竹久夢二「夢のふるさと」


   
  猿と蟹


 
 わたしが猿で 妹 が
 
 あはれな蟹でありました。
 

 
 猿はひとりで姉の実を
 
 木に腰かけてたべました。
 
 「兄さんひとつ頂戴よ」
 
 あはれな蟹がいひました。
 
 「これでもやろ」と渋柿を
 
 なげてはみたがかあいそで
 
 好いのもたんとやりました。