閑吟集 小歌

 
  うす  ちぎ     はなだ
 薄の契りや 縹の帯の ただ片結び
(245)

大意……

さても薄い契りよ。
縹色の帯を、ただ片結びにしたような。


 



 江戸小唄とか新内節の一節のようは雰囲気がしませんか。小唄や新内には詳しくないのでよくわかりませんが、実際にあっても不思議はないかな、という気がします。

 「縹」は薄い藍色のことで、醒めやすい色なので色変わり、心変わりの意味を持ちます。「片結び」は、帯や紐の一方をまっすぐのままにして、他方をそれに巻き付けるようにして、輪にして結ぶ方法です。ほどけやすいので、解けやすい、または片思いの意味で使われることが多いようです。

 せっかく契りを結んだというのに、縹の帯の色があせるように、片結びの帯が解けるように、思う人は心変わりをしてしまって、もう通っては来てくれない。ああ、悲しい。そんな風に、別れた男を恋うる歌のようです。色っぽくて可愛いらしい、大人の女の歌でしょう。

 でも、本人は無くした恋を忍んで、止むに止まれずと言う気分なのでしょうが、端で見ていたとしたら、可愛いというよりも、鬱陶しく感じるのではないでしょうか。少なくとも。もし、この歌のような人物が目の前にいたとしたら、私の場合は、さっさと新しい男を捕まえなさいと、ハッパを掛けてしまいそうです。


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