竹久夢二「青い小径」


    


  ひつじ  ひつじ
 「羊さん羊さん
          だんな さま  やうふく
 わたしの旦那様の洋服に
    まへ   け
 お前の毛をおくれでないか」
  おく       い
 奥さんが言ひました。
       おく
 「はい奥さま
        ふくろ
 三つの袋にいつぱい
  よ   け         お
 好い毛をもつて居りまする。
        おく
 ですが奥さま
        こ みち
 そこの小径に
  さむ     な
 寒さに泣いてゐる
  かはい      こ
 可哀さうな子にやらねばなりませぬ
               おく
 はいさようなら奥さま」
     い
 さう言つて
 ひつじ
 羊はいつてしまひました。



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