玉井彰の一言 2007年8月 四国の星ホーム一言目次前月

2007/8/31(金) 舛添こけると安倍こける・・改造内閣の支持率上昇

安倍改造内閣の支持率が上昇しました。これは、安倍氏への支持が増したということではありません。

この1ヶ月、内閣改造のニュースを大々的に報じ、期待感を盛り上げていったことが原因です。もうひとつ挙げれば、「舛添効果」です。

厚生労働大臣に舛添要一氏を起用したことが「ヒット」になっています。世論調査からは、舛添氏への期待感が大きいことが分かります。

しかし、厚生労働省所管事項は、年金問題1つとっても自民党政権の枠組みでは解決困難であり、舛添氏が孤軍奮闘しても苦しい展開になることが予想されます。

もっとも、理念や信念をかなぐり捨て、延命だけを目指している安倍政権としては、舛添氏の要望を全て聞き入れるという姿勢を示せば、政権浮揚に結びつけることができます。従来の政策との整合性を全く無視することも敢えて実行する決意がなければなりませんが。

もし舛添氏が挫折し、あるいは国民の失望を買う展開となれば、内閣は沈没するでしょう。舛添氏が頑張ったとしても、周囲の閣僚達が「失策」を続ければ、やはり「出血多量」ということになります。


2007/8/30(木) 小沢一郎氏は反米の空気を代弁できるか

「戦後レジームの脱却」を掲げながら、無原則な対米追随しかできない安倍政権。

「戦後レジーム」とはなにかを真剣に検討すれば、アメリカの半植民地として経済的な繁栄を追求する路線であり、もしそこからの脱却を真に意図するのであれば、「反米独立」ないしは「自主独立」の路線でなければならないはずです。

こういう議論をすると荒唐無稽だと笑われるでしょうが、アメリカ好きの日本国民の中にも「反米」の機運は醸成されつつあり、政治的なうねりをつくりだす原動力にもなりうるものだと思われます。

国富がアメリカに奪われる。国民が必死に働いた成果がアメリカに奪われているのではないか。そうした疑問が湧き出てくると、日米間の矛盾は世界の政治における一大矛盾として認識されることになります。

我が国の安全保障は「アメリカの核の傘」の下にいることで充足される。この神話によって国民は安心感を持つことが出来ました。しかし、「北の核」の脅威がアメリカによって払拭されるのかどうか、近時の米朝間協議を見るといささか疑問に思える展開を見せています。

また、日本の社会のあり方を真摯に考えていくと、アメリカ型の「なんでもあり」ではなく、ヨーロッパのように地域コミュニティーや伝統を重んじた安定した社会を構築するために必要な規制を行う方が、国民の幸せにつながるのではないかという考えも出てきます。

アメリカの判断より国連の判断に重きを置く。この発想で小沢民主党がテロ特措法の延長を突っぱねる可能性が出てきました。リスキーな政治的決断のようでもありますが、現在の国民のモヤモヤ感、参院選で示された保守の反乱の中味は、無意識に形成されつつある反米意識であって、その意識を顕在化させることができれば、大きな「化学変化」が起きる可能性があります。 

アメリカが操縦しやすい「国際社会の優等生」のポジションを選択することで、経済を通して国民生活に不利益な影響が出ています。それに対する不満が臨界点を超えれば、新たな政治的エネルギーに転化する可能性を秘めています。

小沢氏が「声なき声」を糾合できるかどうか。テロ特措法延長が議論される臨時国会を注視したいと思います。


2007/8/29(水) 毎日33%、朝日33%、読売44%・・改造内閣の支持率

日経が41%、共同通信が41%。安倍改造内閣発足にあたり、各紙が世論調査を行った結果です。

「新装オープン」に対する評価としては、もの足りない数字です。「人心一新」して欲しい中心人物が留任しているのですから、やむを得ない数字ではあります。

【改造内閣支持33%、不支持なお53% 本社世論調査】(朝日)
安倍内閣の改造を受けて朝日新聞社が27日夜から28日夜にかけておこなった全国緊急世論調査(電話)によると、内閣支持率は33%で、過去最低だった参院選直後の前回(7月30、31日)の26%から上がったが、不支持は53%(前回60%)と引き続き半数を超えた。改造によって支持をやや持ち直したものの、依然として低水準だ。改造に伴って首相の評価が「よくなった」は18%どまり。「悪くなった」は9%で、66%は「変わらない」と答えた。秋の臨時国会で最大の焦点となるテロ対策特別措置法の延長に「反対」は53%と過半数を占め、「賛成」の35%を上回った。 

改造内閣は自民党各派閥の会長らベテランを多く取り込んだ布陣だが、「人材がそろっている」との見方は30%で、「そうは思わない」が39%と評価は必ずしも高くない。ただ、個々の閣僚には期待感もある。厚労相に起用された舛添要一参院議員に「期待する」人は73%に達した。地方対策の目玉として総務相に就いた増田寛也・前岩手県知事に対しても「期待する」が41%と、「期待しない」の30%を上回った。 

新しい内閣で一番力を入れてほしいことは「年金問題」39%、「地域格差の問題」20%、「財政再建」19%、「経済成長政策」17%の順だった。 

安倍首相の自民党総裁の任期は残り2年。任期切れまで首相を続けてよいと思うかを聞くと、「続けてよい」は41%、「そうは思わない」は47%だった。「続けてよい」と思う人のうち、72%は「ほかにふさわしい人がいない」を理由に挙げ、消極的な賛成が目立つ。一方、「そうは思わない」人の56%は「国民の感覚とずれている」を理由に挙げた。 
衆院で与党、参院で野党が多数を占める状況になったことを受けて、与野党の議論が進んで「よりよい法律ができるようになる」と肯定的に見る人は44%、「そうは思わない」と否定的に見る人も43%と割れた。与党支持層では否定的な見方が、野党支持層では肯定的な見方がやや多い。 

政党支持率は自民25%(前回21%)に対し、民主が32%(同34%)と、前回に続いて民主が自民を上回っている。その他の政党は公明3%(同5%)、共産3%(同3%)、社民1%(同2%)などだった。 

【コメント】
「サプライズ」の要素が乏しく、目立った支持率の回復には結びつかない内閣改造でした。読売や日経は高めの支持率が出る傾向があります。それでも、40%そこそそに回復したに過ぎません。これを「御祝儀相場」と考えれば、先行きは不安定です。

これからしばらく、支持率を睨みながらの政局になります。安倍氏の不人気は深刻です。この内閣と共に自民党が沈没する道を選ぶのかどうかという「論点」が、国会における民主党との対決と相俟って、自民党内部で密かにあるいは公然と議論されることになるでしょう。

首相の続投反対論は根強いようで、日経の調査では、参院選後に首相が続投した判断に関しては「反対だ」が49%にのぼり、「賛成だ」の40%を上回っています。

引き続き厳しい有権者の目がある中での続投です。何らかの問題が発生すれば、直ちに総辞職という展開になりうる世論の状況ですが、主流派の領袖クラスを取り込んでいるため、下手をすると安倍内閣が自民党と無理心中するという可能性もあります。

民主党からすると、この内閣で総選挙をして欲しいところですが、「無理心中」という事態がない限り、新総裁での総選挙となります。新総裁の下、露骨な地方優遇策が「餌」として出されると、かなり難しい選挙になると思われます。


2007/8/28(火) 総務大臣と厚生労働大臣・・あとはどうでもいい内閣改造

前岩手県知事・増田寛也氏が総務大臣。都市と地方との格差是正を掲げる改造内閣の目玉ではあります。

ただし、徒手空拳では誰を起用しても何も出来ません。この人事を支える政策と予算の強力な裏付けがなければ、政権延命のためのパフォーマンスに過ぎないことになります。

党人事や他の閣僚を見回すと、意見の隔たりがない経験者を揃えて厚みを増したということなのでしょう。この布陣で乗り切れるほど甘い政治情勢ではないと思います。

ある意味で目玉なのは、舛添要一氏の厚生労働大臣就任です。批判者を取り込んで「お友達内閣」の汚名を返上したいという意図は明白です。

この誘いにホイホイと乗ってしまった舛添氏の「信念」が問われます。あれだけ厳しい政権批判を展開したことを考えれば、ここは辞するのが正解です。「三顧の礼」が尽くされたわけでもありません。携帯電話一本での心変わりは空しすぎます。


2007/8/27(月) 憲法9条は非現実的か?・・「現実」にも色々ある

「日米同盟」堅持こそが現実的な政治判断であり、憲法9条にこだわるのは非現実的であるというのが、我が国政界の「常識」とでもいう状態になっています。

北朝鮮という凶暴な独裁国家の存在、そして中国の軍備強化が、「現実」重視を補強する根拠となっています。

しかし、別の視点から「現実」を見つめ直す余裕も必要ではないでしょうか。仮に「北」が核兵器の引き金を引けば、国家としての存立は直ちに否定されるでしょう。そうした自爆テロ的な判断をする可能性は低いと思われます。

仮に、核による被害を数十万人と想定するにしても、そこだけを見てパニックになるよりも、そのリスクに対応する適切な手段は何かを冷静に考えておく必要があります。

我が国の日常を考えても類推可能です。武器を持たないことが常識の我が国では、外出に「防衛手段」としての武器弾薬を持つことはありません。もちろん、そのことによる一定のリスクは抱えています。

そのリスクは、武器弾薬を常時保持することで小さくなるものでもありません。武器を常備する社会がかえって危険であることは、アメリカ社会を見れば歴然としています。

しかも、国際社会の「現実」をより直視するならば、たそがれのアメリカ帝国と二人三脚を組むリスクこそ問題にされなければなりません。

軍事的な意味合いでも、我が国の軍事力を客観視するならば、通常兵器で相当程度の実力を有する自衛隊の存在感はかなりのものです。我々の存在を無力な少女のように描くことは、オッサンを女子高生と見間違うような甚だしい錯覚です。

「現実」への切り込みをもっと鋭くすべきです。それが、真に国益を守れる方法であると思います。

「日米同盟」も一種の信仰であるというところを押さえつつ、政治的な「マナー」として、枕詞に「日米同盟」を謳っておくというところが、とりあえず政治の安定走行につながる発想ではないでしょうか。


2007/8/26(日) 1人区の民主党参議院議員は自らの力を自覚せよ

今夏の参院選で民主党は、1人区で大勝ちしました。ここで当選した民主党参議院議員は、衆議院議員数人分に匹敵する力を持てる場合があります。

特に自民党王国で当選した議員。彼らはその県の「顔」となり得ます。我が愛媛で当選した「無所属」の友近氏が民主党入りしたらどうなるか。

民主党の国会議員は彼だけになりますから、望めば民主党の県連代表になることも可能です。その選択をしない場合でも、「県連の顔」として、県連を代表する形で活動を展開できます。実質的に県連を手中に収めての活動になります。

しかも、4つの衆議院選挙区の候補者の応援に回ることにより、4人の衆議院候補の上に君臨する形になります。日常活動を活発に行い人気を維持・拡大できれば、知事より存在感を有することにもなります。

1国会議員で甘んじるにはもったいない条件を備えているのが、自民党王国における民主党(無所属)の1人区参議院議員です。

そのポテンシャル(潜在力ないしは位置エネルギー)を自覚していただきたいものです。


2007/8/25(土) 非正規社員の支援に重点を置く労働運動の意味・・連合の方針転換

大企業と公務員中心の連合が方針転換をしたとのニュース。

このことの意味、可能性。そして、矛盾を内包しないかどうか。検討が必要です。

【連合:非正規社員の支援・連携を最優先 方針転換】(毎日) 
連合(高木剛会長)は24日に開いた中央執行委員会で、パートなど非正規社員や中小零細の労働者への支援・連携を最優先とするなどとした今後2年間の運動方針案を確認した。大企業の正社員や公務員中心の労働運動ともいわれる連合の大きな方針転換といえ、増え続ける非正規労働者の問題に正面から取り組むことになる。

方針案では、今後2年間(08〜09年度)の運動の力点として非正規社員などへの「支援・連携の強化、組織化の推進に最優先で取り組み、働き方の改革を進め、労働諸条件の底上げ・向上を図る」とした。10月の定期大会に提案され、了承される見通し。

具体的には、そうした労働者に支援、連帯する「非正規労働センター」(仮称)を、全国106カ所の地域協議会などに設け、雇用、労働条件の相談など総合的なサポートや組織化に取り組む。インターネットを通じて、そうした労働者をネットワーク化する。

連合はここ数年の春闘で、中小企業の労組やパート労働者の賃上げに取り組むなど格差是正の運動を進めてきた。しかし非正規労働者の雇用条件の劣化が進み、「企業の競争力優先、収益優先の追求に対し立ち向かわなければならない」との危機感から非正規労働者支援強化にカジを切った。

連合の古賀伸明事務局長は「不公正で不条理な労働がまかり通れば、その悪影響はすべての労働者に及ぶ。本腰を入れて支援をやらなければならない」と話している。

【コメント】
私が愛媛で目撃した限りで言えば、労組の組織は極めて古い感覚で運営されています。彼らに非正規社員に対する思いやりや気配りができるのかどうか、いささか不安ではあります。

それはそれとして、非正規社員の置かれている立場に配慮した労働運動への転換には拍手を送りたいと思います。

ただし、そのことは「正規軍」の「贅肉」を取る作業と一体をなすのだという認識が必要です。

世間一般の基準から言えば、労働運動で守られている「正規軍」の方々の労働に関する自覚は乏しく、労働運動の強い企業の労働者は生産性が低く、労働運動の弱い企業の労働者は生産性が高いのが実際です。

このことについての自覚を持たなければ、今回の路線転換も一過性のものになり、労働運動全体の力を弱めるだけに終わるでしょう。

抽象的な「同一労働同一賃金」ではなく、「一定以上の生産性を有する同一労働についての同一賃金」でなければ、路線は破綻します。

グローバル経済の下で、生産性の低い企業は買収され、その後に徹底したリストラが待っています。そこまで視野に入れた労働運動が展開される必要があります。

取り分け、公務員労組。解体的な出直しを図る覚悟が必要です。私の従来の主張を繰り返せば、公務員とは「24時間型の市民」であり、その給与水準は、同一規模の民間企業の労働者+αであるべきで、「α」の部分が「24時間型市民」に対応するものとなります。


2007/8/24(金) 「ねじれ」てはいない衆議院と参議院

参議院で野党が多数派になったことから、「国会での与野党ねじれ現象」ということがマスコミによって喧伝されています。

異例の事態という感じでとらえているわけですが、これまで偶々、衆議院と参議院の多数派が一致していたことに慣れすぎていることの裏返しとしての違和感の表明であると思われます。

別々の時期に別々の選挙制度で行われる国政選挙で、衆議院も参議院も多数派が同じになるという前提で政治を語るべきではありません。

参議院に本来期待されていた「上院」としての機能が発揮できる情勢になりました。

多数派である野党の「品格」が問題になってきます。「国益」や「政権担当能力」という「キーワード」を駆使して攻撃してくる「アメリカのエージェント」たちの言説に振り回されることなく、じっくりと腰を落ち着けての議論を期待します。

「ねじれ」ではありません。「権力分立」の具体的な表現であり、国会議員の合理的な国家意思形成能力が試される新たな局面として理解すべきです。


2007/8/23(木) 「地域力創造部」?・・総務省の「善意」は分かるが、地方主権が先

総務省が職員を派遣してくれる。小さな町にも。しかしこれは、「越後のちりめん問屋」のお爺さん一行に助けてもらう村人の話とあまり変わらない「お上頼み」の発想ではないでしょうか。

【総務省、地域力創造部を新設・小規模自治体にも職員派遣】(ブエノスアイレス=共同)
菅義偉総務相は21日(日本時間22日)、ブエノスアイレスで記者団と懇談し、2008年度に総務省に「地域力創造部」を新設し、街づくり支援のため、同省職員の派遣を小規模の地方自治体にも拡大する方針を明らかにした。

総務省による自治体への職員派遣は都道府県や政令市など大規模な自治体が中心。過疎や格差問題の深刻化を背景に市町村の要望が強まったことを受け、間口を広げる。

地域力創造部は、現在の「頑張る地方応援室」を拡充する形で、約50人を配置する。地域活性化のノウハウ蓄積について検討を進め、医師確保や情報通信基盤の格差是正にも取り組む。

菅氏は過疎化で増加した空き家の活用事業の拡充も表明。都市部の住民受け入れを促進するため、一戸当たりの補助対象限度額を200万円引き上げ、550万円とする。

【コメント】
地動説か天動説か。今日では自明のこととされることが、16世紀には大問題として論じられました。

コペルニクスの地動説が出てくるまで支配的だったのは、プトレマイオスの天動説でした。天体に関するほとんどの事象は、プトレマイオスの天動説で説明可能でした。

しかし、僅かに生じる「誤差」に着目したコペルニクスが新たな体系(地動説)を提案します。

中央集権を前提とする限り、総務省の案はそれなりに評価できます。しかし、拠って立つ中央集権の発想を克服しない限り、地方は幸せにはなりません。

総務省の役人達が「善意」でやってやろうとすることと、結果との「誤差」に着目する必要があります。

「地方主権型社会」をつくらない限り、その「誤差」は埋められません。コペルニクス的な転換が我が国に求められています。


2007/8/22(水) 人生100年時代は、「かわいい」がキーワード

50代、60代は少年少女。7月10日のブログで書きました。人生100年時代を鳥瞰すると、自ずとそうなります。

そして、「必殺」の言葉「かわいい」が、かなりの年齢にまで通用する概念となります。

【《近ごろ都に流行るもの》「大人の可愛い」熟女へ最高のほめ言葉】(産経)

■元祖JJ世代…購買力にも注目
 
女性の40、50代といえばすでに立派なオバさんのはずだが、この年ごろで「大人(の)可愛(かわい)い」という価値観が広がっている。50代向け化粧品が今年「大人の可愛い」をテーマに刷新したところ、主力商品の売り上げが2倍近くに急伸。百貨店のCI(企業イメージ統合戦略)、アパレルでも同様のアピールが目立つ。「年がいもない」「厚かましい」…などの批判も受けそうなハイリスクなキーワードに思えるが、この世代は元祖JJガールやアンノン族。日本女性のオシャレやライフスタイルを切り開いてきた世代が、大人ならではの可愛さを堂々と発信している。(重松明子)
 
「50代女性の中身と外見が変化している」と指摘するのは、50代向け化粧品、花王「グレイスソフィーナ」のマーケティング担当、中江良さん。
 今年2月に大幅リニューアルし、売り場には女優、黒木瞳さんのポスターが「大人の『可愛い』を、見せてあげよう。」とアピール。それを機に、ファンデーションの売り上げが前年同期比1・8倍と絶好調だ。
 
「可愛い」を打ち出す元になったのは、五十路の女性約100人に実施したグループインタビュー。
 
「ノリは女子大生。好奇心旺盛でキレイでいるための努力を惜しまず、最近では『ビリーズブートキャンプ』をやっている人も多い。50代女性の理想像は従来の『すてきな奥さん』から、自分らしく周りからも注目される『可愛い女性』に変化している」と中江さん。
 
9月に新しく投入するファンデーションには、肌の凹凸にもなじみ、光を最適に反射、拡散させるというパウダーを新配合。「可愛い」の大敵、しわやたるみを目くらます。
 
東京・自由が丘のショップ「イマンモンプルミエ」で、洋服ブランド「アミナ」を担当するデザイナーの星千恵さん(56)の「大人のスイートスタイル」が中高年女性の心をとらえている。
 
平均客単価は1万1000円だが、地方から来て、一度に30万円ほども購入する人もいて、商品づくりが追いつかないほど。

星さんは昭和47年、伝説の「原宿セントラルアパート」から自身のブランドを立ち上げたこの世代の体現者。可愛いさを求めてやってくる同世代の顧客を、こう分析する。「さまざまなファッションをこなし、仕事や子育てを経て、モラルをわきまえた成熟世代だからこそ、自分の好きな格好が堂々とできる。まさに自分自身がブランドなんです」
 
老舗百貨店の三越は昨年から、「大人のかわいいを探しに」をテーマにした広告を、日本経済新聞に絞って展開している。
 
日経を読む女性=都心で働くキャリアウーマン=購買力が高い=魅力的な新規顧客層…というのがその狙いの構図だ。6、7万の靴から300万円以上の腕時計など、フェミニンでひとクセあるハイクオリティー商品で大人ならではの可愛さを表現している。
 
「女性が肩の力を抜いて活躍できる時代になり、仕事時の装いもかつての黒スーツ一辺倒ではなく、自分の判断で自由に装う女性が増えた。自信をつけた女性のしなやかさが『大人』と『かわいい』の両立を可能にした」とは、自分でコピーを考えたブランド・CI推進室長の坂井文枝さん(52)。自身も可愛いプッチ柄のブラウスで取材対応。女性管理職のイメージも様変わりしている。
 
この、強引とも思える新価値観「大人可愛い」を初めて大々的に世に示したのは40代女性誌「ストーリィ」(光文社)だ。発行部数26万部。70〜80年代の女子大生ブームを牽引(けんいん)した同社の雑誌『JJ』の読者層がそのまま移行している。
 
「女性にとって『可愛い』は、いくつになっても捨てたくない永遠のテーマ。『大人可愛い』が歓迎されると同時に、彼女たちの間で『年相応』という言葉が意味をなくした」と話すのは編集長の山本由樹さん。ただ、「さじ加減は大事。全身可愛いずくめの40代はイタイ」と男性の視点から忠告も忘れない。
 
「可愛い」「かわいい」「カワイイ」…。その意味はそれぞれ多様化しているが、日本女性にとって「最高のほめ言葉」という地位は、世代を超え、もはや揺るぎない。

【コメント】
これまで、人は年を重ねるに従い、自己を限定していく傾向が見られました。

子育てを終えると、子の将来が気に掛かり、孫に関心が移り、その先は「死」が平穏であることを願う・・

自分自身の目標・目的を失い、自己表現も限られてくることになります。それは、人生の長さを60〜70才位にしか意識できないことに原因があります。最近やっと「人生80年」ということが常識になりつつある段階です。

しかし実際は、さらに長く生きるのです。その長さから逆算すると、現在只今はもっともっと自由度があるはずです。「かわいい」自分でいることは、20代30代までの特権ではないことになります。

「可愛い」、「かわいい」、「カワイイ」。いろいろな可愛らしさを演出しながら生きていくことが可能な時代。「かわいい」が人生の質の向上をもたらします。そう考えると、世の男性諸君は女性に比べて、一歩も二歩も出遅れている感があります。


2007/8/21(火) 自民党の敗因分析・・落選・前議員の話と愛媛選挙区

市町村合併で「兵隊さん」(=首長と議員)がいなくなった。自民党の敗因のひとつです。しかし、それは分かっていたはずです。それを承知で強行した市町村リストラ(合併)。

【参院選落選の前議員 中川自民幹事長らに不満漏らす】(朝日)
さきの参院選で落選した前議員7人と中川秀直幹事長ら党幹部が20日夜、都内で会合を開いた。保坂三蔵氏(東京都選挙区)や関谷勝嗣氏(愛媛選挙区)、真鍋賢二氏(香川選挙区)らが出席し、年金問題や赤城前農林水産相の政治資金問題に対する不適切な対応への不満を漏らした。関谷氏は「愛媛県は市町村合併で50支部がなくなった」と、地方組織の弱体化を敗因に挙げた。 

【コメント】
我が愛媛選挙区では、無所属の友近聡朗氏が37万8千票を獲得し、自民党の前職・関谷勝嗣氏(31万8千票)を下しました。

2月7日のブログで、1つの目安として、自民党候補35万票、民主党候補25万票という見方を示しました。60万票の奪い合いであり、30万票を超えた方が勝つが、民主党候補は5万票をどうやって稼ぐかがポイントであると考えていました。

結果は、投票率が上がり、31万8千票を獲得した関谷氏は敗れました。しかしこの票数は、「さすが自民党愛媛県連」と言えるものです。あの逆風下で、3年前の自民党・山本順三氏(32万2千票)に迫る票を獲得したのですから。

友近氏が獲得した票の内、25万票を超える部分(12万8千票)は、追い風による「バブル」+友近氏の知名度とイメージによるものだと思われます。

6年後の選挙を考えると、現職・友近氏vs自民党新人の戦いということになります。この間政権交代がなければ、自民党が優勢になります。連合愛媛はフル稼働しても25万票しか取れません。しかも、6年後も力を維持できているかどうか、いささか疑問です。

友近氏の生き残りは(6年あると思ったら大間違い)、「愛媛の改革」と「脱労組」ができるかどうかが大きなファクターになります。

「愛媛の脱藩浪人」を覚悟し、「無所属」の呪縛から解放され、民主党入りして愛媛の民主党組織構築のために尽力されることが、友近氏の将来を築き上げることになると思います。

《独言》
友近氏の勝因は、自民党の牙城であった「南予」(愛媛県南部)で勝ったことに象徴されるように、自民党への失望感が県内に広がったことにあります。

「南予の期待」に応えられるかどうか。ここがポイントです。「大声の支援者」の「声」に耳を傾ける前に、「南予」の「声なき声」が聞こえるかどうかが、政治家・友近氏が大成できるかどうかの分かれ目になります。


2007/8/20(月) 「美しい国」封印・・・そもそも無内容な言葉

安倍総理は参院選惨敗を受けて、「美しい国」という言葉を封印しているようです。

そもそも何を言っているのか分からない無内容な言葉です。国民生活から遊離した独り善がりの言葉に付いていく人がいなかったということでもあります。

【<美しい国>参院選後、首相口にせず…生活密着型に修正へ】(毎日)
安倍晋三首相が参院選後、政権の看板に掲げていた「美しい国づくり」を口にしなくなった。選挙中から「何を言いたいのか分からない」などと評判が悪く、結果として自民党を惨敗に導いたためだ。首相は「美しい国」のスローガン自体は降ろさず、生活密着型の政策を加える修正で局面転換を図ろうとしている。
 
「美しい国」は、参院選を戦う自民候補からも「ばかにされた気がする」とまで酷評された。「生活が第一」と訴える民主党に対し、首相の訴える理念はあまりにも国民意識からずれているといういらだちでもあった。
 
首相が定義する「美しい国」は(1)文化、伝統を大切にする(2)自由な社会を基本とする(3)未来へ向かって成長するエネルギーを持つ(4)世界に信頼される――ような国(昨年9月の所信表明演説)。それを踏まえ、「教育再生」諸政策や憲法改正に向けた国民投票法制定などを手がけたが、多くは野党の反対を押し切って実現させた。
 
参院選で敗北しても、首相は「改革の方向性が否定されたとは思えない」と主張している。しかし、選挙結果は無視できず、自らの政治理念を通すためにも「美しい国」を生活型に修正する必要があると判断したようだ。政府の「美しい国づくりプロジェクト」担当の世耕弘成首相補佐官も「生活者の視点に立った美しい国とは何かを考えた軌道修正が必要だ」と指摘する。
 
現在、首相官邸で同プロジェクトに寄せられた約3500件の提言を参考に修正が検討されており、内閣改造時などに首相が表明する方向だ。 

【コメント】
「国民の生活が第一」とする民主党・小沢氏の主張と正反対の、生活感のない主張でした。この路線が選挙で否定されたということです。

しかし、路線を生活密着型に転換するにしても、支持率が上昇するまでの待機作戦だとすると、「生活密着」もアリバイ的なものになるでしょう。

地方への配慮ということが言われていますが、それに対応する予算が充実しているようにも見えません。

内容空疎な主張を修正して目先の人気取りに走るということでは、一貫性のない話になります。5月下旬の支持率激減に際して慌てまくった話の第二幕にしかならないように思われます。


2007/8/19(日) 防衛省人事・・次官の反乱を容認した

どちらの主張も認めず、痛み分けにした。そういう解決のようにも見えますが、次官が大臣に抵抗したことの責任はどうなるのか、疑問です。

【小池氏と守屋氏痛み分け、新防衛次官は第3の候補に】(読売) 
政府は17日午後にも、混乱が続いている防衛省次官人事について閣議人事検討会議を開き、最終決着する方針を固めた。

小池防衛相が求めていた守屋武昌防衛次官の退任を認める一方、警察庁出身の西川徹矢官房長の次官への昇格は認めない方向だ。守屋氏が自らの後任に推していた旧防衛庁生え抜きの山崎信之郎運用企画局長の昇格も見送る方針だ。

政府は防衛次官人事について、27日に行われる内閣改造後に新たな防衛相が決めることで収拾を図る方針だったが、混乱が続き安倍政権の求心力が一層低下しかねないとの懸念から、早期決着を図ることにした。後任には、増田好平人事教育局長や北原巌男防衛施設庁長官の名前が浮上している。

防衛次官人事をめぐっては、防衛相が在任4年を超える守屋氏の交代を15日の閣議で決定しようと動いたが、閣議人事検討会議のメンバーである塩崎官房長官らの了解を取らず、守屋氏自身にも事前に知らせていなかった。

省庁の幹部人事については、1997年以降、政治主導の人事を行うとの観点から、正副官房長官4人による閣議人事検討会議の了承を経ることになっているため、塩崎氏らは強く反発した。また、守屋氏は、秋の臨時国会で、インド洋での海上自衛隊の米軍などへの補給活動を延長するためのテロ対策特別措置法改正案の審議を控えていることなどを理由に、警察庁出身の西川氏の昇格に反対。「守屋退任・西川昇格」の人事案件を正式に首相官邸に提示することを拒み、混乱が続いてきた。

【コメント】
政治主導を貫くのなら、大臣主導の人事を承認すべきです。大臣に混乱の責任ありとするならば、大臣を罷免すればいい話です。

小池大臣の人事案が不適当であるとするならば、大臣に責任ありです。大臣の人事案が適当なら、その案を支持すべきです。この点の判断が回避されています。

大臣の責任は内閣改造で小池氏の入閣を認めないことで明確にするということなのでしょうか。しかし、信賞必罰を明確にするには、即時の罷免が必要です。

「反乱軍」である守谷氏はそのまま「勇退」でいいのでしょうか。この点での責任も不明確です。官僚の反乱は許さない。そうした気迫は感じられません。

「痛み分け」ではなく、「官僚の反乱」を追認した結論だと思います。


2007/8/18(土) 「メタボ侍」の死・・「中庸」は難しい

三重県伊勢市で、メタボリックシンドローム解消のため、市長ら幹部職員7人による減量作戦が始まったというニュースは全国に発信され、面白い企画だと思われていました。

ところが、「7人のメタボ侍」の1人が「戦死」。これはどういうことなのか。

【「メタボ」解消作戦参加の伊勢市課長、運動中に急死】(読売)
三重県伊勢市で、生活習慣病予防のために、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と疑われる市長ら幹部職員7人による減量作戦に参加していた男性課長(47)が運動中に死亡していたことが17日、わかった。

死亡したのは、市生活支援課長奥野睦司さん。奥野さんは夏休みだった14日午前9時10分ごろ、同市の自宅近くの道路で倒れていた。通行人が見つけ、救急車が出動したが、奥野さんはすでに死亡していた。死因は急性虚血性心疾患。午前7時ごろ家を出て、ジョギング中に倒れたらしい。歩数計は3500歩を示していた。

市は7月から、市職員が率先して肥満予防に取り組もうと、「7人のメタボ侍、内臓脂肪を斬(き)る」と銘打ち、市長ら、腹囲85センチ以上の部課長級職員のうち7人がそれぞれ減量目標を立て、10月に成果を公表することにしていた。 

【コメント】
私も「メタボ」解消のため5月中旬より減量に取り組み、ほぼ目的を達成しました(175cm、78kg→71kg)。

このニュースを見て、「無理はいかんな」と思いました。減量が進み始めると、ついつい減量それ自体が目的となり、また数字を追うのが面白くなってきて、ある意味で自分を追い込んだ形になってしまいます。

また、そうでなければ、ダイエットに成功するのは難しいと思います。ちょっと油断するとリバウンドしてきます。

「中庸」と言われますが、なかなか難しいものです。

国家財政についても、「財政再建」の旗印の下、歳出削減に取り組むのは結構ですが、それが一人歩きして国民の暮らしが圧迫され、自治体が疲弊するような展開になると、なんのための財政再建なのか分からなくなってきます。

市場原理主義の罠にはまった日本経済(特に地方経済の疲弊)を健全化するためには、適切な支出のあり方が議論されるべきです。その意味で、参院選で民主党が第一党になったことは、日本経済の「突然死」を免れるためには有効であったと思います。

「メタボ侍」の企画は秀逸でしたが、残念なことになりました。他山の石とさせていただきます。合掌。


2007/8/17(金) 防衛省の内紛と無責任な安倍政権・・室町幕府状態

ワイドショーネタの防衛省人事での内紛。守護(大臣)、地頭(事務次官)と室町幕府化した政府。こんな感じで眺めると、面白く鑑賞できます。

毎日新聞社説を読みます。

【社説:防衛次官人事 政権弱体化が生んだ内紛だ】(毎日)
お粗末と言うしかない。防衛事務次官人事をめぐる政府内のごたごたのことである。

防衛省は24万人の自衛隊員を管理する組織であり、いざという時に日本の安全を守る重大な職責を負っている。

連日ワイドショーでも「小池百合子防衛相VS守屋武昌次官」などと内紛劇が取り上げられている。当事者はトップとナンバー2が対立し世間を騒がせる意味をよく考えるべきだ。今、緊急事態になったら上層部の意思の疎通はできるのだろうか。単なる内紛では済まされない事態ではないか。

事のきっかけは小池防衛相が守屋次官を退任させ、後任に西川徹矢官房長を起用する人事案を内定したことだ。これを報道で知った守屋氏は「何の相談もない」と激しく反発した。守屋氏は続投も視野に入れていたとみられ、また続投しない場合も警察庁出身の西川氏ではなく、防衛省の生え抜きを後任にしたいという思いもあったようだ。

しかし政治家が官僚機構を統括するのは大原則であり、閣僚が決めたことに対して次官が従うのが筋である。

長年、同省の最高実力者と言われてきた守屋氏におごりがあったのではないか。4年という長期にわたって次官の座に置いた弊害が出たとも言え、歴代防衛相の人事政策も問われよう。

一方、部下をコントロールできない小池氏の人事掌握能力も責められる。守屋氏にも意見があろうし、本人に筋道を立てて説明し納得させるべきなのだ。

小池氏は報道が出る前に自分の考えを守屋氏に携帯電話で伝えようとしたが「応答がなかった」と守屋氏の態度を批判した。きちんと会って話すべきであり、閣僚として未熟としか言いようがない。

沖縄の普天間飛行場移設問題で地元に対して強気に迫る守屋氏と、地元との話し合いに力点を置く小池氏との路線の違いを指摘する声もある。

仮に人事の背景に普天間問題があり守屋氏のやり方を変えようとしているのなら、小池氏は国民にきちんと説明すべきだ。

最も問題なのは官邸の指導力の欠如であり無責任さだ。

各省庁の局長級以上の人事は「閣議人事検討会議」を経て閣議で決まる。会議は役所の論理だけで人事はさせないという政治主導の観点から設けられた。しかし会議を主宰する塩崎恭久官房長官は「手順を踏んでいない」と小池氏に不快感を示すだけで、調整に本気になって動き出す気配はない。

小池氏はすでに安倍晋三首相に相談をしていると、首相のお墨付きをちらつかせるが、首相は「まだ私には上がってきていない」と静観を決め込んでいる。塩崎氏とともに火中のクリは拾わないという傍観者的な態度である。

決着は内閣改造後の月末まで持ち越された。これは10日間以上、大臣と次官とのいがみ合いが続くのを放置することだ。対応できない官邸の姿は参院選で惨敗した政権の弱体化を物語っている。

【コメント】
国防の要である防衛省でのゴタゴタは、国の根幹である防衛に関する政府の統治能力を疑わせるに充分です。

強力な首相であれば、「喧嘩両成敗」なりなんなり、素早い対応がなされるはずのものです。

政府要人が評論家(官房長官)と観客(首相)ということでは、どうにもなりません。

「最も問題なのは官邸の指導力の欠如であり無責任さだ。」という毎日社説の主張は、その通り。大名と地頭の争いを収拾できない室町幕府の状態であることが明白になってきました。


2007/8/16(木) 8月15日の社説・・東京新聞を読む

8月15日、敗戦記念日(終戦記念日)。各新聞社の社説は、それぞれ読み応えがあります。

東京新聞の社説が目を引きました。

【終戦記念日に考える 極限からのメッセージ】(2007年8月15日 東京新聞)
平和は未来を奪う。希望は戦争−。そんな過激な論文が若者の心をとらえ、共感を広げているといわれます。戦後六十二年、ちょっと悲しいものがあります。

「『丸山真男』をひっぱたきたい」というのですから、タイトルからして刺激的でした。論座一月号に掲載された赤木智弘さんの論文です。

丸山真男とは輝ける戦後知識人の時代を築いた東大教授。サブタイトルに「31歳フリーター。希望は、戦争。」とありました。参院選で自民党が歴史的大敗をした二〇〇七年のことしを象徴する論文となるかもしれません。

希望は戦争に深い絶望
 
論文での自己紹介によると、赤木さんは北関東の実家で暮らし、月給は十万円強。結婚もできず、親元に寄生するフリーター生活をもう十数年も余儀なくされ耐え難い屈辱を感じています。父親が働けなくなれば生活の保障はなくなります。

定職に就こうにもまともな就職口は新卒に限られ、ハローワークの求人は安定した職業にはほど遠いものばかり。「マトモな仕事につけなくて」の愚痴には「努力が足りないから」の嘲笑(ちょうしょう)が浴びせられます。事態好転の可能性は低く「希望を持って生きられる人間などいない」と書いています。

今日と明日とで変わらない生活が続くのが平和な社会なら、赤木さんにとって「平和な社会はロクなものじゃない」ことになります。

ポストバブル世代に属する赤木さんの怒りは、安定した職業へのチャンスさえ与えられなかった不平等感に発し、怒りの矛先はリストラ阻止のため新規採用削減で企業と共犯関係を結んだ労働組合や中高年の経済成長世代に向けられていきます。

赤木さんにとって戦争は社会の閉塞(へいそく)状態を打破し、流動性を生み出してくれるかもしれない可能性の一つです。さすがに「私を戦争に向かわせないでほしい」と踏みとどまっていますが、「希望は戦争」のスローガンには多くの若者たちの絶望が隠れています。

苦悩直視が唯一の救い
 
若者が希望と未来を失ってしまったというなら(若者でなくとも)薦めたい一冊があります。

ビクトル・E・フランクルの「夜と霧=ドイツ強制収容所の体験記録」(みすず書房)です。人間への信頼と内からの勇気が湧(わ)いてくるかもしれないからです。

フランクルは強制収容所からの奇跡的生還を遂げたユダヤ人心理学者です。毎日のパンと生命維持のための闘いは、あまりにも厳しく、良心の消失、暴力、窃盗、不正、裏切りがあり、最もよき人々は帰ってこなかったと収容所生活を回顧しています。

フランクルが語るのは英雄や殉教者ではなく、ごく普通の人々の小さな「死」や「犠牲」ですが、著者まずもっての感動は、どんな極限にあっても、人間の尊厳を守り抜く少なからずの人々の存在でした。勇気や誇り、親切や品位が示され、若いブルジョア女性は「こんなひどい目に遭わせてくれた運命に感謝します」と最期まで気高く快活でした。

著者にも愛の救いがありました。妻の面影のなかに勇気や励ましの眼差(まなざ)しを見たのです。精神の豊かさへの逃げ道をもつことで、繊細な人が頑丈な身体の人よりもよく耐え忍ぶという逆説がありました。

クライマックスは絶望からの救いの思想です。人生に期待するのではなく、人生がわれわれに何を期待しているかを問うこと、具体的には唯一、一回限りのわれわれ自身の苦悩を誠実に悩み抜くことが結論でした。苦悩の直視と時にはそのための涙が偉大な勇気だともいうのです。

いかなる人間も未来を知らないし突然、何らかのチャンスに恵まれないとも限らない。未来に落胆し、希望を捨てる必要はないとのフランクルの仲間への励ましは、収容所の内と外で変わるものではないでしょう。

本日付朝刊の特集面に登場している経済同友会終身幹事の品川正治さんは市場主義全盛に抗して「人間のための経済」を唱え「人間の力」「人間の努力」に期待する心熱き財界人です。その「人間中心の座標軸」が戦場の体験から生まれ、戦後も一貫させてきたことが語られるなど鈴木邦男氏との対談は熟読していただきたい内容です。

品川流の人間のための政治や経済からすれば、若者を「希望は戦争」との絶望に追い込み、大量の低賃金・不安定労働を生み出してしまった政治や経済は間違っているに決まっています。是正の取り組みに人間の努力が向けられなければならないはずです。新たな大きな課題です。

何より人間の尊厳
 
日本はどこに向かっているのか。国民の不満と不安が噴出したのが先の参院選の結果だったといえるでしょう。富者と貧者、都市と地方の容認できないほどの格差拡大、富める一部が富み、弱者、貧者が切り捨てられる社会は国柄にも反します。何より人間の尊厳は守らなければなりません。

【コメント】
「今日と明日とで変わらない生活が続くのが平和な社会」だ。どうなるか分からない戦争状態の方が活き活きとしていられるのではないか。

「社会の閉塞状態を打破し、流動性を生み出してくれるかもしれない可能性の一つ」としての戦争。

こういう発想ないしは思想が広がってくると、ファシズムの足音が聞こえてくることになります。

「ファシズムだ軍国主義だというようなことは二度とないだろう」。そうした安心感の中に日々の生活を送っているのが大多数の方々であろうと思います。しかし、一つ歯車が狂い始めると、とんでもない方向に社会が引っ張られてしまうというのが歴史の教えるところです。

ワイマール憲法下、ベルサイユ体制に対する社会の不満を糾合してナチス政権が成立したのが1933年。1938年頃から始まった優生学思想による安楽死政策がホロコースト(ユダヤ人虐殺)につながります。1942年から強制収容所での奴隷労働、そして虐殺へ。ナチス政権樹立から10年の「歴史」です。

閉塞感から高揚感へ。ナチスはドイツの青年達を熱狂の中に誘い込みましたが、結果として、深い失望と後悔をもたらしました。

苦悩直視。東京新聞社説はホロコーストの極限を描いた「夜と霧」を引用し、「クライマックスは絶望からの救いの思想です。人生に期待するのではなく、人生がわれわれに何を期待しているかを問うこと、具体的には唯一、一回限りのわれわれ自身の苦悩を誠実に悩み抜くことが結論でした。苦悩の直視と時にはそのための涙が偉大な勇気」だとします。

そのことを前提として、「個人の尊厳」を大切にする経済や社会を展望する必要があります。「人間」から出発する経済や社会のあり方を、市場原理主義の猛威に対置すべきです。戦争の高揚感による「救済」に逃げ込むべきではありません。

「夜と霧」。大学入学時の課題図書でした。さぼって読みませんでした。これからの「課題図書」にしたいと思います。


2007/8/15(水) 太平洋戦争・・・壮大な軍事作戦と文武官僚の自己保身

太平洋戦争が壮大な規模で戦われたことに驚き、東洋の小国が強大なアメリカ合衆国に乾坤一擲の勝負を挑んだことに感動して、次にやるときには勝てる国にしたい、などという野心を持っていたことがあります。

その後勉強を進める内に、この戦争は文武の官僚達が自己保身のために国民を道連れにした「無理心中事件」ではないかと思うようになりました。

勝てるかどうかの判断が曖昧でした。日露戦争のように「終戦」の仕方をきちんと考えて始めたわけでもありませんでした。

そもそも、戦争に至るまでに、それを回避する機会は数多くありました。その都度、そうした機会を逃し、「やむなく」始めるに至った無計画な戦争でした。

文武の官僚機構が硬直化し、しかも、組織を動かす幹部達が「部下を押さえきれない」などという理由で組織の暴走を許し、合理的な国家意思形成を行うことを半ば放棄していました。

「一銭五厘」で調達できる兵士達の命を軽んじ、自己保身のために人命を浪費した最低の戦争でした。

幹部達の無能と自己保身によって引き起こされた無駄な戦争。それに参加させられた兵士達、そして巻き添えを食った民間人達の無念を思うと、心が痛みます。

太平洋に展開された壮大な軍事作戦が、文武の官僚達の卑怯な自己保身の産物だったことだけは銘記しておきたいものです。


2007/8/14(火) アメリカの焦り・・「ノー」と言える参議院がアメリカを揺さぶる

参議院議員選挙で自公が過半数を大きく割り込み、民主党が第一党になり、「ノー」と言える参議院になったことが、アメリカを大きく揺さぶっています。

選挙結果をアメリカサイドから見ると、日本がこれまでのようにアメリカに都合のよい非民主的体制でなくなったことを意味します。

【米駐日大使「国会議員に機密開示」 テロ特措法めぐり】(朝日)
シーファー米駐日大使は13日、東京都内の大使公邸で朝日新聞記者のインタビューに応じ、民主党の小沢代表が期限延長に反対の姿勢を示しているテロ特措法について、全国会議員を対象に作戦内容などに関する米側の機密情報を開示する考えを示した。秋の臨時国会で同法を延長できず、自衛隊がインド洋で給油活動をできなくなれば、「(日米同盟に)ネガティブ(否定的)な影響を与える」と懸念した。

シーファー氏は、先の小沢代表との会談で必要な情報提供に応じる意向を表明しており、「米国は(野党側の)決断に必要なあらゆる情報を提供する用意がある」としたうえで「9月ごろ、関心を持つ全国会議員を対象に大使館で機密情報に関する複数回の説明会(ブリーフィング)を計画している」と述べた。米政府が日本の与党以外の議員を対象に機密情報を開示するのは極めて異例だ。 

アフガニスタンでの「テロとの戦い」について、シーファー氏は、小沢氏が主張する「米国の戦争」ではなく、「国際社会全体が参加すべき戦争だ」としたうえで、石油の約9割を中東に依存する日本にとって、(シーレーンに当たる)インド洋での作戦は国益に合致するとも主張した。 

さらに、今年3月に全会一致で採択された国連安保理決議1746で、アフガン国内の治安維持、麻薬取引の防止、アフガンからのテロ拡散の抑止などの活動が認められていると主張。「これらの作戦が、国連に基づいていないという議論は不誠実だ」「事実関係については我々の方が正しい」などと述べ、小沢氏の見解を強く批判した。 

参院の第1党になった民主党に対し、「いくつかの問題については、党派の利害を超えて決断してほしい」「日米同盟を政治のフットボールにすべきではない」と牽制(けんせい)した。 

【コメント】
この記事の反対解釈。これまでは国会議員であっても全くの蚊帳の外であって、国防に関しての情報から疎外されていたということです。

シーファー駐日大使が与党の頭越しに小沢民主党代表と会談したことに、アメリカの焦りが表れています。アメリカに「ノー」と言える政治情勢が生まれたことを敏感に感じてのことです。

「国益」を持ち出したり、「政権担当能力」を問題にしたりして、「アメリカのエージェント」としての性格を有する政治家達が民主党小沢体制を攻撃してくることが予想されます。

そうした「雑音」に惑わされることなく、国民の知る権利が野党を通じて現実化した政治情勢の中で、真に国民のための意思決定がなされるように、参議院の動向を見守る必要があります。


2007/8/13(月) 「再チャレンジ」は「蜘蛛の糸」か?・・2万5千分の152

安倍内閣の目玉政策である「再チャレンジ支援総合プラン」。その一環である国家公務員中途採用者選考試験は、採用予定152人に対して申込者2万5千人。

【再チャレンジ試験に2万5千人応募 152人採用予定】(朝日)
 人事院は10日、安倍政権の看板政策「再チャレンジ支援総合プラン」の一環として初めて実施する国家公務員中途採用者選考試験の申し込み結果を発表した。152人の採用予定に対し、申込者は2万5075人。競争率は試験区分によって20〜438倍という狭き門になった。 

 今年4月1日現在で29歳以上40歳未満が対象。申込者は男性7割、女性3割だった。試験区分別の申込者数は次の通り(かっこ内は採用予定数)。行政事務(32)1万4029▽税務(56)6777▽機械(2)356▽土木(1)417▽林業(4)514▽皇宮護衛官(2)418▽刑務=男子(41)1563、女子(6)118▽入国警備官(8)883 

【コメント】
芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」を思い出してしまいました。

地獄に住む悪人・カンダタに「再チャレンジ」のチャンスを与えたお釈迦様。細い蜘蛛の糸にすがって這い出せるのは自分だけだ。そう思ったカンダタは、他の多くの罪人達が同じ蜘蛛の糸にしがみつくことを恐れて、「この糸は俺のものだ」と叫きます。その瞬間、蜘蛛の糸は切れ、カンダタを含めて全員が再び地獄に落下しました。

2万5千分の152。フリーター生活が長かった人にとっては、狭すぎる門です。勉強を継続してきた人や社会人として別の分野で頑張ってきた人が「合格」するでしょう。

それはそれでいいとしても、様々なメニューの中で、気持ちを切り替えれば別の人生が切り開かれるというものがあればと思います。その場合は、ハードルを低く設定する必要があります。

1兆円の予算(報酬分)を組み、年収100万円の「準公務員」を雇用することにすれば、100万人の雇用を創出できます。このくらいやれば、世の中の雰囲気が一気に変わります。これは、フリーター世代への「投資」です。将来の「リーターン」が期待できます。

もう少し踏み込むと、履歴書に書いて通用する「履歴」ないしは「職歴」をどうやってつくれるかという問題が出てきます。多くの若者にとって履歴書の価値を高められる施策が求められています(政治家は自らの履歴の価値を高める操作をよくやっています)。

翻って、フリーター世代にお願いしたいのは、「俺が俺が」ではなく、「連帯」を模索して欲しいということです。フリーターを経験した世代にしか味わえない経験や価値を評価し、意味づけをする作業があってもいいと思うし、同世代の不満を糾合する試みがあってもいいだろうと思います(誰かがやっているのでしょうが)。


2007/8/12(日) 民主党は、慌てる必要がなくなった・・「三手詰め」の局面

5月下旬の支持率急落の後、安倍政権は慌てまくり、自ら墓穴を掘ってしまいました。

参議院で民主党が主導権を握る展開になったことで、政局は政権交代に向けて「三手詰め」の状況になったものと思われます。

このまま行けば、参議院は6年間野党主導で運営されることになります。国政調査権が適切に行使されれば、これまで自民党政権が封印してきた様々な事実と向き合う政治になります。民主党にとっては、自ずと「政権担当能力」が身に付くことになります。

「不都合な事実」と向き合わなければならなくなる自民党は、さらに墓穴を掘ります。民主党は「良い手」を指さなければと焦らなくても、自民党の方が勝手に自滅することになります。

「慌てない、慌てない。」 

一休さんの知恵が必要な局面です。


2007/8/11(土) 権力が3分の1移行した・・参議院の存在感

参議院無用論は吹き飛んだ形です。

民主党が参議院議長と議院運営委員長のポストを獲得した参議院は、従来の参議院とは意味合いが異なってきました。

参議院で国政調査権が野党主導で発動されるということは、霞ヶ関の官僚達からすると脅威です。従来政権党が隠してきた様々な秘密が、内部告発なしに公然化してきます。

事実の重みに安倍政権は耐えられないだろうと思われます。この政権が年内持ちこたえることは困難です。

民主党にとって、政権交代のためのウオーミングアップとしては一番よい形になりました。国家権力の3分の1が野党に移行したという認識で国会を注視する必要があります。


2007/8/10(金) 外交は「ノー」から始まる・・「イエス サー」の自民党外交を乗り越えろ

「政権担当能力」という言葉が、日本では誤用されています。

これまでは、事実として政権を担当してきたことをもって、「政権担当能力」と理解されてきたのではないでしょうか。それでは、政権担当の経験なし=政権担当能力なし、ということになってしまいます。

自民党の政治というのは、官僚に丸投げの政治でした。自民党自体に政権担当能力があるのではなく、官僚による自動運行の上で政治家が遊んできただけのものでした。

参議院で野党が多数派になった今、野党の政権担当能力が問われる反面、与党の政権担当能力(のなさ)が浮き彫りになってきます。

自民党でも政権を担当できた幸せな時代は終わります。不勉強な二世三世議員が政界から追われるということも視野に入れなければなりません。

野党多数の参議院で国政調査権が実質的に行使されることになる効果は計りしれません。事実が開示された上で政策判断をすることで、国益を守る政治が実現可能になります。

小沢民主党代表がシーファー駐日米大使に「ノー」と言った意味は大きいと思います。そもそも、外交は「ノー」から始まるものです。国益を守ることが政治家の任務だからです。「イエス サー」で始まる自民党外交とはひと味違う外交が期待できます。


2007/8/9(木) 「政権担当能力=米国の下請け」という発想からの自由・・小沢民主党代表とテロ特措法

小沢一郎民主党代表とシーファー駐日米大使との会談で、小沢代表はテロ特措法延長反対の意思を表明しました。

政権担当能力=米国との共同歩調という発想の政治家からすると、アメリカと異なる意見を述べることは恐怖心すら覚える話です。

【小沢民主代表:テロ特措法延長反対を伝える 米大使と会談】(毎日)
民主党の小沢一郎代表は8日、党本部でシーファー駐日米大使と会談した。シーファー氏は、11月1日に期限切れを迎えるテロ対策特別措置法を延長する法改正について「日本の貢献は非常に重要だ。この法案の影響を熟慮してほしい」と述べ、同法に基づく自衛隊による米軍支援活動の継続を要請した。小沢氏は「米国の行動を国連安保理でオーソライズ(承認)する決議はない。米国と共同の活動をすることはできない」と同法延長に反対する考えを伝え、大使の要請を拒否した。

会談はシーファー氏側から要請した。具体的な法案の対応をめぐり、駐日米大使が野党党首に直接要請するのは異例で、参院で民主党を含む野党が過半数を占めたことに対して対応を迫られた。小沢氏の意向から、会談は終了までメディアに公開された。

シーファー氏はテロ特措法に基づく日本の活動について「国際治安だけではなく、日本の治安にとっても重要だ。日本の石油の90%は部隊が巡回する地域を通っている」と力説し、支援継続を求めた。同時に「党首が決断するのに必要であれば機密情報も含め提供する」と述べ、情報公開を求める民主党の姿勢に配慮する考えも示した。また「アフガニスタンの治安を守る国連決議はある。国連が認めた活動に参加するチャンスだ」とも強調。「一つの党派に関係なく超党派で考えてほしい」と述べ、政局的な思惑へのけん制もみせた。

これに対し小沢氏は、アフガニスタン戦争について「米国がテロとの戦いだと国際社会のコンセンサスを待たずに始めた」と反論。国連の平和維持活動には積極的に参加するとしながらも、アフガニスタンでの米軍の活動について「直接的に根拠となる国連決議はない」として、参加できない考えを明確にした。

テロ特措法に基づき、海上自衛隊はインド洋に艦艇2隻を派遣、米国を中心とする艦艇に給油活動をしている。小沢氏が公式の場で派遣継続に反対する立場を米側に伝えたことで、秋の臨時国会で民主党と妥協点を探ることは困難との見方が、政府・与党内には強まっている。【須藤孝】
 
◇民主党の小沢一郎代表とシーファー駐日米大使の会談の要旨

◆シーファー大使 秋に国会に提出されるテロ特措法(の延長)についての考え方を話したいと思って来た。私は一つの党に関係なく超党派で考えてもらえる問題だと思っている。

(現地の)部隊はテロに反対するための国際的な活動部隊と思っている。日本の貢献は非常に重要だ。日本の貢献は国際的な治安への貢献のみならず、日本自身の治安にとっての貢献にもなる。日本が使用している石油の90%は活動部隊が巡回する地域を通ってくる。

また日本による燃料供給がなければ、英国やパキスタンはこの活動部隊に参加できなくなってしまう。私たちはイスラム教徒の国であるパキスタンの参加を重視している。

小沢代表が最終決断するのに必要な情報があるなら、機密の情報であれ、提供する準備ができている。代表の理解を得ることを期待したい。

◆小沢代表 私たちは日本国憲法9条について「自衛権を行使するのは、日本が攻撃を受けた場合、あるいは急迫不正の侵害を受けた場合に限る」と解釈している。平和を維持するための活動には積極参加するが、あくまで国際社会の合意の上で、国連の活動として参加するということだ。

アフガニスタンでの戦争はブッシュ米大統領が「米国のテロとの戦いだ」と言って、国際社会の合意を待たずに米国独自で始めた。日本の直接の平和や安全とは関係ない。直接的に(日本の)部隊を派遣して、米国あるいはほかの国と共同活動をすることはできない。

◆シーファー大使 3月に可決された国連安保理決議では、米国を中心とした部隊の活動を国連が認め、その活動について言及している。

◆小沢代表 テロに対して戦う考えは共有しているが、どういう手段で、どういう方法で参加できるかは国によって違う。湾岸戦争の際、ブッシュ大統領の父親は、国連決議が出るまで開戦しなかった。米国にはもう少し忍耐強く、国際社会の合意を得るよう努力してもらいたい。

◇日米関係・安全保障問題をめぐる小沢一郎民主党代表の主な発言など◇

91年6月 (自衛隊の派遣を)なし崩しにその時の状況判断で決めていくのは好ましくない(自民党「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」の会長としてあいさつで)

93年5月 自衛隊が国連待機軍として国連の要請に応じて出動し、国連の指揮下に入ることは、何ら憲法に違反しない(著書「日本改造計画」で)

01年9月 小泉純一郎首相が無原則に軍隊の派遣を決めた。わが国の将来を危うくする(米同時多発テロで小泉首相が自衛隊派遣の方針を決めたことについて記者会見で)

07年7月 原爆の投下について謝罪を求める、そういう考えで、アメリカと話し合うべきだ(1日、民間団体主催の安倍晋三首相との党首討論で)▽(テロ対策特別措置法の延長に)反対したのに賛成するわけないでしょう(31日、記者団に)

  8月 アフガン戦争はアメリカが「これは我々の自衛戦争だ」と言って始めた戦争だ。国連や国際社会は関係ない(7日、記者会見で)


【コメント】
国家の主権を制限し、米国に追随することをもって我が国における「政権担当能力」であると信じてきた政権党の発想からすると、小沢氏の考えは徒手空拳でジャングルに踏み込むような無謀さを感じるものだろうと思います。

しかし、「日米同盟」絶対視の考え方は有効性を失いつつあります。この発想では、真に我が国の国益を守ることができず、どこまでもアメリカの進む方向に追随するだけになってしまいます。

「日米同盟」のコストはいかほどのものか。そして費用対効果は。このことを客観的に測定する必要があります。

国の根幹に関わる外交問題において思考停止に陥るようでは、国の安全保障はあり得ません。「日米同盟」という思考停止概念からの脱却が求められています。


2007/8/8(水) 天下国家より地域・・政権交代を前提として

このところ、国政ないしは選挙に関するテーマが多かったのですが、私の本音を言えば、これからの時代は「天下国家より地域」だと思っています。

民主党の衆議院候補だった関係で、国政を論ずる方がやりやすい状態です。しかし、地域における様々な課題は、天下国家の話よりずっと面白いものです。

これから政権交代が起きるであろうという前提でものを言えば、地域がどのように自立していくかが大きな課題となってきます。

地域を自立させず国家に従わせるというのが自民党の政策であり、霞ヶ関の官僚たちが権力を維持するためのやり方でした。この部分がひっくり返れば、地域の課題こそ真に我々が向き合うに相応しいものになります。

国に陳情する参勤交代型の地方自治から、自立的に課題を解決する地方自治への転換を、民主党政権で成し遂げていただきたいと乞い願う次第です。


2007/8/7(火) これで三権分立が実質化する・・プロの政治を期待

参議院議長に江田五月氏。適任だと思いますが、民主党の有力応援弁士が1人減ります。

民主党が第一党となり、野党主導で参議院が運営されることは、国会と内閣との関係がより「教科書」に近いものになることを意味します。

教科書的に権力分立ないしは三権分立を理解するならば、国会と内閣とは別物であり、国会の意思と内閣の意思とが異なる場合が出て来るはずです。

しかし、議院内閣制を採用する我が国では、議会の多数派が内閣総理大臣を選出し内閣が組織されるため、議会多数派(与党)と内閣とは一体であり、与党と内閣とが「協議」するとしても、多くの場合「ポーズ」の域を出ません。

これからは、衆議院の多数派は自公であっても、参院の多数派は野党であるため、国会の意思が分裂し、調整することによって得た結論は、内閣本来の意思とは食い違うことになります。そうした権力間の摩擦と妥協こそが、権力分立(三権分立)の目指すところですから、国民の立場からすれば歓迎すべき事態です。

「政局混迷」などという理解は、これまで安易に政治をやってきた方々(政治を報道してきた方々)の仕事が大変になるという嘆き節にすぎません。

プロの政治を期待します。

《独言》
参院愛媛県選出の友近議員が民主会派入り。これで国会議員としての活躍が可能になります。社民党県連は不快感を示していますが、社民党への義理立てより県民のために活躍することを選ぶべきです。


2007/8/6(月) 安倍内閣瓦解寸前・・内閣改造は実験としては興味深い

内閣支持率急落。毎日新聞の調査で、前回(7月25日、26日)から9%下落、不支持率が12%増。日本テレビの調査では、参院選前の調査から支持率が7.7%減、不支持率が12.8%増。

【本社世論調査:内閣支持率急落22% 自民支持は17%】(毎日)
安倍内閣の支持率 毎日新聞は4、5両日、電話による全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は22%で、昨年9月の政権発足以来初めて3割を切り最低を更新した。不支持は65%で発足以来最多。政党支持率は自民党が17%で55年の結党以来2番目に低く、民主党は33%で98年4月の結党以来最高で、政府・与党には参院選惨敗を反映した厳しい結果となった。安倍晋三首相の続投表明に対しては「辞めるべきだ」が56%で、「辞める必要はない」の41%を上回った。

◇赤城農相更迭「遅過ぎ」87%

内閣支持率は前回(7月25、26日実施)の31%から9ポイント下落、不支持率は12ポイント上昇した。政権発足直後には支持率は歴代内閣で3番目に高い67%、不支持率は16%だったが、10カ月余りで支持、不支持が完全に逆転した。不支持の理由では「首相の指導力に期待できない」が前回比11ポイント増の57%と最も多かった。

首相が1日、不透明な事務所費問題が指摘された赤城徳彦前農相を更迭した判断については、「更迭するのが遅すぎた」が87%と圧倒的。「評価する」は8%、「更迭の必要はなかった」は3%に過ぎなかった。

内閣支持率を政党支持別にみると、自民支持層は69%で前回比15ポイント減。公明支持層も9ポイント減らして48%となり、半数を割り込んだ。参院選惨敗という結果を受けて与党支持層の中でも「安倍離れ」が起きていることが浮き彫りになった。

男女別の支持は男性20%、女性24%で、いずれも前回比9ポイント減となり、政権発足以来最低を更新した。不支持は男性68%(前回比8ポイント増)、女性62%(同12ポイント増)で、ともに最悪だった。年代別では、30代で支持が16%、20代で18%と若い世代で低く、不支持は20代と50代でともに70%と高かった。

政党支持率は、自民党が前回から5ポイント減らし、民主党が9ポイント増やした結果、民主党が自民党のほぼ倍となった。自民党の過去最低は野党だった細川政権下の94年1月に記録した15%で、今回の17%はこれに次ぐ低率となった。

参院選結果を受けて、早期の衆院解散・総選挙を求める意見が出ていることについては「解散すべきだ」が58%で、「解散する必要はない」の39%を上回った

【コメント】
自民党が安倍氏と心中するのかどうかという状況です。これまで何回かの危機を凌いできた自民党ですが、今回の危機を乗り越えることが可能かどうか。

支持基盤は完全に弱っています。「改革」がイコール地方切り捨てであり、弱者切り捨てであることを有権者は気が付き始めました。新自由主義の猛威により一般庶民が生活に不安を感じている正にそのとき、「戦後レジームからの脱却」「美しい国」などと、およそ生活感のないスローガンを掲げた安倍氏。

小泉氏のようなペテン師の才がない安倍氏の「直球」は打ち込まれました。しかし彼は、自らの「直球」で勝負できると勘違いしているようです。

8月末の内閣改造でどういった変化が生じるのか、見物です。実験としては面白いけれども、追い詰められてから「技」を掛けても、決まらないのが普通ではあります。


2007/8/5(日) 民主党・前原氏の「テロ特措法延長必要」発言について

民主党・前原氏がテレビ番組で述べた「テロ特措法延長必要」発言は、党の内外に波紋を呼ぶ可能性があります。

米国に追随することをもって「政権担当能力」と理解しているとすれば、政権担当能力についての本質的な誤解があると思います。

【民主・前原氏、「テロ特措法延長必要」と発言】(読売)
民主党の前原誠司・前代表は4日午前の読売テレビの番組で、11月に期限切れとなるテロ対策特別措置法の延長について「必要だと思う」と述べた。

小沢代表らが反対方針を示していることについては「(自衛隊派遣に)どういう効果があったか、政府が説明責任を果たしてこなかったから、今までのままなら反対だということになっている。党内で議論する」と述べ、党内論議を進める考えを示した。

前原氏は「テロとの戦いも重要だ。米国との関係をまずくするのは、まさに政権担当能力が問われる」と強調。「与党も知恵を出してもらいたい」と譲歩を求めた。


【コメント】
自民党においても然りですが、我が国における「政権担当能力」を米国政府の方針に追随することとイコールと捉える考え方は、かつての東側陣営における「制限主権論」と同類の発想です。

主権国家である我が国の外交方針は、アメリカにおける時の政府の方針に摺り合わせるだけでは十全ではありません。アメリカ政府の中長期的な方針と合致するかどうかを含め検討した後に、我が国が主体的に決すべき事柄です。

前原氏の発言中、従来政府が情報を野党(ひいては国民)に開示せず、説明責任を果たさなかったことの指摘は重要です。これまで開示されなかった情報に接することにより、特措法延長の是非を論じる必要があります。

情報に接した後に判断するという姿勢は大切です。結論として民主党が特措法延長に賛成するとしても、従来の野党の状態で賛成するのとは決定的な違いがあることは明白です。その意味で、前原発言は注目すべき内容を有しています。

ただし、「制限主権論」にならないよう願います。


2007/8/4(土) 中選挙区時代の内閣支持率と小選挙区制下の内閣支持率は意味が違う

FNNの世論調査で安倍内閣の支持率が22%になったことの意味は小さくありません。

過去の事例として、竹下内閣の支持率が一桁に落ち込み、予算成立と引き替えに退陣したケースや、森内閣の支持率が一桁になり総裁選挙により小泉政権にバトンタッチしたケースがよく知られています。

それらとの比較で言えばまだ余力がありそうに見えます。しかし、中選挙区制の時代なら、内閣の支持率が低くても、各候補者が頑張れば各選挙区3〜5の定数の中では当選可能でした。野党第一党の社会党は過半数を制するだけの候補者を擁立できず、しかも東西冷静構造の下では、自民党政権であり続けられる客観情勢ができていました。

ところが現在の小選挙区制の下では、各選挙区で1位にならなければ選挙区当選はありません。民主党は何時でも政権交代可能な政策を掲げ、ほぼ全選挙区で候補者を擁立できます。内閣支持率が低い状態では、政権与党は衆議院選挙を戦うことができないのです。少なくとも、解散権を有することで総理大臣が求心力を保持するという展開にはなりません。

「安倍総理では戦えない。」 この声が党内で支配的になれば、内閣の存続は事実上不可能になります。現行制度を前提として言えば、内閣支持率が20%を割り込めば、「レッドカード」という認識を持つべきです。


2007/8/3(金) ピエロかドンキホーテか・・・内閣支持率22%

自分の置かれている状況が全く読めなくなっている安倍政権。

FNNの世論調査では、内閣支持率が22.0% 、不支持率が64.8%となっています。支持されているかどうかという段階ではなく、国民に嫌われ、レッド−カードを突きつけられている状況です。

このまま突き進んでも、道化者=ピエロの役回りでしかありません。次期政権を引き立てるために頑張っているということなら理解できますが。

本人は、自己の信念に従って突き進んでいるつもりなのでしょう。しかし、客観的に見ると、風車に向かって突進するドンキホーテでしかありません。

かつての自民党なら、重鎮が「タオルを投げる」段階。安倍政権での解散は不可能です。


2007/8/2(木) 国民の意思も党内の常識をも無視した安倍氏の我が儘「続投」

参院選での与党惨敗の責任者である安倍総理の続投には、世論が反発して不支持率が増し、党内でも異論が出ています。

開票当日、森元総理ら党の幹部が、参議院議員選挙で自民党が40議席を割り込んだ場合には安倍氏の続投は困難であると判断していたとのニュースも出てきました。

【森氏ら、「首相続投困難」伝えていた 安倍氏は続投貫く】(朝日)
自民党の森元首相、青木幹雄参院議員会長、中川秀直幹事長の3人が参院選投開票日の29日、「安倍首相の辞任は必至」という見方を一時固め、安倍首相本人に「続投は困難」と伝えていたことが関係者の話でわかった。しかし、安倍首相は「いかなる結果になろうとも首相を続ける」と続投に強い意欲を示したため、森氏らも最終的に受け入れたという。 
安倍政権を支えてきたキーパーソンである3人は29日午後、東京都内のホテルで会談した。獲得議席ごとに複数の選挙結果を想定して、安倍首相や自民党がどのように対応するか協議した。この結果、「自民党の獲得議席が30台後半になる可能性が高い」との認識で一致。40議席を割り込んだ場合には、青木氏は参院議員会長を、中川氏は党幹事長を、責任をとって辞す考えを、この場で示した。 

しかし、それでも「世論は収まらないのではないか」(出席者の一人)という声が上がり、安倍首相の続投も難しいと判断。中川氏が首相公邸に安倍首相を訪ね、選挙結果が惨敗に終わった場合に、首相が開票後にテレビ出演をするにあたってどのような発言をすべきか、などの対応策を具体的に伝えた。 

これに対し、安倍首相は中川氏との面会後に森氏に電話。「どういう事態になっても、私は辞めない」などと伝えた。安倍首相は28日にも、森氏に電話し、「厳しい状況だが、どういうことがあっても、私は首相をやらせていただきます」と語っていたという。森氏はこのときは一度、返事を留保したが、安倍首相が重ねて続投に強い意欲を示したため、最終的にこれを受け入れた。 

【コメント】
40議席を基準とするのが妥当か否かは別として、党の幹部ないしは長老が続投困難と判断する状況下で、安倍氏は続投を決意したということです。

「私と小沢氏のどちらが首相に相応しいかを決めてもらう」と国民に判断を求めておきながら、結果は無視。党内の「常識」にすら従わない我が儘な決断。今になって赤城農相更迭を決意するというちぐはぐな対応。

この国の総理大臣を任られる人物でないことは明らかではないでしょうか。

今回の参院選のテーマは、年金問題であり、「格差」であり、「政治とカネ」の問題であると言われてきましたが、最大のテーマは安倍氏の首相適格性だったと思います。

国民の結論は出ているのです。王様の頭に金を打たれて詰んでいるのに、「僕はまだやりたい」と駄々をこねる幼児のような宰相。前代未聞の珍事です。



(参照:6月19日のブログ)
【今回参院選は、「安倍晋三」に対する国民審査になる・・支持率依然低迷】 


2007/8/1(水) 自民党総務会での正論・・・真っ当な敗因分析に至るのかどうか

自民党総務会で首相退陣論が出てきました。「政権選択」を有権者に問いながら、負ければ居直るというのでは、国民の支持を回復することは困難です。自民党内に、そうした真っ当な考え方が出てきたことは、一応評価すべきでしょう。「ガス抜き」という評価もあるでしょうが。

【安倍首相の責任論が噴出 自民党総務会、退陣要求も】(朝日)
自民党が参院選で大敗したにもかかわらず、安倍首相が続投を決めたことをめぐり、31日午前の自民党総務会でベテラン議員を中心に首相の責任を問う発言が相次いだ。 

野田毅元自治相は「参院選で政権選択を迫ったので、その結果、道は一つしかない。決断した方がいい」と発言。石破茂元防衛庁長官も「総理は『私か、小沢代表の選択だ』と何度も訴えた。これを有権者にどう説明するのか。挙党一致は答えにならない」と首相の退陣を促した。 

深谷隆司元通産相は「選挙前の様々な問題で泥縄式の対応を国民はちゃんとみている。赤城さんは(大臣の)資格がない。即刻辞任してもらいたい」と首相の対応を批判しつつ、赤城農水相の辞任を要求した。 

一方、惨敗の原因を明確にすべきだとの意見も相次いだ。加藤紘一元幹事長は「『首相続投で挙党一致』はいいが、敗因を分析なしで進めば、自民党はずたずたになる。今回の結末は自民党の基盤の崩壊だ」と述べた。谷垣禎一・前財務相も「なぜ国民から厳しい批判を浴びたのか整理しないといけない」と執行部に求めた。 

これを受け、中川秀直幹事長は「(参院選敗北の)総括は8月中に結論を出したい」と述べた。丹羽雄哉総務会長は、総務会での意見を首相官邸にも近く伝える方針だ。 

【コメント】
自民党は、客観的な敗因分析ができるでしょうか。

「逆風」の中味が深刻です。1人区での農村の反乱は、民主党の農業政策が浸透しつつあることを物語っています。民主党の農業政策が浸透していけば、農村部での再逆転は難しくなります。市町村合併への反感も出てきています。

自民党が農業政策を転換し、「改革路線」に変更を加えない限り、衆議院選挙も勝てないという分析を行った場合、小泉路線への否定的評価を明確にしていかざるを得なくなります。しかし、それでは前回の衆院選での大勝利を自ら否定することになります。

結局、「改革続行」を唱えつつ、実質的な転換を図るというところに落ち着くでしょう。そうした「なまくら路線」で切り抜けられる社会情勢ではありません。

「小泉の5年半はペテンであった。」 ここまで言い切らないといけないのではないでしょうか。


玉井彰の一言 2007年8月 四国の星ホーム一言目次前月