な政治を排斥すべきだと考えます。


2007/2/11(日) 平穏だった民主党愛媛県連大会・・・アキレス腱を抱えての出発

昨日、民主党愛媛県連大会開催。愛媛の政治に多少通じている人であれば、新しい県連代表がアキレス腱になるだろうと予想されるはずです。予想通りというか、大会で疑問の声は出なかったようです。

この人事が内定した段階で、私が民主党を辞めたことが無責任だったのではないかとの思いが胸をよぎりました。その思いが最近のブログに反映されています。

アキレス腱の代表、連合愛媛の追随者である幹事長、目を覆う県連事務局。折角決意してくれた2名の候補者には、気の毒な気持ちでいっぱいです。

危機管理とダメージコントロールが、これからの課題です。副代表、副幹事長、常任幹事の皆さんには、このことを念頭に置いた活動をお願いします。連合愛媛幹部も、後押しした責任は免れないということを、自覚していただきたいと思います。

3区で名乗りを上げた白石氏には、充分力を付けたあとで、県連の大掃除をお願いします。

《独言》

ここまで書いておくと、何も起こらないのではないかという気もしています。台風が来て警報が出ても、そよ風が吹くのが愛媛の気候です。そうであることを祈念します。


2007/2/10(土) 参院愛媛選挙区の分析(3)・・・3年前の選挙

2004年の参院選では、自民党は県連のエース、山本順三氏を擁立しました。これに対し民主党は前年秋の総選挙で2区から出馬した斉藤政光氏を公認。民主党の候補者がなかなか決まらず、4月下旬、ゴールデンウィーク直前にやっと決定。出遅れており、「参加することに意義がある」という状態でした。

選挙全体の統括とは別に、1区、2区は、1区総支部長の私が担当。3区、4区は、それぞれの総支部長が担当しました。1区、2区については、ほとんど私が候補者に同行しました。

活動を始めた直後に年金未納問題が民主党に跳ね返り、菅直人代表辞任に至りました。その頃、候補者と街頭に立ちましたが、悲惨でした。道行く有権者の冷たい視線を忘れることができません。

当時の目標は、20万票の大台に乗せることでした(ということは、自民40万票)。この目標も無理かな、というのが正直なところ。山本陣営からは、余裕の声が聞こえてきました。

その流れが、年金国会の審議により変わってきました。小泉首相の「人生いろいろ」というような失言も飛び出し、有権者の怒りの声が聞こえてきました。街頭でそのことが直に感じられるようになってきたので、「これはいい戦いができるかもしれないな」と思うようになりました。

前年の総選挙と比較して、社民党が候補者を出さない選挙がやりやすいことに驚きました。社民党系の労組の方々にも協力していただいたので、訪問できる労組が増えました。社民党が出ないというだけで、有権者も野党が本気であることを感じ、対決ムードが出てきます。

投票日(7月11日)の1ヶ月前からは、確実に追い風が吹いていることを実感しました。街頭での反応が全く違います。そのころ私は、自民35万票、民主25万票というところを目安と考えました。山本氏の知名度がそれほどなく、候補者と有権者の距離が離れています。前年の総選挙と比較して、自民党の組織が稼働しているような印象もありませんでした。創価学会が本気ではないという風聞も耳にしました。参議院の場合、選挙区も比例代表選挙に近い選挙であると考えるようになりました。

投票日の1週間前、接戦ではないかいう調査報告が入り、驚きました。しかも、こちらは上げ潮。自民党は慌てふためいている様子。選挙期間最終日、知事と松山市長とが街頭に立ち、山本氏の応援をしました。緊急事態です。怒濤のラスト1週間を戦い、投票日。微妙だなという感触で、開票を迎えました。

選挙結果は、以下の通り。

山本 順三 
斉藤 政光
坂根 正洋 
 自民
 民主
 共産
  322,152
 273,784
56,193

最後の1週間が勝負だったようです。山本陣営から「泣き」が入り、創価学会などの組織が稼働したのだろうと思います。1週間で数万票固めるのですから、さすがです。

民主党を辞めた時点で資料を片づけたので、詳しい分析ができなくなりましたが、比例では四国で愛媛だけが自民党を上回りました。愛媛選挙区について小選挙区別で見ると、1区と3区では民主の勝ち、2区と4区で自民の勝ちでした。これは予想通り。1区で勝つ場合の雰囲気だけはよく分かりました。

(2007年の傾向と対策について、後日)


2007/2/9(金) 朗報・・・愛媛3区に民主党候補

参院選愛媛選挙区の分析をしようと思っていたら、ビッグニュース。愛媛3区に待望の候補者が出現しました。

【衆院選愛媛3区、民主党公認候補に白石氏】(愛媛新聞) 
民主党愛媛県連は8日、次期衆院選の愛媛3区の公認候補者に、元銀行員白石洋一氏(43)=西条市大町=を擁立すると発表した。 
 
白石氏は今治市出身。今治西高―東京大法学部卒。米国カリフォルニア州立大バークレー校経営大学院卒業。1987年、日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行、ニューヨーク支店などを経て2000年退行。02年―06年米国の会計事務所に勤務、06年秋退職し西条市に転居した。 
 
松山市内のホテルで8日、会見した白石氏は「地域に貢献できる人が育つような環境づくりを目指す。今の愛媛では自民党が強いが、風穴を開けたい」と抱負を述べた。 
 
衆院愛媛3区では、自民党現職の小野晋也氏(51)=当選5回=が党公認候補予定者になっている。

【コメント】
愛媛3区は、民主党にとって魅力的な選挙区です。勝てるとしたら3区だと言われてきました。

愛媛の4つの選挙区の内、1区、2区、3区は社民党が候補者を立てるので、民主党候補の当選は困難でした(4区は、自民党の岩盤)。それが2003年の総選挙を境に社民党の勢いが弱くなり、2005年の総選挙では、1区以外の選挙区で社民党は候補者を出しませんでした(1区での擁立も、次回は困難)。「選挙区の整理整頓」は、ほぼ完了しました。

3区は工業地帯であり、労組の力が強く、民主党の候補者が勝つ可能性は高いと思われます。ただし自民党も、そのことは百も承知であり、自民党王国の面目にかけても死守する構えを見せるでしょうから、相当な激戦が予想されます。

3区は、市町村合併で3つの自治体に集約された関係で、国政選挙が戦いやすい形になっています。西条市、新居浜市、四国中央市。この内、西条市、新居浜市は民主党がかなり戦えます。問題は四国中央市。ここは自民党が強いので、民主党がどこまで食い込めるかが焦点になります。四国中央市でドローに持ち込めば、民主の勝ち。

参院選を衆議院の候補者が共に戦えば、展望が開けてきます。4月の県議選がその前にあるので、立候補表明の時期としては、絶好のタイミングです。県議候補、参院候補とスクラムを組んでいただきたいと思います。

3区を小選挙区で取れば、民主党220議席以上というところでしょうか(過半数は241)。

(参院選分析の続きは明日以降)

《独言》
我々の時代は、「後ろから飛んでくる弾」に翻弄されました。このブログで、「後ろの人」への牽制球を投げることにより、新しい候補者に無駄な苦労をさせないようにしたいと考えています。

3区の候補者が頑張っていくと、今度は「前から弾が飛んでくる」段階に入ります。そうした事態をも想定した、ねばり強い戦いを期待します。


2007/2/8(木) 参院愛媛選挙区の分析(2)・・・友近候補勝利の前提を考える

これまで、自民対民主の対決を前提として分析を進めてきました。今回の選挙は、無所属で非自民・非共産の野党共闘ということになりそうです。

社民党が候補者を出さない形での民主党公認(2004年と同じパターン)の方が、自民・民主の二大政党対立の図式が鮮明になり、有権者から見て分かりやすい構図になります。無所属の野党共闘というのは、足し算的発想で考えればいいような気もしますが、他面、責任の所在が不明確になる恐れがあります。

ただし、今回に関して言えば、民主党県連の代表内定者・土居一豊氏のイメージを考えただけでも、民主党公認でない方が安全です。

責任の所在については、明確にしておくべきです。私が友近氏の後援者ならば、連合愛媛の幹部に対して、以下のような要求を出します。

◎「友近氏は人生を賭けることになる。皆さん方にも人生を賭けて欲しい。敗戦の場合には、連合愛媛会長と事務局長とは責任を取って辞任するという決意を公に示していただきたい。共に手を携えて、背水の陣でやろうじゃないか。」

このあたりの駄目を押しておかないと、どういうことになるか。「知名度のある有力候補者を擁立」という時点で、彼ら連合愛媛幹部は中央の連合や傘下労組への顔が立ちます。あとは、善戦してくれれば、「残念だった。あと一歩だった。自民党王国の壁は厚かったが、次につながるいい戦いができた。」で終わり。勝てば連合幹部の手柄、負ければ候補者の責任、にしない仕掛けが必要です。

友近氏を「善戦マン」で終わらせてはなりません。連合愛媛幹部も、自民たちの首が懸かっていれば、目の色が変わってきます。連合愛媛事務局と傘下労組、地域協議会は、別の組織です。それを前提としても、連合愛媛事務局を追い込めば、5千票くらい余分に掻き集めることは可能です。非常事態ともいえる突然の解散総選挙なのに盆休みを取る、ゆったりした方々です。追い込まないと本気にはなりません(本気のように見せる点では、プロですが)。

さて、自公35万票対民主25万票が目安であると、昨日述べました。無所属での出馬の場合も、この点は同じです。友近氏が立候補する場合に違ってくるのは、関谷氏には及ばないまでも、サッカー選手としての活躍により、県内で知名度があることです。加えて、「サポーター」となりうる方々がそれなりにいるとすれば、それらの方々が核となることにより、連帯の輪が加速度的に広がってくる可能性があります。

そういう展開になれば、30万票対30万票という戦いに持ち込むことは、それほど難しくありません。自民党組織は「骨粗鬆症」になっています。小泉政権の5年半で愛媛は痛めつけられており、不満のマグマは溜まっています。しかも、参議院議員と有権者との関係は、衆議院の場合ほど強くありません。県議選の後遺症で自民党の組織が稼働せず、「笛吹けども踊らず」、という事態も充分あり得ます。

(続く)


2007/2/7(水) 友近候補が参院愛媛選挙区で勝つための選挙区分析(1)

直近2回の参院選愛媛選挙区はどうだったか、というところから始めたいと思います。2001年は、自民党に小泉旋風が吹き荒れました。2004年は、小泉氏の「人生いろいろ」発言から、民主党に追い風が吹きました。

それを前提として、下記の結果(愛媛の有権者は約120万人)。

<2001年>
関谷 勝嗣 
島川 崇  
山本 久夫 
小栗 好子  
 自民
 無所属
 共産
 諸派
 413,083
174,673
 56,663
32,304

*島川氏の場合は、連合推薦で野党共闘が実現しています。
*1998年は公明党が野党でしたが、2001年は自公政権です。。

<2004年>
山本 順三 
斉藤 政光
坂根 正洋 
 自民
 民主
 共産
  322,152
 273,784
56,193

大雑把な言い方をすると、60万票を自民党候補と民主党候補が分け合う形の選挙です。基礎的実力は、自公40万票、民主20万票。

この6年間で自民党は、市町村合併で手足となる地方議員や首長を失いました。しかも、公共事業削減で建設業界が無力化しています。自民党を支える組織が弱体化している状況下でどれだけ戦えるのか、自民党サイドは大いに不安を抱えています。確実なのは公明票の10万。

そういう状況を勘案すると、自民党候補35万票、民主党候補25万票が1つの目安として出てきます。

選挙数ヶ月前の風向きは、全く当てになりません。2001年は、森内閣が極端な不人気に喘ぎ、島川氏が擁立された時点で、自民党サイドからは敗戦ムードすら漂っていました。2004年の場合、5月に年金未納問題が民主党に飛び火し、菅直人代表辞任という事態になりましたが、直前には民主党への追い風が吹きました。

想起されるのが、1998年の参院選挙です。直前まで自民党の楽勝ムードでした。それが恒久減税云々に関する橋本龍太郎首相の発言がぶれたことに端を発し、蓋を開けてみると自民惨敗という結果になりました。

参院選は、衆議院と違い、総理大臣に解散権がなく、選挙日時が予め決まっているので、直前の風如何で、何が起きるか全く分からない選挙です。しかも、近年の自民党組織の弱体化により、限りなく比例代表選挙に近いものになってきています。

(続く)


2007/2/6(火) 「チーム・友近」をつくれ!・・参院選・愛媛選挙区で民主が勝つために必要なこと

元サッカーJ2愛媛FC主将の友近聡朗氏(31)に、民主党代表・小沢一郎氏が正式に出馬要請。出馬濃厚と見られます。

友近氏を勝たせなければなりません。私が第1区総支部長だった頃、参議院に有力候補を担ぎ、4つの総支部が「4頭立ての馬車」で牽引することを夢見ていました。それが愛媛攻略のための最高のシフトです。現在総支部はありませんが、それなりの態勢を組めば、勝利の可能性は大です。

従来民主党県連では、ともすれば、候補者ができた時点で「一丁上がり」という雰囲気になっていました。これでは、勝てません。勝つための態勢づくりが急務です。私の場合、政治理念や政策については自分で書き、しゃべれましたから、アンケートの回答など全て、自分がやっていました。というより、それをするスタッフがいませんでした。アンケートが煩瑣で、アンケート用紙の束を見るだけで、気が萎えたものです。

友近氏の場合は、そういうことを含めて、あらゆる雑務から自由に行動できるシフトを組むべきです。候補者を「シンガーソングライター」にしないことが必要です。

2005年4月、福岡2区で自民・山崎拓氏に民主・平田正源候補が挑んだ衆院補選を、短期間手伝ったことがありました。そのとき不思議だったのは、平田候補のスピーチが上手なのに、話がソフトすぎてインパクトに欠けるなあ、という印象だったことです。スタッフでスピーチの内容を検討しているような気配がありませんでした(やってたら失礼)。

民主党が全党挙げて戦った選挙です。民主党のスタッフが候補者と知恵を絞ってシナリオを書き、自民党には語れない、アジアに向けた福岡の発展戦略を熱く語ればいいのに、もったいない話だと思いました。

愛媛で友近氏を勝たせるためには、戦略的に行動できるチームをつくるべきです。愛媛に相応しい政策・メッセージの絞り込み、何処にどう攻め込むかの選挙戦術等々を協議して、相手陣営を追い込む態勢を整備しておくべきです。それがなければ、「連合傘下の労組巡り+α」になってしまいます(県議選と連動するので、その点ではやりやすいと思いますが)。

「チーム・友近」をつくれ、ということです。これまで繰り返し述べているように、県連人事は最低・最悪です。基礎工事の杜撰なところにビルを建てる危うさがあります。しかし、候補者を担保に取られたのでは、どうしようもありません。今は、友近氏の健闘を祈るのみです。そして、担いだ者の最低限度のノルマとして、「チーム・友近」結成を要求します。

10日の県連大会では、「参院選・選挙区で勝てなければ、県連代表・幹事長、連合愛媛会長・事務局長は責任を取って辞任する。覚悟を決めて戦う。」というくらいのメッセージは、発していただきたいものです。そうでなければ、候補者に対して無責任すぎます。連合愛媛は、県連を実質的に下部組織にしたのですから、選挙結果に対する責任は免れないということを自覚すべきです。

党員の皆さんには、候補者を担保に取られたのだから、その見返りに、上記の確約を取るくらいの意気込みで県連大会に臨んでいただきたいと思います。


2007/2/5(月) 「現実」を疑え・・・積み上げられた「現実」にどう向き合うか

2月4日、東京新聞の社説は、熟読に値するものだと思います。教育基本法改正、防衛庁の「省」への昇格、国民投票法案。「現実」に流されつつある状況に、一石を投ずる内容です。

【週のはじめに考える 現実主義の落とし穴】(2月4日、東京新聞社説) 
日本社会では、大勢に流される傾向が顕著になり、民主主義が劣化しています。“仕方なしデモクラシー”から脱却するには現実主義を疑うことが大事です。

教育基本法が改定され、防衛庁は省に昇格しました。安倍晋三首相は新憲法の早期制定を目指し、国民投票法案を今度の国会で成立させようとしています。「戦後からの脱却」の流れに一段と拍車がかかります。

どれも日本という国と日本人の将来を決定的に左右する事柄です。国民的議論がわき起こって当然なのにさして盛り上がりません。抵抗しても無駄という雰囲気が広がり、「駄目なものは駄目」と言い続ける意識が弱まっています。

■心の在り方に踏み込む

他方で、かつてのタブー「愛国心要求」に代わって「愛国心強制に反対」することがタブーになり、公権力が人の心の在り方に踏み込むことが当たり前のようにいわれます。インターネットには、戦後、多くの日本人が築き上げ大切にしてきたものを、責任を取らずにすむ匿名でののしる世界があります。

敗戦を機にゼロから歩みだし、半世紀余で大いに進展したはずだった日本の民主主義は、戦争の傷跡が社会から消え、人々の記憶が薄れるにつれて劣化しています。

「責任ある言論戦を経て自分たちで判断し決める」という原点を忘れて、敗戦直後に米誌「ニューズウィーク」が名付けたという“仕方なしデモクラシー”が復活しました。

戦後的価値観を否定するキーワードは「現実」です。

「日本国憲法の非武装平和主義は国際社会の現実に合わない」「基本的人権、個人の尊重を名目に、現実にはエゴがまかり通っている」「世界有数の軍事力を有する自衛隊を軍隊扱いしないのは非現実的であり、憲法は時代遅れだ」などと、改憲論者は強調します。

■“仕方ない”とあきらめ

政治学者、丸山真男氏(故人)は一九五二年に発表した論文(「現実」主義の陥穽)で、今日の事態を予期したかのようにこうした現実論のまやかしを批判しました。

丸山氏によれば、「現実とは一面において与えられたものであると同時に、他面では日々つくられていくもの」ですが、「普通、わが国では現実というときはもっぱら前者だけが前面に出て後者は無視され」ます。

それはあきらめに転化し、異議があっても「現実だから仕方ない」と屈服を迫られます。戦前戦中のファシズム、軍国主義に対する抵抗力を内側から崩していったのがこうした現実観だったことは、丸山氏に指摘されるまでもなく明らかです。

敗戦により武力に頼らない国造りに踏み出した日本ですが、冷戦時代への突入とともに、指導者たちは現実を憲法に合わないものにする政治を積み重ねてきました。その矛盾をごまかし切れなくなって噴き出したのが昨今の改憲論です。

その一方で、六十年間、他国と戦火を交えず、戦闘による犠牲者を一人も出していないという重要な現実はあまり語られません。

“糖衣錠”のような自民党の新憲法案ではプライバシー、環境権、犯罪被害者の権利など「人権をより尊重」する論議もなされました。

しかし、それによって仮面社会化や重罰化が過度に進み、表現の自由や容疑者、被告人の人権が不当に狭められるおそれがあります。安全保障の問題に目を奪われ、こうした論点は軽視されがちです。

憲法に関して「理想か現実か」といった単純思考をすると日本の将来を誤ります。さまざまな論点がある改憲案に対し、まとめて是非を答えさせるのは危険です。

国民投票法案によれば改憲発議は関連項目がまとめて行われるため、条文ごとにイエスかノーかを表明できません。これでは改憲すべきか否か全体を一括して二者択一を迫るのと基本的には同じです。

新憲法案の成案を示さずに国民投票法案だけを先行して成立させることを急ぐうさんくささが、この一点だけでも分かります。

アフガニスタン、イラク開戦の際、戦争支持一色に染まっていた米国の世論は、昨年の中間選挙ではブッシュ政権のイラク政策に「ノー」を突きつけ、復元力を示しました。

小泉純一郎前首相は開戦を直ちに支持し、その後も米国追随を続けました。安倍首相もそれを踏襲し、さらに改憲でこの国を戦争のできる国に変えようとしています。

国民投票法案の審議を通じ、また七月の参院選で、日本の民主主義は元気を取り戻せるのでしょうか。まさに正念場です。

■押しつぶされる自発性

「つくられた」ことを無視し、所与性のみを前面に出す現実観に立つと、その時々の支配者の選択が常に是とされ、国民各人の自発的思考が押しつぶされるのは、丸山氏の言った通りです。その揚げ句がルール変更による違反追認です。

それを防ぐには、「理想論」「観念的」という非難にひるまず「現実論」に挑まねばなりません。

【コメント】
「現実とは一面において与えられたものであると同時に、他面では日々つくられていくもの」であることを肝に銘じなければなりません。そして、「現実というときはもっぱら前者だけが前面に出て後者は無視され」ていることも見逃してはいけません。

土地の境界線を少しずつ自分に有利に変えていく人がいます。隣人がそのことに注意を払っていないと、新たに書き換えられた境界線が「現実」になっていきます。後になって、それが間違っていると主張しても、「時効」が成立して、新たな現実で世の中が動いていくことになります。

「現実」に屈服し、「仕方がない」、「やむを得ない」と言いつつ、戦前の日本は、国民を地獄に突き落とす無謀な戦争へ突き進んでいきました。

敗戦の教訓から出発した戦後民主主義を、もう一度噛みしめていかなければなりません。既成事実の積み重ねを「現実」であるとして、「仕方なく」認めていくことが、無気力な後退であることを確認し、踏みとどまる勇気を持っていかなければならないのではないでしょうか。

「現実」と主体的に向き合わないと、流されてしまいます。日本国憲法の理念とずれてきた現実(ずらそうとしてきた現実)があります。日本国憲法によって形成されてきた現実もあります。後者の現実を正しく評価した上で、前者の現実にどう対処するのかを考える必要があります。


2007/2/4(日) 「犯人」は、小泉政権である・・・地域間格差の拡大

毎日新聞のスクープ記事。こういう調査をすることが、報道機関の存在感を高めることになります。小泉政権5年半の期間に地域間格差が拡大したことが、数字の上で確認されました。

【地域間格差:所得格差「小泉政権下で拡大」実証 本社集計】(毎日新聞)
99〜04年の全国の市区町村の納税者1人あたりの平均所得に関し、格差の度合いを示す「ジニ係数」を年ごとに割り出したところ、02年を境に上昇したことが3日分かった。ジニ係数は毎日新聞が東京大大学院の神野直彦教授(財政学)の協力を得て割り出した。

平均所得の最高値と最低値の差は3.40倍から4.49倍に拡大、小泉純一郎前政権の間に地域間格差が開いたことを示した。神野教授は「感覚的に論じられてきたものを初めて定量的に示せた」と指摘しており、地域間格差は4月の統一地方選の主要争点になりそうだ。

ジニ係数は所得の不平等度を0〜1の間で表す数値。「0」は完全な横並びで、数値が高いほど格差が開き、「1」は1人(1カ所)だけに所得が集中する状態となる。

毎日新聞は、総務省が毎年まとめる「市町村税課税状況等の調(しらべ)」に基づき、年ごとに市区町村別の総所得金額をその自治体内の納税者数で割って平均所得を確定。これをジニ係数を求める公式に当てはめた。

その結果、99〜01年はほぼ横ばいだった数値が02年の0.070を境に上昇に転じ、04年には0.079になった。国内の個人所得のジニ係数が99〜04年で0.007ポイント上昇というデータがあることが「格差論争」の根拠の一つとされており、市区町村別が2年間で0.009ポイント上昇したことは大きな数字だという。

平均所得の上位はほとんどが大都市部。04年には東京23特別区のうち9区が上位20自治体に入った。これに対し、下位は軒並み高齢化の著しい町村部。最高値と最低値はそれぞれ、99年は東京都港区の751万円、秋田県東成瀬村の221万円で、04年が港区の947万円、北海道上砂川町の211万円だった。

神野教授とともに作業にあたった慶応大大学院経済学研究科の宮崎雅人氏は「小さい所を大きな所が吸収するケースを考えれば、平成の大合併はジニ係数を下げる方向に働いたはずだ。実際の格差拡大は今回の結果より大きいのではないか」と分析している。【統一地方選取材班】

◇ジニ係数 所得の不平等感を0〜1の間で示す数値。「0」は完全な横並びで、数値が高いほど格差が開き、「1」は1人だけに所得が集中する状態となる。イタリアの統計学者、C・ジニが考案した。日本の個人所得のジニ係数は80年前後から上昇。どの統計を使うかで数字は異なり、0.2台〜0.4台と幅広い結果が出ている。今回は各自治体の平均所得を使ったが、個人所得の差よりも平均所得の差の開きは少ないため、0.07台という低い水
準で推移することになった。

【コメント】
地方切り捨て政治が実行された小泉政権の5年半。郵政解散でバブルとも言える議席を獲得した自民党に地獄が待っています。

数値をもって示せるということで、「地方切り捨て政治」ということが、より大きな政治的争点として浮かび上がることになります。

統一地方選挙と参院選挙では、有権者の皆さんに、是非、このことを踏まえて投票していただきたいと思います。ここで自民党に投票するということは、「格差拡大OK」のシグナルを送ることになります。

自分の首を自分の1票で絞め続けるという、自虐的な投票スタイルと訣別すべき時です。生活防衛と地域防衛のための1票を行使する必要があります。


2007/2/3(土) 要求する親・・・NHK・クローズアップ現代を見て

2月1日放送のNHK・クローズアップ現代、「要求する親 問われる教師」〜すれ違う教育現場〜を見ました。

子どもの親から、従来考えられなかったような様々な要望や要求が、公立学校に寄せられています。子供を起こして学校に連れて行って欲しいなどという、何を考えているのだろうかと思うような非常識な要求をはじめ、個々の教師や学校では到底対応不能な要求や主張が親から出されています。「給食費を払わない親」と同根の問題があるように思います。

ささいな指導上のミスを親が徹底的に糾弾。教師(学校長)が自殺に追いやられる事例もあります。真面目に生きてきた先生方では、対応できそうにない無道な主張・要求をする親。教育委員会も、個々の事案にはなかなか乗り出そうとしないようです。

危機管理能力が教育現場に求められます。個々の教師や学校をバックアップするシステムが必要です。それが教育委員会であればいいのですが、現状はそうなっていません。個々の親の主張に教師や学校が対応困難な場合(ある程度緩やかに認定)、教育委員会が前面に出て、積極的に対応するような制度にすべきです。

「問題保護者」は、直接、教育委員会が指導する(=保護者教育)ということも考えていくべきです。PTAについても、考え直す時期に来ているのではないでしょうか。教師が親の顔色を伺って本当の教育になるのかどうか。

学校に顧問弁護士を置くことも考えていいのではないでしょうか。


2007/2/2(金) 「産む機械」発言と審議拒否

柳沢厚生労働大臣が女性を「子供を産む機械」に例えた問題は、多くの女性の心を傷つける発言であり、厚生労働大臣という立場を考えても、大臣職にとどまることは不適当です。

これに対する野党の欠席戦術。これまでの欠席戦術がどれだけ効果があったのか、今回のケースで世論がどう動くか、そして、そもそも欠席戦術という手法はどうなのか、しっかり考えておくべきです。

【野党3党、柳沢厚労相の辞任求めて街頭演説】(読売新聞)
野党は1日、柳沢厚生労働相が女性を「子供を産む機械」に例えた問題で、街頭演説などを行い、厚労相辞任の必要性を訴えた。

民主党の小沢代表、社民党の福島党首、国民新党の亀井久興幹事長は同日昼、名古屋市でそろって街頭演説を行った。小沢氏は「単に女性蔑視(べっし)という問題でなく、安倍内閣の政治そのものが、復古主義的、権威主義的な体質を持っている」と批判。社民党の福島党首も「私のことを『産む機械だ』と思っている人に、国会で質問できない。柳沢氏が大臣である間は審議が出来ない」と強調した。小沢氏らは、愛知県知事選について野党候補への支援を呼びかけた。

3党は柳沢氏が辞任するまで、国会審議に応じない方針だ。

また、共産党の志位委員長は1日の記者会見で、「予算委員会の理事会や議院運営委員会には出席するが、ほかの野党と柳沢氏の罷免要求では一致している」と述べ、辞任要求で民主党などと共同歩調を取る考えを示した。

【コメント】
大失言であることは間違いありません。罷免相当の事案です。しかし、安倍総理が罷免しないと言っている以上、野党としては大臣の不信任案を提出するのが最大の抗議であると思います。

欠席戦術というのは、これまでの例では、マスコミに非難される場合が多い手法です。欠席戦術が功を奏した例もありますが、失敗した例も多々あります。戦術として有効かどうか、一度検証する必要があります。

そもそも、欠席というのは、庶民感覚からすれば「さぼっている」ということになります。しかも、国家財政が破綻の危機にあるということが繰り返し報じられていることから、国民のコスト意識も高まっています。

そうした前提でものを考えると、戦術として優秀なものかどうかは疑問です。もちろん、議会政治の根幹を揺さぶるような問題であれば、最後の抵抗手段として欠席戦術を採り、国民大運動を展開して政府を打倒するということもあり得る話です。

今回の場合、酷い発言ではありますが、一大臣の罷免を求めるために国会審議を止めるということが、現在の有権者に支持されるかどうか、いささか疑問です。週末の選挙結果とは関係なく、客観的に見て妥当かどうか、吟味する必要があります。

むしろこれを機に、女性が子供を産むことが幸せな社会をどうつくっていくかを、より真剣に国会で議論していくことを政府に約束させ、国会の存在感を高める方が、野党にとっても有利であると思います。「機械」「装置」と例えてしまう、男性社会の病理を徹底的に抉ることで、今回の発言を女性の幸せのために活かす工夫をすべきであるし、それが野党議員の役割です。

柳沢氏に対しては、恥を知るならば自ら進退を決すべきであるとして、突き放してしまった方が、より痛烈な打撃になるのではないでしょうか。

なお、審議拒否については、野党の場合だけが取り上げられますが、与党の審議拒否(野党提案のたなざらし等)の方が遙かに多いということは、あまり知られていません。これは、報道機関の怠慢、ないしは不公平な扱いです。


2007/2/1(木) 何故、民主党を辞めたか(3)

「倒幕の配当」ということを考えていました。「自民党幕府」が倒れる。その際、どういうことが起きるかということは、想定しておくべきテーマです。我が愛媛は、「全財産」を自民党に賭けている状態です。このスタンスは、それほど賢いものではありません。

現在、自民党に全財産を賭けるに値する「配当」が得られているかといえば、そうでもありません。下位に属する県民所得を見ても明らかです。国会議員個人に配当(地位・名誉)があるだけではないでしょうか。愛媛県民には、もう少し政治をリアルに見ていただきたいと思っています。

愛媛が「倒幕の立て役者」となり、「配当」にあずかるという発想も必要です。そうした観点も持ちながら、「倒幕」のために立ち上がったつもりでした。しかし、愛媛は「主戦場」たり得ないであろうというのが、私の結論です。

自民党王国愛媛で、有権者は自らの1票で自分の首を絞め、地方切り捨て政治の犠牲者になっています。その現状を認識すれば、怒りが沸いてくるはずです。不満のマグマはたまっています。

しかし、私が辞める時点で、党本部に自民党の岩盤を打ち破る長期戦略はありませんでした。そして、民主党県連の状態、連合愛媛幹部の姿勢等を勘案すると、他の地域で民主党に頑張ってもらい、倒幕後に愛媛(自民党の方々を含めて)が馳せ参じるという展開しかないと考えました。

民主党の選挙のやり方は(自民党もそうですが)、選挙毎に最初からやり直すというものです。しかし、そのやり方では、自民党の岩盤を突き崩すことはできません。勝てるところで勝って過半数を取り、民主党政権ができれば、自民党王国も崩壊します。しかし、そうした「単線の発想」ではなく、複線的に中長期的展望を持ち、自民党の岩盤に楔を打ち込むことを考える必要があります。

例えば、困難な50〜100小選挙区に、総支部長を常駐させる。継続的な活動を保障して、地道に支持者を増やすという作業をすれば、自民党サイドから見れば脅威です。地方切り捨て政治の影響を受けているのが保守の岩盤地域の現状なのですから。

大都市部では、候補者選考基準を厳しくしても、候補者はいくらでも現れます。候補者公募への応募が多数あると言われます。しかし大半は、都市部で自民党候補者が弱そうなところを希望します。あるいは、比例復活しやすいブロックを選びます。愛媛のように自民党が強く、比例復活が難しいところは(四国ブロックは定数6で、民主はこれまで2議席)、公募候補も二の足を踏むでしょう。

自民党王国・愛媛では、候補者の地位を保障し、長期戦略で臨まないと、候補者難が続くことになります(結局、政権交代による一発逆転待ち)。候補者の差し替えは必要な場合があります。それは、党本部が本人の力量・見識を充分把握した上で、じっくり話し合って決めればいい話です。総選挙を区切りとする必然性はありません。

総支部長の地位が保障されれば、小沢代表が主張される知事選挙などでの対立軸も形成可能です。しかし、総支部長がいないようなところでは、地方政治での対立軸形成はほぼ不可能です。地方議員は、総与党体制の方が居心地がいいからです。

☆  ☆  ☆

2005年秋、決断をすることになりました。選挙で借金ができたので、撤退時期が予定より早まりました。総支部がなくなっても、常任幹事として残る方法はあります。そうなると、連合愛媛との戦いが待っています。連合愛媛の下部組織になることを回避するための防衛戦です。

そういうことが嫌いな性格ではありません。しかし、戦うための時間が捻出できなくなりました。地元地域での役割も増し、仕事に専念する度合いも大幅に増やさざるを得ませんでした。

常任幹事として残留する選択肢を否定しても、党員として残る方法はありました。しかし、衆議院候補であった者が一党員として残り、あれこれ意見を言うことになると、不協和音を生じるだけです(2月10日の県連大会に私が党員として出るとしたら、これは大荒れ必至です。今回の県連の無様な姿を見ると、その方がいいのかもしれませんが…)。

《独言》

力足らずでした。期待してくれていた人には、申し訳ない気持ちです。

ともあれ、辞めると決めたときの開放感は格別でした(2年間の禁酒も解けました)。この時代に居合わせた者として、国家と愛媛に対する責任は果たしたつもりです。
  
民主党から出てくる候補者の方には、私のところに来ていただければ、私なりのアドバイスはできると思っています。

(参照)
1月25日:【問題あり、民主党・・・民主党愛媛県連と連合愛媛との関係は異常である】
1月26日:【「泥船」ではいけない・・・民主愛媛県連代表問題】
1月27日:【私が見た連合愛媛・・「業者」と見下す感覚に疑問】
1月28日:【私が見た連合愛媛(2)・・・選挙結果を客観的に分析できない幹部】


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